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救急一直線 特別ブログ Happy保存の法則 福 皆と世界の幸せのために

本ブログは,2002年4月1日に開始され,2004年12月1日よりGOOブログに移転しました。

2011年 謹賀新年

2011年01月01日 03時56分41秒 |  ひまわり日記
謹賀新年



旧年は,どうもありがとうございました。

新年度より新たに12名の同門医師(スタッフ5名,医員5名,研究生2名)と同門呼吸理学療法士 1名(Emergency ICU専従)を迎えます。
特に新人の皆の学術教育は,僕と都築先生を中心として,超越的に行います。
幸い革命的な情熱のある5名がそろい,明るい山本先生と会わせると6名の若手が揃いました。

<大目標> グローバル化への基盤固め
世界の急性期医療をトップするための臨床力と学術力の基盤形成・海外からの研究者雇用

<詳細課題>
1. 救急部の管理の質の向上とデータベース作成:救急部専従医による主体的指導体制の確立
2. Medical & Emergency ICU(10床)の新規運用:全26床,40床に向けたclosed ICUとして,救急部後方病床の確立
3. 臨床力の学術的自省と発展的展開:年間1人1オリジナルデータの育成,タイミング理論の実践と常識を越える高い治療成績の達成
4. 症例検討会の強化:学会活動・臨床論文作成等の徹底指導
5. 基礎研究再進 :基礎研究カンファレンスの開始, 研究実技教育の強化,研究生3名および医学生2名の指導強化,研究者の自立力育成
6. 関連病院救急部への外務協力の強化:年間救急車搬入1万レベルの関連病院へ週1.5日/人の同門派遣補助
7. 同門へのリクルート活動


皆さまの温かい支援の中で,同門の一同とともに,救急・集中治療を名古屋で活性化させます。
本年も,どうぞよろしくお願い申し上げます。


平成23年 元旦
松田直之


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心肺蘇生ガイドライン2010のドラフト版の公表について

2010年09月27日 03時25分49秒 |  ひまわり日記
日本救急医療財団および日本蘇生協議会で構成するガイドライン作成合同委員会は,
国際蘇生連絡委員会(ILCOR)が作成した2010 Consensus on Science and Treatment Recommendation (CoSTR)に基づいて
JRC(日本版)ガイドライン2010のドラフト版を作成中でしたが,以下の日程で公表することを決定したとのことです。

公表の日時:10月19日12:00(正午)
公表の場所:
日本救急医療財団のホームページ(http://www.qqzaidan.jp/)
日本蘇生協議会のホームページ(http://jrc.umin.ac.jp/)

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CBC ラジオパーソナリティー「救急医療」

2010年07月06日 03時43分26秒 |  ひまわり日記


CBCラジオ 1053 kHz http://hicbc.com/radio/ に遊びに行ってきました。

夏の特集 「夏場の救急医療」
この収録を終えてきました。
ツボイノリオさんも近くで収録されているようでした。

放送予定 7月19日(月)~23日(金)昼12:35~12:45頃まで
全部で5項目
タイトルは「夏場の救急医療」です。

1.  7月19日(月) 夏にご用心「夏場に多い救急とは」
2.  7月20日(火) 大怪獣ガッパ捕獲大作戦「要注意 海・川・プール」 
3.  7月21日(水) 熱中時代「熱中しない熱中症」
4.  7月22日(木) ガメラ vs キングギドラ「ケガや打撲に要注意」
5.  7月23日(金) 救世主ブースカ「夏場の意識消失と心肺停止」

ちょっふざけた小見出しですが,本当のタイトルは,もう少しまじめなものとなります。
とてもきれいなスタジオでした。
CBCラジオ重盛さん,山室さん,橘高さんのお力を借りて,楽しく収録を終えました。

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日本麻酔科学会第57回学術集会・総会(博多)6月3日~ 講演について

2010年06月02日 04時57分03秒 |  ひまわり日記




日本麻酔科学会第57回学術集会・総会
およびThe 13th Asian Australasian Congress of Anesthesiologist in Hakata に
6月3日より6月4日までの2日間 参戦するため,名古屋大学を離れます。
本日 6月2日に博多入りします。

一方,臨床システムの再構築に忙しいため,2日間しか学会会場にはいませんが,
いくつかのメッセージを若い皆さんに残して名古屋大学に戻る予定です。

僕の主催する名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野では,
世界の急性期医療の10年後以降を担う多くの若者の入局を歓迎しています。
そのための臨床の実践と教育を模索しています。
夢を持っている先生は,是非,僕を捕まえて声をかけて下さい。

しかし,初日はあまりに多忙のため,第2日目の懇親会が最もゆっくりと話ができると思います。
懇親会には,僕も参加します。

今回も,どうぞよろしくお願いします。

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初日 6月3日(木)予定
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■ 1st Round AM 9:00~11:30
シンポジウム1 福岡国際会議場4F 第5会場
世界を代表する集中治療医による敗血症管理に対するシンポジウム
Sepsis Up-to-Date
座長 松田直之

