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救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 福 皆と世界の幸せのために

本ブログは,2002年4月1日に開始され,2004年12月1日よりGOOブログに移転しました。

医師臨床研修の見直しの決議事項

2009年02月21日 03時31分20秒 |  ひまわり日記
医師臨床研修:2年より1年に短縮可能に 必修科目減…見直し提言
2009年2月18日 20時24分 更新:2月19日 2時27分

医師臨床研修制度の見直し事項が公表され,
国立大学病院でも十分な救急医療教育を行うことができますよう,
僕も十分に尽力しなければならないと考えています。
救急部門は本邦で専門医が最も少ない分野です。
麻酔科学を専門とする実技能力の高い先生の参入も幅広く受け入れられるようにし,
麻酔科学の応用性を臨床に還元できればと考えています。
救急部は麻酔科学や外科の一発展系であり,特に少し広い視点に立った急性期管理医学として
麻酔部門と連携をとり,研修の先生には十分な急性期管理の技術と病態生理学的理解と診断能力を
身につけていただくことが大切と考えています。
この中で,麻酔科学や救急医学や集中治療医学を専門とする先生が増えて下さることを期待しています。


http://mainichi.jp/select/today/news/20090219k0000m040057000c.html

 新人医師に義務付けられている臨床研修について、厚生労働省と文部
科学省の専門家検討会(座長、高久史麿・自治医大学長)は18日、研
修プログラム弾力化による必修科目削減と、都道府県別の募集定員設定
を柱とする見直しの提言をまとめた。今の医学部5年生が卒業する10
年度から導入される見通しで、医師法で2年以上と定められた研修期間
を実質1年に短縮することも可能になる。04年度から始まった制度
は、わずか6年の運用で大きく転換する。

 両省は必修科目削減によって、研修段階から現場の働き手になっても
らい、医師不足解消につながることを期待する。だが、医師育成の観点
から現場の反発も招きそうだ。

 研修医は、以前は大半が出身大学に残ったが、現行制度では約半数が
一般病院を研修先に選ぶ。新人医師を一元管理できなくなった大学病院
が地域全体の医師配置に力を発揮できなくなったことが、医師不足を加
速したと指摘されている。

 提言では7診療科あった必修科目を、内科(6カ月以上)▽救急(3
カ月以上)▽地域医療(1カ月以上)に削減。外科、精神科などは「選
択必修」として2科目を経験させる。残りの約1年は、従来通り各診療
科を回っても、特定の診療科だけを学ぶプログラムを組んでもいい。選
択によっては2年目から、身分上は研修医ながら実質的に専門科の医師
として働くことが可能になる。

 また、各病院の募集定員合計が卒業生数よりはるかに多く、地方が軒
並み定員割れの現状を是正するため、都道府県別に定員の上限を設ける
ことも提案。各病院には都道府県枠の中で定員を割り振るが、大学病院
には十分な数を与える調整が必要だとした。大幅に減らされたり研修の
指定を取り消される病院には経過措置を設けるとした。

 一方、必修が減っても診療能力の水準が落ちないよう、卒業前の医学
部教育の見直しや研修医の到達度を評価する仕組みの工夫も求めた。


 ◇解説 現場に反対根強く
 臨床研修制度の見直しは医師不足対策が最大の目的と言えるが、結論
を急ぐあまり医療現場の広い賛同を得ておらず、実効性は不透明だ。

 現行制度には、若手医師が安い労働力として酷使され、広い視野が育
たない大学病院の弊害を除く狙いがあった。ある程度成功したが、大学
病院の地域への医師派遣機能を弱める結果になった。

 見直しの柱である(1)実質1年短縮の容認(2)定員の都道府県枠
--には、研修医を都市部の総合病院から出身大学へ呼び戻す効果の期
待がある。だが研修先を自由に希望できるという「パンドラの箱を開け
た」(嘉山孝正・山形大医学部長)以上、大学病院に戻る保証はない。
研修は大学で受けても、医局の体質が合わなければ2年後には離れてし
まう。

 しかも、研修の実質短縮で、総合的な診療能力が育たなければ本末転
倒だ。検討会でも必修科の削減には最後まで反対意見があったが、事務
局の国側は押し切った。

 医療界は、卒業前の実習と卒業後の研修が連動した医師養成が必要だ
とする点では一致している。国は臨床経験の不足が問題とされる医学部
教育の見直しにも着手したが、導入は早くて10年度の入学生からにな
る。日本病院会の堺常雄副会長が「臨床研修だけ手を付けるのは時期尚
早ではないか」と指摘するように、拙速さは否めない。

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38th Society of Critical Medicine in Nashville

2009年02月07日 04時32分48秒 |  ひまわり日記

 
 ナッシュビルで開催されている38th Society of Critical Medicine(2009年1月31日ー2月4日)に参加しており,日本を離れておりました。口演およびポスター発表は2月1日に終了し,2月4日に帰国しました。
 さて,米国集中治療医学会の学会会場は非常にたくさんの会員により埋め尽くされており,米国におけるintensive careを知るにはとてもよい機会となりました。しかし,ポスターなどのいろいろな発表データを見ても,必ずしも海外の治療成績はよくありません。これは,海外でも施設や個人によって治療成績に差があるようです。急性期管理医学においても,治療やケアの治療基盤をteam dedicationやadvance plannningとして,初学者にdecision makingを教育するシステムが重要と考えられます。そして何よりも,指導者チームが極めて高い治療成績や技やケアを示していくことが必要です。ICUチームは,質の高いケアの場であり,医師だけで成り立つものではありません。 

 現在,僕の最大目標は京都大学医学部附属病院に急性期管理医学を育てることにあります。日々できることを大切にはしていますが,日常に甘んじることなく,日々,自身を鍛える努力が大切と思っています。臨床においては極めて優秀なチームを身の回りにつくり,さらに地域や世界規模で教育を考え,世界に大きな医療チームを育てていくことが大切と考えています。その上で,日本としての急性期管理のデータを蓄え,世界に発信していく年としなければならないと考えています。 
 そして,僕の教育の基盤には,「独創性の育成」があります。僕自身は,既存の知識を溜め込む姿勢ではなく,想像力や直感を元に知識を統合し,新たなものを提案する姿勢を大切としています。世界は混沌としていることは否めません。本邦からも,独自の広がりのある概念を発信をしなければならない,そのように感じて38th Society of Critical Medicineに参加しておりました。



 学会会場の演出は極めて美しいものがあり,国歌斉唱は米国さながらの元気の出る良い雰囲気がありました。この後のMitchell Levy先生の講演は,for the patientとチーム医療の基盤を語る素晴しいもので,僕も立って拍手をしておりました。また,相変わらず,Vincent先生の講演は,感動する元気の出るものでした。
 夢のある,そしてフットワークのある先生がこの救急・集中治療医学分野を志したときに,この分野の世界が変わります。たくさんの取り残された未開の学問があります。研究は,山のように残されたテーマがあります。それを,1年1テーマ,遅い流れですけど,確実に積み上げていくところに広がりと夢があります。協力はあっても,競争がない,それがこの分野です。良い治療成績を考えて,急性期管理医学を志す若者の参入を期待しています。

思いやりに,言葉は要りません。急性期は突然やってくるものです。昨日まで会話できたのに,今日は会話ができない。急性期管理ケアは,言葉を超えて,そのひとらしさを尊重し,そのひとらしさを回復させるものです。ICUは,Compassionate Care,すなわち温かい温情に満ちたケアを医学を通して実践する場でもあります。患者さんに対する前に,まず,医療従事者に対して敬愛と温情を持つことも大切です。真の仕事は心のきれいな環境から生まれると思っています。

Compassionate Care in the ICU

Compassionate Care in the ICU - Part 2


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2009年 謹賀新年

2009年01月01日 03時56分40秒 |  ひまわり日記


謹賀新年


心新たに,ゼロからの出発として,精進させていただきます。

だめだと思ったときからのエネルギーは,何よりも大切です。
今年も十分に気合をいれ,自身をとことん厳しく鍛えなおす1年と考えています。

本年も,どうぞよろしくお願い申し上げます。


平成21年1月1日 元旦

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御礼 第3回京都セプシスフォーラム 2008年12月13日

2008年12月15日 04時06分19秒 |  ひまわり日記
京都セプシスフォーラム 
多くの皆さんに御参加いただき,どうもありがとうございました。
次回,第4回京都セプシスフォームは,2009年4月18日(土)を予定しております。
今後とも,よろしくお願い申し上げます。

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総合医学社 松田直之編集 「生体侵襲と臓器管理」

2008年11月15日 00時07分57秒 |  ひまわり日記

2008年11月17日に,「生体侵襲と臓器管理」が発売されました。執筆者の皆さまの御協力と総合医学社の編集者の皆さまのおかげで,生体侵襲を考える面白い本が出来上がりました。僕の記載した項目が,マニアックすぎるとの御批判をいただきましたが,まさにホットな内容として忙しい臨床の合間に涙目状態で記載しました。研究の至っていない所などの評価も加えておりますので,今後の研究方向の確認や御参考になるのではと思います。他の項目は極めて充実しており,執筆を頂いた先生方の御尽力の賜物と考えております。知識の拡充に参考とされてください。また,こんな特集を作ってほしいなどのご希望も,随時,受け付けております。目標は,急性期管理医学の臨床・教育・研究の発展にあります。今後とも,どうぞ,よろしくお願い申し上げます。

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京都市立病院 敗血症治療講演「重症敗血症の治療テクニック」

2008年11月09日 03時32分22秒 |  ひまわり日記
京都市立病院特別講演
タイトル「重症敗血症の治療テクニック」

日時:平成20年11月12日(水) 18:00-19:00
場所:京都市立看護短期大学 3F 講堂
京都市中京区壬生東高田町1-2


敗血症性ショックおよび重症敗血症の治療成績は,残念ながら,施設や個人の能力により極めてばらつきがあります。今回の講演も特に研修の先生に役に立ちますよう,研修医や修練医の先生に照準を絞り,教科書には記載されていない勘所のお話をさせていただきます。京都国際医療センターで先に講演した内容と同様に「重症敗血症の治療テクニック」について話を展開させていただきます。そして,初期の敗血症と,進行した敗血症の病態管理の違いについても触れさせていただきます。どうぞ,御聴講ください。病態を時間および空間的に傾きとして把握することが,敗血症管理においても大切です。

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日本心臓血管麻酔学会第13回大会「文献レビュー」の御礼

2008年11月03日 03時22分10秒 |  ひまわり日記
日本心臓血管麻酔学会第13回大会の一枠として,「文献レビュー」を統括させていただきました。今年の私の宿題「周術期管理の話題」は,「周術期脳梗塞発症のエビデンスと治療」でした。熱心に御聴講を頂き,ありがとうございました。来年は,東京でアジア心臓血管麻酔学会の一端として,9月12日に予定しております。来年も,どうぞよろしくお願い申し上げます。

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第48回臨床呼吸機能講習会

2008年08月29日 18時52分06秒 |  ひまわり日記


 第48回臨床呼吸機能講習会が,平成20年8月26日(火)~29日(金)までの4日間,軽井沢で開催されました。このうち2日間,休暇を利用し,A2コース講師として参加させていただきました。朝8時より夕方6時まで,充実した日程の中で,有意義な時間を頂きました。講師陣の先生の皆さんに深く感謝しております。また,私は,レクチャー「挿管下での人工呼吸管理」,および実習「BLS/ACLS」を担当させていただきました。熱心な御聴講を頂き,ありがとうございました。今後とも,御指導賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。本日午後より,京都大学病院での業務に復帰しております。

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鳥インフルエンザ対策

2008年05月21日 10時31分47秒 |  ひまわり日記
 昨日,秋田県内で病原性の高い鳥インフルエンザの発生があったことを受けて,文部科学省より注意喚起がありました。鳥インフルエンザの感染を防ぐため,各自が下記のように対応していますので,ご注意下さい。京都市内は,鴨川に野鳥が生息しています。この界隈には,ホームレスも宿を設ける傾向があります。こうしたホームレスへの行政介入も必要でしょう。救急部には,ホームレスの上気道炎や呼吸不全の搬入の依頼もありますので,病院前トリアージの段階で十分に注意して対応することが必要となります。安易に病院内に持ち込まないことが,院内の重症患者さんの保護のつながると評価しています。本年は,京大病院救急部においても,この対策会議を多く設け,外来トリアージシステムの確立を完了させる方針です。

京都には野鳥が生息している。鳥を飼育しているものは,さらに注意が必要である。

1.野鳥への対応
(1)野鳥にはなるべく近づかない。近づいた場合には,手洗いを徹底し,うがいを十分にする。
(2)死んだ複数の野鳥を発見した場合には,手で触らず,学校や教育委員会、獣医師,家畜保健衛生所又は保健所に連絡する。
※病院構内や学内で死んだ野鳥を発見した場合は,総務掛まで連絡する。

2.飼育動物の適切な管理
鳥や動物を飼育している場合には,それらが野鳥に接触しないようにする。このため,放し飼いはしない。野鳥の侵入や糞尿の落下などを防止するために,飼育施設にトタン板等の屋根を設けるなどの適切な措置を講じる必要がある。

