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アーサー・マッケン『パンの大神』

2011-04-20 08:39:00 | ノンジャンル
 ラオール・ウォルシュ監督、ハンフリー・ボガート、アイダ・ルピノ出演の'41年作品『ハイ・シェラ』をWOWOWで再見しました。ボガートの出世作であり、ラストで岩山に追い込まれてからのシーンはドキュメンタリーを見ているようで白眉でした。

 さて、スティーヴン・キングの『N』の解説の中で紹介されていた、アーサー・マッケンの1890年の作品『パンの大神』を読みました。
 ドクター・レイモンドは友人のクラークを招いて、子供の時に貧民窟から拾ってやったメリーの脳に傷をつける手術をしてみせると、メリーは目が覚めた後、恐怖に全身を震わせて失神し、3日後には彼女はパンの大神を見たことによって白痴になってしまいます。クラークはフィリップ博士が語ったという奇談の草稿を持っていましたが、そこには養父から里親に出されたヘレンという女性が森で牧神と遊んでいるのを目撃した少年が恐怖で失神して白痴化し、数年後ヘレンと遊んでいた娘が悪魔の化身を見たことが書いてありました。ヴィリヤズはある日乞食になっている大学の同級生ハーバートに出会い、彼がヘレンという女性と結婚して、恐ろしい話を聞き、恐ろしい姿を見、財産を彼女に全て巻き上げられたことを聞きます。またヴィリヤズは友人のオースチンから、ハーバード夫妻の家の中庭で恐怖によりショック死した死体が見つかった話も聞きます。ヴィリヤズは今では空家になったその家を訪れますが、一つの部屋に恐怖を覚え、その後一週間寝込みます。やがて彼はハーバードが餓死した記事を新聞で読み、家で発見したヘレンの肖像画をクラークに見せると、クラークは絵を燃やして全てを忘れるようにという手紙を送ってきます。客死した友人の画家から遺贈された素描集をオースチンが見ると、悪魔饗宴の図が続いた後に、ヘレンの肖像画が描かれていました。やがてロンドンで富裕な男性が次々と自殺する事件が起こり、最後に自殺した男性が自殺する直前にボーモント夫人の家から魂を抜かれたような状態で出て来るのをヴィリヤスは目撃します。やがてボーモント夫人はハーバート夫人であることが分かり、レイモンドはクラークへの手紙の中で、メリーはヘレンの母親で、ヘレンは首を縄に巻き付けて怪死しましたが、その際姿が溶けて女から男へ変わり、やがて人間から獣へ、さらに下等なものへと変わっていったことを告げるのでした。
 思わせぶりな文章が延々と続き、パンの大神の正体は最後まで明かされないまま終わるという、何とも消化不良の短編でした。1890年当時ではこの程度の小説でも読者に恐怖を与えることができたのかもしれません。当時の恐怖小説の実例を知るにはオススメかもしれません。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)