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斎藤美奈子さんのコラム・その39&前川喜平さんのコラム・その1

2019-05-28 03:26:00 | ノンジャンル
 恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、新たに東京新聞の日曜日に掲載されることになった前川喜平さんのコラム。

 まず、5月22日に掲載された、「ちりめんの町で」と題された斎藤さんのコラム。その全文を転載させていただくと、
「盆地のイメージが強い京都だけど、京都府には日本海に面した地域もあり、府は『海の京都』を売り出し中だ。この一帯には自然と歴史が一体化した景勝地が多い。
 まず、日本三景のひとつ天橋立(宮津市)。全長3.6キロの砂嘴(さし、細長い砂浜)である。
 北側の丹後半島には、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定された『伊根の舟屋』(伊根町)。一階をガレージにした二百三十軒もの家々が湾を囲む風景は夢かと思うほど美しい。
 天橋立から東側に向かうと海軍ゆかりの舞鶴港(舞鶴市)。明治の赤れんが建物群が残る。
 で、天橋立のやや内側に位置するのが加悦(かや)の『ちりめん街道』(与謝野市)だ。ここも往年の機屋(はたや、ちりめん工場)などが残る重伝建だけど、同時に『女工哀史』の著者・細井和喜蔵が生まれ育った町でもある。
 十五歳で大阪に出るまで、和喜蔵はこの町の機屋で働き、資本主義の現実にたたきのめされる。地元の感情は複雑だろう。少年時代の体験は辛酸に描いているし、故郷を出ていった人だし。
 が、そのちりめん街道で26日(日)、和喜蔵の自伝的小説『奴隷』『工場』(岩波文庫)の復刊を記念した催し物が開かれる。郷土の作家の再評価をめざした画期的な試み。新緑の季節、海の京都の観光も兼ねてぜひ。私も話をしに行きます。」

 また、5月19日に掲載された「高等教育無償化が変だ」と題された前川さんのコラム。全文を転載させていただくと、
「大学等修学支援法が成立した(来年度施行)。この法律は高等教育無償化法とも呼ばれる。
 無償化といっても、その実態は、住民税非課税世帯など低所得世帯の学生に対して授業料・入学金の減免措置と給付型奨学金の支給を行うもので、無償化にはほど遠い。加えて問題なのは、支援の対象者に所得以外のさまざまな条件がつけられることだ。たとえば、高校卒業後二年までに入学した者に限るという条件。これは生涯教育の理念に反する。入学年齢で差別するべきではない。
 さらに変なのは、学生個人にたいする支援なのに、入学する大学等に対して条件がつけられることだ。「勉学が職業に結びつく」「社会で自立し、活躍できるようになる」という「実践的教育」を行う大学等に限られるのだ。具体的には実務経験のある教員による授業科目を一割以上配置し、法人の理事に産業界等の外部人材を複数任命するなどの条件が求められる。文科省がそれを確認し、確認された教育機関は法律上「確認大学等」と呼ばれる。「確認大学等」以外で学ぶ学生は、たとえそこでしか学べないものがあるとしても支援は受けられない。これは法の下の平等に反する。
 この「無償化」は、学生を人質にとって、大学に対し産業界の要求に応じる教育を行うように迫り、大学の在り方を歪める政策だと言ってよい。」

 そして、「誰がために憲法はある」と題された前川さんのコラム。
「映画『誰がために憲法がある』を見た。芸人松元ヒロさんが日本国憲法を擬人化して作ったキャラクター『憲法くん』。それを女優渡辺美佐子さんが演じる。『こんにちは。わたし憲法くんです』『変な噂を耳にしました。本当でしょうか。わたしがリストラされるかもしれないっていう話』。松元さん自身の演じる『憲法くん』も見たことがあるが、コミカルに親しみを誘う松元憲法くんに対し、渡辺憲法くんはしみじみとした共感を広げる。
 映画はさらに、渡辺さんらベテラン女優たちが三十三年間取り組んできた原爆朗読劇『夏の雲は忘れない』を追う。そこには渡辺さん自身の痛切な思いも込められている。
 東京港区の笄(こうがい)小学校。僕が卒業した小学校なのだが、渡辺さんも戦時中の少女時代、笄小学校に通っていたそうだ。その少女に淡い恋心を抱く少年がいた。二人が歩いた道は僕も通った道だ。戦後三十五年を経て、少女は少年が広島の原爆で命を落としたことを知る。雨の中、少年の名を刻んだ慰霊碑に花を捧(ささ)げる渡辺さん。僕と同じ小学校に通った少女と少年の悲しい話は、原爆の悲劇を僕自身に大きく引き寄せた。『政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し』。憲法前文のこの言葉を、より深く理解できた気がした。」

 2番目に転載させていただいた前川さんの文章は特に勉強になりました。