シンポジスト
1.鎮静・鎮痛管理 浜松医大   土井先生
2.呼吸管理    東京女子医大 小谷先生
3.循環管理    鹿児島大学  垣花先生
4.血糖管理    岡山大学   江木先生
5.腎機能管理   慈恵医科大学 内野先生

このシンポジウムは,本邦の究極の最高水準の術後管理を提唱するものです。
例えば,僕の敗血症管理では,既に死亡することはまずありません。


■ 2nd Round 昼 12:00~13:00
同フロアの瞬間移動
共催セミナー6  福岡国際会議場4F 第9会場
周術期全身性炎症におけるアルブミンの役割
協賛:CSLベーリング(株)

座長 順天堂大学 稲田英一先生
演者 松田直之


テーマはAlert Cell(花)にやってくる鳥(樹状細胞)
僕には珍しく,既に講演スライドが完成しています。
座長は僕が尊敬する稲田英一教授にして頂くこととなりました。
深く考える,とても面白い内容としました。
アルブミンの臨床使用を考える上での
病態生理学的評価の最新データも含んでいます。
漫画家さんも,僕の取材にきますが,梶原一輝ではありません。

講演要旨
全身性炎症反応症候群におけるアルブミンの役割

名古屋大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野 教授
松田直之

【はじめに】手術や敗血症などの全身性炎症反応症候群(SIRS: systemic inflammatory response syndrome)では,サイトカイン受容体を持つ警笛細胞(Alert細胞)より血管透過性物質やケモカインが過剰産生される。本共催セミナーでは,全身性炎症病態のアルブミンの役割を論じる。
【講演の概要】講演は以下の展開とし,視覚的に解説を加える。1)全身性炎症反応症候群における血管透過性亢進の病態機構,2)全身性炎症における輸液療法の意義,3)アルブミン輸液に関する臨床研究の動向,4)アルブミン分子の役割,5)オートファジー(自食作用)に対するアルブミンの役割。
【紹介文献】
1. 松田直之. 敗血症の病態生理学 -Alart Cell Strategy-. Intensivist 2009;1:203-16.
2. Rivers EP, et al. Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001;345,1368-77.
3. Otero RM, et al. Early goal-directed therapy in severe sepsis and septic shock revisited: concepts, controversies, and contemporary findings. Chest 2006;130:1579-95.
4. Minghetti PP, et al. Molecular structure of the human albumin gene is revealed by nucleotide sequence within q11-22 of chromosome 4. J Biol Chem 1986; 261:6747-57.
5. Hein KL, et al. Crystallographic a nalysis reveals a unique lidocaine binding site on human serum albumin. J Struct Biol 2010 Mar 27.
6. Zunszain PA, et al. Crystallographic analysis of human serum albumin complexed with 4Z,15E-bilirubin-IXalpha. J Mol Biol 2008;381:394-406.
7. Gamsjäger T, et al. Half-lives of albumin and cholinesterase in critically ill patients. Clin Chem Lab Med 2008;46:1140-2.
8. SAFE Study Investigators. A comparison of albumin and saline for fluid resuscitation in the intensive care unit. N Engl J Med 2004;350:2247-56.
9. Perel P, Roberts I. Colloids versus crystalloids for fluid resuscitation in critically ill patients. Cochrane Database Syst Rev 2007:CD000567.
10. Mangialardi RJ, et al. Hypoproteinemia predicts acute respiratory distress syndrome development, weight gain, and death in patients with sepsis. Crit Care Med 2000;28:3137-45.
11. McClave SA, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM) and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition (A.S.P.E.N.). J Parenter Enteral Nutr 2009;33:277-316.
12. Martin GS, et al. Albumin and furosemide therapy in hypoproteinemic patients with acute lung injury. Crit Care Med 2002;30:2175-82.
13. Martin GS, et al. A randomized, controlled trial of furosemide with or without albumin in hypoproteinemic patients with acute lung injury. Crit Care Med 2005;33:1681-7.
14. Murphy CV, et al. The importance of fluid management in acute lung injury secondary to septic shock. Chest 2009;136:102-9.


