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テオ・アンゲロプロス監督『エレニの帰郷』その2

2015-11-06 09:54:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
「ヤコブおじさん」とヤコブ(ブルーノ・ガンツ)を迎える映画監督は、「ラケルおばさんも忘れていない」と言う。「今はライプチヒに住んでいる」と言うヤコブは、エレニに「記憶の旅をしている。両親が殺されたポーランドの収容所に行ってきた。妹のラケルを残して、君の旅に同行することはできない」と言う。エレニは「ニューヨークに着いた時、ベトナムへの徴兵を逃れて、息子はカナダへ行った後だった」と言う。ヤコブは「君は探し回っていたね」と言い、「行くな!」と叫ぶ。去るエレニ。街を探し回るエレニ。やがてピアノの音に誘われ、一軒の家へ。スピロスはエレニに気づき、ピアノを弾くのを止め、逃げる彼女の後を追おうとする。
 霧の中のバス。ラジオからはウォーターゲート事件のニュース。国境。「私よ」とエレニ。映画監督と抱き合う。「母さん」と映画監督。
 娘の部屋。別れた妻に「来てたのか」と映画監督。「エレニのザックだ。日記は絶望の言葉ばかり。探すあてもない」と映画監督。「警察に写真を渡した」と別れた妻。映画監督は別れた妻を熱烈に抱きしめ、求めようとするが、別れた妻は「やめて。お願い。私たち、もう別れたのよ」と言い、去る。倒れ込む映画監督。
 夜の街で車を運転する映画監督。「父さん、あそこのバーで働いてるんだ」と映画監督。男は助手席から降りて、バーに向かう。「トロントに着いたのは真夜中だった」とナレーション。年老いたエレニとスピノスとヤコブはバーに入る。スピノスは奥に入っていくが、従業員に「もう閉店です」と言われる。1人になったスピノスはピアノで『結婚行進曲』を弾き、「スピノス、汝はエレニを妻と認めるか? はい、認めます」と言う。「エレニ、汝はスピノスを夫と認めるか?」と言うと、女の嘆きの声と次々と皿を割る音。スピノスがバーを去ると、エレニが出てきて、「こんな夜更けにどこへ行くの?」と言って、戻ってきたスピノスを抱く。
 「ベルリン、1989年。ベルリンの壁は崩され、皆希望にあふれる」とナレーション。「映画を撮り終え、ヘルガと会って1人残った。彼女は17年前、まだ15歳の時に、東ベルリンを逃れて西に」のナレーション。
 老いたエレニとスピノスとヤコブ。「私たちの1世紀が終わる」とヤコブ。ヤコブは「会うのはこれが最後だろう」と言って、路上の演奏に合わせてエレニと踊り、やがてエレニの相手をスピノスに譲る。「孫が見つかった」の声。
 機動隊。カメラが上昇すると壁に張り付いた孫のエレニ。駆けつけた映画監督と老いたエレニとスピノスに「対話は無理です」と女警官。老いたエレニはドアを叩いて、「開けなさい。私は祖母よ」と言うと、ドアは開かれる。廃墟の中に大勢のホームレス。進む老いたエレニ。投げつけられる瓶。たき火。「どうしたの? おいで」と老いたエレニは孫のエレニに話しかける。孫のエレニは老いたエレニに抱きつき、「死にたい」と何度も言う。機動隊が突入し、ホームレスを排除する。
 車から降りた映画監督は、母のエレニを抱いて家に入れ、「医者を呼んでくる」と言うが、通りの向こうに立つ別れた妻を見て、立ち止まる。別れた妻は悲痛な表情で、さよならの仕草をして、立ち去る。
 「眠らなくては」と言う老いたエレニ。やがてヤコブが現れ、「お別れに来た」と言うが、エレニは眠っている。大晦日の第九がラジオから流れ始める。「新しい世紀に」と乾杯するスピノスとヤコブ。
 雨の中、ヤコブは船に乗り込み、船が動き出してしばらくすると川に飛び込む。
 エレニは起きだし、「新年の食事の支度を」と言い、「ここはスピノス。ここは孫のエレニ。ここは息子。ここはヤコブ。ヤコブはどこに?」と言うと、急にしゃがみこむ。心配するスピノスに「ちょっとふらっとしただけ」と言うエレニ。
 新年を告げる鐘の音と歓声。老いたエレニと、彼女の手を握る孫のエレニは眠ったまま。スピノスは老いたエレニを見つめている。やがて医者がやって来る。立ち尽くすスピノス。
 一面雪の中を走って来るエレニ。忍び泣く映画監督。風で開く窓。スピノスは「エレニ、起きなさい。迎えに来たよ」と言って、手を差し伸べると、その手を孫のエレニが握る。
 一面の雪の中、手を握り合って、笑い走るスピノスと孫のエレニ。エンディングタイトル。

 随所に素晴らしいワンシーンワンカットが見られ、撮影も絵画を見ているように見事でした。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/