杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

カッティングエッジに挑む

2008-05-20 11:09:10 | 吟醸王国しずおか

 先日のブログで、『吟醸王国しずおか』パイロット版の試写を、静岡でもやってほしいと書いたところ、さっそく2ヶ所から問合せをいただきました。このうち、篠田酒店(静岡市清水区)さんが、9月14日にグランシップで開催予定の恒例地酒まつりで、試写の時間を作ってくれることになりました。

 

 

 酒の小売店にとっては大事な顧客サービスであり、県内外から人気蔵元が多数参加する貴重なプロモーションの場で、酒の売り上げにすぐに直結するとは限らないこのような企画に時間を割き、そのために必要な機材や人材を用意していただけるというのは、よくよく考えてみると大変なことです。「何十万も会費は払えないけど、こういうことで応援できれば」と担当の平井さん。私は、彼が静岡市呉服町ふしみやビルB1のモダン居酒屋『伽音(かのん)』のオープン時、仕入れマネージャーをしていた頃からの知り合いで、仕入れを通して静岡酒の世界にのめりこみ、篠田酒店に移ってドリームプラザ店の立ち上げに尽力し、年1回のしのだ地酒まつりをグレードアップさせた手腕を頼もしく見守ってきました。こういう申し出も、アイディアマンの彼らしく、とてもありがたく思います。

 

 酒の世界には、時々、彼のような突拍子もない熱の入れ方や行動力を発揮する人材が登場します。おそらく、どんな分野に進んだとしてもそれなりも功績を上げるであろう有能な人材をうまく活かすことができた蔵元や小売店は、本当に幸せです。

 

 篠田酒店の場合は、平井さんと、もう一人、静岡伊勢丹和洋酒売り場の伝説的販売員だった萩原和子さんという2トップが、小売現場を担うようになり、大きく飛躍したと思います。私は、篠田酒店には、酒を買いに行くというよりも、この2人に会いに行くという気分でいつも訪れます。そして、とくに地酒のように、売り手の説明や語りかけが重みを増す商品を扱う店では、店主や販売員目当ての客が増えるということが成功の目安になるだろうなぁ、といつも実感しています。

 篠田さんにも、こういう販売員の力をもっともっと活かす店作りをしてほしいし、自分も、こういう店に支持されるような活動をしなければ、と思います。

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  そんなこんなで、パイロット版試写会が少しずつ本決まりになり、まだまだ撮影は始まったばかりなんですが、早くも撮りだめたテープを編集し、他人に見せることを強く意識付けする段階に突入、と相成りました。

 昨日(19日)も丸一日、カメラマン成岡正之さんのオフィスでVチェック。磯自慢篇では、杜氏・多田信男さんの存在感に圧倒されました。「この人は役者のように絵になる。惚れ惚れするほどカッコいいねぇ」と成岡さん。喜久酔の青島孝さんの若々しさや規律正しい姿勢とは違う、熟練職人らしいゆったり包み込むような仕草が、画像を通すとなんとも対照的で、双方に魅力があります。

 

 これに、他のキャラの強い蔵元杜氏や、杜氏なりたての若い社員などが加わると、どんな作品になるんだろう、酒造りに挑む人間ドキュメンタリーとしては、この上なくバラエティにとんだ見ごたえのある作品になるだろうと、自分の中で勝手にワクワクしています。

 

 ちなみに、『吟醸王国しずおか』のタイトル文字は、蔵元杜氏の最強キャラでおなじみ、小夜衣の森本均さんに書いていただくようお願いしました。プロの書道家やCGアーティストに頼む道もありますが、森本さんがふだん書かれるラベル文字が好きなのと、森本さんは静岡の蔵元の中でも屈指のきき酒名手で、静岡代表として公的な鑑評会の審査員をこなされていること、そしてこの作品らしさを考えたら、最適だ!と思ったのです。

 最初は「とんでもねぇ」とブツブツ言われましたが、最後には「お前さんがこれまで貢献してきたことを考えりゃ、これっくれぇのこたぁしてやらんとバチがあたるなぁ」と、森本さんらしい、ぶっきら棒かつ愛情あふれるお言葉をいただけました! 小夜衣ファンの皆様、乞うご期待&森本さんの手間賃として、ぜひぜひ募金をお願いします(笑)。