■ 3rd Round PM 2:00~3:40
The 13th Asian Australasian Congress of Anesthesiologist
シンポジウム15 Organ Failure in Critical Care
福岡国際会議場2F 第3会場

Chairpersons:
Guolin Wang(Tianjin Medical University, China)
Naville Chia(Singapore Society of Anaesthesiologists, Singapore)

AS15-01 Health economics and intensive care: Where do we stand and where should we go?
Takala Jukka (University Hospital Bern, Switzerland)

AS15-02 Pitfalls in ventilatory support of the ICU patients.
Bunburaphong Thananchai (The Thai Societies of Critical Care Medicine, Thailand)

AS15-03 Current Insight into Endothelial Dysfunction in Septic Inflammation
Naoyuki Matsuda (Nagoya University Graduate School of Medicine, Japan)

■ 4th Round PM 5:30~6:30 ICU/救急部門会議 福岡サンパレス4F
福岡よんパレスではないので極めて注意が必要です。


***************************
第2日 6月4日(金)予定
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■ 5th Round PM 1:30~4:00 福岡国際会議場4F 第5会場
シンポジウム14 血液凝固・炎症反応の関連と臓器障害
シンポジスト 松田直之「血管内皮細胞の炎症とアポトーシス」

講演要旨
 全身性炎症病態は,その病初期に虚血応答や,Toll-like受容体(TLR),tumor necrosis factor受容体(TNF-R),interleukin-1受容体(IL-1R),receptor of advanced glycation end-products(RAGE),protease activated receptor(PAR)などの炎症性受容体を介して誘導される。この過程で,さまざまな転写因子が活性化する。例えば,nuclear factor-κB(NF-κB)やactivator protein-1(AP-1)などの転写因子活性により,炎症性分子やアポトーシス誘導分子の転写が高まる。それでは,STATやCREはどうか!炎症性受容体は,免疫担当細胞のみならず,主要臓器の基幹細胞や血管内皮細胞にも比較的高密度で発現しており,それらの細胞は炎症性分子を産生した後にオートファジーやアポトーシスを生じ,細胞死を早め,自らはアミノ酸源となる傾向がある。血管内皮細胞は,たとえるならば女形の松平 健より,「暴れん坊将軍」に変身する。なよなよした男は,戦場には不要である。サンバを歌っている場合ではないこの戦場で,果たして大地真央は血管内皮細胞のどこにいるのか。しかし,大地真央は,アンチトロンビンでもトロンボモデュリンでもなく,腎臓という社交界で踊っていた。このように,本シンポジウムでは,周術期の血液凝固障害を全身性炎症反応との関連として解説し,多臓器障害の誘因とも結果ともなる血液凝固障害を血管内皮細胞の視点と新規創薬の視点より論じる。最新データを含むオリジナルデータに基づき,血管内皮細胞機能を病態生理学的観点から解説する方針である。


■ 6th Round PM6:00-9:00
会員懇親会 福岡国際会議場


名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野では
将来の急性期医療における臨床・教育・研究を担う
入局者を大歓迎しています。

今,ゼロから講座を立ち上げようとしています。

現在の僕は,臨床や研究の立ち上げだけを目標としているわけでもなく,
松田を超えていく皆を育成することを目標としています。

麻酔・救急・集中治療をはじめ,
家庭医学,感染症学,放射線医学などなど
臨床各科から基礎医学まで,何でも勉強できる環境を整備し始めています。
医学部卒業後10年後に何を選ぶかは,
おそらく皆さんの感性と世界からのニーズが決めてくれるでしょう。
それまでに,救急科専門医,集中治療専門医を最低限
獲得して頂きたいと考えています。

元気・活動性・実践力をモットーとする
松田組に入局してみて下さい。
医局の華 大地真央や,そろそろ研究もしてみたいという研究志願者も募集中です!

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医学部講義資料 生体侵襲と生体反応

2010年02月27日 04時57分20秒 |  ひまわり日記
医学部講義資料
北大医学部のを4年生~6年生対象に2001年から2005年まで使用していた講義資料です。
これは,現在はブログしか残っていない旧版のホームページ「救急一直線」に掲載していました。
当時は,こうした複雑な内容を話していましたが,今後はよりシンプルに改訂版としてまとめていきたいと思います。

生体侵襲と生体反応

【I】生体侵襲 stressor
生体のホメオスタシスを撹乱させる刺激の総称で,例えば,外傷,熱傷,感染,手術,腫瘍,放射線照射などによる。手術や放射線照射は予め計画された予定侵襲であるが,外傷や熱傷など は,予め蘇生システムを講じていない環境で生じるので,侵襲に対しての対応が後手にまわる。 なお,生体侵襲には手術や外傷などの外部由来のみならず,腫瘍や炎症に代表される内部由来の緩徐な進行の要因も含める。

歴史的には,以下の流れがある。
・ヒポクラテス:生体の自然治癒力
・クロード・ベルナール:
外部環境に対して内部環境を維持することを生体の 1 つの特徴と捕らえた。
・ウォルター・キャノン:
内部環境を維持するために交感神経緊張が関与することや,ホメオスタシスという概念を唱えた。(Physiol Rev 9:399-431 1929)
・ハンス・セリエ:
ホメオスタシスを撹乱させるものをストレッサー(侵襲)と定義し,これにより惹き起こさ れる反応をストレス反応と呼び,ストレスの種類に関与しない非特異的反応(急性相反応, 急性期反応,汎適応症候群)が生じると考えた。(ストレス学説)汎適応症候群はストレス に対する生体防御反応であり,この反応が過剰となると,ホメオスタシスが波状し生体維持 ができなくなる。

