杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

中日新聞掲載「富士山に生息する動物」

2011-12-09 09:22:53 | NPO

 12月3日(土)の中日新聞朝刊に富士山特集第9弾『富士山に生息する動物』が掲載されました。世界文化遺産登録の動きでは、今の富士山の動植物の生態にはあまりスポットが当たっていないようですが、世界遺産に登録されたら何が大事って、今のこの富士山をどうやって維持管理していくか。それには、今の富士山がどういう状態かを正しく知っておかなければなりません。

 

 

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 今回の取材では、NPO法人静岡県自然史博物館ネットワークの三宅隆副理事長に、富士山には42種類もの哺乳類が生息していて、日本のバードウォッチング発祥の地だったということを教えてもらいました。

 

 ふだん何気なく、遠目から、見えた見えないで一喜一憂しているけど、富士山は、まぎれもなく野生動物の棲家なんだって認識を忘れていたような気がする。それに、外来種が急増していて、在来種の生息地が危機にさらされているという現実。このことは改めて紹介しようと思います。

 ・・・とりあえず、ネズミやモグラの名前がこんなにあったんだって知るだけでも勉強になりますので(苦笑)、ぜひご一読を。

 

 

 

〈富士山に生息する動物〉 変わりゆく環境の中、命をつなぐ希少種たち<o:p></o:p>

 

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 富士山の世界文化遺産登録推薦書草案がユネスコ世界遺産委員会に提出され、静岡県でも登録への気運醸成に努めている。その一環として、県が10月に開催した『富士山県民講座』は、富士山の文化的価値を県民に広く理解してもらおうと、各分野の専門家を講師にそろえた。第3回目のテーマは「富士山に生息する動物」。獣医師でNPO法人静岡県自然史博物館ネットワークの三宅隆副理事長に解説してもらった。<o:p></o:p>

 

 

富士山の哺乳類は42<o:p></o:p>

  日本には現在、100種類ほどの陸生哺乳類が生息している。静岡県にはこのうち50種類、富士山一帯には42種類が今までに確認されている。<o:p></o:p>

  富士山はおよそ10万年前から形成が始まった比較的若い火山。独立峰で他の山地との往来が難しいため、大型の哺乳類は意外と少ないが、コウモリ、ネズミ、モグラ類は複数種生息する。とくにコウモリ類は、キクガシラコウモリ、テングコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリなど溶岩洞や樹洞性のコウモリが多い。富士山の名前が付いたフジホオヒゲコウモリというヒメホオヒゲコウモリの亜種もいる。<o:p></o:p>

  ネズミではヒメネズミ、アカネズミ、スミスネズミ等。モグラでは体長7084ミリという日本最小のヒメヒミズ、富士山固有のフジミズラモグラ、トガリネズミ等の小型種。<o:p></o:p>

  このほか、ニホンリス、タヌキ、アカギツネ、テン、アナグマ等も生息する。ネズミが多ければ、これを餌にするテンやキツネも多いということだ。<o:p></o:p>

 

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 富士山に生きる希少種<o:p></o:p>

  珍しいところでは、天然記念物のヤマネ。標高1250メートル付近から上の混交林に多く生息する。樹洞を利用することが多いが、シジュウカラ用の巣箱に入ることもある。シジュウカラはモグラやネズミ等の獣毛やコケを巣に運ぶ。そのコケの中でヤマネがちゃっかり寝ていることもある。シジュウカラには災難だが、ヤマネにとっては快適な生息地なのだろう。<o:p></o:p>

  ツキノワグマはブナ等の落葉広葉樹林を中心に生息する。木の実や昆虫等を餌にするが、森林伐採や有害駆除等の要因のほか、富士山が独立峰で他山との往来ができないことから遺伝的な問題が加わり、生息数は減少傾向にあると思われる。静岡県レッドデータブックで、絶滅のおそれのある地域個体群にも指定されている。<o:p></o:p>

  また富士山西斜面の滑沢から大沢付近、北斜面の青木ヶ原、東斜面の木の根沢ではニホンカモシカも棲む。標高1300メートル以上の混交林で観察できる。<o:p></o:p>

 

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 日本で初めてバードウォッチングが始まった野鳥の聖地<o:p></o:p>