 

 

  

 ただ、静岡の蔵元を20年前から知っている私が感じる魅力や、映像のプロとして何ヶ月か彼らを見続けてきた成岡さんが感じる魅力と、一般視聴者の感じるものが必ずしも一致するとは限りません。そのあたりの“カッティング・エッジ”のつけ方は非常に難しいと、素人の私でも予想できます。

 

 

 具体策としては、酒も、この映像もまったく未見というディレクター経験者なり編集者に加わってもらうことを考え、パイロット版とはいえ、完成度の高い映像集を目指したいと思っています。酒造りと同様、映像作りも、ペテランと新人の呼吸の合わせ方とか、互いのスキルの活かし方が重要になるんですね。共同作業に慣れていない私にとっては、ホントに一つひとつが勉強です。静岡の蔵元で、経営者になりたてで、杜氏と2人、手探りで酒を造り始めた若い後継者を何人も見てきましたが、まさに彼らの心境そのものです。

 

 第一、ここで手抜きをしたら、今後の資金調達が立ち行かなくなるばかりか、何よりも、試写の機会を設けてくださった東京の松崎晴雄さんや篠田酒店さんに申し訳ありません。・・・ホントに、試飲酒を持参して営業に回る蔵元の気持ちになりそうですが、その試飲用の酒に、どれだけのものを投入できるか、自分自身、厳しく試されているところかもしれません。

 

 さて、21~22日は広島ロケに行ってきます。年に1度、全国の酒蔵が集う全国新酒鑑評会製造技術研究会。鑑評会のあり方は、時代を経て大きく変わってきましたが、昭和61年、この全国の場で大量入賞したことによって吟醸王国しずおかの歩みが大きく前進したことを思えば、被写体として避けられない存在です。この20年で何が変わり、何が変わらないままでいるのかを、この眼で確かめてみたいと思っています。


映画音楽を妄想する

2008-05-17 19:14:41 | アート・文化

  久しぶりに静岡の映画館で新作映画を観ました。1980年に韓国で起きた光州事件をテーマにした『光州5・18』。韓流作品では恋愛モノが苦手で、観るのはもっぱら硬派な事件・軍事・歴史モノ。4年前に観た『殺人の追憶』は、自分が過去に観た全映画の中でもベスト5に入れたくなるほどの傑作だと思っていて、この作品でエリート刑事役だったキム・サンギョンが主演していることと、韓国の実話をベースにしているという2点で興味を惹かれました。

 

  光州事件といえば、韓国の過激な学生運動、という思い込みしかなかった私ですが、作品は、軍部が市民を理不尽に虐殺した実態と、ごくフツウに、映画館でデートを楽しんでいた市民が突然、暴動に巻き込まるリアルさが痛く描かれていました。大事件や大災害を、特別なヒーローヒロインの活躍というよりも、市井の眼で家族愛を通して描くという手法は、ハリウッド大作の『アルマゲドン』あたりから主流になっているみたいですね。

 

 

  1980年ごろといえば、私は大学に入ったばかりの頃。大学受験を控える主人公の弟とほぼ同年ということになります。日本のかつての安保闘争や学生運動は、教科書やテレビの復刻ニュースで見る歴史上の出来事、という感じがしていましたが、80年当時、隣国でこんな大事件が起きて、同年代の若者が多数命を落としたという事実には本当に愕然としました。真相は完全には解明されていないそうですが、今の韓国の若い映画人が、この事件を真正面から取り上げ、切り込んだことには拍手喝采を送りたい思います。

 

 

 

  それはさておき、映画館に入って、びっくりしたのは、いつもカーステレオで聴くJ-POPが流れていたこと。一緒に『吟醸王国しずおか』を作っているカメラマン成岡正之さんに、以前、「自分がプロモを撮った新人アーティストなんだけど、何かの機会があったら応援してあげて」と渡されたCDの曲だったのです。

 

 

