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増村保造監督『陸軍中野学校』その4

2015-11-18 08:11:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 前田大尉、ユキコに「今夜、君を待合に招待しよう。ご馳走を一緒に。君と結婚したい。婚約者はもうあきらめて」「班長殿、お呼びです」。
 「よくやった」「中野学校は優秀だと陸軍上層部へ吹きまくってくれ」「前田大尉、英国の暗号解読ブックだ。中野学校の手柄だ」「信じられません」「何を言う。ただ今からすぐ解読にかかれ」「はっ」。
 「今日は食事できない。解読ブックが手に入った」。
 ユキコ、図書館で社長に情報を手渡す。
 中野学校の草薙中佐の許へ前田大尉。「なぜ軍服で来る?」「これは全然役に立ちません。盗まれたと知って、すぐに変えられました。情けない話です」。
 「我々に落ち度はない」。
 前田大尉「暗号班から漏れた? 民間の職員やタイピストは身分のしっかりした者ばかりだ。自分の失敗を棚に上げて」。
 「それでも暗号班を疑い、調査を続けた。ユキコがいた。尾行した。ただ見たかった。どうしているか知りたかった。ところが」のナレーション。
 コンサートで隣の社長から紙を渡されるユキコ。
 路上でユキコにぶつかり、ハンドバッグを奪う次郎。
 ハンドバッグの中の紙に隠されたメッセージは「あなたは英国を救った。アパートに金を送る」。「やっぱり」。
 「暗号の件はやはり暗号班から漏れていました。商事会社の社長ラルフへです。情報を流していたタイピストは前田大尉の推薦です」「さすが英国だ。さっそく憲兵隊に逮捕させよう」「タイピストは私の婚約者です。行方不明の私を探すためだと思われます」「俺のせいだ。恨んどるか?」「いいえ」「彼女は憲兵隊にひどい目に会うぞ。拷問を受けた上に殺される」「覚悟しています」「逃がしてやる気は?」「愛していますが、彼女を逃がせばラフルを捕まえられず、中野学校は馬鹿者呼ばわりされます」「どうせ殺すならお前がやれ。毒薬で自殺を偽装するんだ。憲兵隊が来る前に連れ出せ」。
 ドアにノック。「どなた?」。次郎、現れる。「次郎さん。生きてたの?」。抱きつき、泣く。「どんなに探したか」「すまなかった。許してくれ」「どこ行ってたの? どうしてるの? 軍人辞めたの?」「後で話す。外に出て食事しよう」。
 憲兵隊、ラルフの許へ。「逮捕する」「洋服に着替えさせてほしい」。その場で服毒死。「青酸カリの臭いがする」。
 バーで踊る次郎とユキコ。「不思議。次郎さん、ダンスなんてできなかったのに。立派な洋服着て」「今夜は踊って飲んでホテルへ行こう」「こうしていると1年も別れていたなんて信じられない」。
 ホテル。「私のこと、忘れなかった?」「僕にとって女は君しかいない」「私を1人にしないで」「長い間待たせた。今夜ここで結婚しよう」「本当?」「このワインで形ばかりの三々九度。堅めの杯だ。おめでとう」。ユキコ、毒入りのワインを飲み干す。「あー、こんなにおいしいお酒、生まれて初めて」「さあ、寝よう。ベッドに入れ」「恥ずかしいわ。灯りを消して」。スリップ姿になり、ベッドに入るユキコ。「この美しい顔、美しい体、思わず顔をそむけた」のナレーション。「あなたも早くそばに来て。次郎さん、どうしたの? 眠いわ。どうしたのかしら? 早くここに来て寝て。だるいわ。いい気持ち」。ユキコ、眠る。「心臓は全く止まり、私はユキコを殺した。彼女の筆跡をまねて遺書を書き、ペンには彼女の指紋をつけた。自殺に見せかけるために。私もスパイだったと。私の心は死んだ」のナレーション。
 「前田大尉、謹慎を申し渡す」「申し訳ありません」「本来なら軍法会議にかけるところだが、陸軍のメンツもあり、おそらく前線に送られることと思う」「はっ」。
 学校生、拍手。草薙中佐「中野学校を開いて1年。卒業式を迎えることとなった。皆よくやってくれた。俺の苦労なんて大したことはない。卒業試験の結果は素晴らしく、陸軍も正式に学校を認め、来年は50人が入学する。ありがとう。ある者はインドへ、ある者は南米へ。残念なのは第二次欧州戦争が起こったことだ。落ち着いた状況で仕事はできないが、どんな状況でも理想を実現してくれ」「負けません。第1期が活躍すれば、学校はますます重要度を増します。学校と草薙中佐に万歳!」。
 酒宴で歌を歌う学校生。草薙中佐と次郎は2人でそれを聞いている。「君はシナへ」「北京です」「辛かったろう。ユキコさんのこと」「忘れようと思っています」「お母さんとは会わないのか?」「会いません。1人で生きていける人ですから」「ただ一言言いたい。死ぬな。どんな目に会っても」。
 「私はユキコの手帳を焼いた。思い残したことはない。卒業式の翌日、シナ大陸に出発した」のナレーション。未来に目を向ける次郎。走りゆく列車。

 見事な画面構成もありましたが、やはり世の不条理に振り回される人間、特に男女の情念がよく描かれているのが増村映画の特徴だということを再認識しました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/