杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

『127時間』と『冷たい熱帯魚』を観て

2011-07-03 14:11:24 | 映画

 この夏は出来る限りエアコンなしで頑張ろうと思っていたんですが、昨日(2日)の昼間、2時間ほど外を歩いていたら、頭がボーっとなって、くらくらしてきて気分が悪くなり、予定を切り上げ、家に戻ってエアコンをON!・・・ひょっとしてこれが熱中症の初期症状かとこわくなりました。今まで、真夏だろうと何だろうと平気で外を取材して走り回っていたのに、油断できないですよね~

 

 帰宅したら部屋の中は36℃ぐらいになっていて、こりゃ室内でも熱中症になるわと冷房の風を「強」にして、30℃近くまで下がったところで「除湿」に切り替えました。少し横になって落ち着いたところで、夕方、テレビをつけたら、節電特集番組でエアコンは「冷房」よりも「除湿」のほうが電気代がかかると知って、またまたあわてて「冷房」に。一般のエアコンでは除湿モードというのは室温が一定温度まで下がったら逆に温度を上げるんですってね。もともとエアコンが苦手で機能をよく知らずにいて、つけるときは節電のつもりで、わざわざ除湿にしていたのがアダだったわけです・・・とほほ。

 

 そんな暑さ対策として、昼間は時間があれば映画館に駆け込み、夜は「ゆらら」のプールウォーキングで避暑しています。2ヶ月間、夕食前に水中運動を続けたら、夕食が軽くなり、体重も4kgダウンできました。

 食事前に運動すると、肝臓に蓄積された糖が排出されて、脳が糖は十分だと認識して空腹感を抑えてくれるそうです。せっかく運動したんだから食べ過ぎないようにしようって気分にもなりますしね。この時期、体が4kg軽くなるって、何かと助かりますよ、ホント。もう少し頑張って、はけなくなったパンツやタンクトップが着られるよう、お腹回りと二の腕のダブダブをなんとかせねば!

 

 

 映画は『127時間』『冷たい熱帯魚』が、いずれも監督の異才サクレツ!で、涼みに行ったのに逆に全身熱くなってグッタリするほど。でもいずれも秀逸でした。

 

 『127時間』はアメリカ人冒険家がロッククライミング中の事故で片腕を岩にはさまれる127時間のサバイバルを描いた実話ベースの物語。身動きできない主人公の一人芝居で2時間のドラマを描き切ったダニー・ボイル監督の手腕は奇跡ともいえるほど。これほど演出家の力量が試され、成功した作品を観ると、映画ってわざわざお金を払って時間を拘束されてまで堪能する価値のあるメディアだとつくづく実感します。

 

 

 邦画だったら、残された家族や救援隊の話なんかをつなげて“命の尊厳”みたいなものをことさら強調させるかもしれないけど、ダニー・ボイルは主人公に独りで自分の生とトコトン向き合わせる。だからこそ彼の最後の選択に重みが出てくる。

 その選択は観ているほうにキリキリするような苦痛を与えるけれど、自分が生きるか死ぬかの極限に置かれたらどんな選択をするだろうと、真剣に考えることができる。テンポがいいから変な重みじゃないんですね。ある意味とても爽快な仕上がり。炎天下でバーベキューをして汗だくだくになったあと、生ビールをクーっと呑み干すような感じかな。静岡市内では現在も上映中ですから、未見の方はぜひ。

 

 

 『冷たい熱帯魚』は以前から観たいと思っていた園子温監督の作品で、藤枝で限定上映されました。園監督のことは、朝ドラ出演中の満島ひかりさんがブレイクした『愛のむきだし』を観てから。4時間超の長尺ながら、日本にもこういう商業映画を創るクリエイターがいるんだなあと唖然としながら一気に観てしまいました。偶然ですが、ダニー・ボイル監督の出世作『トレイン・スポッティング』を思い出しました。ジャンルもテイストも全然違うけど、監督の肝の据わり方、みたいなものが似ているなって。

 

 

 『冷たい熱帯魚』は埼玉愛犬家連続殺人事件をモチーフにしたクライムドラマ。温厚で小市民的な役柄が多いでんでんさんが、私が観た作品では『羊たちの沈黙』のレクター博士(アンソニー・ホプキンス)、『ダークナイト』のジョーカー(ヒース・レジャー)に匹敵いやそれ以上の“ワル”を演じ切って、お見事の一語でした。

 レクター博士もジョーカーも、知的で残酷で魅力的ですが、異形のせいか、どこか作家が創り上げた理想の悪役って感じ。でも、でんでんさんが演じた村田は、見た目はフツウの調子のいいエロおやじで、舞台は架空の町『富士見市』だけど、ロケした富士市か富士宮市あたりのリアルな風景だから、「ひょっとしてこういうおやじ、いるかも」と思えてきて、背筋が寒くなりました。今後、普通のドラマで普通の役を演じるでんでんさんを観ても、「“村田”の人格が出てきたらどうしよう」って期待しちゃうかも(苦笑)。

 

 劇中の犯罪過程では、『127時間』で味わった苦痛の何十倍ものキリキリ感を与えられ、目をそむけたくなって、監督には失礼な見方かもしれないけど「・・・これは造り物だ、美術さん、GJだ」と必死に言い聞かせ、目をそむけちゃったら監督にもっと失礼じゃないかと自分をナットクさせながら、全身を硬直させながらスクリーンに向き合いました。映画を観ながら、こんなに熱くなったり寒くなったりする体験って映画館では久しぶり・・・。観客を、目や頭だけじゃなく全身びりびり刺激させるための監督のワナかと思えるほどでした。

 でもこういうことこそ、お金を払わせ、時間を拘束させてまで映画館で見せる作品の醍醐味なんですね。

 

 

 「避暑」のつもりで来た映画館が、とんでもないホットスポットだったと気づき、よけいに熱くなってしまいました。『冷たい熱帯魚』は間もなくDVDが発売になるようですから、未見の方はお楽しみに!

 

 


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