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百田尚樹『ボックス!』

2009-08-11 17:35:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」の中で挙げられていた、百田尚樹さんの'08年作品「ボックス!」を読みました。
  高校で英語を教えている24才の耀子は電車の中で喫煙を注意して不良たちにからまれているところを青年に助けられ、その青年が不良たちをあっという間にパンチで倒す様が風が吹き抜けたようだと思います。翌週その青年と一緒にいた男の子が自分の学校の特進科1年の生徒・木樽であることを発見し、彼の話から、助けてくれたのが彼の幼馴染みで天才的な反射神経を持ち、ボクシング部に在籍する体育科1年の鏑矢であることを知りますが、彼に助けてくれたお礼を言いに行くと、脳天気で無神経な生徒であることが分かり幻滅します。インターハイの大阪府予選が鏑矢の高校デビュー戦になりますが、そこには2年にして既に高校3冠を獲得している稲村が出場していて、鏑矢は猛烈なライバル心を燃やします。一方木樽は同級生とデート中に中学時代に自分を虐めていた連中に出会ってデート相手の目の前でボコられるという屈辱を受け、それをきっかけに鏑矢より以前から誘われていたボクシング部に入部することにします。鏑矢は数々の大会で勝ち続けますが、国体での稲村戦で完全に打ち負けて敗れ、ボクシング部をやめてしまいます。しかし、鏑矢に憧れてボクシング部のマネージャーになっていた丸野の死をきっかけにして、また部に復帰し、それ以降は本気で練習し始めますが、入部以来真剣に練習してきた木樽が思わぬ才能を発揮し始め、稲村の出ていなかったインターハイの大阪予選の決勝で鏑矢を失神させてしまいます。以後鏑矢は率先して木樽の練習相手となり国体予選を迎えますが、木樽は稲村からダウンを奪うも結局RSC負け(プロで言うTKO負け)をします。翌日鏑矢は稲村と壮絶な決勝戦を戦い、最後にはそれまで無敗だった稲村をマットに沈めます。10年後、今では強豪校となったボクシング部の顧問に復帰した耀子は、生徒たちに、インターハイ二連覇、高校三冠の伝説的な選手として後輩たちにも語り継がれている木樽のこと、高校卒業後プロに転校し、その3年後に世界チャンピオンになって7度防衛した無敗の王者・稲村のこと、そして今では誰にも知られていませんが、稲村を倒した試合で指を骨折し、その後も度々同じ箇所を骨折したので引退を余儀無くされてマネージャーに転身し、現在はアメリカでお好み焼き屋をして成功している鏑矢のことを語ります。最後に鏑矢がどんな選手だったかと聞かれた耀子は、「風みないな子やった」と答えるのでした。
 語り手となるのは耀子と木樽で、丸野が死ぬ当たりから一気に盛り上がっていき、怒濤のラストへと流れ込んでいきます。丸野が生前に鏑矢のことを語っていた言葉を読んでいて、不覚にも泣いてしまいました。ここで言及している登場人物以外にも、部の他のメンバーや木樽の母、鏑矢が所属していた大場ジムのトレーナー曽我部、そして最後に登場する鏑矢の家族の面々が味わい深く、作品に深みを与えていました。スポーツを描いた青春小説は優れたものが多いですが、この作品も御多分に漏れずすがすがしさあふれる傑作だと思いました。文句無しにオススメです。なお、詳しいあらすじは私のサイト(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「その他」のところに掲載しておきましたので、是非ご覧ください。