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上橋菜穂子『獣の奏者 外伝 刹那』

2011-04-22 00:27:00 | ノンジャンル
 昨日は久しぶりに肌寒い日でしたが、夜になると、今年初めての虫の音を聞きました。季節は着実に進んでいるようです。

 さて、上橋菜穂子さんの'10年作品『獣の奏者 外伝 刹那』を読みました。2編の中編と1編の短編からなっています。
 『刹那』では、堅き盾〈セ・ザン〉の誓いを解いて平民の指物師になったおれ・イアルは、ラザルの王獣たちが突然痙攣する原因を突き止めるために王都からラザル王獣保護場へ来ていたエリンと偶然再会し、それ以降エリンはおれの家に食べ物を届けて来てくれるようになります。元同僚のカイルから、エリンがイアルの家の場所を聞くために何晩もカイルの来るのを森で待っていたことを知らされたおれは、エリンを思う気持ちが募ります。ラザルでの仕事が終わりカザルムへ帰ることになったエリンをおれは祭りに誘い、その夜おれの家を訪れてきたエリンとおれは結ばれます。おれとエリンは翌日から一緒に暮らし始め、エリンの師のエサル師にはエリンが用事で王都に留まっていると報告してもらいます。しかし結局その嘘はばれ、おれはエリンとともにカザルムへ赴き、エリンはエサル師に1年の無給奉公を条件に、出産後の復職を許されます。しばらくしておれに母危篤の知らせが届きますが、幼い頃に自分を堅き盾に売った母を憎んでいたおれはそれを無視します。エリンは置き手紙を残して、1人母の見舞いに行き、それを追ったおれは、おれのことを思いながら母が死んでいったことを知り後悔します。エリンは難産の末息子のジェシを出産するのでした。
 『秘め事』では、わたし・教導師エサルは、若い頃婿取りは妹に譲り、タムユアンに進学します。同級生のユアンに誘われ、やはり同級生のジョウンとともに真王ハルミヤの息女誕生の祝宴に行き、わたしはそこで王獣に出会い、魅了されます。王獣を診ている獣の医術師ホタリ師にユアンによって引き合わせてもらったわたしは、その後研究学舎に進み、実質的にホクリ師に師事することになります。わたしとユアンはホクリ師に連れられ山野を観察し、やがてわたしは黄疸が出ているムチカ(小型の鹿)が木の皮を食べているのを発見しますが、ホクリ師が猪に襲われて大ケガし、それ以降父から山野での観察を禁止されてしまいます。わたしは半期休学届を出して、秘かに単独で例の木の調査を始めますが、気配を察したユアンも合流します。やがてわたしとユアンは結ばれる一方、例の木の皮に肝ノ臓への薬効があることがはっきりします。ユアンは王宮付けの医術師になるためわたしの元を去りますが、わたしは彼のことを忘れようとタムユアンで寝食を忘れて実験に没頭します。ジョウンの仲立ちでホクリ師に王獣を見せてもらうことになり、やがて土を食べている王獣を見つけたわたしは、肝ノ臓に寄生虫がいることを疑い、王獣の看取りの場であったカザルムへ、王獣を見舞うという口実で行って新薬を試し、王獣を治すことに成功します。ホクリ師から事情を聞いた父はわたしに領地を分けてくれ、わたしは新薬発見の功績でカザルムの教導師見習いとなります。そしてユアンはわたしの論文を立派な本にしてくれ、そして年老いた今、ユアンの息子に会いに会議へと向かうのでした。
 『初めての‥‥』は、2才になったジェシを乳離れさせようとしているわたしと夫のイアルの穏やかな生活の点描です。
 平易な文章の積み重ねながら心に沁みて来る内容は、ドラマチックな『獣の奏者』シリーズと同じように魅了してくれました。『獣の奏者』シリーズのファンの方は必読の書です。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)