【2】急性相反応 acute phase reaction
生体侵襲にさらされると生体に神経内分泌,免疫機構,代謝に関する急性生体反応が出現する。
Moore や Cutherbertson により急性相反応が表記されたが,この古典的分類も,個々の反応が神 経内分泌反応とサイトカイン作用で説明できるようになった。

(1)Moore 説:侵襲に対する生体反応を 4 期に分類した。
・Moore FD: The metabolic response to surgery.Ed by Charles C Thomas Publisher, Springfield, Illinois, 1952
障害期:侵襲後 2-4 日 acute injury phase/adrenergic-corticoid phase
転換期:侵襲後 4-7 日 turning point phase
副腎皮質ホルモンが正常化し,尿中窒素排泄量が正常化して食欲も回復する時期。
同化期:侵襲後 1-数週間 muscular strength phase
窒素バランスが負から正に戻り,筋力回復が得られる時期。 脂肪蓄積期:侵襲後数週間から数ヶ月 fat gain phase
侵襲後のホルモン変動が消失,脂肪が蓄積し体重が増加する時期。

Moore 説以外に,侵襲後の生体反応を報告したものに Cutherbertson 説がある。
・Cutherbertson D: Post-shock metabolic response. Lancet 242: 433-437, 1942.

(2)神経内分泌反応
・交感神経緊張
1 hyperdynamic state(頻脈,高血圧):
末梢血管抵抗増大,心収縮性増加,心拍数増加は心負担を増加させる。心予備力が低下してい る状態では不全心に移行しやすい。頻脈により心筋酸素需要が増大することも心筋虚血を誘導す る一因となる。
2 高血糖:
生体侵襲の初期に適切な鎮静が行われていない場合には,交感神経緊張によりカテコラミンが分泌される。カテコラミンは抗インスリンホルモンであり,インスリン抵抗性に関与する。また,カテコラミンはグルカゴンの分泌を亢進させるため,グリ コーゲン分解が促進され高血糖となる。同様に,交感神経緊張や炎症性サイトカインによりACTH 分泌が一時的に亢進し,副腎皮質でのコーチゾル産生が高まるため,糖新生,脂肪分解が亢進し高血糖が助長される。Surgical diabetes とは手術侵襲に より惹き起こされる高血糖を意味する。一方,多くの細胞はインスリン作 用によるGLUT4を介さずに,GLUT2 などのグルコース・トランスポーターを介して糖の取り込みを行なっているが,これらは正常に保たれるか,upregulation されてグルコース取り込みが亢進すると考えられる(特に脳細胞)。しかし,GLUT2も侵襲と低栄養が継続すると細胞質飢餓により減少する可能性がある。インスリンはインスリン受 容体,PI3 キナーゼ活性,GLUT4 を介してグルコースの取り込みを肝・脂肪・筋で亢進させるが, インスリン受容体以降の細胞内情報伝達が変化を受けると推測される。これが,侵襲の継続によ り,インスリンを介した糖取り込みは抑制される一因となる。
3 蛋白異化亢進・蛋白分解 コーチゾル分泌過剰は骨格筋を中心としてアミノ酸放出・蛋白異化を亢進させる。血中および
尿中窒素代謝産物が増加し,負の窒素バランスとなり,放置すれば,るいそうとなる。肝でのア ルブミン合成や凝固因子産生は侵襲により抑制される(アルブミン遺伝子の上流でプロモーター 領域が抑制される)。蛋白異化も亢進するために,低アルブミン血症・低蛋白血症が助長し,血 管膠質浸透圧が低下する。このため細胞間質に体液移行が生じやすくなる。(サード・スペース 形成)
4 脂肪分解 カテコラミンやグルカゴンの作用で,脂肪組織中のホルモン感受性リポプロテインリパーゼ
(LPL)活性が高まる。トリグリセリドが脂肪酸とグリセリドに分解される。インスリンはこの LPL 活性を抑制するが,相対的にカテコラミン活性がインスリン活性を上回ると脂肪分解が促進 する。
5 乳酸アシドーシス・代謝性アシドーシスと呼吸促迫
局所循環血液量低下(末梢血管収縮,血管透過性亢進)や酸素拡散能低下(細胞間質液増加) による末梢組織細胞の嫌気性代謝が亢進し(虚血と言う),H+とラクテート産生が亢進する。代 謝性アシドーシスを呼吸性アルカローシスで代償している。呼吸促迫症状は交感神経緊張と H+産 生亢進に対する,延髄ケモレセプターを介した大きく 2 つの反応による代償反応である。
6 尿量減少
下垂体後葉から ADH(バゾプレッシン)の分泌が一時的に亢進し,かつ,低血圧・循環血液量減少によりレニンーアンジオテンシン系が亢進するため,腎尿細管での Na+と水の再吸収が促進される。しかし,全身性炎症の持続によりADHは後に分泌が低下する。
7 凝固亢進
交感神経緊張によりアドレナリン α2 受容体を介して血小板凝集が亢進する。また,TXA2,セ ロトニンなど凝固促進因子の産生が亢進し,凝固亢進する。凝固系の抑制因子である ATIII(アン チトロンビンIII),プロテイン C,プロテイン S は正常時には主に肝で産生されているため,肝で の蛋白異化が亢進すると,これらの産生量が減少し,凝固が亢進する。全身性炎症の遷延により血管内皮細胞障害が進行すると,まさに凝固亢進が加速すると推測される。血管内凝固が亢進すれば, DIC(播種性血管内凝固症候群)を合併してくる。
8 疼痛閾値の緩和 下垂体前葉から β-エンドルフィンが分泌され,かつ,交感神経緊張によりアドレナリン α2
受容体を介した下行性抑制経路が賦活化することで,交感神経緊張を緩和する負のフィードバッ ク機構が働く。

(3)急性相反応と炎症性サイトカイン:SIRS の関与
急性相反応は現在,炎症性サイトカインの作用で説明されてきた。ストレスにより即時に神経内分泌反応が惹起されるが,炎症性サイトカイン(IL-1,TNF,IFN,IL-6,IL-8,G-CSF など) がマクロファージなど産生細胞で活性化し過剰産生・放出されることで,SIRS(全身性炎症反応 症候群)へ移行する。サイトカイン産生細胞の活性化以外にも,NF-κB activation を主なメカ ニズムとして,転写段階で様々な組織(血管内皮細胞,肝類洞,肺など)で upregulation されて くる。

1 発熱反応 炎症性サイトカインが末梢で産生されてもこれらは BBB が波状しない限り,中枢には移行しな
い。BBB の弱い脈管周囲腔に作用しての産生を介して視床下部体温中枢を刺激すると言われてい る。末梢でマクロファージより IL-1,TNFα,T 細胞より INFγ が産生され,中枢での生理活性物 質(PGE2 など)を介して発熱が生じることが知られている。NSAIDs やステロイドは,この炎症性 サイトカイン産生を転写段階で抑制することとエイコサノイドの産生を COX2 抑制することで施す 2 つの作用により下熱に働く。
2 白血球数増加や減少 炎症に伴い,一般的には好中球増加と核の左方移動が見られる。これは骨髄から未熟な骨髄系
細胞が動員されるのと,末梢の血管床から好中球が動員されるため(主に好中球浸潤は IL-8 作用 による)と考えられている。骨髄内では主に IL-1,IL-6 により stem cell の分化誘導が生じ,そ の後 IL-3,GM-CSF による増殖・分化が生じ,骨髄白血球数が増加することになる。炎症が強い病 態では NF-κB activation,AP-1 activation による接着分子の高発現により細胞接着が亢進する ため, IL-8 により動員された好中球が肺や肝や腸管微小循環(腸間膜動脈領域)に集積し,末 梢血白血球数が見かけ上減少することがある。ARDS,肝腫大,腹水増加の誘因となる。侵襲によ ってマクロファージと好中球が増加するが,リンパ球系は抑制(減少 or 普遍)されているのが特 徴となる。
3 CRP 上昇(急性炎症蛋白上昇) 侵襲により上昇した炎症性サイトカイン(IL-1,TNFα,IL-6 など)は,急性炎症反応蛋白を
誘導する。
・IL-1 型サイトカインによる誘導:CRP,血清アミロイド A,α1-acid glycoprotein など
・IL-6 型サイトカインによる誘導: フィブリノーゲン,ハプトグロビン,セルロプラスミン,α1-antitrypsin など

<参考> second attack theory(熊大)
侵襲によって組織破壊が生じると高サイトカイン血症が生じ,好中球が priming され,主要臓器に接着する(1st attack)。これが SIRS 状態を導く。この過程で感染などの合併症が生じると, マクロファージが再賦活化され,サイトカインの再誘導が生じ,好中球―血管内皮細胞障害を含 めた多臓器不全に移行するという学説。

