杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

羽田エクセルホテル東急日本酒セミナーとその前後

2009-10-10 12:13:37 | しずおか地酒研究会

 7~9日と東京出張でした。東京で台風を迎えるのは初めてで、濡れてもいいボロ靴で、カバンを拭くタオルや防水スプレーや、イザとなったら頭からかぶろうと透明ゴミ袋!まで用意して行ったのに、どしゃぶり豪雨に遭うことはなく、拍子ぬけ?(笑)。その代り、山手線や私鉄がストップし、品川から銀座へ行くのに2時間もかかるなど、都会の足の脆弱さをまざまざと体感しました。

 

 

 大雨や洪水の被害がなく、地下鉄は大丈夫だろうと、最寄りの地下鉄駅に走ると、みんな考えることは同じで、ホームに入りきれない群衆・・・。30分に1本ぐらいしか動いていない地下鉄を3本見送り、やっと4本目に乗れたと思ったら、ドアに人がへばりつくようなぎゅう詰め満員電車。・・・これはこれで静岡じゃ体験できない貴重な経験でしたが(苦笑)。

 

 

 

 まず7日は独立行政法人日本芸術文化振興協会の映画製作に対する補助金制度の説明会に参加しました。昨年まで文化庁がやっていた文化支援事業を特殊法人が引き継いで運営するものです。商業映画、記録映画(ドキュメンタリー)、アニメ映画の3部門あって、昨年度は178件の応募に対し、48件が採択を受けました。記録映画部門は応募54件・採択10件と、決して“広き門”ではありませんが、宝くじと同じで、買ってみなけりゃ(応募してみなけりゃ)当たらないわけで、とにかく資料だけももらっとこうと思いました。

 

 

 説明会会場は300人ぐらいは来ていたでしょうか、いかにもギョーカイ人っぽい人から、私みたいに地方から来た感じの人まで満杯で資料が足りなくなるほどでした。応募資格が、映画製作を目的とする・または実績を持つ団体に限ると言われ、うちのように市民や有志が記録映画を作ろうと委員会組織(吟醸王国しずおか映像製作委員会)を立ち上げたケースでも、委員会の中核が映画製作実績のある団体でなければ不可らしく、なんだ、結局、映画会社や映画プロダクションしか相手にされないのか・・・とガッカリ。帰って資料をよく読んで、関係者のみなさんに相談してみようと思っています。

 

 

 

 

 

 8日は東京新聞購読者紙『暮らすめいと』の取材で、虎ノ門の日本酒造会館1階にある日本の酒情報館SAKE・PLAZAを訪問。ここにたどり着くのに、前泊した品川から2時間30分かかりました。朝、品川駅前のコンコースは、京急が改札を封じたため、改札が開くのを待つ人と、JRに乗れずに戻ってきた人でスシ詰めおしくらまんじゅう状態。…必死の突破で荷物をコインロッカーへ預け、突風が吹きぬける中、地下鉄都営浅草線の高輪口まで歩き、改札で駅員から「今、ホームへ降りても電車には乗れませんよっ!」と怒号がかかる中、おかまいなしに降りて見ると、ここも大行列。ちゃんと行列してるだけマシだと思い、待って待って、ようやく乗れて、新橋で下車。降りたとたん、山手線復旧のアナウンスでした(苦笑)。

 

 SAKE・PLAZAで情報を仕入れた後、内幸町の中日新聞東京本社に歩いDsc_0005 て移動。東京新聞首都圏編集部の記者で「挑戦する酒蔵」という本を書いた土田修さんにインタビューです。取り上げたのは福正宗(石川)、満寿泉(富山)、自然郷(福島)、ダルマ正宗(岐阜)、大七(福島)、男山(宮城)、竹葉(福島)の7蔵。いずれも純米酒造りで異彩を放つ蔵元です。

 もともとは、満寿泉の名杜氏三盃幸一さんに話を聞く機会があり、感銘を受け、いつか本にしたいと思っていたところ、土田さんが所属する「酒蔵環境研究会」という組織が農文協から酒の本を出してくれと依頼されて、会で縁のある6蔵を加えて本にしたということです。

 

 

 三盃さんといえば、亡くなった開運の波瀬正吉さん、常きげんの農口尚彦さん、天狗舞の中三郎さんと並ぶ“能登杜氏四天王”の一人。本の中でもひときわ読み応えのある記事になっています。「波瀬さんが亡くなったのはショックでねぇ・・・」と肩を落とす土田さんに、「昨年能登のお宅で40分ぐらいインタビューを撮っています。映画本編ではごく一部しか使えないと思いますが」とお話すると、「ぜひ通しで見せて!できたら記事にしたい」とパッと明るい顔。苦労して撮っている映像が、誰かの役に立つ、仕事につながると思うと、無上の喜びとやりがいを感じますね!!。

 

 

 

 

