しずおか地酒サロン特別トークセッション「国境を越えた匠たち」の終了後、参加された方々から、元気の源!になるような感想がたくさん寄せられました。本当にありがとうございました。
実は開催前、「なんの目的でやるのか」「単なる思いつきか」「話を聞かせるだけでカネをとるのか」といった匿名電話がありました。「在日の先生や人権団体がかかわっていることで距離を置く人がいるかも」と忠告する人もいました。自分がもらった感動経験を、ひょっとしたら私よりも知るべき人がほかにいるかもしれない、と思い、ただ純粋に伝えようという気持でやっていることが、思いがけない角度で見られていると気付かされて、落ち込んだりもしました。
ちなみにしずおか地酒サロンの参加費は、会場費、準備費、講師謝礼、ボランティアスタッフの食事代などすべて実費に充てております。特定の酒を取り上げても、その蔵の宣伝や営業を目的とした場ではありませんので、関係者からのスポンサードもなし。まったくの自主企画ですから無料での開催は不可能です。このやり方で12年やっています。
在日や人権団体に云々いう人は、自分と思考回路が違うと思うしかありません。私自身は在日の方のご苦労や深刻な人権問題に直面した経験はなく、問題に向き合っている方々のお話を聞くことぐらいしかできませんでしたが、自分が一生のうちに出会う人・経験することは、長い歴史や広い世界の中のほんの微々たるものゆえ、一つ一つに意味があると思って心から大切にしたいだけで、金先生や、静岡人権フォーラムの遠藤正雄さんや、変人の会を主宰する一級建築士の酒井信吾さん(写真左)が、人間的に信頼できる素晴らしい方々だからお力添えをいただき、二つ返事でご協力くださったわけです。
色眼鏡で見る人がいたとしたら、このブログのレポートと感想をぜひ読んでほしいと思いますが、それでも何も響かないのであれば、ご縁がない、と割り切るしかありません。すべての人が、自分と同じものに感動したり、共鳴するとは限らないんですものね。
…そう考えると、自分に共鳴してくれた人が、秋の週末、時間を割いて80人も集まってくれたなんて、スゴイ! 東京から来た人も、確認できただけで4人いました。とんでもなくスゴイ!ことですね。3人の登壇者の吸引力とはいえ、感謝の気持ちでいっぱいです。
松下さんも青島さんも、ただ自分に与えられた仕事に懸命に向き合っているだけで、他者から評価されたいとか、周囲を変えようなんて欲は持ち合わせていない市井の人ですから、壇上に引っ張り出されるのは本意ではなかったでしょう。それでも彼らは、映画の被写体になっているときと同じように、何の力みもなく、ごく自然体で話をしてくれました。もちろん10年以上経て、自分たちのやり方にある程度自信がついたということもあるでしょうが、日ごろ向き合っている生き物との厳しい格闘に比べたら、人前で話したり被写体になることなど大したプレッシャーではないはずだし、他人にどう見られるかなんて、全然気にしないと思います。
6月の田んぼでの偶然の出会いと、わずかな語らいの中から、2人の生き方を「若いのに匠のようだ」「まれにみる奇人変人」と評し、「多くの人に聴かせるべきだ」と背中を押してくださった金先生は、相手の魅力や持ち味を引き出す名人です。人間の生きる力、生きる権利というものに日ごろから真摯に向き合い、大切にされてきた先生だからこそ、と実感します。
今回はみなさんからの感想メッセージの一部をご紹介します。私が想像した以上に、みなさんが3人の対話を深く受けとめ、ご自身に置き換えて考えてくださっていたことに、本当に感動しました。とりわけ静岡入りされながら直前に体調不良でお越しになれなかったにもかかわらず、実名でブログにコメントをくださった藤田千恵子さん、心から感謝します。
これを読まれる金先生、松下さん、青島さんは、みなさんの“お墨付き”を糧に、今後ますます奇人変人道?を極め、意図しないまま多くの人に刺激を与え、地域を変えていかれることでしょう。幸か不幸か、彼らの身近にいてその刺激をたっぷり浴びてしまった私は、それを活字や映像に“変換”し、伝道する役目をおおせつかったと自覚し、精いっぱい努めてまいりたいと思います。他人のプレッシャーを気にして落ち込んでいるヒマなんかありませんね・・・!
