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フェデリコ・フェリーニ監督『8 1/2』

2009-08-26 15:55:00 | ノンジャンル
 NHK・BS2で、フェデリコ・フェリーニ監督の'63年作品「8 1/2」を再見しました。
 渋滞の車の中が煙で充満し、なんとか脱出した映画監督のグイド(マルチェロ・マストロヤンニ)はそのまま空を飛びますが、足に紐をかけられ海に落とされてしまいます。夢から目覚めるとそこは診察室で、そこを出るとワルキューレの騎行の音楽が流れる中、老人が集う温泉場で幻の美女(クラウディア・カルディナーレ)を見、広報係から製作を延期している自伝的作品の構想を批判されたり、思わぬ友人と会ったりした後、駅に迎えに行くと機関車から能天気な愛人のカルラが降りてきます。その夜両親と妻(アヌーク・エメ)の夢を見、翌朝ホテルのロビーでスタッフやキャストたちと次々に言葉を交わします。夜のクラブでダンスと議論に興じる人々。その夜は多くの保母たちに囲まれた幼少時の夢を見ます。スタッフは深夜まで映画の準備に余念なく、グイドが自室に戻るとまた幻の美女が現れます。少年時代の回想の中で大女に金をあげて踊らせ学校の先生に見つかって罰せられるグイド。それを映画で描くことを批判する広報係。やがて妻のルイザがやってきて、夜皆でロケット発射台のセットを見に行きます。自室に帰って妻と口論となり、翌日カルラを見つけた妻は怒り出しますが、歌い出したカルラに妻は声をかけ、二人は仲良く話し出します。幻想の中で、雪の夜に、今まで知り合った全ての女性からなるハーレムにプレゼントを持って帰るグイド。ハーレムの年齢制限のことをきっかけに女たちが反乱を起こしますが、グイドが鞭を振るうと、彼女らはまた彼に従います。スタッフらが集まりスクリーンテストが始まろうとしていると、観客の一人が絞首刑にされます。妻役のカルラの演技に頭を抱えるグイド。次々といろんな女性が妻の役を演じていきますが、妻はグイドの演技指導が欺瞞に満ちていると言って怒り帰ってしまいます。そこへ幻の美女だった女優のクラウディアが現れます。グイドは彼女とともに車で出かけますが、彼女が実は自分の役などないのではと言うと、グイドは確かに彼女の役などないし、映画もそもそも存在しないのだと言います。そこへスタッフたちが駆けつけ、次回作の記者会見があると言って強引にグイドを連れて行きます。発射台のセットの前には記者たちが大勢集まっていますが、何を話していいのか分からないグイドは、スタッフから渡された拳銃で頭を打ち抜きます。シーンは一転して、映画の製作が中止になってセットの解体をグイドが指示しています。そこへ知合いの芸人が用意ができたことを告げに来ます。グイドは妻に対して語りかけ、人生は祭りであり、一緒に生きてほしい、あるがままの自分を受け入れてほしい、と言い、妻はしぶしぶそれその言葉を受け止めます。映画の登場人物が皆白い衣装を来て集まってきます。道化師たちの列が歩いて幕の前に立ち止まり、幕が降ろされると、セットの大階段を映画の登場人物たちが楽し気におしゃべりしながら降りて来ます。そして皆手をつないで輪を作り踊り始めると、グイドもその輪の中に加わっていくのでした。
 以前見た時はラストの階段を降りるところまで眠ってしまっていて、訳分からずに見終わりましたが、今回は幸福感溢れるラストシーンを見て不覚にも涙してしまいました。ショットの数を最小限に抑えたこのシーンは、撮り終えた瞬間に現場はそれこそお祭り騒ぎになったことでしょう。幻想シーンの素晴らしさはこの上ないもので、ヌーヴェル・ヴァーグ華やかなりし'63年に公開された時には世界に衝撃が走ったに違いありません。映画好きの方には文句無しにオススメです。