  数年前、成岡さんは函南町在住の盲目のダイバー・ラッキーさんと出会い、娘のエリカちゃんも遺伝性の病気でいずれ失明することがわかり、父娘がその現実と向き合い、乗り越えるために、ラッキーさんが失明する前に一度訪れたことのある沖縄の海を、障害者のためのダイビングインストラクターをしている青年とともに父娘で潜る、というドキュメンタリーを撮りました。そのエンディングテーマに使われたのが、シンガーソングライター工藤慎太郎さんの『Message』という歌でした。昨年、日本有線放送大賞新人賞を取った『シェフ』のカップリングに入っている歌です。

  いつもはカーステレオで、沖縄の海をイメージしながら心地よく聴いていた『Message』が、突然、上映前の映画館に響き渡ったのですから、何事かと思いました。真っ白なスクリーンを前に、Messageを聴いていたら、今、撮っている酒蔵の光景と、白い息を吐きながら米を運んだり麹室で汗する若者たちの横顔が頭の中のスクリーンに映し出され、「あぁ、この歌を吟醸王国しずおかのエンディングにも使いたいなぁ~」と妄想してしまいました。

 

 

  帰宅して、『光州5・18』のサイトをチェックしてみたら、この作品のイメージソングに採用されていて、2度ビックリ。ダイバー父娘の感動秘話と、光州事件の悲劇、ついでに酒造りの蔵人の働く姿にもフィットするなんて、Messageという歌そのものに、力があるんですね。

 さすがに『吟醸王国しずおか』に使わせてもらおうなんて云えない状況になってしまったと思い、それでも、映画には音楽の力が不可欠だと実感し、今日はすみや本店でCDをあれこれ物色しました。

 

 

  

 自分が撮っている映像に、どんな音楽を乗せようか、ナレーションは誰にお願いしようか…あれこれ想像をめぐらせているうちは楽しいですね。

 地酒研会員でジャズ通の片山克哉さんからは「日本酒の映像にはギターの音が合うんじゃない?」と浜松で活躍中のギタリストを推薦してもらったり、成岡さんは若かりし頃、プロのバンドのドラマーとして活躍し、米国バークレー音楽学院に留学経験もあるので、ドラムや和太鼓もいいなぁと思ったり、歌舞伎や長唄に詳しい静岡新聞の平野斗紀子さんに相談したときは、琴や三味線の音色も捨てがたいと思えたし、京都へ坐禅に行ったときは、鐘の音にも魅了されました。

  磯自慢の寺岡社長からは、ドイツ国歌にもなっているハイドンの弦楽四重奏77番がお好きだと聞いていたので、多田杜氏の堂々とした姿に合うなぁとか、自分が昔、あるエッセイで、「軽快で爽やかで、誰にでも呑みやすい静岡の酒はモーツァルトに似ている」と書いたことがあるので、モーツァルトをどこかで使ってみたい気もする。

 2月の花の香楽会で、ほろ酔い加減の開運の土井社長が波瀬杜氏に歌って聞かせた『ふるさと』は、ぜひ使いたい(社長にもう一度、歌ってもらわなければ)。よく酒の番組で流れるような環境音楽っぽいのはイージーに使いたくないですねぇ。

 

 

  

  そうこうしていたら、チケット売り場で、私の弟の友人で、高校生の頃から知っているチェリストの青嶋直樹さんが、5月31日(土)19時から、静岡市民文化会館中ホールで室内リサイタルを開き、モーツァルトとハイドンを演奏すると発見! もう、これは神仏の思し召しとしか思えません。さっそくチケットを購入しました。

 

 

  地酒ファンの方または音楽通の方で、静岡の酒にはこんな音楽が合うんじゃないかと一家言お持ちの方、ぜひご提案ください。よかったら、31日の青嶋さんのリサイタル『第6回静岡市民文化祭~室内オーケストラの夕べ』もぜひお聴きになってみてくださいね!

