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高野秀行『放っておいても明日は来る』

2010-01-15 11:05:00 | ノンジャンル
 高野秀行さんの'09年作品「放っておいても明日は来る 就職しないで生きる9つの方法」を読みました。上智大学(本書内では「J大学」)で著者が行った対談形式の講義「東南アジア文化論」を再構成して収録したものです。
 対談の相手は、大学で農学部を卒業し直した後、就職先のマレーシアの職場が行く直前に閉鎖されてしまい、周囲に大々的に発表していた手前行かざるを得ず、何のツテもなく1人でマレーシアに着いたところから始まり、現在国を相手にジャングルの生物資源を調査するビジネスをしている二村聡さん、OL時代にダイエット目的で始めたキックボクシングにはまり、タイでムエタイの選手としてプロデビューした下関祟子さん、沖縄で映画プロデューサーをしている井出裕一さん、様々な職業を経て、現在はミャンマーで欧米の旅行会社向けの現地手配会社を経営する金澤聖太さん、タイでバンド活動を開始したモモコモーションさん、映画のミニシアターの先鞭をつけ、その後ライターの仕事を経て現在ラオスでカフェを営む黒田信一さん、チャドでの緑化運動などを経て、現在は屋久島でガイドを行う野々山富雄さん、高野氏の著作の韓国での翻訳本の出版を独力で成し遂げたことを始まりとして、現在その分野の会社を経営している姜ビョンヒュクさんです。面白いと思ったのは、タイでは子供をしかることをせず徹底的に甘やかすので、子供はファザコン、マザコンになる一方で両親の面倒をきちんとみるという話、自分の生活を一歩引いてみると、客観的に見ることができ、苦しさも面白く見ることができたりするという話、日本は地方の文化(秋葉原のオタクなども含めて)がきちんと残っているので、欧米の観光客から見るとかなり魅力的に見えるという話、生活にある程度ストレスがないと(刺激がないと)、生きるのがつまらなくなってくるという話、そして今生きている生活は多くある価値観のうちの一つを体現しているだけなのであって、常識・非常識というものは相対的なものでしかないという話でした。特に最後の話は高野さんの本に度々出て来るキータームであって、読む度に思い出させてくれる重要な考え方だと再認識した次第です。
 あっという間に読めてしまう、楽しくて意義深い本です。文句無しにオススメです。