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増村保造監督『陸軍中野学校』その2

2015-11-16 09:13:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 「その頃私たちは中野の電信隊跡に移り、裏門近くのバラックの中で本格的なスパイの教育に入っていた」のナレーション。「スパイは密かに人を殺し、軍事施設を破壊する。ここにあるのは全て高性能の時限爆弾だ」「人を殺すには毒が一番。手品師の専門家を呼んである」「スパイはヘラ一本で手紙を開き、針金一本でドアを開ける」「ここにあるのは隠しマイク、隠しカメラだ」「府中の刑務所から金庫破りを呼んである」「情報を得るのは簡単だが、送るのは難しい。暗号を無線電信で送るのが一番いい。敵の暗号を解読することも重要だ」「いつ発見されて逮捕されるか分からない。どんな拷問を受けても自白してはならん。自殺するのは最後だ。これから拷問の実習を行う。警察庁の捜査係長さんだ」「これから流す音を1時間聞くと発狂する」。金属音が鳴り始める。「止めてくれ!」。
 「起きろ! 中西が首を吊った!」。体を降ろし、呼び掛け、人工呼吸をするが「ダメだ」。「神経衰弱だろう」「気の弱い奴だった」。
 草薙中佐「今夜は通夜だ。思い切り飲んでくれ」「所長、中西はどうなるんです? 闇から闇に葬るんですか?」「いや、ちゃんと戦死の手続きを取り、遺骨は家族に返す。中西は俺に殺されたと思ってるんだろ? その通りだ。スパイの教育は初めてだ。許してくれ、中西。しかも将来は暗く、無事帰れるのは稀だ。犬のように殺される。情けないものだ。嫌なら今夜限り辞めてくれてもいい」「平凡な生活に戻りたいです」「国家のためと言いながら性に合わない」「俺の考えも聞いてくれ。スパイは犯罪者じゃない。スパイの根本精神は誠だ。私の理想は日露戦争における明石大佐だ。民衆と交わり、ロシア皇帝の政府を倒そうとした。レーニンと交わり、日露戦争に勝った。私は17人の明石大佐を育てることが夢だ。その国の人民の友人となり、悪辣な政府を倒す。植民地を解放する。本来そうしたことは陸軍武官の仕事だが、今の陸軍士官はダメだ。1人1個師団ではなく、1人1国だ」「しかし日本は今シナを植民地とし、アジア人民を奴隷にしようとしています」「その通り。中野学校は陸軍の反対を押し切って作った。諸君に辞められたら潰れてしまう。このままでは日本は滅びる。青年にできないことはない。頼む」「所長、分かりました。喜んでスパイになります」「植民地を潰してやります」「青年として一生をかけます」「有難う。将来は少佐以上の地位を保証する」「別に地位がほしくてスパイになる訳じゃありません。あなたの夢を実践したいだけです」「有難う。この通り、頭を下げる」。
「我々はまた草薙中佐の情熱に負けた。中西の自殺はかえって皆の決心を固めさせた。中佐は参謀本部第18班、通称暗号班、暗号解読を任務とする班によく足を運んだ」のナレーション。「中野学校、うまくいってるのか?」「まあ、見ててくれ」「参謀本部は笑ってるぞ。まるで寺子屋だってな」「寺子屋だからいいんだ。人間教育だ」「学生上がりの素人が本職の軍人に勝てるのか? 今日は何の用だ?」「暗号班の金を回してくれ」「こっちも金には困ってる。将軍は勲章をもらうことしか頭にない。お前も秀才のくせに、物好きだなあ」。
「三好少尉の行方は陸軍省人事局でも分からない。何度来ても無駄だ。あなたは?」「婚約者です」「脱走したか、敵の捕虜か、どちらにしても不名誉なことだ」。局長去る。前田大尉(待田京介)「ここで働かないか?」「英文タイプなら打てます」「力になってあげられるかもしれない」。
 「あなたのようなタイピストに辞められるのは残念です。日本陸軍はいけない。勝手に戦争を始め、民衆の生活は苦しくなる。インフレで喜ぶのは偉い軍人だけ。まあお元気で。上流階級の友人がいるので、三好少尉については調べてあげましょう」。
 「その頃、中野学校の教育は最後の仕上げにかかっていた」のナレーション。草薙中佐「スパイはいろんな人間にばけなければならない。少なくとも2種類以上の言葉を話し、2種類以上の職業を身につけなければならない」。「私は英語とシナ語を勉強し、職業としては洋服屋とコックを勉強した」のナレーション。
女形。草薙中佐「変装はなるべく簡単に」。社交ダンスの練習。「今夜はバーへ実習に出かける。一流の紳士になれ」。
草薙中佐にママ「いらっしゃい。チェリーの社長さん。この方たち、軍人さん?」「何で?」「食糧難の時代にあんなに体格がいいんだもの」。(また明日に続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/