 


喜久酔at W.S.J

2008-05-15 10:11:22 | しずおか地酒研究会

 昨日(14日)は、青島酒造の瓶詰め作業を撮影した後、カメラマン成岡正之さんのオフィスで、1月から撮り溜めておいた青島酒造の仕込み作業8時間分を、深夜までかかって通しチェックしました。しずおか地酒研究会の会員を中心に始めた製作資金集めが、現在、目標額の約半分まできたところで足踏み状態となっているため、10~15分ぐらいのパイロット版を作って試写の機会を設け、新規の寄付者を集めようと考えているところ。日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さんや、酒エッセイスト藤田千恵子さんなど、私が個人的に信頼し、過去の地酒研活動にもご協力いただいた有識者の方々が、東京で夏頃、試写会をやりましょうと申し出てくださったのです。

 

 

 本当なら、地元静岡でそういう声がもらえたら、と願っているのですが、地元というのは、蔵元や取引店のしがらみとか、お酒の講座や愛好会の主宰者にしても、特定の店や蔵との関係が強いせいか、なかなか、すんなり、手を上げてくれないんですね。東京の有志から、評価の機会をもらえるというのは、ある意味、静岡吟醸がたどってきた歴史と重なる部分があります。今、撮っている蔵元さんたちの思いを、多少は疑似体験できるんだと割り切って、夏の試写会に向け、編集作業に臨もうと思います。

 

 

  

  深夜まで映像を凝視したにもかかわらず、今朝は気分爽快に目覚めました。画質も音も、そして主人公の青島孝さん&蔵人たちの表情、言葉、動きの一つひとつが素晴らしかったから。成岡さんも、「演出したわけじゃないのに、いい台詞を、絶妙なタイDsc_0033ミングで云うんだよなぁ、彼は」と青島さんをベタ褒めです。

 たとえば上槽シーン。槽の搾り口から滴り落ちる松下米を、一口含んで、数秒の沈黙のあと、「…生まれました」と一言つぶやく・・・現場で見ていた全身サイズの彼と、映像で眼にフォーカスされた顔面アップの彼では、その一言の重みや響きがガラリと変わります。ライターとして取材に追われ、記録写真を撮るだけで精一杯だったこれまでの酒蔵経験では得られなかった、青島さんの感動と同化できる時間が、そこにありました。

 

 皆造祝いで蔵元と蔵人が一献傾ける席では、ほろ酔い加減の青島さんが「正月に呑んだ、うちの吟醸、こんなに美味い酒が存在するなんて世の中の人は知らないんだよなぁって呻っちゃったよ」と本音をポロリ。蔵人から「造った人間が自己満足してちゃダメですよ。その美味しさをどう世の中に伝えるかを考えなきゃ」とたしなめられています。

 私も、今、撮っている映像に対し、「こんなにすごい酒造りの映像が存在するなんて、今はまだ世の中の人は知らないんだよなぁ」って気分は自画自賛状態。他人が聞いたら、アホかと思われるかもしれませんが、私も成岡さんも、スチール撮りに加わった山口嘉宏さんも、それだけの力のある被写体から、気持ちの部分で同化できるぐらい、多くのものを受信しているわけです。その感動を、あまり変に凝らずに素直に表現できたら、と思っています。

 

 

  

 昨日は嬉しいことがもう一つ。以前、このブログで「某メジャー新聞に青島酒造の記事と、私が映画撮影中に撮った写真が載ります」とお伝えしたとおり、4月18日付けのTHE WALL STREET JOURNAL ASIA版に掲載されました!

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 先月末に青島さんから「東京のジョン・ゴントナーさん(アメリカ人日本酒ジャーナリスト)から、載ってたねって連絡が来たけど、まだ見本紙が来ないんだ」と聞き、静岡でウォールストリートジャーナルが置いてある図書館や書店をあれこれ探したんですが、皆無。県国際交流協会に問い合わせてもダメ。新聞社の友人から「経済専門紙だから、銀行や証券会社の国際部あたりに聞いたら手に入るんじゃない?」と言われ、そのままになっていました。

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 昨日になって、青島酒造に届いた見本紙を一部分けてもらい、ようやく紙面を見ることができました。もちろん英文ですから、単語を拾い読みしただけですが、取材テーマは“Japan`s national drink goes organic”で、松下米に象徴される有機の酒米によるDsc_0021酒造りの価値を紹介したもののようです。

 取り上げた蔵は、青島さんのほか、新潟、奈良の蔵元を合わせ、計3蔵。私が提供した5カットほどの写真のうち、仕込み蔵でタンクに櫂を入れる蔵人原田さんを撮ったものが使われました。残念なことに、キャプションが「Mixing the ingredients at Aoshima Shozu」の誤字。これさえなければ手放しで大喜び…ですが、まぁ、アジア版とはいえ、国際新聞に見開きカラーで載ったのですから、良としましょう。

 もし職場等で入手できる方は、ぜひご覧になって、コピーして、周りに方に配ってくださいね!