4)Bacterial Translocation(BT)―サイトカイン・ストームを修飾する1因子―
Bacterial Translocation は腸内細菌や真菌が腸管壁を貫通し,腸間膜リンパ節や門脈などに 侵入する現象をさす。正常時の生体は胃液,膵酵素,胆汁,粘膜上皮細胞,腸管粘液,腸管運動, 腸管付属リンパ節装置が,消化管からの感染防御を担っている。侵襲や絶食によりこの防御機構 に障害が生じると BT が生じてくる。
GALT(gut associated lymphoid tissue):腸管付属リンパ節装置 パイエル板,孤立リンパ小節,粘膜固有層,上皮細胞間に存在して,消化管免疫に関与している。IgA を産生・分泌することが知られている。この腸管免疫は腸管局所のみならず,全身性に 免疫寄与することが知られており,腸粘膜正常の破壊は,全身の液性免疫低下の一因となってい ると考えられている。

SDD(selective digestive decontamination):選択的腸管内除菌
侵襲の加わった状態では,BT を阻止するために早期から腸管運動を促すことが大切である。し かし,姑息的にポリミキシン B カナマイシン,バンコマイシンなどを用いて選択的腸管内除菌 (SDD)を行なうことで,BT を抑制する試みを一般的に行なうが,多臓器不全発生頻度を下げる という evidence は未だ得られていない。

BT の予防:
1 早期経腸栄養
2 粘膜・免疫担当細胞の栄養:グルタミン
3 選択的腸管内除菌(SDD)
4 交感神経緊張の緩和
5 腸蠕動の促進

5)CARS と MARS
炎症性サイトカインが誘導される状態(SIRS)では抗炎症性サイトカイン(IL-4,IL-10,IL-11, IL-13,TGF-β など)や炎症性サイトカイン拮抗物質(sTNFR,IL-1Ra など)が同時に誘導されて くる。このように抗炎症性サイトカインも若干遅れて産生されることで,生体は SIRS から自身を 守るようにホメオスタシスを維持する。しかし,ステロイドなどの NF-kB 拮抗剤で炎症性サイト カインを過度に抑制してしまうと,抗炎症性サイトカインが優位となり抗炎症性サイトカインの 特徴である易感染性が前面に出てくる。CARS(compensatory anti-inflammatory response syndrome)とは抗炎症性サイトカインが炎症性サイトカインより優位になった病態をさして用い る。MARS とは SIRS と CARS が mixed した病態をさして用いる。
Bone RC: Sir Issac Newton sepsis SIRS and CARS. Crit Care Med 24:1125-1128 1996

6)創傷治癒
創傷は自然治癒することが知られている。その治癒過程は、1凝固止血期,2炎症期,3増殖 期,4組織再構築期,5成熟期の 5 つに分かれている。
1 凝固止血期(1-2 日) 受傷組織の血管は一時的に収縮することで出血を減少させる方向に働く(α1 作用)。血小板
機能亢進により凝血塊が生じる(α2 作用)。TxA2 の産生が侵襲局所で高まることが知られてお り,血管収縮と血小板凝集に寄与している。創部ではアルブミンやグロブリンにより感染が防御 されている。
2 炎症期(1 日-1 週間)
凝固に関与する血小板からは PAF(platelet activating factor)が放出され,多核白血球やマ クロファージや肥満細胞を凝固局所に集結させる。これらからの放出や,虚血や NF-kB activation AP-1activation などによる転写誘導により,炎症性サイトカイン,ヒスタミン,NO,プロスタサ イクリンなどが過剰放出されるため,血管拡張や血管透過性亢進が生じる。これにより血管外へ 漏出したフィブリノーゲンがトロンビン,Ca2+,第 8 因子などによってフィブリン網を形成する。
3 増殖期(3 日-2 週間)
血小板から放出される PDGF(platelet derived growth factor)により,マクロファージや線 維芽細胞が損傷部に誘導するとともに TGF-β の分泌を促す。この時期に働く重要な物質は PDGF, TGF-β,FGF(fibroblast growth factor)であり線維芽細胞増殖やコラーゲン合成を促進させ, 細胞外基質(ECM : extracellular matrix)の合成を促進している。また,血管新生もこの時期 に生じる。侵襲の急性期(炎症極期)では減少している VEGF が何らかの転写抑制を解かれて上昇 してくる(現在松田データ採取中)。血管新生には VEGF と FGF が関与する。FGF も血管新生促進 因子として重要である。また,間質のマトリックスを溶解するためにプラスミノーゲンアクチベ ータなどのプロテアーゼ産生が関与している。
4 組織再構築期(5 日-3 週間) 細胞外基質の蓄積が TGF-β と IL-4 による線維芽細胞刺激により生じる。コラーゲンやフィブ
ロネクチンの産生が高まる。
5 成熟期(2 週間-2 年)
血管系は最終的には退縮し,表面平滑な瘢痕となる。

