杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

増井傳次郎さん永遠に

2012-01-14 21:24:11 | しずおか地酒研究会

 新年早々、静岡酒ファンのみなさんにはとても哀しいお知らせです。『満寿一』の蔵元杜氏・増井浩二さんが急逝されました。49歳。同学年です。

 

 昨年来、調子が良くないという話はそれとなく聞いていたんですが、そんなにお悪かったのかと愕然としました。

 

 

 

 今日(14日)は夕方から活き生きネットワークの新年会に参加したんですが、出掛ける直前に訃報の連絡をもらい、気が動転しながらも、街中の酒屋さんに直行して満寿一の純米吟醸を買って新年会場に向かいました。その酒屋さんは、昔は満寿一を主力に売っていたのに、今は他の銘柄がメインで、店員さんに「満寿一はもう置いてないの?」と訊いたら、常温の棚の一番下の隅っこを案内されました。・・・なんでこんな扱いなんだと怒りにも似た感情が湧いてきました。

 

 新年会はとても楽しかったのですが、満寿一の酒瓶を目の前に、辛さを堪えるのに必死で、「日本酒は高くてふだん飲めないから、今日は得をした~」「こんなうまい日本酒は久しぶり」と喜ぶ新年会参加者に、静岡市の蔵元なんですよ、貴重な酒ですよ、と勧めるので精一杯でした。

 

 

 増井さんは、しずおか地酒研究会の発足時から、何かと協力をしてくれました。

 

 

 今でも真っ先に思い出すのは、発足年の1996年、第3回地酒塾として熱海のホテルで合宿がてら開催した『サポートしよう、ホームタウンの酒屋さん』というトークミーティング。

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 東京の酒文化研究所の山田聡昭さんに基調講演をお願いし、パネルディスカッションでは、蔵元代表で増井さん、望月正隆さん(正雪)、望月雄二郎さん(志太泉)、酒販店代表で横関金夫さん(酒舗よこぜき)、河原崎吉博さん(丸河屋酒店)、小林秀俊さん(旭屋酒店)という6名の強力パネリストで、静岡酒がなぜ地元で買いにくいのか、マーケティングの問題点についてディベートしたのです。

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 今から思うと、よくこんな企画を立てられたなあと我ながらビックリです。

 

 

 

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 増井さん(右写真)も2人の望月さんもお若かったなあ。私もこのとおり、すっぴんを晒せる年齢でしたが、顔はパンパンですね(笑)。下の写真中央の栗田覚一郎さん(元静岡県酒造組合専務理事・故人)もお元気でした。酒文化研究所の山田さImg052
ん(下写真の右)もお若いお若い!

 

 

 

 肝心のトークがどんな内容だったか、そのときの記録がないので紹介できませんが、増井さんの意見は鋭かったという印象だけは残っています。「しずおか地酒研究会は烏合の衆ではダメだ、真に志ある者を選んで、一歩先を行く活動をすべきだ」と助言されたこともありました。

 

 

 静岡新聞でこちらこちらの記事を書いたときは、「蔵人にとってどんなに励みになったか」と手放しで喜んでくれました。私の立場では、冷やかし程度の応援しかできないけど、増井さんは蔵元の中でも、しずおか地酒研究会や私のライター稼業に対してきちんと意見や評価をしてくれる、貴重な存在でした。

 

 河村傳兵衛先生からは、「増井傳次郎」という杜氏名を与えられ、傳一郎さん(國香の松尾さん)、傳三郎さん(喜久醉の青島さん)と3兄弟で、静岡酵母の正統派伝承蔵として、吟醸王国しずおかを支える存在のはずだった増井さん。河村先生、松尾さん、青島さんの心情を思うと、よけいに辛くなってきます。

 

 

 

 お通夜は1月18日(水)18時から、葬儀は1月19日(木)13時から。場所はいずれもセレモニーホール静岡(静岡市葵区慈悲尾)です。弔意を送られる方は、満寿一酒造(静岡市葵区山崎2丁目32‐5)宛てよろしくお願いします。


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