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文献レビュー 新型コロナウイルスの集中治療/ジャーナルクラブ PART 1

2020年03月04日 01時12分01秒 | COVID-19の集中治療

文献 新型コロナウイルスの集中治療 PART 1

COVID-19への集中治療・診療バンドル

 

救急科指導医・専門医

集中治療専門医

松田直之

NAOYUKI Matsuda MD, PhD

 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2およびCOVID-19の管理にお役立て下さい。

救急一直線「COVID-19への集中治療・診療バンドル2020」を考える参考文献の解説とします。

 

 Bundle 0 集中治療室および救命救急センター設置拡充の必然性 

文献紹介

日本のベッド数は世界で一番 https://data.oecd.org/healtheqt/hospital-beds.htm
日本の集中治療ベッドは世界と比較して少ない:超急性期管理場が少ない https://www.statista.com/chart/21105/number-of-critical-care-beds-per-100000-inhabitants/

 COVID-19などの外来急性期を管理するには,重症化に備えた救命救急センターや集中治療室(intensive care unit:ICU)の普段からの運営が大切です。本邦は人口あたりのベッド数は世界最多ですが,術後ICU以外の救命救急センターICUや内科系ICUの設置が不十分であり,多くの方策が前向きに必要とされています。人口あたりの日本のICU設置率は,2017年から2018年の段階でCOVID-19でICU医療崩壊が報じられているイタリアより低い10万人あたり7.3ベッドです。

 日本では,COVID-19などの新興感染症や災害や救急医療としての急性外来患者さんに対応する「救命救急センターICUや内科系ICUの設置」が海外以上に遅れています。2020年3月1日の段階で日本の人口は約1億2595万人,ICUベッド総数が約6,500ベッドですので,10万人あたり約5.2ベッドとなります。10万人において2割がCOVID-19を発症するとして2万人,このうち約2%(DNARを除く)は必ず重篤化すると考えられますので,10万人あたり400ベッドが必要となります。少なくとも,今後,日本も10万人あたり約50ベッドをICUベッドの目標として,救命救急センターや内科系集中治療室を充填させることが必要と評価されます。厚生労働省や行政の皆さんには,センター構築のための補助金や診療加算をふくめて,「救命救急センターICUや内科系ICUの設置」に向けての行政指導による改善と改良を期待する案件となります。

 

 Bundle 1 鎮痛・鎮静プロトコル活用:免疫維持の重要性  

テーマ:SARS-CoV-2に対する自然免疫について

留意事項:症状が出現して約7日でIgMが産生され約10日以降でIgGが産生 

     → 思考 1:症状改善・治療の目標とする時期は14日間です。管理14日間で免疫を育てることが大切です(松田直之)。

               → 思考 2:イムノクロマト法による抗体検出試薬は早期検出に役立たないと考えます(松田直之)。

論文紹介1 Zhou P, Yang XL, Wang XG, et al. A pneumonia outbreak associated with a new coronavirus of probable bat origin. Nature. 2020 Mar;579(7798):270-273. PMID: 32015507

 新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対して,感染後はご自身に免疫が育つまで,約2週間~3週間が必要になるかもしれません。救急・集中治療領域では,呼吸苦などの重症な状態に対して,患者さんやご家族の皆さんへの説明と合意のもとで管理バンドルに示したような支持療法を施行していくことになります。SARS-CoV-2については,2020年3月にNature誌に,武漢で初期に発症した5例のSARS-CoV-2のゲノムシーケンス,また透過型電子顕微鏡像や免疫形成パターンが記されています。この論文では,COVID-19の発病時における肺のBALF(気管支洗浄液)と咽頭ぬぐい液を比較すると,咽頭拭い液で検出できない例もあれば,完全ではないけれども咽頭ぬぐい液で新型コロナウイルスを検出できている例も示されています。そして,2019年12月23日にCOVID-19の症状が出た後の自己免疫は,IgMが1週間後ぐらいから上昇し,IgGが2020年1月10日の2週間から3週間の間に高まってくるというデータを掲載しています。リンパ球機能を正常に保つことが期待されます。リンパ球が活性化できる状態であれば,新型コロナウイルス感染の症状が出た時点より約1週間程度でまずIgMが産生され,10日以降にIgGが産生されはじめ,自己免疫が期待できるまでには呼吸器症状が出てから2週間以上かかると解釈されます。

