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余華『兄弟(上)文革篇』

2009-08-06 14:03:00 | ノンジャンル
 山田詠美さんが「アンコ椿は熱血ポンちゃん」の中で言及していた、余華さんの'05年作品「兄弟(上)文革篇」を読みました。
 公衆便所で覗きをしていて肥溜めに落ちて死んだ父を家まで背負って運んできてくれた宋凡平と母の李蘭は結婚し、宋の連れ子の宋鋼は李蘭の一人息子である李光頭の1才年上の兄になります。李蘭が頭痛の治療のために上海に旅立つと村では文化大革命が起き、デモの先頭に立っていた宋凡平はその翌日には地主の息子としてさらし者になり、家財を没収され、やがて逮捕監禁され、虐待されることになります。上海でも文革の影響で医師が追放され、村に帰りたいという手紙を李蘭が宋凡平に送ると、彼女を上海へ迎えに行くために監禁場所を抜け出した宋凡平は紅衛兵に虐殺されてしまいます。村に帰ってきた李蘭は小さな棺しか買えず、泣く泣く宋凡平の膝下を砕いて遺体を棺に収め葬ります。宋鋼は祖父に預けられ、仲の良かった兄弟は離ればなれになり、その後李光頭の唯一の友人になった中学生も長髪を理由に紅衛兵に殺され、それに怒ったその中学生の父親もまた紅衛兵によって監禁拷問され、その結果自殺してしまいます。宋凡平の死から7年後、14才になった李光頭は公衆便所で覗きをして捕まりますが、その時に見た村一番の美人・林紅の尻の様子を教えることによって、多くの人から三鮮麺を奢ってもらうことに成功し、世渡りのうまさを発揮し始めます。しかし、それを苦にして病気になった母の李蘭は、自分の死後の準備を自らの手ですべて行った後、亡くなってしまうのでした。
 冒頭で現在の李光頭がスーパーリッチとなっていることが明かされますが、これはその後に語られる幼少時の李らの体験があまりにも悲惨なため、こんなひどい話でも最後にはハッピーエンドになるのですよとあらかじめ知らせるためだったのではないかと思いました。それほど紅衛兵の残虐さは目に余るもので、特に宋凡平が虐殺される場面や、中学生の父親が拷問される場面などは吐き気を催すほどでした。ただ、文体はあくまで柔らかく、素直に読み進められるものでした。今後の展開が楽しみです。