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神社本庁『目には見えないけれど大切なもの 自然を想う日本のこころ』その2

2019-05-27 05:48:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

(「蛇口って?」
 川の流れは、神さまの力によるものと考えられていました。山から勢いよく流れ出る水を神さまのめぐみとして受け取り、その水を引いて田畑をうるおし、豊かな実りを祈ったのです。
 水の神さまはミツハノメ、オカミ…。川の流れを、蛇の行くさまに見立て龍や蛇の姿で表現されます。
 水道の口を「蛇口」というのは、水の神が蛇の姿をしていたことによります。

「海」
 日本を取り囲んでいる豊かな海はたくさんのめぐみをもたらしてくれます。
 海の彼方には神々の住む美しい国があり、そこから寄せる波が豊かな「海の幸」を運んでくれると信じられてきました。
 海の幸をいただく一方で、航海や漁業の安全を守る神さまとして信仰されているのがワタツミ神やツツノオ神です。人々が海の神さまとして崇(あが)めるワタツミ神は山にも祀られています。それは、古来海に生きる人々が、海の豊かなめぐみと、山のめぐみとのつながりを感じていたからでしょう。船を操るには絶えず方角を確認する必要があり、目印となる山々は彼らにとっても大切な存在だったのです。
(「ウミガメの卵」
 静岡や和歌山、そして徳島の一部の浜では、アカウミガメが夏前に卵を産みにやってきます。浜の奥に産むか、海に近い所に産むかによって、台風が来るのか来ないのかがわかる、といういい伝えがあるそうです。アカウミガメは自然との何らかの感性の交流があるのでしょう。
 そうしたアカウミガメの持つ力を漁師の人々が大切にし、その環境を守ってきたことが、、ウミガメを助けた浦島太郎の話のもとになったのかも知れません。)

「自然を感じるこころ さまざまの虫のこゑにもしられけり 生きとしいけるもののおもひは(明治天皇御製)」
 日本人の感性は日本語によっても育まれてきました。日本人にとって自然界の物音はすべて言葉として聞こえるのだそうです。例えば虫の音は「虫の声」であって、情緒的に美しく聴こえ、季節感ややすらぎを感じ取ることができますが、西洋人には雑音にしか聴こえないといわれます。
 風の音や小川のせせらぎも言葉として受け止められてきました。全盲というハンディキャップをもつあるピアニストは、川沿いを散歩した折に聞こえたせせらぎが、「何かのささやき」に聞こえ、そのささやきを曲に表したといいます。

 秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞ驚(おどろ)かれぬる 『古今和歌集』

 平安時代の歌人は、秋の訪れを風の音によって気付かされたと詠みました。「訪れ」とは「音連れ」であり、目に見えない神霊の動きを、音によって感じてきた古代人の感性から生まれた言葉といわれています。この古歌からも、神々の来訪を風の音など、自然のかすかな変化から感じ取ってきた日本人の豊かな感性が読み取れます。

 人間も自然の一部であり、ありとあらゆる自然にお神さまを感じているからこそ、日本人は鳥や動物、虫の声などを、自然や神々からのメッセージとして、五感を通して感じてきたのです。

「むすびに」
 古来、日本人は自然の中に神々の力を感じ、慎みと感謝の意を抱いて、自然と共に豊かなこころを育み生きてきました。しかし現在、近代的な生活様式や考えの中で、その生き方が失われています。本当の豊かさとは、物質的な価値を求めるだけで得られるものではありません。地球規模の環境破壊が危惧される今こそ、日本人が伝えてきた精神的な価値を、そしてこころの豊かさについて考えなければなりません。

 日本には至るところに「鎮守の杜(もり)」といわれる神社の森があります。何世代にもわたって私たちを見守り続けた神の森です。日々の喧騒を離れ鎮守の杜に佇むと、その静寂さに心が洗われ、清らかな気持ちになることでしょう。
 神さまの鎮まる森の中で、自然との関わりを見直し、自然と共生してきた日本人の感性を取り戻したいものです。
 目には見えないけれど、大切なものを感じるこころ…。

 以上が町田の菅原神社で入手できた『目には見えないけれど大切なもの 自然を想う日本のこころ』という小冊子の全文でした。単にアニミズムを標榜し、単に日本を賛美し、単に天皇を政治利用しようという気持は、この文章からはまったく感じられません。それどころか、環境を破壊して近代的な生活を維持しようとしている、または拡大しようとしている人類の落ち度をしっかりと指摘し、今何が必要なのか、本来の生活というのはどうしたものなのかを、やさしい言葉を使って示唆してくれている名文だと思いました。私はこの文を読んで、神社本庁の方々を見る目が変わりました。これからは神社本庁の方々と大いに連帯していきたいと思います。

→サイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto