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周防正行監督『終の信託』その2

2013-10-20 09:27:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 満州へもう一度行って、無になりたいと語っていた江木。折井は子守唄を江木に歌い、彼の手を握って顔を寄せます。翌日、江木の顔を両手で囲む妻。その様子を覗き見る折井。
 折井はストレスによる急性胃潰瘍の出血が見られることから、江木を苦しみから少しでも早く解放してあげるべきか、もう少し様子を見るべきか迷います。奥さんに長く看病してもらっていたことを気にしていたし、治療費もなるべく少なくして金を奥さんに多く残してあげたいと江木が言っていたと折井が言うと、妻も頷きます。「気管のチューブを外してあげてもいいですか? チューブだらけになって無理矢理生かされるのは嫌だと言っていました。もうこの状態になって3週間。意識が戻らない可能性は高く、自然に任せてあげた方がいいのではないでしょうか? これ以上の延命治療を望まれますか?」と折井が言うと、妻は「私にはよく分かりません。ただ仕方がないのなら」と言い、折井は「お子さんともご相談なさってください」と言います。
 看護婦が江木の清拭をしてると、それを手伝う折井。訪ねてきた江木の妻と息子と娘に「最後に声をかけてあげてください」と折井が言うと、妻は「ありがとう」と言い、息子と娘は見舞いに来なかったことを詫びます。「長い間お待たせして申し訳ありませんでした。私が臆病なばかりに」と折井は言って、チューブを抜くと、江木は苦しんで暴れだしますが、折井が鎮静剤を次々に投与していくと、やがて静かになります。「ごめんなさい」と泣き崩れる折井でしたが、しばらくして落ち着くと子守唄を歌い始めるのでした。
 3時から待っていた折井が、4時20分になってようやく塚原検事に呼ばれます。ICレコーダーのスイッチを入れ、聴取を始める塚原。江木のことを聞かれ、辛抱強く、醜い姿を見せるのを恥じる、とても繊細な人だったと語る折井。平成13年12月2日、心肺停止状態だったが呼吸も血圧も安定していたのだね、と塚原が言うと、折井は反論しますが、塚原は「聞かれたことだけに答えなさい」と高圧的な態度を取ります。人工呼吸器をつけなくても呼吸していたこと、脳死ではなかったことにも折井は反論しますが、塚原の高圧的な態度は変わりません。待合室に帰りの希望時間を伝えられると掲示されていたとして、折井は6時に人と会う約束があると言いますが、塚原は協力してくれればすぐ終わると言います。専門家は自宅療養も可能だったと言っていると塚原に言われ、反論する折井。江木の妻が「これ以上長びかせても仕方ない」という説明しか折井から受けてないと証言したことも塚原は言い、チューブを抜けば死ぬと思っていたところが死ななかったので、致死量の鎮静剤を投与したことも、折井に認めさせます。これまで折井に認めさせた話をまとめて塚原が話し、それをタイプさせて、出力した書面に折井は署名と認印の押印をさせられます。5時40分となり、帰ろうとする折井を、無理矢理引き止める塚原。今回のことを医療行為だと思っているのか?と塚原は言い、判例によって尊厳死として認められるのは、死が避けられず死が迫っている患者に限り、本人の意思が明示されていることが条件だと言いますが、それに対し、折井は江木との間に交わされた話を語り、彼を苦しみから解放させてあげるために「殺した」ことを認めると、塚原は逮捕状を示して、折井に手錠と腰縄をかけ、部屋から連れ出します。
 そしてラスト。「二十日間の取調べの後、折井綾乃は殺人罪で起訴された。裁判では、江木の妻・陽子が、江木の残した『喘息日誌』の存在を明らかにした。日誌は、綾乃が江木の担当となってから書き始められ、15年間で61册になっていた。その最後のページに『延命治療は望まない。全ては折井先生にお願いした』との一文があった。裁判所は、その一文を『リビング・ウィル』と認めたが、『そもそも被告人の説明には明らかな誤りがあり、患者には回復の望みがなかった訳ではない。加えて家族への説明も不十分であった』として、懲役二年、執行猶予四年の有罪判決を下した。」の字幕で映画は終わります。

 ワンシーン・ワンカットの部分もある“演出”の映画でした。特にラストの検事と折井のやり取りは見事だったと思います。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto