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余華『兄弟(下)開放経済篇』

2009-08-07 14:31:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 宋鋼の祖父が死に宋鋼が李光頭の元に帰ってくると、宋鋼は金属工場で、李光頭は障害者のための福利工場で働き始めます。李光頭は単身上海へ出かけ営業をし多くの注文を取ることに成功し、20代の若さで工場長になり、その勢いで宋鋼に作戦を練らせて林紅に猛アタックをかけますが、林紅は宋鋼を好きになり、宋鋼は李光頭の家を出て彼女と結婚します。李光頭は工場長を勝手に辞め、知合いたちに出資させて商売を立ち上げようとしますが失敗し落ちぶれます。しかし工場長への復帰を訴えて役所の門に座り込みをするかたわら始めた廃品回収業が成功し、知合いに以前の出資金を利息付きで返すと、村での人望はうなぎ登りになります。再び出資金を募った彼は日本で3千トンを超す中古スーツを買い付け、一財産築きます。その後、衣料品の工場など業種を広げ、やがて財閥を形成しますが、その一方宋鋼は勤めていた金属工場が倒産し、その後にやった肉体労働で腰を傷め、1年以上失業した後に見つけたセメント工場の仕事では肺をやられ、まともな職に就けなくなります。李光頭はそれまでの人生を描いたルポが全国紙に掲載されて全国的な人気者になりますが、宋鋼の窮状を知って宋鋼に内緒で林紅に通帳を渡します。騒ぎが一段落するとまた人の注目を集めるために全国美処女コンテストなるものを企画し村は大騒ぎになりますが、そんな中宋鋼は林紅が借金して自分の治療費を工面してくれていると思い込み、一稼ぎするために、村に来ていた詐欺師とともに村を去ります。インチキの豊胸クリームを売りつけるために、詐欺師のいわれるままに豊胸手術までしますが、結局大金は稼げません。村に帰ってくると、彼が留守をしている間に林紅は李光頭の誘惑に負けて肉欲の虜になっていて、それを知った宋鋼は身を引くことにして鉄道自殺します。そのことによって林紅らは打ちひしがれますが、やがて林紅は高級売春クラブのオーナーになり、李光頭は宇宙旅行の夢にはまるのでした。
 李光頭の登場する部分はユーモラスであるのに対し、宋鋼が登場する部分は前編と同じく悲惨で、非常に対照的でした。村びとの愚かさや下品さが強調され、そんなところに中国の開放経済に対する著者の見方が現れていたように思います。大著でしたが楽しんで読めました。充実した読書体験をしたい方にはオススメです。