杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

中日新聞掲載『産業廃棄物処理の最前線』

2011-06-27 09:09:15 | 東日本大震災

 

 6月25日(土)の中日新聞朝刊では「環境特集エコを考える」が組まれました。その中で静岡県産業廃棄物協会を取材した記事を掲載しましたので、中日新聞をお読みにならない方もぜひご一読を!

 

 

 

環境特集~循環型社会づくりに向けて―産業廃棄物処理の最前線<o:p></o:p>

 現代に生きる我々の生活は、限りある資源に支えられている。いずれは枯渇する資源を湯水のように使い果たし、ごみや温室効果ガスを吐き出す暮らし方を続けていれば、地球では人類が生存できない時代が来る―。

 東日本大震災という未曽有の災害を経験し、日本人にとってエネルギーやゴミ・廃棄物の問題は一層切実なものとなった。今のライフスタイルの点検・見直し―すなわち、ゴミを減らし、資源や物資を大切に使う循環型社会のしくみづくりに必要なものは何か。今回は廃棄物処理の最前線に立つ静岡県産業廃棄物協会の活動を紹介する。<o:p></o:p>

 

産業廃棄物の定義

 廃棄物は、家庭から出される一般ゴミやし尿と、会社・工場・商店など事業活動にともなって出た事業ゴミに大きく分けられる。事業ゴミのうち、がれきや廃油や汚泥など法令で定められた20種が『産業廃棄物』と定義され、事業者に処理責任が課せられている。処理の形としては、事業者自らが行うケース、処理業者に委託するケース、行政機関が公共サービスとして処理するケースがある。<o:p></o:p>

 

静岡県産業廃棄物協会―処理業者と排出業者が両立する稀有な団体

 静岡県産業廃棄物協会は、産業廃棄物(以下産廃)処理を担う事業者756社と、産廃を排出する事業者362社の計1147社が加盟する団体。昭和50年に設立、52年に公益法人化した。<o:p></o:p>

 同類団体はほとんどの都道府県に置かれ、全国を束ねる連合会組織もあるが、静岡県のように処理業者と排出業者がともに加盟する団体は珍しいという。梅原秀夫会長は「静岡県には規模の大小にかかわらず、幅広い業種の製造業者が生産拠点を置き、日本を代表するモノづくりメッカでもある。産廃を取り巻く諸問題に対し、実践的な解決を導くためには、産廃の“入口”と“出口”の協調が必要不可欠」と語る。協会には産廃処理業務に大きなウエートを占める提出書類作成を行う行政書士やコンサルタントも会員に名を連ね、さまざまなサポートを行っている。<o:p></o:p>

 

静岡県の産業廃棄物の現状と目標値―7年間で12%減

 平成20年度データによると、静岡県内で一年間に排出された産廃は、1199万トン。一般のゴミ(約145万トン)の8・3倍にあたる。産廃の種類では「汚泥」「がれき」「動物の糞尿」が上位3位で、この3品目で全体の83%を占める。<o:p></o:p>

 これらをどのように処理しているかといえば、焼却・脱水等による中間処理によって減量化させる量が55%、リサイクルが37%、埋め立て等の最終処分に回されたのが8%だった(平成20年度)。<o:p></o:p>

 産廃は、当然のことながら排出量自体を減らすことが望ましく、段階的にはリサイクルや減量化の割合を増やし、環境汚染が懸念される最終処分の量を減らす努力が求められる。県でも平成27年度までに最終処分量を20年度実績の12%減とする目標を打ち立てている。<o:p></o:p>

 

3R運動、電子マニフェストの推進

 リサイクルや減量化にあたっては、モノづくりのレベルでリサイクルや減量化がしやすい材料ならびに製法を用いることが肝要だ。県ではゴミを出にくくする(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)を呼び掛ける「3R」運動を、事業所にも広く呼び掛け、研修会を各地で開催している。<o:p></o:p>

 また廃棄物を適正に処理するために有効な「電子マニフェスト」の加盟登録を事業所に呼び掛け、静岡県は平成22年度までに、東京都、神奈川県に次いで全国3位の登録件数(6222件)となった。27年度までに8000件を目指す。<o:p></o:p>

 

「捨てればゴミ、活かせば資源」

 事業所に求められるこれら様々な取り組みは、静岡県産業廃棄物協会が“推進部隊”となっている。「3Rの徹底に向け、“捨てればただのゴミ、活かせば貴重な資源になる“を合言葉に一社でも多くの会員事業所の意識改革に努めたい」と梅原会長。<o:p></o:p>

 平成23年度からは、廃棄物処理法の一部が改正され、不法投棄や不適正処理への対策、最終処分場の環境汚染対策、廃棄物の循環的利用の促進等が強化された。法令遵守を徹底・指導する上でも、協会の果たす役割はますます重要となっている。<o:p></o:p>

 

産廃処理業の社会的使命―大震災を経験して

 3月11日に発生した東日本大震災では瓦礫や汚泥等の災害廃棄物が2500万トン。阪神淡路大震災の1・7倍という甚大な結果をもたらした。阪神淡路の被災地では処理に3年を有したというから、東日本でも“長期戦”を余儀なくされるだろう。梅原会長は「どんなに時間がかかっても、我々の業界がきちんと責任を持って処理しなければならない」と真摯に語る。<o:p></o:p>

 静岡県産業廃棄物協会では静岡県ならびに静岡市と『災害援助協定』を結んでおり、地震災害はもとより、近年頻発する水害等に際し、被災地の復旧・復興のため、産廃処理のノウハウを発揮している。<o:p></o:p>

 

さんぱい探偵団―環境教育プログラムの実践

 社会的使命の高まりを受け、協会では日頃から産廃処理事業への理解や啓蒙にも努めている。県内7支部ごとに、地域の小・中・高校で環境教育プログラム事業を実施中。会員事業所の視察や環境ゴミ問題についてのレクチャーを行い、児童・生徒に身近な問題として考える機会づくりに尽力している。小学生対象の見学会は「ぼくらさんぱい探偵団」と銘打ち、毎年夏休みに各支部の会員事業所見学会を行っている。いずれも協会側が学校に呼び掛けて実施している。

 協会専務理事の三島文夫さんは「子どもたちには“食べるものも着るものもゴミじゃない。再び資源になるんだという認識を持ってもらうことが大事」と環境教育の意義を強調する。<o:p></o:p>

 

社会に不可欠な事業として

 協会では大学生向けの研修視察会も開催しており、22年度には環境問題に関心のある静岡大学や富士常葉大学の学生が参加した。アンケートでは「このような事業がないと社会が成り立たないと強く実感した」という声も。産廃業界への理解は少しずつ深まっているようだ。<o:p></o:p>

 「産廃処理の技術は日進月歩。日本の処理技術は世界最先端を行く。焼却灰の中から貴金属を取りだすような特殊技術を持った業者もいる。我々の業務が社会の仕組みを変える一助となると信じています」と梅原会長。「一般県民のみなさんにも、産廃処理に対する見方や理解を一歩進めてほしい」と力を込める。 (文・鈴木真弓)<o:p></o:p>

 


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