谷崎潤一郎の1914年作品『お艶殺し』を読みました。
質屋の駿河屋で番頭をしている新助は、主人の娘・お艶に1年前から惚れ、お艶も彼のことを憎からず思っています。主人夫婦が親戚の不幸で留守にした霙の夜、お艶の強引な誘いによって、二人は深川の知り合いの船頭・清次のところへ駆落ちします。清次は先月の末に二人に、逃げてくれば仲をうまくまとめてやると言っていたのでした。清次は10日ばかりおとなしく隠れていてくれと言いますが、半月たっても吉報はありません。お艶は次第に剽軽になり、ふざけて女郎言葉を使うようにもなります。年も押し迫った頃、清次の子分の三太がやって来て、事が片付きそうだから新助だけ新助の父の元へ来てほしいと言われ、新助は出かけていきます。待っていた清次は、新助の父は駿河屋の主人が承知してくれるなら二人の仲を許すと言って帰っていったと言い、先に帰っていきます。新助は三太と二人で深夜帰る途中で、親分から自分を殺すことを頼まれたという三太に斬りつけられますが、傷を負いながらも返り討ちにし、一目お艶に会ってから自首しようと思って、刀と死体を川へ捨てます。清次の家に帰ると、新助を殺して帰ってくるはずの三太を清次の女房が待っていて、一旦は彼女を縛り上げてお艶の姿を探しますが、杳と知れず、結局ふてぶてしく何も話そうとしない女房を絞め殺してしまいます。新助は盗賊の仕業に見せかけて逃げ出し、父の縁故のある博徒の金蔵のところへ行って、お艶に一目会ったら自首すると言って匿ってもらいます。事件はあまり評判にもならず、清次も三太が女房を殺して金を持って逃げたと思っているらしいと新助は知り、お艶の行き先を探しますが、なかなか見つかりません。しかし三月下旬になってやっと、清次が懇ろの仲である博徒の徳兵衛が親許になっている、仲町の芸者・染吉ではないかと金蔵が聞き付け、すぐに新助が本人に会いに行くと、まぎれもなくお艶その人なのでした。お艶は二月まで清次に口説かれ続け、断り続けた結果、その後徳兵衛に預けられ芸者になっていたのでした。新助はお艶に懇願されてお艶の家に逗留し、二人で朝から晩まで酔っ払ていると、三日目になって徳兵衛が訪ねてきました。彼は前から約束していた、旗本を強請る仕事のために一晩お艶の体を貸してくれと言い、その間に新助が殺されてしまうかもしれないと考えたお艶は、新助は殺しのために明日自首するのだと徳兵衛に言うと、それを聞いた新助はすぐにも自首すると言い出しますが、お艶と徳兵衛は新助を何とか説得して、今夜の九つ時に箱屋に化けてお艶を迎えに来るようにさせます。新助がその時間に旗本を訪ねると、悪事が露見していて、お艶は旗本に斬られそうになっていましたが、何とか止め、深手を負った徳兵衛も連れて逃げ出します。途中逃げるのに邪魔になった徳兵衛をお艶が殺そうとし、徳兵衛も殺し返そうとしますが、お艶の言うままに新助は徳兵衛を殺し、お艶は徳兵衛の身ぐるみ剥いで顔を縦横に切り刻み、死体の正体を分からなくしてから、家へ帰っていきます。その後二人は面白可笑しく日を送りましたが、半月ばかりして金蔵がやって来ます。お艶は新助はいないと言い張り、金蔵はもし新助に会ったら、考え直して違った道を踏まないように言ってくれと言い残して帰っていきます。やがて清次は再びお艶に近づいてきますが、お艶は清次が新しく妾にもらったお市を殺せと清次に迫ります。七月になると清次の悪事がばれ、暫く田舎へ逐電することとなり、清次はお市を殺すから一緒に逃げてくれとお艶に言い出し、お艶は承知します。清次がお市を殺した後、新助とお艶は清次を殺し、五百両を我が物として、その年の暮れまでしたい三昧でそれを使いつくします。お艶は芸者の客をたらす事にばかり努力し、余所へ泊る度数もだんだん多くなりますが、新助が浮気を疑っても否定し続けます。正月三日に遂に厳しく詰問すると、旗本にも清次にも徳兵衛にも体を委せていたとあっさり白状し、今では旗本に惚れていて、新助にはとっくに愛想を尽かしていると言います。新助は考え直してくれと懇願しますが、二三日考えさせてくれと返事され、お艶は殺されるのを怖れて、その三日後の夜に逃げ出しますが、新助は追いついて、旗本の名を呼び続けるお艶を斬り殺すのでした。
お艶の毒婦ぶりがすさまじく、血で血を洗う愛憎劇に魅了されました。お艶の台詞を読むだけでも読む価値のある小説だと思います。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)
質屋の駿河屋で番頭をしている新助は、主人の娘・お艶に1年前から惚れ、お艶も彼のことを憎からず思っています。主人夫婦が親戚の不幸で留守にした霙の夜、お艶の強引な誘いによって、二人は深川の知り合いの船頭・清次のところへ駆落ちします。清次は先月の末に二人に、逃げてくれば仲をうまくまとめてやると言っていたのでした。清次は10日ばかりおとなしく隠れていてくれと言いますが、半月たっても吉報はありません。お艶は次第に剽軽になり、ふざけて女郎言葉を使うようにもなります。年も押し迫った頃、清次の子分の三太がやって来て、事が片付きそうだから新助だけ新助の父の元へ来てほしいと言われ、新助は出かけていきます。待っていた清次は、新助の父は駿河屋の主人が承知してくれるなら二人の仲を許すと言って帰っていったと言い、先に帰っていきます。新助は三太と二人で深夜帰る途中で、親分から自分を殺すことを頼まれたという三太に斬りつけられますが、傷を負いながらも返り討ちにし、一目お艶に会ってから自首しようと思って、刀と死体を川へ捨てます。清次の家に帰ると、新助を殺して帰ってくるはずの三太を清次の女房が待っていて、一旦は彼女を縛り上げてお艶の姿を探しますが、杳と知れず、結局ふてぶてしく何も話そうとしない女房を絞め殺してしまいます。新助は盗賊の仕業に見せかけて逃げ出し、父の縁故のある博徒の金蔵のところへ行って、お艶に一目会ったら自首すると言って匿ってもらいます。事件はあまり評判にもならず、清次も三太が女房を殺して金を持って逃げたと思っているらしいと新助は知り、お艶の行き先を探しますが、なかなか見つかりません。しかし三月下旬になってやっと、清次が懇ろの仲である博徒の徳兵衛が親許になっている、仲町の芸者・染吉ではないかと金蔵が聞き付け、すぐに新助が本人に会いに行くと、まぎれもなくお艶その人なのでした。お艶は二月まで清次に口説かれ続け、断り続けた結果、その後徳兵衛に預けられ芸者になっていたのでした。新助はお艶に懇願されてお艶の家に逗留し、二人で朝から晩まで酔っ払ていると、三日目になって徳兵衛が訪ねてきました。彼は前から約束していた、旗本を強請る仕事のために一晩お艶の体を貸してくれと言い、その間に新助が殺されてしまうかもしれないと考えたお艶は、新助は殺しのために明日自首するのだと徳兵衛に言うと、それを聞いた新助はすぐにも自首すると言い出しますが、お艶と徳兵衛は新助を何とか説得して、今夜の九つ時に箱屋に化けてお艶を迎えに来るようにさせます。新助がその時間に旗本を訪ねると、悪事が露見していて、お艶は旗本に斬られそうになっていましたが、何とか止め、深手を負った徳兵衛も連れて逃げ出します。途中逃げるのに邪魔になった徳兵衛をお艶が殺そうとし、徳兵衛も殺し返そうとしますが、お艶の言うままに新助は徳兵衛を殺し、お艶は徳兵衛の身ぐるみ剥いで顔を縦横に切り刻み、死体の正体を分からなくしてから、家へ帰っていきます。その後二人は面白可笑しく日を送りましたが、半月ばかりして金蔵がやって来ます。お艶は新助はいないと言い張り、金蔵はもし新助に会ったら、考え直して違った道を踏まないように言ってくれと言い残して帰っていきます。やがて清次は再びお艶に近づいてきますが、お艶は清次が新しく妾にもらったお市を殺せと清次に迫ります。七月になると清次の悪事がばれ、暫く田舎へ逐電することとなり、清次はお市を殺すから一緒に逃げてくれとお艶に言い出し、お艶は承知します。清次がお市を殺した後、新助とお艶は清次を殺し、五百両を我が物として、その年の暮れまでしたい三昧でそれを使いつくします。お艶は芸者の客をたらす事にばかり努力し、余所へ泊る度数もだんだん多くなりますが、新助が浮気を疑っても否定し続けます。正月三日に遂に厳しく詰問すると、旗本にも清次にも徳兵衛にも体を委せていたとあっさり白状し、今では旗本に惚れていて、新助にはとっくに愛想を尽かしていると言います。新助は考え直してくれと懇願しますが、二三日考えさせてくれと返事され、お艶は殺されるのを怖れて、その三日後の夜に逃げ出しますが、新助は追いついて、旗本の名を呼び続けるお艶を斬り殺すのでした。
お艶の毒婦ぶりがすさまじく、血で血を洗う愛憎劇に魅了されました。お艶の台詞を読むだけでも読む価値のある小説だと思います。
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