(小学5年・女子)映画はとてもよくわかり良かったです。大人になったらお酒をぜひのみたいと思いました。トークは3人の出会いや、かこのことがすごくよくわかりました。とてもおもしろくて良かったです。話をきいてすごくいい気持ちになれました。
(自営業・男性)金先生の司会が上手で、とてもおもしろかったです。今、講師を頼まれている中学生の「職業講話」の参考にもなりました。小5の娘は、「松下さんの、田んぼに行ってみたい」、中3の息子は「青島さんて、ニューヨーク(金融)→藤枝(造り酒屋)でおもしろいね」と言っていました。只今、受験生で、普通高校の普通科と理数科で進路に悩んでいるので、こんな見解になったのかと思います。(*ファミリーで参加してくださいました)
(大学3年・女性)映画の中でもおっしゃっていましたが、「自然を相手にする」「その手伝いをしている」という謙虚な姿勢が素晴らしいと思い、また、これこそが今の社会には足りないのではないかと感じました。汚染米についての質問をさせていただきましたが、そのお答えを聞いて、ますます考えさせられました。
(主婦)人の縁の大切さと必然性を、トークセッションを聞いてつくづく感じます。モノづくりの素晴らしさ・大変さを聞かせていただき、熱き想いを受け取ることができ、感動しました。
(公務員・女性)青島さんと、松下さんの、仕事に対するあまりにも真面目で真摯な姿勢を見ることができ、本当に感動しました。金先生はしきりに「変人」という呼び方をされていましたが、今の世の中、まっとうに生きると「変人」になってしまうのか?と思ってしまいました。
私たちは、世の中や時代のせいにして、自分を偽りながら生きることが普通になっていますが、2人とも、自分にうそをつくことができないんですね。作っているお米や、お酒に対する姿勢や、自然環境に対する謙虚な態度などにも驚かされました。
皆さん、国境を越えた匠たちなのに、グローバリズムの正反対を行き、土地に根ざした農業や、酒造りにこだわっている。あぜ道一本はさんだだけで地面の性質が違うとおっしゃる。スローライフとか「足るを知る」などという言葉が思い浮かびました。こんな生き方ができたら…と思いましたが、誰にでもできることではないですね。
当日、職場が関係する行事があったので(参加を)ちょっと迷ったのですが、本当に参加してよかったです。
(会社員・男性)「愛情に勝る肥料なし」。向き合っている相手の心を感じる気持ちが素晴らしい!
(公務員・男性)青島専務とは何回かお話したことがありましたが、松下さんのお話を伺うのは、今回が初めてでした。今、有機農法で脚光を浴びている方が、どのような想いで食物を育てているのかにとても関心を持って聴講させていただきました。その中で心に響いた言葉は、 「農薬などですべてを排除してしまうという農業に疑問を感じた」 「愛情に勝る肥料なし」。そして、映画での青島専務との会話で 「稲や酵母のポテンシャルを人間は引き出してあげる環境を作ってあげるだけ、人間が(作っていると)過信してはいけない」 と言っていたこと。
まさしく、子育ての言葉ではないですか。「育てる」という原点の言葉です。このような考えを持っている方が、静岡に、そして、地元の藤枝にいることを、とても喜ばしく思いました。
金先生が、青島さんや松下さん、そして鈴木さんまでも奇人変人と呼ばれていましたが、いい意味であたっていると思います。ものづくりにかける情熱が、他の人とはケタ違いで、理解されにくいからです。
この情熱は、感染する。といいますか、多くの人をのめり込ませていくことと思います。僕もそのうちの1人でしょう。他の人達も、どんどん感染させちゃってください。日本がもっといい国になるはずです。
これからも、このような企画を楽しみにしています。僕も自分のポジションでできることはしていかなくては。元気をもらいました、本当にありがとうございました。
(会社員・女性)エチオピアの農業指導経験から、日本の農業に疑問を抱いた松下氏と、NYのマネーマーケットで働くなかで家業の偉大さに気づいた青島氏。どちらも、はからずも自分の生まれた風土を俯瞰することによって、本当に守るべき大切なものに気づかれたんだろうなぁと感じました。これは人生のあらゆる局面に言えることだと思います。そうした意味で、一つの人生勉強をさせていただきました。
(医師・男性)職業は違いますが、同じ志を持って仕事をしているのが分かりました。高品質のものを、自分の出来る分まで作る。欲が出て大量に生産しようとすると質が落ちてしまう・・・。経営者としても従業員や家族を養っていかなければならないので、そのバランスをしっかり保持するのが責任者であると、自分も日々感じています。
本当は私も自分のペースで仕事をしたいのですが、目の前に多くの患者さんがいらっしゃると、そんなことは言っていられません。仕事の時間を長く延ばして夜までやるか、自分の体を気遣って「これ以上診れません」と割り切るか迷っていたので、興味深く聴かせていただきました。ありがとうございました。