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平成20年4月19日 SIRS/ALI セミナー

2008年04月17日 04時34分50秒 |  ひまわり日記
京都大学 SIRS/ALI セミナーの御案内

急性期病態の呼吸管理に焦点を絞り,セミナーを開催します。
京大関係者に限らず,さまざまな病院勤務の皆さまの参加をお待ちしております。

日時:平成20年4月19日(土) 15:00-
場所:京大会館 京都市左京区吉田河原町 15-9

特別講演Ⅰ
SIRS/ALIの分子メカニズムと管理のポイント
京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学分野 松田直之

特別講演II
院内で経験した急性呼吸不全と非侵襲的換気
京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 陳 和夫 教授




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Fahr病

2008年03月30日 02時26分07秒 |  ひまわり日記

CT像で見られる頭蓋内の生理学的石灰化の部位は,脈絡叢 ,松果体 ,手綱交連 ,大脳基底核 ,血管壁 ,大脳鎌・小脳テントである。これに対して,家族性特発性基底核石灰化症(familial idiopathic basal ganglia calcification:IBGC,Fahr病)は,両側対称性に大脳基底核や線状体基底核に石灰化を呈する疾患で,認知障害,ジストニア,パーキンソニズム,失調,行動異常などの症状を呈する。1分~2分の意識消失で搬入されてきたものの,救急外来搬入時に今一つ意識ははっきりせず,CT像を評価した。このようCT像でIBGCが偶然見つけられることがあるようだ。IBGCの遺伝形式は常染色体優性遺伝形式であり,第14番染色体長腕に遺伝子座に連鎖することが知られている。舞踏病,Parkinson病,家族性めまいなどの原因のひとつとしても,IBGCは知られている。本症例の石灰化像は,大脳基底核,半卵円中心,皮質回転谷部,視床,小脳皮質,白質,歯状核に認められた。石灰化の進展に伴い癲癇が誘発された可能性にも留意しなければならない。


<文献1> Ogata A, Ishida S, Wada T. A survey of 37 cases with basal ganglia calcification (BGC): CT-scan findings of BGC and its relationship to underlying diseases and epilepsy. Acta Neurol Scand. 1987;75:117-24.

Thirty-seven cases that showed bilateral basal ganglia calcification (BGC) were found in 5987 patients. These cases (0.6%) were studied in relation to their CT findings, underlying diseases and epilepsy. CT findings of BGC were divided into "localized" type (33 cases) and "diffuse" type (4 cases). The number of patients with the "localized" type clearly seemed to increase with age. The M:F ratio of the "localized" type was 1:2. The "localized" type was seen in both idiopathic BGC and familial BGC. The "diffuse" type was seen in hypoparathyroidism only. The specific relationship of these two types of BGC to underlying diseases, however, does not fully agree with results so far reported. We experienced a case with familial BGC during this study that appears to be only the 15th so far reported. Partial epilepsy occurred in 75% of epilepsy with BGC, but there seemed to be no direct relationship between BGC and epileptogenicity.


<文献2> Ostling S, Andreasson LA, Skoog I. Basal ganglia calcification and psychotic symptoms in the very old. Int J Geriatr Psychiatry. 2003;18:983-7.

BACKGROUND: Basal ganglia calcification (BGC) is associated with psychotic symptoms in young and middle-aged patient samples. METHODS: We studied the cross-sectional relationship between psychotic symptoms and BGC in a population sample of non-demented 85-year-olds, of whom 86 were mentally healthy, 11 had hallucinations or delusions, 21 had mood disorders and 20 had anxiety disorders. BGC was measured using computerized tomography (CT). Mental disorders were diagnosed using DSM-III-R criteria and psychotic symptoms were evaluated using information from psychiatric examinations, key-informant interviews and review medical records. RESULTS: BGC on CT was observed in 19% of mentally healthy and 64% of non-demented individuals with hallucinations or delusions [Odds Ratio (OR) 7.7, 95% Confidence Intervals (CI) 2.9-29.7, p=0.003]. There were no associations between BGC and mood or anxiety disorders. CONCLUSIONS: BGC is strongly associated with psychotic symptoms in very old age, possibly due to a disturbance in the basal ganglia dopaminergic system.

