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小峰元『アルキメデスは手を汚さない』

2013-10-26 07:55:00 | ノンジャンル
 北尾トロさんが推薦していた、小峰元さんの'73年作品『アルキメデスは手を汚さない』を読みました。
 大阪府豊中市の高級住宅街で葬儀が行われています。死者は豊能高校二年、柴本美雪、十七歳。喪主は実父の柴本健次郎、五十一歳。柴本工務店社長。出棺の後、残った美雪の同級生たちは、突如として若やいだ表情となり、「あの人は、行って行ってしまった」と一人が歌うと、それを誰も不謹慎だとは思わず、この歌詞とメロディのほうが、理解を超えた読経や弔詞よりも、級友を送るにふさわしいものと感じ、去(い)って去(い)って、と繰り返すところに、二度と戻らぬ級友への惜別の情がナウな感覚でこもっているようで、ふと数人が口ずさんだ。内藤規久夫も、二度、三度とそのメロディを繰り返した。柳生隆保は「彼女の病気についての噂、聞いたかい」と声をひそめ、内藤が首を左右に振ると、柳生は「これはただの噂の段階だけどね。彼女は中絶に失敗したらしいよ」「中絶と言うと、妊娠の?」思わず高まった声に、内藤は慌てて自分の口をふさいだ。「相手は誰だと言ってるんだ。その噂では?」「それは彼女だけしかしらない。彼女はその人の名を告げずに死んだ、というわけさ。ただ、かなり広まっている噂では、彼女の相手は同級生であるということだ」
 焼き場から家に戻る車の中で、健次郎は妻に言った。「美雪が、相手の男を許していたとしても、私は絶対に許さん。法律がその男を罰しないなら、私が罰してやる。この手で仇を討ってやる。それが親としても、美雪への最大の供養だと思うからだ」葬式から中一日おいた日の午後、健次郎は豊能高校へ向かい、美雪の担任であった藤田と向かい合った。健次郎は、噂を流した男が美雪の相手の男だと断定したが、藤田は事実関係を整理しようと言い、美雪が妊娠したのが八月の初めの夏休み中であったこと、その時期に美雪が家を離れたのは、同級生の女子3人と一緒に琵琶湖へ三泊四日の旅行へ行った時だけだったことを健次郎から聞き出すことに成功します。そして健次郎は美雪の初七日の日に、美雪と親しくしていた同級生を呼んで話を聞きたいと言い、その人選を藤田に頼んだ。
 そしてその初七日の日。健次郎の許に呼ばれたのは、藤田と、美雪と一緒に旅行した3人の女学生、そして内藤ら男子学生4人だった。藤田が琵琶湖の旅行の時のことを聞くと、美雪が自分で予約していたモーター・ボートでの琵琶湖大橋巡りを、美雪が疲れていると言って、自分だけ宿に残っていかず、約5時間の間、一人で宿にいたが、それでも別に変わった様子はなかったと女学生たちは言い、美雪が父のことを馬鹿みたいに法律を守ることしか能がないと言って憎んでいたとも付け加えた。女学生に促されて話出した内藤は、日照権の問題で住民に反対運動が起こっていたにも関わらず、法律的には問題ないとして、健次郎の会社が作ったマンションによって、内藤の家は日照権を買われ、建築の騒音と、太陽を奪われて、内藤の祖母が寝込んで死んでしまったことを話した。そして美雪がそのことを気の毒がって内藤のために泣いてくれたことも。健次郎は散々生徒たちから罵倒されて、逆に怒りを内藤にぶつけ、「貴様が美雪を穢したんだな」と言い出した。そこへ学校から藤田へ電話がかかり、内藤の弁当に毒がはいっていて、それを食べた柳生が倒れたという知らせが入った。
 内藤は3時間目に藤田に健次郎のところへ行くことを伝えられ、弁当が必要なくなったので、いつものように田中という学生がセリをやり、セリ落とした柳生が食べた弁当にヒ素が入っていたとのことだった。内藤のクラスは2時間目に化学の実験室に移動しており、その時に内藤に食べさせるためにヒ素が入れられたと推測された‥‥。

 ここまでで48ページ。実際には90ページ近くまで読んだのですが、そこで先を読むことを断念しました。理由は高校生たちの心理がリアルでなかったから、の一点に尽きます。この小説が書かれた時、著者は52歳。大正10年生まれの人が、昭和48年(私が14歳)の時の高校生の心理を描くには無理があったとしか思えませんでした。大人の世界を描いた小説だと楽しんで読めると思いました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto