海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「外国人に気をつけろ」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2005年12月10日 | 差別と格差
ホアン・カルロス・ピサロ・ヤギは、本当にぞっとする犯罪のゆえに責められている。先月末、彼は下校の途中彼のアパートの前を通り過ぎた木下あいりという七歳の少女に近づいた。次の90分間に彼は彼女の遺体をダンボール箱に入れ、近くの駐車場に捨てた。
この犯罪は街路が安全で暴力犯罪の割合が比較的低いことで知られた日本に衝撃を与えた。目下のパニックは、児童に対する犯罪に対する自然な反応である。だが、メディアが正しい見方を見失っている点は全く許し難い。
容疑者がペルー国籍の日系人であると同定されるやいなや、メディアは、この国が外国人犯罪の波に支配されていると宣言した。
最近の見出しを書く人たちは、訓練の初期において、ある犯罪容疑者の国籍は大部分の事例において関係がないということを学ぶ。日本ではそうではない。ここでは「尊敬すべき」普通新聞も読者の外国人嫌いの本能につけこむタブロイド版新聞と同様に有罪である。
日本のよりリベラルな日刊紙である『朝日新聞』は、「ペルー人に対する人狩り」に同調している。殆ど例外なく新聞やテレビやラジオなどのメディアは、ヤギの国籍を強調している。一言言わないと気が済まない専門家達は、木下あいり殺人事件によって引き起こされた本当の問題点である学校の安全などを無視して、法律を遵守する家主に対して外国人が明らかに引き起こす脅威に焦点を当てている。
昼のテレビに登場する怖い顔をしたレポーターは、容疑者の名字を用いるという通常のやり方に反して、容疑者を「カルロス」と呼び捨てにしている。だが、もし、「ヤギ」という名字を用いれば、彼らは、容疑者の先祖が日本人であることに注意を引きつけ、彼が「よそ者」であるという印象を弱めただろうに。
この戦術は、人権問題の運動家を怒らせた。「日本人の大多数は、このような犯罪を行う人々は自分たちとは違うのだと感じたいのだ」と東京に本部がある「あらゆる形式の差別と人種主義に反対する国際運動」の事務局長であるモリハラ・ヒデキは言った。
「そういう風に考える場合、彼らは犯罪者は全く別だと言うことに満足する。そしてそのことは外国人嫌いの雰囲気を作り出し、メディアはそれを容易にしている。」
申し分のないタイミングで、警察は、ヤギを逮捕した日に、今年の最初の六ヶ月の間に、1万860人の外国人が逮捕されたという記録を公表した。
数日の間隔をおいて、法務省は、外国人に長期滞在ビザを発行する政策の見直しを告知した。(ヤギ容疑者は、非出勤の理由で、自動車のパーツ工場の職から解雇されたとされるが、彼は偽の旅券を携帯していたとされている。)政府は、外国人犯罪を撲滅するために委員会を立ち上げると宣言した。
モリハラ氏は、犯罪者数の公表のタイミングは、偶然の一致ではないと思っている。
「政治家達は、国民に対するコントロールを強化したいと思っている。彼らがそれをする一つのやり方は、彼らが国民を危険から、つまり外国人から守っていると多数の国民に言うことである。」
彼はまた地方のメディアが、文脈とは無関係にレポートした公的統計の価値を疑っている。
「第一に警察は、逮捕者のかずだけ報告した。もし特定のグループだけを目標にするなら、逮捕者の数が増えるのは当然である」とモリハラ氏は言う。
「犯罪数が、外国人と日本人との人口の比に比例していることを見れば、犯罪率は同じである。外国人犯罪だけが問題だと言うのは正しくない。」
多くの日本人はモリハラ氏の関心に同意する。ウエッブ・サイト「今日の日本」で、高橋ユキ(18)は、次のように述べている。「日本のメディアは、ここでは大きな役割を演じている。彼らは外国人達はわれわれの社会の厄介者であるというイメージを作りつつある日本人は、外国人を差別する傾向があり、それは自慢できることではない。」
だが、メディアに動かされた疑惑と無知の雰囲気が続く限り、このような見解は少数派に留まるだろう。
政府は理解を増進するために、日本人と外国人とを結びつける機会を作り出すべきだ」とモリハラ氏は言う。「だが、メディアの力を借りて、彼らはまさに日本人と外国人とを切り離している。」
[訳者の感想]ジャスティン・マッカリー記者の記事です。殺人事件の報道の仕方の背後に日本人の外国人に対する差別感情が働いていることを鋭く指摘していると思います。
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