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二重投稿に対する注意 バンクーバースタイル2007年度版

2008年01月17日 03時35分41秒 |  ひまわり日記
私のところにも国内外の原著論文の査読依頼が,多くあります。
このような中に,二重投稿原著論文が含まれていることがあります。
以下に,バンクーバースタイル2007年度版の二重投稿に関係する内容を記載します。
十分に注意されるよう,よろしくお願い申しあげます。

京都大学大学院医学研究科初期診療・救急医学分野
准教授 松田直之


バンクーバースタイル2007年度版

III.D. 重複掲載

III.D.1. 二重投稿

 ほとんどの生物医学雑誌は他誌で同時に査読されている原稿を受理しません. 主な理由は, 1) 雑誌間で同時投稿された原稿の出版権を争う可能性があるため, また2) 複数の雑誌が同じものと気付かず査読と編集作業を行い, 論文を発表する可能性があるためです. ただし, 各雑誌の編集者が論文の同時発表が公衆衛生上の利益になると判断した場合, 同時発表を行う場合があります.

III.D.2. 重複掲載

 重複 (二重) 掲載とは, 既に印刷物や電子媒体として出版された論文と実質的に同じ論文の掲載を意味します.
 一次情報源として定期刊行物を読むものは, 印刷物であるか電子出版物であるかにもかかわらず, 著者や編集者が再掲載である旨を記載しない限り, 原著論文だと判断します. このような背景には, 国際著作権法に加え, 倫理観や資源の有効利用といった考え方が根本にあります. 原著論文の二重掲載は特に問題があります. 1つの研究が2重に集計され, 結果が不適切に重み付けされることで, エビデンスが歪曲されるためです.
 発表済みの論文でほぼすべての内容が既に報告されている研究や, 印刷物や電子媒体での出版を目的に投稿された, あるいは既にアクセプトされた別の論文に含まれている研究の場合, ほとんどの雑誌が受け取りを拒みます. ただし, これは他の雑誌でリジェクトされた論文や予備報告 (専門家会議の抄録やポスターなど) の続報を排除するものではありません. また, 学術会議では既に発表されているもののフルペーパーでの出版は行われていない論文や, プロシーディングスなどで出版が考えられている論文の検討を妨げるものでもありません. 開催が予定されている会議のプレスレポートは通常このルールに抵触するとは判断されないものの, 追加のデータや図表を使って内容を詳細に説明することは避けるべきです. 臨床試験登録機関に掲載された結果について, ICMJEは内容が簡単な抄録や表であった場合, 発表済みの論文とはみなしません. なお, 臨床試験登録機関への掲載では, フルペーパーの発表先を引用するか, 査読を必要とする雑誌では未発表であることを記載するべきです.
 論文を投稿する場合, 著者は同じ (またはほぼ同じ) 論文の重複 (二重) 掲載と見なされる可能性のある論文や過去の報告 (学会発表や登録機関での結果掲載を含む) をすべて編集者に説明します. 過去に発表した報告や別の雑誌に投稿した関連報告の題材が含まれている場合, 著者は編集者に注意を喚起しなければなりません. 過去の発表は今回の論文中で引用し, 参考文献として記載します. 編集者が対処を判断する上での材料にできるよう, このような資料は投稿論文に含めます. 告知せずに重複 (二重) 掲載をしようとした場合, 編集上の対抗措置が行われます. 少なくとも投稿した原稿は即刻却下されます. 編集者が違反に気付かず論文が発表された場合, 著者による説明や承認を待たずに, 重複 (二重) 掲載が行われた旨の発表がまず間違いなく行われます.
 アクセプトされた未掲載の論文やLetter to the Editorに記載された科学情報を一般メディア, 政府機関, 製造業者へ事前に報告する行為は多くの雑誌の方針に抵触します. ただし, 論文やレターの報告内容が, 重大な治療上の進歩を述べている場合, あるいは薬剤, ワクチン, その他の生物学的製品や医療機器に関連する重篤な有害作用や報告義務のある疾病といった公衆衛生上の重大な事故について述べている場合は, 事前の報告であっても正当化されます. このような報告で出版が拒否されることはありません. ただし前もって編集者と協議を行い, 承諾を得る方がよいでしょう.

III.D.3. 二次掲載

 政府機関や専門機関が制定したガイドラインなどは幅広い読者に読まれる必要があります. こういったものの場合, 編集者は他誌に掲載されている資料であっても, 著者と掲載誌の編集者から同意を得て掲載することがあります.
 上記以外の二次掲載 (同一言語の場合もあれば他言語の場合もある) , 特に他国での発表については, 以下のすべての条件を満たせば正当化され, 有益な場合があります.