 また,肺の透過型電子顕微鏡像では,肺胞嚢に散在する多量のコロナウイルスが拡大して示されています。そして,肺胞上皮細胞の基底膜からの脱落や,1 μmバーを示した透過型電子顕微鏡像の四角枠の左上に肺嚢胞内のムチン沈着を疑う所見も掲載されています。こうした病理組織切片で,マッソン・トリクローム染色などをすると線維芽細胞や膠原線維網の評価ができるのでしょう。2020年3月04日, 2020年3月16日 松田直之

  Bundle 2 新型コロナウイルスの量の減少:抗ウイルス薬の選択(院内承認必要) 

トピックス アビガン錠®(一般名:ファビピラビル)/ カレトラ®(一般名:ロピナビル/リトナビル)

アビガン錠の治療効果

 新型コロナウイルスに対する「アビガン錠」の中国での治療効果が発表されています。調査した母集団の確認が必要なデータですが,良好な治療経過のようです。薬理学的には,新型コロナウイルスに効果的と推測されます。ウイルス量が,Ⅱ型肺胞上皮細胞数の1/2〜同等になってしまう前に,また症状の軽いうちから,アビガン®をすることが軽症化や重症化を防ぐために重要と私は考えています。アビガンの有害性は,初期の妊婦さん以外には無いようなものですのでは,管理バンドルに記したように早く処方できることが期待されます。

アビガン®錠(一般名:ファビピラビル:favipiravir)について

 アビガンⓇ錠200 mg(一般名: ファビピラビル,favipiravir,構造式:上図 )は,富山化学工業(株)(現:富士フイルム富山化学(株))により開発された,抗インフルエンザウイルス薬です。新興インフルエンザウイルスを対象として,ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害し,抗インフルエンザウイルス活性を示す薬剤です。インフルエンザウイルスやコロナウイルスは,ヒトに寄生して増幅する場合に使用する遺伝子がRNAだけの「RNAウイルス」です。この増幅に使用するRNAポリメラーゼを阻害する薬剤であるため,新しく抗原変異したインフルエンザウイルスなどの新興RNAウイルスへの治療に期待されます。アビガンⓇ錠は,2014年3月24日に「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし,他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」の効能・効果として,製造販売承認を取得しています。

 アビガンⓇのインフルエンザの治験において,問題となったことは投与量設定でした。1回1,600 mgの内服により血漿除去半減期は3時間を超えるようになり,肺移行量も期待できると推測されると考えられます。この投与量をさらに増加できるかどうか,また投与期間をSARS-CoV-2に対する自己免疫ができはじめてくる2週間と延長できるかの安全性について不確定なため,慎重な対応となっていると考えられます。 

 臓器移行性は,カニクイザルで行われており,14C-ファビピラビル(アビガンⓇ)20 mg/kgの単回経口投与により,肺移行性の高さが確認されています。SARS-CoV-2の主感染部位となる肺の放射能濃度は,投与後0.5 時間に最高値に達しているようですし,血漿との濃度比は0.51と,他の治療薬以上に肺に速やかに移行する結果です。以上のような肺移行の良好性よりHIVやエボラウイルスの治療薬ではなく,アビガンⓇのPK/PDを考えた有効利用がCOVID-19の治療の鍵と考えています。救命治療バンドル(COVID-19集中治療管理バンドルVer.1)は,レムデシビルの投与量増加の危険性や無効性を考え,肺移行性の高いアビガンⓇを推奨しています。MRSA治療薬テイコプラニンの投与設計を考案した際と同様に,アビガンⓇの最大有効投与法について,PK/PDと安全性の中で考案する課題が残されています。集中治療においては,肝機能障害軽減に向けて,しっかりと経口栄養や経腸栄養を完成させながら,胆嚢駆出率,胆汁排泄性を評価して用いることが重要です。

留意事項 アビガン錠®(一般名:ファビピラビル)

 中国のデータから,アビガン錠®(一般名:ファビピラビル)を用いることで新型コロナウイルスのウイルス量を減少できる可能性が示されたことは,喜ばしいことです。一方で,実際にSARS-CoV-2に暴露された後に症状が出る期間において,ウイルスが一定量に増殖していると考えられます。SARS-CoV-2と生体の反応は,COVID-19としてファビピラビル服用後も持続し,少なくとも5日間は持続すると予想されます。そして,SARS-CoV-2に対する自己免疫が期待できるまでには2週間以上を必要とすると予想されます。必ず,生体反応が強く残存し,アビガン錠®だけでは改善しない方が残存すると予想されます。以上より,アビガン錠®を使用することで安心せず,SARS-CoV-2による感染症COVID-19の管理をアビガン錠®を加えた「全身管理バンドル」として多角的に,そして時系列で連続性を持って評価していくことをお勧めします。私は,アビガンは優れていると思います。

2020年3月17日 松田直之

Cao B, Wang Y, Wen D, et al. A Trial of Lopinavir-Ritonavir in Adults Hospitalized with Severe Covid-19. N Engl J Med. 2020 Mar 18. PMID: 32187464

 一方,HIV治療薬であるロピナビル-リトナビルは,良好な結果を得ていません。ここには,本薬の気道親和性の問題があるかもしれません。SARS-CoV-2感染症COVID-19の199例に対するロピナビル-リトナビル(400 mg/100 mg)のランダム化前向き試験では,消化管有害事象がロピナビル-リトナビル群で多く,有害事象のために13人の患者(13.8%)で早期にロピナビル-リトナビルは中止されています。その上で,ロピナビル-リトナビルの投与によるSARS-CoV-2に対する増殖抑制効果は認められない結果となっています。

2020年3月21日 松田直之

参考  レムデシビル:エボラウイルス治療薬:COVID-19の劇的改善を認めない

Grein J, Ohmagari N, Shin D, et al. Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19. N Engl J Med. 2020 Apr 10. doi: 10.

 エボラ出血熱のエボラウイルスRNAポリメラーゼ阻害薬であるRemdesivir(レムデシビル,GS-5734)(米国)は,アビガン®(ファビピラビル)(日本)と同様に,SARS-CoV-2を減量させる抗ウイルス薬として期待されています。しかし,その肺移行性や安全性を考えると,アビガン®(ファビピラビル)の方が力価が高い可能性があります。

 Remdesivir(レムデシビル)のCOVID-19のにおける治療効果について,2020年4月10日付けでNew England Journal of Medicineに報告が出されました。 レンデシビルは,初日に200 mgを静脈内投与した後,残り9日間は毎日100 mgの静脈内投与とし,10日間投与されています。本報告は,2020年1月25日から2020年3月7日までの期間にレンデシビルを投与された41歳~72歳の患者さんデータに基づいています。結果として,61例中53例を評価することが可能であり,地域は米国22名,ヨーロッパまたはカナダの22例,日本が9例です。人工呼吸管理は,53例中30例(57%)であり,ECMO管理は4例(8%)でした。 追跡期間中央値の18日間において,36例(68%)しか呼吸改善がなく,人工呼吸離脱は30人中17例(57%)です。退院は,合計25人例(47%),院内死亡は7例(13%)だったとのことです。劇的な治療効果が得られるとは考えられません。私は,肺移行性と肺胞上皮細胞等への親和性が課題かもしれません。

 開発段階における[14C]レムデシビルのラットおよびサルへの静脈投与後の放射能検出,すなわち臓器移行性の高かった部位は,動脈,肝臓,腎臓と報告されています。脳組織で放射能はほとんどまたはまったく検出されなかったことから,[14C]レムデシビルは,血管脳関門を通過しにくい,つまり脳炎の治療には用いることができないと解釈されます。結局,腎排泄と胆汁排泄がレムデシビルの主要な排泄経路であるため,肝臓と腎臓への移行性が時系列で高く,肺の集積は短時間であり,マウスの研究で認められたような肺でのSARS-CoV-2繁殖抑制作用が期待できるかどうかが今後も課題となります。臨床観察研究の治療成績として,院内死亡率は2%未満の死亡率ではなく,13%であることから,SARS-CoV-2や新興インフルエンザのようなプライマリーには肺移行性を期待したい病態では,レムデシビルは切れの良い薬剤とは評価しにくいように考えています。一方,SARS-CoV-2の血液や心臓・血管への播種は心筋炎や動脈炎の抑制として抑制できるかもしれません。

参考資料:Remdesivir Gilead,European Medicines Agency,03 April 2020

レムデシビルについて C27H35N608P 

 ギリアド・サイエンシズ(株)は,米国カリフォルニア州フォスターシティに本社を置く,世界第2位の大手バイオ製薬会社です。レムデシビルは,このギリアドにより開始されたエボラ出血熱の治療薬です。レムデシビル(GS-5734)は,生体内で代謝されてGS-441524として,RNAウイルスポリメラーゼを阻害し,エボラウイルスなどのRNAウイルスの増殖を抑制すると考えられています。安全性や有効性が確立されていません。動物研究が追加され,COVID-19に対する第III相臨床試験が行われています。アビガン®と比較すると,肺効果は低くなり,死亡率が高まる可能性があります。肝障害と腎障害(増悪)などの安全性にも気をつける薬剤です。

参考文献

動物研究:de Wit E, Feldmann F, Cronin J, et al. Prophylactic and therapeutic remdesivir (GS-5734) treatment in the rhesus macaque model of MERS-CoV infection. Proc Natl Acad Sci U S A. 2020 Mar 24;117(12):6771-6776. マウスSARS-CoV感染モデルでは,5 mg/kgのレムデシビルの肺組織改善効果が確認されています。

第III相臨床試験

1.Study title: "Study to Evaluate the Safety and Antiviral Activity of Remdesivir (GS-5734™) in Participants With Severe Coronavirus Disease (COVID-19)". (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04292899)

2.Study title: "Study to Evaluate the Safety and Antiviral Activity of Remdesivir (GS-5734™) in Participants With Moderate Coronavirus Disease (COVID-19) Compared to Standard of Care Treatment" (ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04292730)

2020年4月11日 松田直之

 Bundle 3 末梢気道開放:エアロゾル拡散に注意  

テーマ1:SARS-CoV-2は環境で何時間ぐらい生存できるのか?

論文紹介1 Neeltje van Doremalen, Trenton Bushmaker, Dylan Morris, et al. Aerosol and surface stability of HCoV-19 (SARS-CoV-2) compared to SARS-CoV-1.COVID-19 SARS-CoV-2 preprints from medRxiv and bioRxivhttps://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.09.20033217v2.full.pdf

 SARS-CoV-2のエアロゾル拡散の危険性があるため,集中治療室における陰圧個室外でのHigh Flow Nasal Cannula(HFNC)や非侵襲的人工呼吸管理(non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)は推奨できません。このような環境で,SARS-CoV-2は,どれぐらい環境で生存するかの理解が必要です。米国ハミルトンの国立衛生研究所のVincent J. Munster先生たちのSARS-CoV-2の報告では,① エアロゾルとして空中に3時間,② 銅表面で6時間,③ 鉄表面で13時間,④ ポリプロピレンに16時間,⑤ 段ボールに24時間,⑥ プラスチックやステンレスに2~3日と報告されています。プラスチックに注意が必要です。一方,このデータからは,人工呼吸器回路(プラッチック製:プラスチックレインフォース)として,1週間でルーチンに交換するというものではないと考えられます。一般に,CDC勧告などのように,通常の人工呼吸回路の管理においても明確な汚染がない限り,回路を交換することは義務付けられていません。人工呼吸器関連としては,ゴムについての検証もあると良いです。今後,検証が必要とされる内容です。2020年3月18日 松田直之

テーマ2:NO吸入療法は有効か?

 一酸化窒素(NO)の吸入療法は,集中治療室の重症呼吸不全や肺高血圧症の管理で,よく選択されるルーティンな治療策です。COVID-19においても,比較的早期の気管挿管されていない状態での呼吸苦,そしてPaO2/FIO2比<300 mmHgの低酸素血症,およびCT像でびまん性のすりガラス陰影が検出された際に考慮すると良いと思います。管理過程で背側無気肺が進行している際には,腹臥位で管理することも考慮しますが,沈下性無気肺とは異なるため,従来型の細菌感染症などに随伴した無気肺の管理ほど効果が期待できないかもしれません。一方,NOにはウイルスプロテアーゼの活性を低下させる作用が知られています。換気できる肺胞領域や気管支領域での新型コロナウイルスSARS-CoV-2の繁殖を抑制できる可能性があります。また,NO吸入療法は,換気されている肺胞領域の毛細血管を拡張させるため,換気されている肺胞へ血流シフトをもたらします。このため,換気血流比(V̇/Q̇ ratio)が改善して,酸素化を維持できるようになります。一方,NOの効力が低下してくる際に,血管内皮細胞,気管支上皮細胞,クララ細胞,Ⅱ型肺胞上皮細胞などの細胞内情報伝達蛋白のニトロ化に気をつけています。ウイルスにおいても,システイン残基などがニトロ化され,ウイルス活性が低下すると考えられます。ウイルス性の間質性肺炎の急性増悪ではNO吸入療法を選択しても良いと考えています。NO吸入療法で,気管挿管を回避できるかどうかを1次評価項目として,中国と米国MGHの連携としてNO吸入を30分間140-180 ppmで14日間用いる臨床研究が企画されています。記載:2020年3月19日

Saura M, Zaragoza C, McMillan A, et al. An antiviral mechanism of nitric oxide: inhibition of a viral protease.Immunity. 1999:10:21-8. 内容:NOには,アビガン錠のようにウイルスプロテアーゼを抑制する可能性がある。

Colasanti M, Persichini T, Venturini G, et al.  S-nitrosylation of viral proteins: molecular bases for antiviral effect of nitric oxide. IUBMB Life. 1999;48:25-31. Review. 内容:NOのニトロシレーションには注意をします。

 Bundle 5 末梢気道狭窄/肺線維化/血管炎が進行する可能性  

1.COVID-19の胸部CT像の特徴について

Inui S, Fujikawa A, Jitsu M, et al. Chest CT Findings in Cases from the Cruise Ship “Diamond Princess” with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) . Radiology: Cardiothoracic Imaging 2020年3月 on line

https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200110

 大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が日本の横浜港を出港したのは2020年1月20日です。乗客2,666人は,中国,ベトナム,台湾の旅をくつろごうとされていました。ダイヤモンド・プリンセスに乗船されていたCOVID-19の胸部CT像の解析などの結果を,乾先生たちが解析されています。2020年2月7日から2月28日にかけてCOVID-19と診断された症例の臨床および画像所見について,医療記録がレビューされています。

 画像解析は, 31年,19年,6年の経験を持つ胸部放射線科医3名が独立して行い,共同のコンセンサスとされています。また,胸部CT所見は,フライシュナー協会用語集(Fleischner Society)に基づいた記載とされています。

 胸部CT検査が行われたCOVID-19の112例の胸部CT所見が,表2にまとめられています。Ground-glass opacity(GGO:すりガラス陰影)やコンソリデーションなどのLung opacity(LO:肺混濁)は68例(61%),気管支拡張症や気管支壁肥厚などの気道異常(airway abnormalities)は30例(27%)に認められています。 呼吸苦などの症状のないCOVID-19罹患の82名においても,胸部CT像の肺混濁を44名(54%)に認めています。症状が出てくると,胸部CT像に肺混濁(LO)と気管支壁肥厚が目立ってくるようです。

 一般に,乾咳や呼吸苦が出てきているCOVID-19において,胸部CT像では,①すりガラス陰影(GGO),②気管支壁肥厚(airway abnormality)を予想することになります。その重症さが,PaO2/FIO2比の低下傾向に加えて,ECMO導入の一つの目安となるのだろうと思います。COVID-19の治癒後の胸部単純CT像などについても,今後,論文公表されることになることでしょう。 2020年3月20日 松田直之

出典:Inui S, et al. https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200110

2.血管炎・心筋炎が進行する可能性について:血管内皮浸潤の確認

Varga Z, Flammer AJ, Steiger P, Haberecker M, Andermatt R, Zinkernagel AS, Mehra MR, Schuepbach RA, Ruschitzka F, Moch H. Endothelial cell infection and endotheliitis in COVID-19. Lancet. 2020 Apr 20. PMID 32325026

 ATⅢ活性が正常でD−ダイマーが高値として持続するケースでは,肺毛細血管領域の血管内皮細胞障害が存在するものの,全身炎症性DICには至っていない可能性が病態学的に示唆されます。その一方で,肺線維症が進行する病態として,D-ダイマーが高値である際に肺内のマイクロサンプリングにおいて局所トロンボモジュリン濃度が低下し,血管内皮細胞障害と肺胞Ⅱ型上皮細胞障害が局所トロンビン活性により進行する可能性が想定されます。SARS-CoV-2はACE-2と結合することから,SARS-CoV-2の血管内皮浸潤や心房筋浸潤に注意が必要と考えてきましたが,サイトメガロウイルスと同様に血管内皮や心臓にSARS-CoV-2が播種することが確認されました。このような状態を避けるためには,初期のウイルス量の減量作戦が重要であり,理論的にはアビガン錠®の初期投与が重要であり,このような血管播種による重篤化が軽減できると考えています。また,肺からの血流播種として心房筋播種についてはサイトメガロウイルスなどの感染症と同様に徐脈に注意が必要となります。このような状態での肝臓や腎臓への血流播種にも注意が必要となります。肺移行性の高いアビガン錠®を症状が増悪する前から免疫ができてくる14日間まで内服することが初回のCOVID-19管理バンドルで示したように根本治療として最重要と評価しています。

Varga Z, et al. Lancet. 2020 Apr 20. PMID 32325026  記載 2020年4月23日

初版:2020年3月4日,追記:2020年3月16日,2020年3月17日,2020年3月18日,2020年3月19日,2020年3月20日, 2020年3月21日,2020年3月27日,2020年4月15日

参考 文献 新型コロナウイルスの集中治療 PART 2


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