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山田詠美『学問』

2009-08-19 17:49:00 | ノンジャンル
 山田詠美さんの最新作「学問」を読みました。
 静岡県美流間市の社宅に引越してきた7才の仁美は、さっそく裏山に探検しに行くとそこで隠れ家を作っている心太に出会います。作業を手伝っているうちに我慢し切れずおしっこを漏らしてしまいますが、仁美を慰めるために心太もその場で立ち小便をします。学校に行くようになると、心太は貧しい家の子ながらも皆の人気者で、先生や父兄などの大人までもが彼に気に入られようと心を砕きます。しかし心太が放課後裏山で遊ぶのは仁美と、仁美と同じ社宅に住み眠るのが大好きな千穂と、食べることに異常な執着を示すが人のいい、病院の息子の無量の3人だけでした。やがて無量は大橋素子という読書家の女の子に結婚を申し込まれ、それ以降二人は公認のカップルになりますが、素子は4人の中には入っていこうとしません。4人はセックスに関する知識を共有し、仁美は一人の儀式を幼い頃から始め、千穂は中3で早々と初体験を済ませ、他の3人も高校で別々の相手と初体験を済ませます。ある日仁美がクラスメートと町で買い物をしている時、学費の援助をしてくれた先生の既婚の娘と心太が一緒に歩いているのに出会い、その後を付けてジャズ喫茶に入ると、その中で二人がけだるい雰囲気のキスをしているのを目撃してしまいます。数日後仁美は先生への裏切りだと言って心太を責めますが、今まで近親者が死んでも泣いたことのなかった心太が、先生の娘は元の生活に帰ってしまったと言って号泣し始めます。その夜、仁美は心太が生身の人間となって自分に快感を与えてくれる存在になったことを確認し、子供の時代が終わったことを知るのでした。
 仁美の年齢に従って文体も語彙も変化していき、また章の最初にある死亡記事によって徐々に登場人物たちの歴史が明らかになっていくという構成は見事というほかなく、感心を通り越して感動しました。最初は性の目覚めを描いた児童文学なのかなと思っていましたが、最後には見事な青春小説にまで昇華していて、読みごたえ十分でした。性に対する思いはとてものびやか、かつ素直なもので、詠美さんの小説の登場人物に今回も魅了されました。いつまでも一緒に誰かといたいという思いというのは、とても人を感動させるものだと思います。そうした思いを率直に人に伝えられることが、詠美さんの一番の才能なのではないかとも思いました。とても感動的な小説で文句無しにオススメです。なお、上のあらすじはかなり簡略化したもので、本文の構成も反映していません。小説に即した形であらすじを読みたい方は、私のサイト(http://www.ceres.dti.ne.jp)の「Favorite Novels」の「山田詠美」のコーナーにアップしておきましたので、是非ご覧ください。