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谷川直子『おしかくさま』その1

2013-10-30 10:09:00 | ノンジャンル
 北上次郎さんが推薦していた、谷川直子さんの'12年作品『おしかくさま』を読みました。
 46歳のアサミは49歳の姉のミナミを呼び出し、母の洋子から76歳になる父が駅の近くに住んでいる一人暮らしの73歳の女性の家に出入りしているらしいことを聞き、アサミは民生委員をして忙しいということで、ミナミが洋子からおこずかいをもらって、父のことを調べることになります。ミナミは離婚でもめたあたりからウツ病になり、拒食症と不眠症ですっかりやせてしまい、それからもう十年近く経つのにまだ病院に通っていました。父が出入りしている家の表札には「藤木野」と書かれていました。父はその家に入ってから1時間ほどして出てくると、中からは複数の声が聞こえてきました。
 アサミの一人娘で中学一年のユウは、よくミナミの家に遊びに行っていました。ミナミの家にはスポーツ新聞が置いてあり、ある日遊びに行くと、ミナミはAKBがグループとして5億円を東日本大震災の義援金として寄付し、ファンが寄付できる義援金口座も開設、主要メンバーが極秘で被災地を慰問していたことなどを報じた記事をスクラップしていました。ユウは最近肉を食べたくないと言い出し、その理由を牛がかわいそうだからとミナミに打ち明けます。洋子は藤木野から夫宛に電話があって、また父が出かけるらしいので、また尾行してできれば藤木野に会ってきてほしいとミナミに頼みます。藤木野は高校で国語を教えていた父の昔の教え子の保護者だったということでした。ミナミは藤木野の家の前で父が出てくるのを待っていると、藤木野に中に通されます。中には同年代の4人の女性、藤木野、本田、奥村、馬場がいて、皆“おしかくさま”の信者で、「大きな災いより半年を経た日、おしかくさまの遣わした者東より来たり、その者の言の葉よく聞きよく行えばおしかくさまのご利益いやましたり」というお告げがあり、東日本大震災の半年後、その日にたまたま近くのATMがテンポラリー・ランクアップお社に指定されていて、そこで4人がお参りとお清めをし終わってATMを出たところ、藤木野のバッグがひったくりに会い、それを東から来たミナミの父が取り押さえ、バッグを藤木野に返したのだということで、ミナミの父がおしかくさまの遣いと信じられていると言います。
 ユウはアサミに頼まれ、ネットでおしかくさまオフィシャルサイトがあることを発見します。トップページには「おしかくさまはお金の神様です 現世においてお金でものが買えるのはおしかくさまのおはからいです。 おしかくさまを信仰すればあなたのお金が活性化されます」とだけ書かれていて、それ以上の情報を得るためには五百円を払って会員登録する必要があるようでした。ミナミらの父はお金の歴史や七福神など様々な知識を披露し、おしかくさまに騙されている“問題児”4人を救おうと、今日も藤木野の家を訪れ4人に話をしますが、4人のおしかくさまへの信仰心はなかなか揺らぎません。彼女らは1万円で無紋のお札と呼ばれるただの白い紙を買っていて、それを財布に入れておくとお金が増え、無紋のお札を買うのに払われた1万円も、そのほとんどは東日本大震災への義援金に送られるのだと言います。
 一方、ミナミは離婚からずいぶん経っているのに、あのとき友達だと思っていた知り合いが一斉に背を向けて去っていったことからひどく傷つき、何かしっかりしたものを探し求め、たどりついたのが光の早さでしたが、最近光速を超えるニュートリノの検出に成功したという報道を見て、心穏やかではなくなっていました。ミナミの許を訪ねてきたユウは、売れるものならなんでもつくっちゃえっている人間のやり方にギモンを持ったと言います。
 好奇心からその後も度々藤木野の家を訪れていたミナミは、おしかくさまのお社とはATMのことでおしかくさまに手を合わせてからお札を預け、もう一度おしかくさまに手を合わせてから同じ額を引き出すのが清めの儀式で、実際そのお札で買ったナンバーズで馬場は75万円当てたとと聞き、無紋のお札を買います。それを聞いたアサミは、おしかくさまのオフィシャルサイトで会員登録し、その詳細を調べるのでした。そこにはお参りの方法、お清めの方法、無紋のお札の効用とそれを買うと一つの質問に答えてもらえること、こっくりさんの方法でおしかくさんというお告げをしてもらえる方法が書かれていました。(明日へ続きます‥‥)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto