群馬県藤岡市の関越自動車道で起きた2012年4月26日のデズニーランド行きの高速ツアーバスの事故で,群馬県警は5月3日午前,運転手の身柄を前橋地検に送ったとのことです。運転手は,「疲れていて眠った」などと供述して,容疑を認めているということですが,このようなことはある一定の比率で生じることに注意します。大切なことは,このような事故が発生したとしても,通常から診療システムを整え,対応できるようにしておくことが大切ということです。被災者に対して,「防ぐことのできる死亡」を減少させることができるシステムを保ちたいものです。このために,救急医療をしているということが,災害拠点病院や高度急性期病院に求められます。
救急医療においては,「◯◯病院で受けるので大丈夫でしょう」,「当院はまだシステムが整っていないから」という言葉を聞きますが,診療は① していること,② 継続すること,③ 振り返り考えること,④ 改善すること,この4つが大切です。改善のためには,継続と,活動が必要です。開始しない限りは,成長しないことは注意しなければなりません。診療要請を受けた病院が,管制支障(たらい回し)を行わないような地域災害診療システムの構築が重要である。
さて,運転手は,2012年4月29日午前4時40分ごろ,藤岡市岡之郷の関越道上り線で,バスを時速約90キロで運転中,道路左側の防音壁に車両前部を衝突させてしまい,乗客7人が死亡,38人が重軽傷を負ったという事故です。このようなバス事故をはじめ,同時多発の複数の外傷患者さんや熱傷患者さんに対しては,地域で分散して,同時に並行診療できるシステムが,大学病院を含めた各地域の災害拠点病院に必要です。分散搬送として,重傷者を受け入れることは社会義務と考えるようにしましょう。このために,救急科専門医や集中治療専門医を育成し,安全で,早く,正しく,質の高い救急医療や集中治療を指導できる医師を育成する必要があります。