JA静岡経済連発行の情報誌『S-mail〈スマイル)』56号が発行されました。今回の特集は静岡みかん。青島みかんの出荷ピーク時(12月中旬~1月上旬)を避け、前もっての取材でしたが、この冊子は校正にじっくり時間をかけて作っているため、ピークが過ぎてしまった2月末の発行となってしまいました。
旬のある農産物の取材って難しいですね、その年の気候や流通事情によって環境が変わるため、前年に前倒しで取材しておけばよいというものでもない。タイムラグがほとんどないネット情報に比べてスピード感に劣るのは確かですが、それでも今現在の産地の偽りのない姿を正しく記録し、消費者に丁寧に伝えていく・・・紙媒体の情報誌のあるべき使命を、この冊子作りからいつも学ばせてもらい、ライターの矜持としています。
今回のみかん特集では、みかんが生鮮食品としては初めて消費者庁から機能性食品表示許可を得たことをクローズアップしました。ここでは、表示許可のエビデンスを提供した興津の国立農業・食品産業技術総合研究機構の杉浦実先生の解説コーナーを紹介しましょう。先生にはお忙しい中、校正のお手間をおかけしました。ありがとうございました。
「機能性表示食品」みかんで健康長寿を!
~解明されたβ―クリプトキサンチン効果
平成27年9月、三ケ日みかんが生鮮物では初めて機能性表示食品として消費者庁に登録(受付番号A79)され、同年秋から段ボール等の包装資材に「本品にはβ-クリプトキサンチンが含まれています。β-クリプトキサンチンは骨代謝の働きを助けることにより骨の健康に役立つことが報告されています」と表記して販売スタートしました。翌28年にはJAとぴあ浜松でも機能性表示が始まり、その動きは県下全域へと広がっています。今回は長年にわたってみかんの栄養疫学研究を手掛け、機能性表示認証に貢献された杉浦実先生に、注目の機能性成分β—クリプトキサンチンの働きについて解説していただきました。
(解説)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
果樹茶業研究部門 カンキツ研究領域
カンキツ流通利用・機能性ユニット長
杉浦 実氏
骨を丈夫にする効果
皆さんはみかんをたくさん食べると指先やてのひらが黄色くなるという経験、ありませんか? みかんに含まれるβ—クリプトキサンチンというカロテノイド成分の仕業です。オレンジ、パパイヤ、赤ピーマン、カキ、モモ、ウメ等にも含まれていますが、温州みかんが突出して多く含まれています。
近年、欧米を中心とした栄養疫学研究では、果実・野菜が健康な骨の維持・形成に重要な役割を果たしていることが判明しています。当研究ユニットでは浜松市北区三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査を平成15年度から行ってきました。骨密度調査についても平成17年度から開始し、みかんが骨粗しょう症の予防に有効かについての検討を行っています。
調査は三ヶ日町の住民健診受診者のうち協力の同意をいただいた住民676名(男性222名、女性454名)に、①空腹時採血による血中カロテノイド値の測定、②非利き腕における骨密度測定および自記式問診票調査を行いました。その結果、特に閉経女性で、血中β-クリプトキサンチンレベルが高いほど骨密度が高い傾向が認められました。
さらに骨粗しょう症を有さない閉経女性を対象にした4年後の追跡調査では、血中のβ-クリプトキサンチン濃度について、低いグループから、高いグループまでの3グループに分け、各グループでの骨粗しょう症の発症率を解析したところ、血中のβ-クリプトキサンチンが高濃度のグループにおける骨粗しょう症の発症リスクは、低濃度のグループを1.0とした場合0.08となり、統計的に有意に低い結果が得られました。
三ヶ日町研究の追跡調査で判明したさらなる効能
β-クリプトキサンチンが病気の発症リスクを抑制することを明らかにするため、協力者の健康状態の変化を毎年調べる追跡調査を10年間行い、新たな知見を得ました。
