昨日(3月25日)は恒例の静岡県清酒鑑評会の一般公開がグランディエールブケトーカイで開催されました。13日に行われた鑑評会(審査会)に出品されたすべての酒が無料で試飲できるという地酒ファン垂涎の場です。
すでに結果発表されていますので(こちらを参照)、一般公開では例年のごとく、最高位(県知事賞)を受賞した酒に人気が殺到。私は入口から順に(吟醸の部から)全出品酒を試飲していったので、出口近くにあった純米の部県知事賞の開運に辿り着いたときは、すでに空瓶・・・。土井社長をつかまえて恨み節を吐露しました(苦笑)。
今年も会場で、年に1度、この日にお会いする懐かしい酒友や地酒研発足当時の方々と、互いに健康で酒が飲める喜びを噛み締めました。ついついきき酒に集中してしまうので、ご挨拶しそびれた方も多いと思います。この場をお借りし、お詫び申し上げます。
そんな中、会場では今年もいろいろな声を聞きました。
「上位は僅差。違いはほとんどないといってよい」(某蔵元)
「(吟醸の部県知事賞の)花の舞だけが香りの立ち方が違う。ダントツによかった」(某酒造蔵人)
「吟醸の部にも純米で出品し、入賞できた。吟醸造りなら問題ないので」(オール純米製造の蔵元)
「上位の酒はきれいに濾過して仕上げてある。(製造計画の都合で)濾過が間に合わない蔵、あえて濾過をせず出品した蔵もある」(某蔵元)
「全体的にレベルが上がった。おかしな酒が一つもなかった」(常連客)
「全体的に似たような酒ばかりでつまらなくなった。昔は個性的な酒がいろいろあって面白かった」(常連客)
「私の好きな○○○が、名簿(=入賞蔵のみ記載)に載っていないのはどういうこと!? おかしいじゃない(怒)」(おそらく初参加?の女性客)
おもしろいですね、同じきき酒をしていても、見方や感じ方がまったく違います。日頃、地酒とどう向き合っているのか、その人の、人となりがみえてくるようです。
昔は、審査に疑問を呈する酒造関係者や、知ったかぶりの酒通に、不快感を覚えたこともありました(私自身も第三者からみれば不快な対象だったかも)が、最近では、いろいろな人のいろいろな飲み方や感じ方を多様性として面白く、頼もしく感じるようになりました。
日本酒が置かれた社会的な環境を、少なからず俯瞰や複眼で見られるようになったからでしょうか。
ちなみに、私自身はいつも、全銘柄を試飲したあと、よかったと思える銘柄を、再度、今度は吐くのではなくきちんと呑むのですが、今回、印象に残った銘柄は、濾過の有無やアルコール添加or純米にかかわらず、静岡県清酒鑑評会の大事な審査基準である、静岡型の吟醸造りと静岡酵母由来の香りを大事にしている、と確認できました。
ただ、「面白みに欠けた」という声にも一理あり、で、以前は本当にとんがった酒、ひねた酒、かたすぎる酒など、良い意味でも悪い意味でも“個性”があって、日本酒が醸造発酵酒たるゆえんを実感したものでした。本当のファンが持つのは、鑑評会一般公開の試飲結果で、その銘柄の良し悪しをきめてしまうような単純な物差しではないと思うのですが、そうはいかないのが現実・・・。難しいですね、ホント。一般公開に出品する蔵元さんたちの心境が解る気がします。
蔵元さんには、できたら同じ仕様の酒を、全国新酒鑑評会に出品していただき、全国の場で正々堂々と勝負してほしいと思います。昨年、『若竹』が、全量、誉富士の純米大吟醸&静岡酵母で全国に出品し、入賞はなりませんでしたが、最も感動を残してくれた、まるでソチ五輪の真央ちゃんみたいな酒だったこと、忘れられません(こちらをぜひご参照ください)。
昨日の一般公開にいらした地酒ファンの多くは、たぶん10月1日の静岡県地酒まつりにもいらっしゃると思いますが、気になった銘柄が10月にはどんな酒に化けているのか、楽しみにしましょう。