救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 ー United in the World for Us ー

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文献 Nature 2008;453, 236-240

2010年08月25日 04時11分02秒 | 論文紹介 全身性炎症反応
TH17に関してよく知られている文献 Nature 453, 236-240, 2008

TGF-βが誘導するFoxp3はRORγtの機能に拮抗することでTH17細胞の分化を抑制する

Liang Zhou1, et al

The Kimmel Center for Biology and Medicine of the Skirball Institute, and,
Howard Hughes Medical Institute, Departments of Microbiology and Pathology, New York University School of Medicine, New York, New York 10016, USA

 IL-17を産生するヘルパーT細胞(Th17細胞)は,マウスで自己免疫を促進することが明らかとされ,現在,ヒトの炎症性疾患の原因になると考えられるようになった。粘膜表面では,Th17細胞は感染から宿主を防御すると考えられており,一方、調節性T(Treg )細胞は常在微生物叢が引き金となる免疫応答や炎症を制御すると考えられている。この2つのタイプの細胞分化には,トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)が必要であるが,それぞれ異なる転写因子活性に依存して誘導され,Th17細胞は Rorc(γt) にコードされるRORγtに,Treg 細胞はFoxp3の活性に分化が依存する。相反する活性をもつT細胞の分化をTGF-βがどのように調節するのかを理解は難しい。本論文では,炎症促進性サイトカインと共に,TGF-βが濃度依存的にTh17細胞の分化を調整することを示している。TGF-βは低濃度の場合,IL-6とIL-21との相乗効果によって,IL-23受容体( IL23R)の発現を促進し,Th17細胞の分化を促す。TGF-βが高濃度の場合は, IL23R の発現が抑制され,Foxp3 + T reg 細胞の分化が促される。さらに,RORγtとFoxp3は,マウスのTGF-βに暴露されたナイーブCD4 + T細胞,および小腸固有層のT細胞の部分集団に共発現している。 in vitro では,TGF-βが誘導するFoxp3はRORγt機能を抑制するが,その機序の少なくとも一部は両者の相互作用を介しているため,この2つの転写因子を共発現する固有層T細胞は,RORγtのみを発現する細胞よりIL-17の産生が少ない。IL-6,IL-21,およびIL-23は,Foxp3を介したRORγtの抑制を解除し,その結果Th17細胞の分化を促進する。したがって,抗原刺激を受けた細胞がTh17細胞あるいはTreg 細胞のどちらに分化するかの決定は,サイトカインが調節するRORγtとFoxp3のバランスに依存するということを本論文では論じている。

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