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内田樹『私家版・ユダヤ文化論』

2011-04-12 08:38:00 | ノンジャンル
 内田樹さんの'06年作品『私家版・ユダヤ文化論』を読みました。
 著者は「『ユダヤ人迫害には理由がある』と思っている人間がいることには何らかの理由がある。その理由は何か?」について考えるために、この本を書いたと先ず言っています。そしてパリの世界イルラエル同盟では、各国で出版された「ユダヤ人に関連する文書」について網羅的なリサーチが行われていること、ユダヤ・ロビーというものが存在することが、ユダヤ人特有のものであることが述べられます。そしてユダヤ人というのは国民名ではないこと、人種でもないこと、ユダヤ教徒のことでもないことが語られ、ユダヤ人は「ユダヤ人を否定しようとするもの」に媒介されて存在し続けてきたことが述べられます。そして近代において最初に反ユダヤ主義の書物を書いたドリュモンが「おまえはユダヤ人だ。なぜなら『おまえはユダヤ人だ』と私が宣言したからである。証明終わり。」という論理で話を進めたこと、日本人とユダヤ人が祖先を同じくするという日猶同祖論者が存在したこと、ユダヤ人が世界制服を企んでいるという『シオン賢者の議定書(プロトコル)』というものが存在するということがロシア革命の時に広まったこと、アメリカの自動車王ヘンリー・フォードはそれを熱烈に信奉し、自費で配布し、それがのちにナチのプロパガンダに流用されることになったこと、ファシストの先駆者モレス侯爵のことなどが語られていきます。
 著者は「私がこの論考を『私家版』と題したのは、ユダヤ人問題について、できるだけ『わけのわからないこと』を書きたいと思ったからである。」と書いていますが、実際後半部分は私には難解すぎてついていけませんでした。それでも「ユダヤ人たちが民族的な規模で開発することに成功したのは、『自分が現在用いている判断枠組みそのものを懐疑する力と『私はついに私でしかない』という事故繋縛性を不快に感じる感受性』である」と述べられているのは面白いと思いました。ユダヤ人問題に興味のある方にはオススメかもしれません。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)