1.著者が両雑誌の編集者から承認を得ている場合. 二次掲載版の編集者が一次掲載版のコピー, 別刷, あるいは原稿を入手する.
2.一次掲載の優先権が最低でも1週間出版をずらすことで尊重される場合 (両編集者間で別途協議する場合を除く) .
3.二次掲載の論文が一次掲載と異なる読者層を対象とする場合. 要約で十分な場合もある.
4.二次掲載版が一次掲載版のデータの解釈を忠実に反映している場合.
5.二次掲載版のタイトルページの脚注に, 読者や査読者, 文書保管機関に向けて, 論文の一部もしくは全部が過去に発表されていることが記載され, 一次掲載を参考資料とした場合. 適当な脚注の例は次のとおり:「本論文は[省略していない完全な照会先]で最初に報告された研究に基づいている」上記のような二次掲載の許可は無償で行われるべきである.
6.タイトルに二次掲載 (完全な再出版, 要約した再出版, 完全な翻訳, 要約した翻訳) である旨が示されている場合. なお, 米国国立医学図書館では翻訳版を「再出版」とはみなしておらず, MEDLINEに索引される雑誌で原著が掲載された場合, 翻訳版を引用・索引することはないので注意が必要である.

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あけましておめでとうございます

2008年01月01日 12時17分27秒 |  ひまわり日記

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

2008年 元旦
松 田 直 之

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本年もありがとうございました

2007年12月31日 19時43分12秒 |  ひまわり日記
本年は,9月1日より,京都大学初期診療・救急医学分野に異動しました。
さまざまな皆さまに,御支援いただき,ありがとうございました。

現在,ホームページ「救急一直線」は,新規に作製中です。
年明けには,新規「救急一直線」をオープンすることができると考えています。

年内は,ありがとうございました。
良いお年を,お迎え下さい。
  

新規「救急一直線」

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敗血症の定義

2006年08月23日 07時07分00秒 |  ひまわり日記

敗血症の定義

京都大学大学院医学研究科初期診療・救急医学分野
松田直之

 2005年を超えた段階で,敗血症とSepsisは異なるなどと,未だに定義に異論を唱えてる状況がある。そこで私は,定義は実用的であるかどうか,実際の現象に側しているかどうかが鍵として,お話するようにしている。Sepsisの国際的定義に従い,敗血症の研究と臨床が発達してきている以上,敗血症はsepsisの訳語として用いると良いと考えている。実際には,日本国内でやっと敗血症が認識されてきた状況にある。その一方で,まだまだ敗血症に関する抗菌薬使用のタイミングが遅かったり,抗菌薬の使用方法がPK/PDの考慮が必要であったり,人工呼吸器を含めて呼吸管理の指導や適正化が必要,ショック管理をしっかり指導することが必要などの治療期間遷延の理由を実地に指導いていく時期にある。
 敗血症(ハイケツショウ,Sepsis)は,感染症によって生じたSIRS(全身性炎症反応症候群:systemic inflammatory response syndrome)と定義される。主に,感染症により生じた炎症性サイトカイン血症により,局所感染徴候のみならず,全身性炎症が進行する病態であり,このような病態進展には炎症性サイトカイン受容体シグナルを持つ白血球系細胞と主要臓器の炎症系的細胞が関与する。1990年代まで,あるいは現時点においても日本では,敗血症を菌血症と同様に捕らえ,血液中で菌が繁殖する病態と捕らえていた。このような病態は菌血症であり,菌血症は敗血症の1つの代表的な病態として再認識される時期にある。血中に菌が証明されなくとも,肺,腸管,腎臓などで局所感染状態が極めて強い場合に,敗血症は生じる。敗血症は,微生物に随伴する炎症により進行する臓器不全として定義される。この管理は,炎症と臓器不全を考える能力を与えてくれるものである。
 敗血症が適切に治療がなされない場合,ショック,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全などから死亡時期が早まる。このような敗血症は,がん,術後,外傷,免疫抑制治療(ステロイドなど),長期絶食などに合併しやすく,もとの病気の修飾因子となる。感染症と敗血症は,異なるものであり,多臓器不全が進行する理由をまずは,「炎症」として理解し,そのスピード感ある治療を指導することがさまざまな急性期管理医学に応用できる。救急・集中治療領域においても,感染症管理と敗血症治療の確立が重要であると考えている。敗血症の病態学的理解を,国内外に伝えていく必要がある。


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