高橋源一郎・山田詠美『顰蹙文学カフェ』

2009-08-25 17:37:00 | ノンジャンル
 高橋源一郎さんと山田詠美さんの対談集「顰蹙文学カフェ」を読みました。月刊誌「群像」に'05年から'08年にかけて連載されたものに、源一郎さんの前書きと詠美さんのあとがきを加えたものです。
 '04年11月18日に行われた源一郎さんと詠美さんのオープニング対談「『顰蹙』買えたら、作家は一人前」、'05年2月15日に島田雅彦さんをゲストに行われた「無視されるより、けなされたい」、'05年6月15日に中原昌也さんをゲストに行われた、小説を書くのが嫌でしょうがないと言う中原さんに、二人が小説家が天職なのだと説得し続ける「『書く』ことが恥ずかしい」、'05年10月18日に車谷長吉さんをゲストに行われた「『世捨て人』になりたかった‥‥」、'06年5月9日に古井由吉さんをゲストに行われた、文学賞についての対談「『権威』からの逃亡」、'08年1月22日に瀬戸内寂聴さんをゲストに行われた「長生きすると、顰蹙は『昇華』する」、以上6編の対談が収められています。
 どれも楽しい対談で読んでいて何度も笑ってしまい、しかも中原さんを除いて皆顰蹙を買うことを肯定的に考えているやんちゃな面が横溢していて気持ちのいいものでした。これらの対談から読んでみたいと思った本は舞城王太郎さんの本、源一郎さんが圧倒的な傑作という酒見賢一さんの「後宮小説」、詠美さんが大好きという星野智幸さんの本、やはり詠美さんが好きだと言う吉田修一さんの「パレード」、真面目に言葉遊びやってる一番おもしろい種類の小説だと詠美さんがいう、源一郎さんの「官能小説家」、源一郎さんがむちゃくちゃおもしろかったという後藤繁雄さんの「独特老人」、詠美さんがお小遣いで買ったというロレンス・ダレルの「アレキサンドリア四重奏」、車谷長吉さんの「赤目四十八瀧心中未遂」と同じく車谷さんの作品で詠美さんが精神病院に入院した友人に持っていってあげたという「飆風(ひょうふう)」、源一郎さんが最高だというトーマス・マンの「ブッデンブローク家の人々」、源一郎さんがエンターテイメントぽくってすごく好きだという古井由吉さんの「櫛の火」でした。また、この本で知ったことは、島田雅彦さんが金井美恵子さんからの攻撃を受け続けていること、源一郎さんが5回も結婚していること(最初の離婚までしか知りませんでした)でした。これほど濃密な内容の本は身近に置いておきたいような気もします。文句無しにオススメです。

ジョセフ・ロージー監督『唇からナイフ』

2009-08-24 14:11:00 | ノンジャンル
 女子バレーワールドグランプリが終わりましたが、フジテレビがつける日本選手のニックネームはエスカレートする一方です。「プリンセス・メグ」と言われた時もどうかなと思いましたが、「ミラクル・サオリン進化系」「奥様はミドルブロッカー」とまで来るともうあきれて笑うしかないといった感じです。来年のエスカレート振りが今から楽しみです。

 さて、WOWOWで、ジョセフ・ロージー監督の'66年作品「唇からナイフ」を見ました。
 英国政府の役人タラント(ハリー・アンドリュース)は、アラブ産油国の石油採掘権に対する支払いをするため5000万ポンド分のダイヤを産油国へ輸送するのに、盗みのプロであるモデスティ(モニカ・ヴィティ)に監視を頼みますが、彼女は情報をすべて与えてくれなければダイヤを横取りすると言い、ウィリー(テレンス・スタンプ)と組むことを条件として出します。モデスティはアムステルダムで遊覧船に乗ってダイヤが積まれていそうな船を探し、ウィリーは奇術師のパコの助手の娘から情報を得ようとしますが、彼女はダイヤを盗もうとしている黒幕がガブリエル(ダーク・ボガート)であることを言った後殺されます。ガブリエルは英国政府がダイヤ輸送を偽装した飛行機をミサイルで打ち落とし、モデスティらは彼の島へ向かいますがもぬけの空でした。翌朝島の近くに停泊している船からカブリエルはモデスティを食事に招待して二人を捕えます。ウィリーを使って、ダイヤを運んでいる貨物船の船倉に穴をあけダイヤを奪うと二人を監禁しますが、モデスティは脱出してウィリーも助け出し、ウィリーの背中の人工皮膚を剥がして、その内側に隠してあった部品から送信機を組み立てます。殺人を趣味にしているガブリエルの妻を二人で殺すと、その首吊り死体を重りにして滑車を使って崖を降りますが発見されます。銃撃戦となり絶体絶命になりますが、通信機からの信号を受けた産油国の族長が船と馬に乗る多くの部下とともに助けに来ます。ダイヤは無事に産油国に渡り、タラントは首相に任務の完了を報告します。産油国ではウィリーがミルク風呂に入る一方で、ガブリエルは炎天下で地面に縛り付けられ、モデスティは族長からダイヤをもらって大笑するのでした。
 バカラックを思わせる心踊るメーンテーマから始まり、明るい原色のオンパレード(シガレットまで水色!)。モニカ・ヴィッティとテレンス・スタンプのミュージカル場面まで2つあり、おふさげに徹したイギリス映画でした。ただ、いくら殺人狂とは言え、その首吊り死体が滑車を使って上がったり下がったりするというのはどうにもグロテスクで、そこいらにロージーの持つ暗さが出ていたようにも思いました。60年代のポップカルチャーに触れたい方にはオススメです。

