先日の『原三溪翁伝』の出版記念の集いに出席するため、横浜まで行ったので、
その時に見た美術展を紹介します。
まずは三溪園内の三溪記念館でおこなわれている
特別展「原三溪と美術 ―蒐集家 三溪の旧蔵品」 10月31日~11月30日
晩秋の三溪園、まだ紅葉には少し早かったようです。
でも春や夏の三溪園しか来たことのなかった私には、また趣が違ってよかったです。
展覧会のほうは、三溪さんの旧蔵品ということで、チラシにも使われている
国宝「孔雀明王像」をはじめ、名品といわれる作品が並びました。
蒐集された作品を通しで見ると、三溪さんの趣味がよくわかります。
実に渋い。 決してきらびやかなものがない。
美術については素人の私ですが、
三溪さんが日本古来からの伝統の美の真髄をきわめているような作品に心惹かれているようにおもいました。
そして臨終の枕元で最後に眺めたという「四季山水図」(伝雪舟)の巻物には
彼が幼少のころ、伯父から学んだ南画の世界に通じるものを感じ、
彼の原点が凝縮されているようで、エピソードと共に見ていて胸があつくなりました。
横浜美術館では
「大・開港展 徳川将軍家と幕末明治の美術」 9月19日~11月23日
14日の土曜日、原三溪市民研究会が行われる前にじっくりと見学しました。
全体を徳川時代、開港の時代、明治時代と分けて展示され、
それぞれの時代の文物や美術品が一同に集められています。
絵画は絵画、工芸品は工芸品、陶器は陶器だけといった展覧会は多いけれど、
こんなにいろいろなものが集められているのは実に壮観です。
全体を通してみると、日本の美術が開港によって新しく西洋の影響を受けてかわったり、
日本の工芸のよさをアピールするようなものがつくられたり、とその変遷がよくわかります。
開港によって日本の芸術文化はこんなに影響されてきたんだ、とその特質が浮き彫りにされています。
そして最後にはそういった時代に原三溪が庇護して育て上げた日本画家たちの絵も展示されていました。
前日は三溪さんの旧蔵品を見て、彼の美術の審美眼を堪能させてもらい、
この日は彼がパトロンとして庇護してきたことの意味が大局から理解できたようにおもいます。
2日間通して、実に充実した展覧会鑑賞でした。