杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

福島いわき再訪(1)~甦った道の駅よつくら港

2013-08-20 21:39:39 | 東日本大震災

 今年のお盆は、いつにない時間を過ごしました。

 まず8月10日から15日までは、バイト先のお寺にこもってお盆行事のサポート。加えてお寺のお身内が亡くなって通夜や葬儀の準備に大わらわ。ある意味、お盆らしいお盆だったと思います。この時期の、冷房のない本堂での盆の棚経、通夜、葬儀は“精神修行”そのものでしたが(苦笑)。

 

 

 

 8月17日~18日は、福島県いわき市の被災地に行ってきました。ご縁のあるいわき市四倉の『道の駅よつくら港』がリニューアルオープンして1年。8月11日の1周年記念イベントには行けませんでしたが、17日夜に四倉鎮魂花火大会があると知り、平野斗紀子さんを誘って車を飛ばして行くことに。

 

 

 お盆のUターンラッシュが心配で、静岡を朝4時に出発。拍子抜けするほど道は空いていて、海老名と友部のSAで休憩しがてら、6時間ちょっとで到着しました。

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 常磐道四倉ICを降りて海岸に向かって行くと、、四倉港の手前に鮮やかな道の駅の建物が見えてきました。震災後、2011年の4月と6月に来た時は、津波にやられたままの状態(写真左・記事はこちら)だったので、その見事な再生ぶりに、目頭が熱くなりました。

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 こちらの記事でも紹介したとおり、道の駅よつくら港は、民設民営の地元物産&情報発信施設です。2009年12月にオープンし、わずか1年4ヵ月後に被災してしまいました。関係者のみなさんの心情を想像すると、いたたまれない思いがしますが、「必ず復興する」という強い意志が、2012年8月のリニューアルオープンに結実したのでした。

 

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 もともとの施設は左写真のような雰囲気でしたが、リニューアルした建物は、1階部分が嵩上げされ、万が一津波にやられても2階に避難し、数日間は避難生活が送れるよう準備を整えたそうです。Dsc03104

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 1階嵩上げ部分を支える柱には、多くの人々のメッセージ陶板が埋め込まれていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 店内は1階が物販コーナー。観光みやげ物店&農産物直売市&コンビニが一体となり、多くの人でにぎわっていました。

 

 

 

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 私が大好きなこちらのコーナーもこのとおり充実しています

 

 

 

 

 

 

 

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 2階はフードコート&海カフェ。見晴らしのよさはバツグンです。私たちは会津喜多方「喜一」のラーメンをいただきました。写真の会津水ラーメン(冷やし塩ラーメン)は、使用する塩が「会津山塩」。海塩じゃなくて、グリーンタフ地層に残った太古の海水成分が高温の地下水に溶け出した山の塩なんだそうです。塩素イオンより硫酸イオンが多く、まろやかな風味を感じました。塩辛さがキツくないから、ラーメンスープのようなものにはよく合うんじゃないかな。

 

 

 

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 夜の花火大会は、海カフェに集まった四倉ふれあい市民会議の皆さんに混ぜていただき、馬刺し、馬レバー、あわび、うに焼きをつまみに、会津の地酒を堪能しました。

 持病があって「ヘタな酒を飲むと体調が悪化する」が口癖の平野さんが、翌日、「ぜんぜん残っていない、きわめて快調」と喜んでいたので、ほんとうにいい酒を用意してくださったんだと思いました。


よつくらの皆さんは私が提供した高砂誉富士を「すっきり飲みやすい」とスイスイ空けてくれました。

 

 よつくらの皆さんは口々に、「酒の肴といったら、いわきの戻り鰹。焼津に負けないよぉ。食べさせてやりてえなぁ」と吐露します。

 

 

 

 

 

 

 四倉港はタイ、ヒラメ、アイナメ、カレイ、ハゼ、メバル、シラス、カツオなど、駿河湾沖でもおDsc03107_2
なじみの豊富な魚種で賑わっていた港でしたが、福島第一原発の高濃度汚染水流出が再打撃を与え、港から漁船の姿が消えてしまいました。

 あるのはFRP仕様でなかなか廃棄処理できずに放置されている被災船の山・・・。

 

 

 

 

 被災地沿岸の漁港は、一部、復興したところもあるようですが、福島の漁港の場合は、“海が放射能汚染した”という底知れぬ重荷を背負ってしまいました。

 

 

 

 

 これから旨味が増してくるという戻り鰹、同じ鰹が千葉県銚子沖で獲れば築地でも高値で取引され、いわきの漁港で水揚げされれば築地では見向きもされないそうです。

 

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 小名浜港にあるいわき市観光物産センター『いわき・ら・ら・ミュウ』1階には、焼津さかなセンターのような仲卸業者の直売所がありましたが、並んでいるのは他県産ばかり。地元で水揚げされた魚介類はありませんでした。

 

 

 販売業者さんは、地元の魚がなくても、他から取り寄せれば商売が出来るけど、漁師さんや水産加工業者さんは、地元に魚が水揚げされなければ、どうにも出来ません。・・・こういう売り場をどんな気持ちで見ているんだろうと思うと、辛くなってきます。

 

 

 地元の皆さんも、酒を酌み交わすときぐらい、被災のことを忘れたいと思うのに、地元の魚を酒肴に出来ない・・・。静岡に置き換えて考えてみたら、駿河湾の魚が食べられないのに、(駿河湾の海の幸に合った清酒酵母を使った)静岡の酒をせいせい呑めるだろうか、と、無性に哀しくなってきます。

 

 

 

 それでも、よつくらの皆さんは、「静岡へ行ったとき、おでん街で食べた黒はんぺんが忘れられねぇなぁ」「もういっぺん静岡へ行くよ。今度は焼津や由比の水産加工現場を見たい」と言ってくれました。

 私も、「いつか必ず、駿河湾の鰹と、いわきの鰹の食べ比べを絶対するぞ!」宣言をしました。

 

 交流のきっかけは震災でも、今後は互いの地域の産業や食文化を理解し、“第二のジモト”と思えるくらいの絆に発展させて行きたい、と、切に思います。(つづく)

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