 

 

*吟醸王国しずおか映像製作委員会 会員募集

吟醸王国と謳われる質の高い静岡の酒造りをハイビジョンカメラで映像化し、後世に伝えるプロジェクト。応援してくれる個人・団体を募集しています。会員には、作品完成後、会費に応じた枚数のDVDを進呈。また会費に応じて特典DVD、あるいはご本人出演のオリジナル特典DVDを制作・進呈します。

問合せ・申込みはプロフィール欄の鈴木真弓メールアドレスまでご一報ください。

 


姿勢の美しい人

2008-05-14 14:52:10 | ニュービジネス協議会

 昨日(13日)は、広報を担当する(社)静岡県ニュービジネス協議会の仕事で、浜松の『森上ヨーガ専門スタジオ』を訪問。企業家のためのリラックスヨーガというのを体験取材しました。

 

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  肩こりや首こりによる慢性的な偏頭痛に加え、GWに坐禅をして以来、背中と腰の痛みが引かず、上半身硬直状態だった私は、取材というよりも、とにかくコリをほぐしたい、癒されたい、の一心。講師の森上雅子先生は、ヨガ歴30年のベテランで、インド、イギリス、オーストラリア等で本格的に修業をされた方。先月、佐鳴湖近くの大平台にオープンさせたばかりの専門スタジオでは、ギターの生演奏とヨガを組み合わせた特別講座を企画し、大好評だったそうです。確かに、全身に響き渡る生演奏なら、効果も倍増…かもしれませんね。

 

 

 

  私はヨガはまったくの初体験。先生から「呼吸・体操・瞑想がヨガの3大要素です」と言われ、腹式呼吸を教わりましたが、これが、体操と一緒にはなかなかできません。背筋や首筋も、ふだん、意識して伸ばすことをしていないので、意識しずぎて緊張し、アタマが重くなってきます。5分程度の瞑想の時間では、仰向けの楽な状態になるのですが、そのままいきなりイビキをかいて寝始める社長さんもいました。すぐに寝られる人、身体がほぐれる人って、ほんと、ウラヤマシイ…。ヨガをしながらも、いちいち意識過剰になり、緊張で頭痛がしてくる自分の神経のもろさをつくづく感じました。

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  森上先生の印象は、一口で言えば、由美かおるみたいな人。30年もヨガ修業をされたのなら、相応のお年だと思いますが、小柄でしなやかで、プロポーションは10~20代なみの美しさ。腹式呼吸の賜物か、声にハリがあって、スタジオ中によく響きます。

 

 

 

  

 

  京都の禅寺で、修行僧たちがお経を読誦するときも、お腹からしっかり声が出ているせいか、本当によく通ります。彼らの姿勢は実に美しい。私が坐禅をした位置の向かい側に、アメリカ人修行僧が座っていて、その背後の窓に、鮮やかな新緑の木々が風に揺れていました。輝くグリーンのカーテンをバックに、黒衣の白人僧が瞑想するその姿は、絵巻のように美しかった。私なぞ、お経もお腹から声を出すことができず、口先だけで唱えるので、途中で何度も息切れし、声がかすれ、咳き込んでしまいます。何事も、肉体を鍛えないことには身に着かない、と痛感しました。

 

  

 

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   今朝(14日)、朝一番で、青島酒造の瓶詰めの撮影に行きました。蔵元杜氏の青島孝さんや片腕の原田さん、片山さんら蔵人が、仕込み中と変わらない、折り目正しい立ち居姿で、キビキビと作業しています。瓶詰め作業は、多くの蔵ではパート社員に任せていて、青島さんのように、杜氏自ら、火入れの温度を0.1度単位で管理調整している蔵は少ないと思います。「これも大事な酒造工程の一つですから」と青島さんはシンプルに語ります。