7)Hypermetabolism と Catabolism
<まとめ>
□Hypermetabolism 激しい代謝亢進
□Catabolism 蛋白異化亢進
□代謝の特徴(4 つ):
1 酸素消費量増大
2 糖新生増大と耐糖能低下
3 脂肪分解促進と遊離脂肪酸増加
4 蛋白分解の亢進
□骨格筋:分解
骨格筋が萎縮し筋力が低下する。エネルギー供給をしないと,1 日 50-70g の蛋白が失われる。
□脂肪組織:分解
カテコラミン感受性 LPL(リポプロテインリパーゼ)などの活性化により,エネルギーを供給 しない環境では 1 日約 170g の脂肪が消失する。
□肝代謝:抑制 代謝は現在どうにも集中治療医学で代償しきれない難題の一つである。肝機能を維持すること
は生存に不可欠である。
1 グリコーゲン分解・糖新生抑制:解糖系抑制
2 恒常性蛋白の産生抑制(アルブミンなど):急性相蛋白の産生増加(CRP など)
3 脂肪分解
脂肪分解による遊離脂肪酸から acyl- CoA が産生され,ミトコンドリア内で β 酸化とケトン体 産生が亢進する。重度のストレスでは acyl- CoA をミトコンドリアに運ぶカルニチンレベルが低 下するため,β 酸化も抑制されてくる。

【3】侵襲の評価・定量化 APACHIIスコアリングシステム(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)
侵襲の重症度を客観的に評価するために 1981 年に APACH システムが Knaus らにより考案された。 KnousWA Zimmerman JE Wanger DP:APACH-acute physiology and chronic health evaluation: A physiologically based classification system. Crit Care Med 9: 591-593, 1981
以後改良されて,1985 年に APACHIIシステムが発表され,1991 年に APACHIIIシステム(Chest 100:1619-16361991)が考案されたが,APACHIIIシステムは煩雑であり疾患別ウエイトが非公開で あることから,現在は APACHIIシステムが頻用されているのが現状である。 Knous WA, Draper EA, Wanger DP, Zimmerman JE: APACHEII:A severity of disease classification system. Crit Care Med 13:818-820, 1985
APACHIIスコアは,12 の検査データ(APS:acute physiology score),年齢,既存病態の有無で評価す る。理論的には 0 点から 71 点までの値をとることになり,点数の高いものほど侵襲の程度が強い 重傷病態にあると評価する。異なる疾患群での予後を比較評価するために,疾患群ごとに疾患別 ウエイトが定められている。生命予後も計算できるシステムとなっている。多くの救急集中治療部 の自動モニタリング記録コンピュータシステムもこの APACHIIスコアを自動算出できるようになってい る。僕自身も自作したAPACHIIスコア自動算出システムを持っている。

【4】生体侵襲制御の基本的指針

1) 侵襲の時期に合わせた全身管理
侵襲にさらされた時期に合わせた全身管理が重要であり,患者のホメオスタシスを把握するた め適切なモニタリングを用いる。侵襲が連綿と継続する場合は早期に除去する。手術などの予定 侵襲では,サイトカイン動態が把握されているため,侵襲の最中より,適切な侵襲制御を開始し ている。
<具体策>
1 蘇生システムとモニタリングの選択
侵襲の程度に合わせて,何を知るために何をモニタリングするかを明確にする。気道確保や呼 吸管理がなぜ必要なのかを明確にする。循環作用薬をなぜ併用するのかを明確化する。意識状態 を把握し,鎮静のレベルが適切か,あるいは,不要であるかを適確に方針づける。腎機能に負担をかける場合は迷わず CHDF を併用する。漫然とモニタリングしないこと,肝機能負担を考慮し漫 然と治療薬を増やさないことが大切である。実習ではこの観点から重症患者管理学を眺めていた だきたい。
2 交感神経緊張の緩和(麻酔薬)
しかし,不適切な麻酔は免疫を抑制し,2次感染の誘発としての生体侵襲となる。
3 抗サイトカイン療法
様々な個々の抗炎症性サイトカイン療法が臨床知見されたが,重度の侵襲では生命予後を改善 させなかった。
4 炎症反応の抑制
5 栄養管理(早期腸管栄養と適切なアミノ酸補充)
6 体液・電解質管理
7 体温管理
8 主要臓器管理
9 合併症予防(感染対策など)

2) 臓器予備力の把握
管理者は臓器別に機能を把握する能力を身に付ける。侵襲局所管理を前提とするが,局所管理 にとらわれない,全身管理が大切となる。

3) 侵襲を左右する重要合併症の把握
1 呼吸器合併症(ARDS 無気肺など)
2 ショック
3 感染症
4 DIC
5 多臓器不全(腎不全,心不全,肝不全...)
6 Bacterial Translocation なと

記載:2001年4月7日

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第39回 米国集中治療医学会 (2010年 マイアミ)

