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谷崎潤一郎『金色の死』

2011-04-28 02:37:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎の1914年作品『金色の死』を読みました。
 岡村君は私の少年時代からの友人で、私は全ての学課で首位、彼は次席という状態を十年続けましたが、次第に岡村君は理数系の科目と歴史が苦手となる一方、語学には優れ、特にふらんす語に親しみ、日本の文学を疎んじ出しました。彼は機械体操にも優れ、凡ての文学と凡ての芸術はことごとく人間の肉体美から始まるという自説を唱えて、私はそれに対し、肉体よりも思想が第一と考えるのでした。中学卒業前に私の父が死に、その前の営業不振もあって、私にはわずかな財産しか残されないこととなりました。一方、岡村君は相変わらずの膨大な資産を持ち、より傲慢に、お洒落になっていき、やがて爵位がほしいと言うようになり、そんな世俗的な欲求を持つようになった彼は私を落胆させました。私は東京の第一高等学校に進学しましたが、彼はあまりに数学ができないので入学試験に失敗し、落第することとなります。しかし彼は中学の束縛を離れると、まずますお洒落になり、翌年にはしっかり一高にも入学します。私は勉強に打ち込むことで血行悪く強度の近視となりますが、岡村君は直に感じる美しさでなければ価値がないと言い、瞬間の美を文学で表現してみたいと言い出します。高等学校の3年になった頃から私は詩や小説を投稿するようになり、じきに新進作家として認められます。岡村君は自己の肉体を美とすることにばかりに精進し、豪奢と放蕩を尽くし、やがて学校から姿を消します。私の小説の評判はやがて下火となり、次第に生活のために小説を書くようになっていきます。久しぶりに岡村君の家を訪ねてみると、彼は叔父の監督を離れて財産を自由にすることができるようになったと言い、彼独特の芸術の創作に乗り出すことにしたと告げます。彼は箱根に、千態万状を極めた山水の勝景に古今東西の様式の粋を集めた幾棟もの建築物と無数の彫刻物を建てますが、これはまだ準備に過ぎないと言い、翌年になって芸術の創作が出来上がったことを通知してきます。行ってみると、そこには生きた人間を以って構成されたあらゆる芸術が表現されており、それから十日ばかり後、彼は全身を金箔に塗られて、歓楽の絶頂に達した瞬間に突然死ぬのでした。
 サドの幻想小説を思わせる、夢のような世界が描写されていて、面白く読みました。おどろおどろしいファンタジーが好きな方にはオススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)