 

  

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 朝方まで降っていた雨が止み、ガラス窓が明るい空の色を映し出しています。その光に向けて、酒を詰める直前の一升瓶をかざし、1本1本、瓶に汚れやキズがないか目視で確認する姿が、修行僧の背筋の通った立ち居姿に重なってみえました。

 

  

  

 美しい酒、美しいプロポーションは、まずは姿勢から生まれるもの。映像もまたしかり。カメラの向こう側だけでなく、こちら側にいる人間も、まっすぐな気持ちが、自然に姿勢に現れるような修業を、まだまだ重ねていかねば、と思います。腹式呼吸、早くマスターしなければ…!


コピーライターと地酒ライターのはざまで

2008-05-12 10:49:16 | 吟醸王国しずおか

2008051016080000  10日(土)は、静岡県商工会連合会の『つまんでごろーじ』プロジェクトでご一緒した食プロデューサー・石神修さんが企画された“新茶と創作お茶料理を楽しむ会”に参加しました。新茶は、島田市の大井川茶園さんの提供。同園は石神さんのプロデュースで、100g袋入りの新茶を、宛名シート付き透明パックに入れて“新茶郵便”として新販売。宛名を書いて200円切手を貼れば郵便扱いで届くそうです。

2008051015060000  創作料理では、富士宮のさの萬さん提供の銘柄豚に粉末茶と野菜マリネがトッピングされたポークソテーが美味でした!

 

 

 なお、『つまんでごろーじ』は、ネットでの紹介・取り扱いが始まりました。父の日やお中元におススメです。静岡伊勢丹のギフトカタログにも大々的に紹介される予定ですので、追ってご紹介します!

 

 

 複数の立場の異なる人間が集まって、ひとつの仕事(事業)に取り組むとき、今さら、でもありませんが、根っこの部分でしっかり認識を共有することが大事です。事前に綿密に打合せし、コンセプトの意思統一を図り、いざ現場では、それぞれのプロがスキルを十分発揮できるようにする。複雑な事業に優れた指揮官やプロデューサーが必要なのも、そのためだと思います。

 

 

 現在、制作中の地酒ドキュメンタリー『吟醸王国しずおか』では、昨年来、シツコイと思われるぐらい何度も関係者に集まってもらって意見を聞き、「内容に関しては真弓さんに一任する」との結論をもらい、次は、制作上のパートナーとなるカメラマンの成岡正之さんのキャリアや映像作りに対するビジョンを、本に書くつもりで真剣に聞き取り、原稿にもまとめ、お互いの考えや性格をある程度認識しあった上で撮影に入りました。ですから、撮影現場では成岡さんと意見が衝突するようなことはほとんどありません。酒蔵という被写体が、職人肌の成岡さんの琴線に触れることはわかっていたので、私は現場で、成岡さんが気持ちよく撮影できるよう環境整備をするぐらい。ほとんど気を遣うことなく、毎回楽しく撮影しています。これも、期限やノルマに縛られない、クリエーターの自主企画だから、かもしれませんが。

 

 

 それにひきかえ、日ごろのライター業務では、なんと縛りが多いことか。とくに私のような個人のライターが請ける仕事は、時間も予算もないコマゴマしたやっつけ仕事が多いので、他のスタッフと内容を吟味するとか方向性を決めるといった根っこづくりをほとんどさせてもらえず、いきなり、この部分だけ、何文字以内のコピーを、とポンと要求される。それでも、それなりのコピーを作るのがプロなんだと自分を奮い立たせてきましたが、最近、とくに映画づくりを始めてからは、そういうやり方についていけなくなっていることを痛く感じます。

 

 

 今、その意味で対照的な2つの仕事が同時進行しています。一つはある酒蔵の広報物。静岡の酒を中間的な立場で応援している身としては、本業がコピーライターといえども、特定の酒蔵の広告づくりに関わるには、それなりの心構えが必要で、私はこれまで酒蔵に対しては、広告の仕事を極力避けてきました。