◎2型糖尿病の発症リスクが有意に低い
糖尿病を有さない人を対象に追跡調査をしたところ、血中β-クリプトキサンチン濃度が高かった人では低かった人達に比べて2型糖尿病の発症リスクが約57%低くなることが解りました。果物は糖尿病にはよくないと思われがちですが大半が水分です。β-クリプトキサンチンの豊富なみかんを積極的に食べることで糖尿病の予防に繋がるかも知れない大変貴重な知見です。
◎肝機能異常症の発症リスクが有意に低い
肝機能が正常な被験者を対象に追跡調査を行ったところ、血中β-クリプトキサンチンレベルが高い人は肝機能異常症(血中高ALT値が30‐U/L以上)の発症リスクが約49%低下することが判明しました。
◎脂質代謝異常症の発症リスクが有意に低い
脂質代謝異常症を有さない人を対象に追跡調査を行ったところ、血中β-クリプトキサンチンレベルが高かった人は、脂質代謝異常症(高中性脂肪血症)の発症リスクが約33%低下することが判明しました。
◎動脈硬化症の発症リスクが有意に低い
動脈硬化症状を有さない人を対象に追跡調査をしたところ、血中β-クリプトキサンチンレベルが高かった人では、動脈硬化の発症リスクが約45%低下することが判明しました。
甘いみかんほど含有量が高く、体内で貯金できる
このようにβ—クリプトキサンチンには生活習慣病全般の予防効果が期待できることが判りましたが、一日どのくらい摂取したらよいのでしょうか。
我々の研究結果では一日当たり3ミリグラム=温州みかんMサイズで3個分を摂取している人でさまざまな病気のリスクが低下していることがわかっています。
みかん中のβ-クリプトキサンチンは、みかんの糖度が高ければ高いほど多く含まれます。JAの選果場では光センサー選果機によって糖度選別が行われるため、これはβ-クリプトキサンチン含有量を間接的に全数検査していることにもなります。光センサー選果機が導入されていない産地でも、一定量のサンプリング試験を行えば機能性表示食品としての申請は十分に可能と考えられます。またβ—クリプトキサンチンは8℃付近で貯蔵すると増えることもわかりました。
一般に「糖度の高い果物は太る」という思い込みをされがちですが、みかんMサイズの可食部のカロリーは35~40キロカロリー程度。一日3個食べたとしてもご飯茶碗1杯(約280キロカロリー)に比べたらはるかに低カロリーです。
β—クリプトキサンチンは脂溶性のカロテノイドであるため、肝臓など大型臓器に貯まりやすいという性質があります。つまり冬場のシーズンにみかんを食べ貯めておくと、年間を通してその効能が期待できるのです。
みかんが日本人の健康長寿にとっていかに大事な果物であるかを、今回の表示制度をきっかけに認識を深めていただき、産地がより一層元気になることを期待したいと思います。
JR興津駅の北側にある国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門(すごい長い名前!)は、 明治35年(1902)、国の農事試験場園芸部として創設しました。創設記念に植樹されたスズカケの並木は日本で最初に植えられたプラタナス並木で、全国の同種の街路樹はすべてここから枝分かれしたものだそう。東大のイチョウ、北大のポプラと並んで日本3大並木に数えられるのです。また明治45年にはアメリカに桜の苗木3000本を寄贈し、ワシントン市ポトマック湖畔の桜として有名になりました。すごい研究所だったんですね!!
S-mailは県内主要JA支店、産直マーケット等で配布しています。また経済連のHP(こちら)ではバックナンバーが電子書籍化されていますので、ぜひお目通しください。
昭和40年代旧静柑連もソ連に輸出と飲料
クワスの輸入販売、ソチの黒海沿岸に温州みかんの苗木を送ったような交流記事がありました。
みかんも袋入り販売は購入金額が高く
個食の増加から果実の小実化、1個売りが東京では増えていると感じています。
いちごもいちじくも1回分なら買いたいよ