 8日夜は、かねてよりお知らせの、羽田エクセルホテル東急「第1回日本酒Imgp1487 セミナー」です。『吟醸王国しずおかパイロット版』を気に入ってくださった総支配人の吉岡さんが企画され、映像の主要登場人物の一人・青島孝さん(青島酒造)に酒を通したモノづくりの価値をお話いただき、喜久醉主要ラインナップを飲み比べていただくというプログラム。40名の定員いっぱいの申し込みをいただいていたそうですが、台風の影響で、JAL関係者のキャンセルが10名ほど。前述の土田さんも申し込んでくれていたのですが、やはり台風取材のあおりでキャンセル。それでも、ANAやエアーニッポン、日本空港ビルディング、県東京事務所、静岡新聞東京支社、羽田経済新聞、日経ビジネス、リクルートじゃらんリサーチセンター、朝日マリオン、共同通信、dancyuなどなど、羽田ならではのユニークなメンバーによる地酒サロンになりました。

  

 びっくりしたのは、ANA東京支店法人室のお2人が静岡市と藤枝市の出身だったり、広島県西条出身のベテラン機長さん、広島大学出身で西条酒まつり常連という地元大田区の食品会社若手社員の方など、やっぱり類は類を・・・と思わず笑ってしまう酒つながりの輪ができたこと。21時の中締め後も、席を立つImgp1474のは最終新幹線で帰らなければならない青島さんだけ(苦笑)で、終了後は「初対面の人が多かったけど、落ち着いて酒と食事と会話が楽しめる大人の会だった」「雰囲気のいい会だったね」と喜んでいただけました。

 

 

 リクリートじゃらんリサーチセンターの竹田邦弘さんは、リクリート静岡支社長時代にニュービジネス協議会でご一緒した方で、「スズキさんとこんな場面で再開するとはねぇ」と苦笑い。「今はじゃらんの営業で富士山静岡空港の担当になり、苦労してますよ」とのこと。

 

 

 県の人が来てくれた席で空港の話はしにくかったのですが、静岡の空港なのに免税店では開運しか買えないし、売店では他の土産物と同じようにただ並べてあるだけで、県情報スペースに空瓶の陳列をしたものの「地酒は買いにくい」と感じちゃうような紹介の仕方・・・羽田ではこれだけの会をやってくれるというのに、もうちょっと何とかならないの~と思っていたところ、日本空港ビルディングの代表で来てくれたお2人が「…実は免税店の銘柄選びは私たちがやってまして」と苦笑い。「日本酒の場合、酒税のからみで、免税店で扱える(税抜き販売できる)商品をお願いできる蔵元さんが限られるんですよ」と説明してくれました。

 

 

 いろいろな情報もたくさんもらえた羽田での地酒サロンでしたが、やっぱり嬉しかったのは、『吟醸王国しずおか』の映像を初めて観たベテラン編集者の方から「いやぁ、活字はかなわないなぁと実感したよ」、またすでに観ている方から、「観るたびに感動が深まって来る、波瀬さんのシーンでは本当に涙が出てきた」としんみり言ってもらえたこと。一度見れば十分、という説明ビデオやプロモーションビデオではなく、スポンサーや資金集めが難しくなろImgp1502うとも自分が伝えたいと思う酒造りの姿を描こうと決めたことに、後悔はするまい、との思いを強くしました。

 

 会の実現に多大なご協力をくださったdancyu plus編集長の里見美香さん、羽田エクセルホテル東急の吉岡さん、姉崎さん、高遠さんはじめスタッフのみなさま、そして稲刈り前の多忙な中、羽田まで駆け付けてくれた青島さん、本当にありがとうございました。

 今日(10日)の静岡新聞朝刊志太榛原面で紹介していただきましたので、ご覧になれる方はぜひ!

 

 

 

 

 翌9日は静岡県ニュービジネス協議会の視察で、幕張メッセで開催中のCETEC JAPAN(アジア最大の最先端IT・エレクトロニクス総合展)に行ってきました。日本酒の伝統技術や、ドキュメンタリー映画の自主制作のような超アナログの世界から、一変した超ハイテクの世界。大手家電の3Dテレビや、NHKのスーパーハイビジョン映像を観ましたが、映像が高度に進化することで、ソフトを提供する側は、コンテンツ選びや取材方法がますます難しくなるだろうなぁImgp1497 と実感しました。

 たとえば磯自慢の多田さんの「一粒の蒸し米に菌糸を1本だけ付ける」神業が、リアルに映像化できるとしたら、それはそれで凄いことですが、日本酒のロマンとか酒造りの神秘性みたいなものを冒すことにならないだろうか・・・なんてふと考えてしまいました。

 

 

 嵐のような3日間が過ぎ、今日から世間は3連休。私は連休返上で『暮らすめいと』日本酒特集と、ニュービジネス協議会上海研修取材記の執筆です。明日11日の誕生日も、去年と同様、色気のない一日になりそうです・・・。


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