 そもそも静岡には、広告にカネをかける酒蔵が少ないため、酒蔵をスポンサーに持つ広告会社も限られ、スタッフは貴重なクライアントを逃すまいと、万全の体制で臨んでいます。そこに、これまでまったくつきあいのない、しかも酒にうるさそうなライターが、クライアント指名で入り込んでくるんですから、広告会社側もやりにくいでしょう。すでに出来上がっていたスケジュールの中に、ポンと、この部分だけお願いします、とはめ込まれた私も、非常にやりにくい。他人が作ったキャッチコピーにつける本文だけとか、酒の中身を知っていればもう少し違うビジュアルを想定するだろうと思われるミスマッチな紙面に、コピーだけはめこむとか、まさに、根っこがないまま表面だけ繕わされる状態です。

 本文についても、私がふだん、自由に書く雑誌や新聞の署名記事とは違い、当たり前ですが「うちの酒が目立つように、売れるように書いてもらわないと困る」とハッキリ言われます。ついつい、いつもの調子で、静岡の酒全体や地域の魅力をクドクド書いてしまい、注意され、こんなとき、広告会社やクライアントの広報担当者に、自分をうまく指揮してくれるプロデューサーがいてくれたらなぁと思います。

 

 

 GW明けに、つきあいのある広告会社を通して、某製茶会社の通販誌の取材を受けました。巻頭に、静岡で頑張る女性を紹介するコーナーがあり、バックナンバーを見ると、お茶とは関係のない職種の女性がたくさん登場しています。

 私の話も、地酒映画づくりがメインで、せっかくならと、担当のディレクター(ライター)とカメラマンが、撮影現場の酒蔵まで来てくれました。2人は、明日締め切りという限られた時間の中、誌面づくりに直接関係のない蔵元の話にもよくつきあい、このブログに紹介した映画制作のネタもしっかり熟読してくれました。製茶会社のオーナーは、お茶の売り上げには何のメリットもないこの誌面を、とても気に入ってくれたそうです。

 こういう誌面づくりは、作り手の根っこの太さが感じられます。その根っこを、クライアントと制作者がちゃんと共有しているから、わずか2日でもすんなり運ぶのだと思います。

 

 

 

  

 

  もう一つ進行中の、NPOの10周年記念誌制作の仕事は、もともとNPOという団体自体が、広告に費用をかけるような性格ではないので、広報担当者もいなければ、特定の広告会社とのつきあいもなく、代表と理事とスタッフが熱心に会議や打合せを行っています。そのつど呼び出されるのは確かに大変ですが、記念誌発行という事業の根っこづくりにはとても役立っています。事業に関わる人間が、共通の、確かな根っこをしっかり持っていれば、いざ制作に入ったとき、作業はスムーズに進む。このNPOの場合、代表が、広報物に対してもしっかりした考えとリーダーシップを持っているため、みんながすんなりまとまるようです。時間がないからといって根っこが無いまま行き当たりバッタリに作業を始めても、結局、途中で何度も軌道修正をしなければならず、ロスが多くなるんですね。

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 週末、たまたま、この2つの仕事の核の作業が重なり、自分の気持ちの持ちようにも驚くほどギャップを感じたのでした。もちろん、それがコピーに現れてしまってはプロとして失格…。10日の「新茶&お茶創作料理を楽しむ会」に続き、11日は昼間、サッカーファンの母に付き合って日本平スタジアムのJリーグ清水×鹿島戦に行き、気分を刷新しようと思いましたが、企画プロデューサーや、プロスポーツ監督の戦略や戦術が、スタッフ・選手にいかに浸透しているかで、その事業の成否が左右されることを、改めて感じました。

 

 

 清水も鹿島も、サポーターの応援はホントにすごい。とくにアウェイの鹿島サポーターの少数派ならではの団結力は、見とれてしまうほどでした。敵地で競争相手が多いところほど、心あるサポーターが一丸になって応援するって気持ち、静岡の酒のサポーターとしてよ~く解ります。 

 地元消費率2割未満の静岡酒。地元なのにアウェイみたいな環境で勝負し続ける酒蔵の中で、広告費をかけてサポーターの底辺拡大に努める企業は得がたい存在です。それを思うと、気持ちをグンと引き締めなければ…!