早川いくを『へんないきもの三千里』

2009-08-23 14:59:00 | ノンジャンル
 早川いくをさんの'07年作品「へんないきもの三千里」を読みました。
 意中の男子に振り向いてもらうため、兄の飼ってるガマガエルをなめるまじないをして失神した小6のユカリは、気がつくと空から落ちていて、オオナガトゲグモの巣に捕らえられ、サムライアリの奴隷となり、川に落ちてアンヒューマに食べられ、チョウの助けで海に向かう魚につかまることができますが、海ではパロロに精子をかけられ、人に食べられて血管内で生体防御システムの攻撃を受け、海に戻ってマルバギンポと一緒に、人の世界への戻り方を知ることができるという知恵者の森へと向かい、ウバザメに飲み込まれ、ギンポを殺されて一人で深海へ行き、クラセンウナギに食われ、やっと知恵者の森に到着して教えられた通りに海の湖に飛び込み、人間の世界に戻ってきます。そして生き物たちを救うため父にリゾート計画を中止してもらい、それまでは嫌いだった生き物の係りに立候補すると、意中の男子も同じ生き物係りになっているのでした。
 自然や生き物の大切さをお話を通して学んでもらうとともに、不思議な生き物をも紹介するという学習教材のような構成になっていますが、父の会社の強引なリゾート計画や母の戦略的な宝石店経営の様子や新興宗教へののめり込み振りなどの話は、子供が読んで果たして楽しめるのかどうか疑問でした(ちなみに大人の私はこの部分は飛ばし読みしました)。へんないきものの部分は今回も面白く、本物の魚としか思えない擬態をするランプシリスという貝、性細胞でふくれあがると下半身が上半身から離脱して、なぜか日時と場所を察知して乱交パーティに参加するパロロ、クラゲに乗って移動するウチワエビの幼生、ホヤなどを襲って中身だけをたいらげ、残った樽状の外壁の中に住居を構えるオオタルマワシ、巨大化した鋏脚により強烈な音響を発生させ、その衝撃波で獲物を「撃墜」するテッポウエビ、雄が自分の十数倍もある雌の腹に噛み付くと、口も内臓器官も退化させ、単なる生殖器に成り下がってしまうオニアンコウ、指をたくさん持つ多数の足と指を持たない多数の足を持ち、角二つだけで目がないウシナマコなど、寺西晃さんのイラストとともに楽しめました。いきものの紹介の部分だけならオススメです。

ルイス・ブニュエル監督『ビリディアナ』

2009-08-22 18:05:00 | ノンジャンル
 昨日政見放送で幸福実現党の大川隆法氏の声を初めて聞きましたが、仏陀の生まれ変わりとも思えない悪声でした。この人を信じて今まで付いて来ている人がたくさんいることが信じられません。

 さて、スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ルイス・ブニュエル監督の'61年作品「ビリディアナ」を再見しました。
 修道女のビリディアナは先輩に勧められ、幼い頃から仕送りをしてくれていた唯一の親類である叔父(フェルナンド・レイ)に会いに行きます。夜亡き妻のウェディング・ドレスを叔父が身につけていると、夢遊病のビリディアナが入ってきて毛糸玉を暖炉に放り込み、灰をベッドにかけます。最後の夜、叔父はビリディアナに頼んで妻のウェディング・ドレスを着てもらい、家政婦の口を借りてプロポーズしますが、ビリディアナが拒んだため、家政婦は睡眠薬入りのコーヒーを飲ませ、叔父はフォーレのレクイエムのレコードをかけて彼女にキスします。翌朝叔父は昨晩彼女を自分のものにしたと言って引き止めようとしますが、彼女はそれでも去ろうとしたため、嘘を言ったことを認めます。修道院への途中彼女は警官に引き止められ、叔父の首吊り現場に連れて行かれます。先輩の修道女が駆け付けると、彼女は叔父のところに残ると言い、救貧所を設立します。叔父の息子もやって来て彼女の行動を非難しますが、彼女は聞く耳を持ちません。ある日ビリディアナらが外出すると、救貧所の人々が母屋に侵入し、酒を飲み贅沢な食事をし、ハレルヤのレコードをかけて踊った後痴話喧嘩の果てに食器を粉々にしてしまいます。彼らは逃げ出そうとしますが、ちょうどそこへビリディアナらが戻ってきます。息子は殴られて失神しビリディアナは犯されそうになりますが、意識の戻った息子が一人を買収してビリディアナを襲っている男を殺させます。そこへ家政婦が呼んだ警察がやってきて彼らは救出されます。翌日うつろな表情のビリディアナは息子と息子の情婦となった家政婦とカードをして夜を過ごすのでした。
 縄跳びをする少女の足、搾乳、溺れる蜜蜂、馬車につながれた走る犬など、ストーリーと関係ないイメージが提示されるところはブニュエルの面目躍如といったところです。息子が家政婦と横たわる直後に猫が鼠に飛びかかる(というか明らかに鼠のところへ猫を投げつけている)シーンはあまりにもあからさまな暗喩で笑え、祈りと建設現場の平行モンタージュや、救貧所の人々の記念写真が最後の晩餐の構図になっているところなど、冒涜に次ぐ冒涜で、これも見どころになっていました。何回見ても面白く見られる映画です。文句無しにオススメです。