杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

浜名湖の中心で地モノ愛を叫ぶ

2009-09-07 12:01:08 | NPO

Dsc_0068   5日(土)は真昼間に浜名湖のど真ん中で潮風を満喫しました。浜名湖漁業体験学習講座「海の恵み探検隊~伝統漁法・袋網魚」の取材です。

 

 県水産振興室が企画し、NPO法人はまなこ里海の会が運営委託した親子連れを対象とした体験教室。取材のつもりが、参加親子たちと一緒に船に乗り、童心に還って大はしゃぎしてしまいました。…だって目の前の網から、トラフグ、セイゴ(スズキ)、クロダイ、カマス、ゴマサDsc_0064 バ、ヒラメ、アジ、イワシ、コノシロなんかが次々とお出ましになるんですもの、「うわぁ、一杯やりたいよぉ」と喉をごっくんごっくんやっていたら、案内役のはまなこ里海の会事務局長の窪田茂樹さんから、「今日は県がスポンサーの親子対象の講座ですから、アルコールはご法度ですよ」とたしなめられてしまいました(苦笑)。

 朝5時起きで車を飛ばして来た身ですから、真昼間から酒が入ったら運転はもちろん、取材も出来なくなるので、もちろんこの場で飲むつもりはありませんでしたが、あまりの豪華お魚ラインナップを目の当たりにし、「伝統漁法を体験した後、獲れたての魚で地酒を味わうなんて企画だったら、私の周りの酒呑み連中は涙モノで喜ぶはず…!」と妄想せずにいられませんでした(笑)。

 

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 昔、たきや漁という、夜、灯りをともして銛で突いてエビや小魚を獲る伝統漁法は経験したことがありますが、今はなかば観光イベント化してしまったそうで、今回の袋網漁はちゃんとした定置網漁法のひとつで、垣根状の網を張り巡らせ、魚群を網の中に導き入れて獲るもの。地元では網の張り方から「角建網」とも呼ばれています。浜名湖の湖面を眺めると、ポールが一定間隔で立っているのが見えますが、その下に網が張ってあるんです。

 知らない一般の釣り人が、「魚が獲れそうなポイントかも」と目を付けて侵入したり、プレジャーボートが網を破ってしまったりと、ちょくちょく“人的被害”を被ることもあるそうですが、網を張る場所はもちろん、網目の大きさから張る面積まで条例で厳しく決められ、浜名湖の漁師さんたちは互いにルールを守りながら、浜名湖の恵みを共有・保存しています。

 

 

 袋網漁はボラ漁から始まり、浜名湖では明治中期頃からさかんになって、網元制度のもとで発展し、今に至っています。漁期は3月末から1月末まで。ただし浜名湖では漁獲量も漁獲金額も圧倒的に多いのは採貝(アサリ漁)で、袋網漁は漁獲金額では15%未満。漁師さんはアサリ漁で生計をたてながら、伝統漁法の維持継承に努めているようです。

 

 

Dsc_0093  漁から戻った後は、浜名漁協鷲津支所の婦人部の皆さんが、ゆで海老やセイゴのから揚げやあじのマリネを作ってくれて、アサリの味噌汁と一緒にふるまってくれました。本場のアサリの味噌汁は、どんな形容詞も陳腐に聞こえるほど吹っ飛びの美味しさ!3杯もおかわりしてしまいました。「こういうつまみを目にすると、呑みたくなる気持ちもわかるよ」と窪田さん。県の事業では無理でも、NPO同士の交流企画ならやれるというので、ぜひ地酒とコラボしましょうと提案しておきました。

 

 最初のきっかけは、単なるお遊び感覚でいいのです。「すごい楽しかった!」という経験が、浜名湖の漁業や環境に関心を持つきっかけになることも。酒も同じですね。あまり小難しい講釈でなく、ストレートに美味しい!楽しい!と思える感動経験をどう仕掛けるか・・・です。

 漁師さんは、ふだんの自分たちの仕事ぶDsc_0123りや食べているものが、特別価値あるものとは思っていないので、感動の伝え方を知らない。今回の体験教室は4年目だそうですが、最初は「こんな当たり前のことをわざわざ見せても意味あるの?」と面倒臭がっていた漁師さんたちも、参加した市民や子どもたちが、自分たちがやっていることに目を輝かせ、純粋に喜ぶ姿にふれるうちに変わってきて、今では窪田さんたちNPOが気を遣わなくても、漁師さん自身、積極的に参加者をもてなすようになったとか。・・・いいですね、そういう変化って。

 

 酒の世界でいえば、静岡の蔵元さんたちの意識は、ここ数年、着実に変わってきています。とくに若い世代が、自分たちの仕事の価値や継続させる意義を真剣に考え、異分野の人々との交流に積極的になっている。先日のしずおか地酒サロンの「売り手と飲み手の本音トーク」に蔵元が3人も自費参加し、議論にも加わったこともよく解りました。

 漁業と酒造業ではベースが違うかもしれませんが、地のモノの価値を見直し・伝え・守るという意味では共鳴できる部分もあろうかと思います。問題意識を持っている人々と、ぜひ今後とも交流していきたいと強く願いました。

 

 

 浜名湖漁業体験学習講座・海の恵み探検隊は、第2弾トラフグ漁は11月8日、第3弾アオノリ養殖は来年2月27日に開催予定です。詳しくはNPO法人はまなこ里海の会までどうぞ。


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