  富士山は野鳥の生息地としても知られる。富士山東麓の須走は、戦後、日本で初めてバードウォッチングが開催された地でもある。現在までに約220種余の鳥が確認されていて、代表的なところでは、ホシガラス、イワヒバリ、アマツバメ、カヤクグリ等。<o:p></o:p>

  ホシガラスは標高1700~2500メートルのハイマツやブナ林に生息する。体に星のような斑があり、カラスらしくガァーガァーと鳴きながらハイマツの実等を食べる。五合目の食堂の傍でも見られることがある。イワヒバリは標高2700~2900メートル地帯に少数が生息する。11月頃になると標高の低いところに移動し、冬場は数羽から10羽前後の群れで生活する。チョロリロリ…という澄んだ鳴き声が特徴だ。<o:p></o:p>

  一方、夏鳥の代表格がアマツバメ。4月上旬に渡来し、五合目付近の岩の隙間を住処として10羽前後の群れをなし、チリチリチリーと金属的な声を鳴きながら飛んでいる。カヤクグリは3月下旬頃から11月下旬ごろまで亜高山帯で生息する。ミヤマハンノキ等の低い木々にとまって、チィーチィーチリチリと愛らしくさえずる。<o:p></o:p>

 

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 富士山に出現した“シカ道”<o:p></o:p>

  ツキノワグマ等の減少が懸念される一方で、近年、シカやイノシシが増加し、樹木や農作物に被害を与えるようになった。とくにシカは10数年前から激増中で、森林地帯では樹木の皮や根っこがかじられ、さらにササも食い荒らされて枯れ、一部ではシカが食べない種類の野草が群生するようになった。<o:p></o:p>

  今年、三宅さんたちが富士山麓5カ所で行った定点観測でも、いたるところにシカの足跡が見られ、シカ道”が形成されているところも多い。「さまざまな意見があると思うが、森林を守るために適切な管理計画を作成し、個体数調整が必要な時期に来ているのでは」と三宅さんは語る。<o:p></o:p>

 

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 侵略的外来種の増加<o:p></o:p>

  さらに、富士山の動物を取り巻く環境で大きな変化といえば、外来種の増加だ。三宅さんの観測では、富士山本体にはさほど数がいないと思われていたハクビシンが頻繁に記録写真に写っていたという。ハクビシンは県内でも最も数が増えた外来種で、元々は台湾から持ち込まれて来たとされる。<o:p></o:p>

  鳥では中国原産のガビチョウ、ソウシチョウといった外来種が急増している。両種とも日本生態学会により「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定されている要注意種である。<o:p></o:p>

  ソウシチョウは富士山で標識調査を実施している人によると、今では最優占種になっているという。生息場所を占領された在来種に負の影響が出るのは時間の問題だろう。<o:p></o:p>

 

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 富士山にアライグマ!?<o:p></o:p>

  富士山麓の富士宮市の旧花鳥山脈では、2003年に県内で初めて、アライグマが確認された。テレビアニメの人気でペットとして飼われたが、成長すると気性が荒くなるため、捨てられたり逃げられたりで、アニメ放送から10年ぐらい経って日本各地で野生化したアライグマが見られるようになった。<o:p></o:p>

  このような外来種の増加は、病原菌の人への感染や日本在来種動物への影響、農業被害や神社仏閣等の歴史的建造物の破損など、さまざまな問題を引き起こす。<o:p></o:p>

 

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  標高差によって動植物が生息する環境が大きく変化する富士山。最近では野焼きをしなくなった影響で山麓の高原地帯も、本来の高原らしさが失われつつあるという。そんな中、富士山という厳しい自然を“我が家”とし、種を残そうと必死に生きる鳥や動物の存在に、我々も心を寄せていかねばならない。彼らも富士山の一部、なのである。(文・鈴木真弓)<o:p></o:p>

 

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参考文献

 ○しずおか自然史(NPO法人静岡県自然史博物館ネットワーク編・静岡新聞社)<o:p></o:p>

 ○恐るべし外来生物(?法人静岡県文化財団)<o:p></o:p>

 ○まもりたい静岡県の野生生物―県版レッドデータブック(静岡県環境森林部自然保護室編・羽衣出版)<o:p></o:p>

 ○富士登山ハンドブック(社団法人富士自然動物園協会編・自由国民社)<o:p></o:p>

 ○富士の鳥(浅見明博・堀田明著・保育社)<o:p></o:p>

 

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