2010年01月13日 04時07分36秒 |  ひまわり日記
Society of Critical Care Medicineのマイアミでの総会に出席しております。
1月12日にAWARDの受賞式があり,光栄なことに本学会より2度目のAnnual Scientific Awardの受賞を受けました。
一方,今回の米国集中治療学会総会における多くの講演内容には,
新しいデータが少なく,残念ながら充実したものとは言えませんでした。
もちろん,他のAWARD受賞者の受賞講演には新規性がありましたが。
これからの5年で,日本の集中治療レベルの高さを外国に紹介することが必要となります。
臨床データを世界に提出する,これが僕達のここ数年の課題となると考えています。
世界を超える集中治療成績を安定化させるために,名古屋にも強力なintensivistを育てたいと考えております。










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2010年 謹賀新年

2010年01月01日 07時53分42秒 |  ひまわり日記


新年 明けましておめでとうございます。

本年は 2月1日より名古屋大学へ教授として異動し,
名古屋大学における救急・集中治療を活性化させるべく
頑張らせて頂きます。

本年も どうぞよろしくお願い申し上げます。



これは縁起がよくなる「寅」とのことです。



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第5回 京都セプシスフォーラム(12月19日)

2009年12月24日 03時15分31秒 |  ひまわり日記


第5回京都セプシスフォーラムを本日開催いたします。
医師に限らず,コメディカルの皆さまを含めまして
多くの皆さまの参加をお待ちしております。
敗血症管理において,有益な情報を獲得するための会です。
本日,午後3時からです。

日時:2009年12月19日(土)午後3時~6時
場所:京都リサーチパーク BUZZホール
京都市下京区中堂寺南町134番地
西地区サイエンスセンタービル4号館地下1階


GUEST SPEAKERS

1. 天谷文昌 先生 京都府立医科大学 集中治療部
「クリティカルケアにおける鎮痛と鎮静の最適化を求めて」

2. 江木盛時 先生 岡山大学 集中治療部
「重症患者の血糖管理: Leuven vs. NICE-SUGAR」

3. 石田 直 先生 倉敷中央病院 呼吸器内科
「院内肺炎ガイドライン: HAPとHCAP」

今回も極めて白熱したディスカッションとともに,
世界一の治療成績を目指した楽しい会合となると思います。
このフォーラムは,重症敗血症をまず治すことができる
確信をもつための懇親の会です。  

研修医の皆さん,コメディカルの皆さん,多くの先生方に
御来場していただけることを楽しみにしております。
懇親の場を含めて,今回も気軽に質問ができる雰囲気を提供させて頂きます。

敗血症治療に関与する皆さまの忘年会として
予定をあけて下さいますよう,
どうぞ,よろしくお願い申しあげます。

【御礼】
多くの皆さまに御参加頂き,どうもありがとうございました。
次回は,来年5月8日(土)を予定しております。
今後とも,どうぞよろしくお願い申しあげます。

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第18回京滋救命救急セミナー 平成21年11月10日

2009年11月10日 02時32分44秒 |  ひまわり日記
第18回京滋救命救急セミナー 
日時:平成21年11月10日午後7時~
場所:京都センチュリーホテル BF1 葵の間


京滋救命救急セミナーが,11月10日に開催されます。
今回は,「血液浄化法」に関しての特別講演を企画しております。
「血液浄化法」の日本の第1人者である
藤田保健衛生大学 西田 修 教授に特別講演を依頼しております。

12月には第5回京都セプシスフォーラムを予定しておりますが,
西田先生の御講演も踏まえて,京都セプシスフォーラムにも参加されてください。
今回もまた,楽しく和気藹藹と,世界一の治療成績を目指すように質問します。

研修医の皆さんはもちろんのこと,
学生さん,コメディカルの皆さんも,是非,参加されてください。

「血液浄化法」に関する苦手意識が,なくなると思います。
ふるって御参加下さいますよう,よろしくお願いします。

【後書き】
当日は雨となりましたが,多くの皆さまに参加していただき,充実した研究会となり,どうもありがとうございました。

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平成21年9月9日 PM4:00~ 研究セミナー「1分子イメージング」のお知らせ

2009年08月20日 03時12分49秒 |  ひまわり日記
講演タイトル: 1分子イメージングで生体分子の機能を探る

演 者
原田 慶恵 博士
京都大学
物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 教授

日 時:9月9日(水)16:00〜17:30
会 場:京都大学ウイルス研究所 本館1階 セミナー室

講演要旨:
生体分子の分子レベルでの機能を調べるには、その分子が機能している様子を直接観察するのが一番である。生体分子は水溶液中で機能するので、その観察には光学顕微鏡を使わざるを得ない。しかし、光学顕微鏡では、大きさが数十ナノメートルほどの生体分子を直接見ることはできない。そこで、我々は生体分子に目印をつけて、観察することにした。光学顕微鏡で観察可能な大きなものを結合させたり、蛍光色素分子、蛍光性の粒子を結合させて光らせることによって、今では比較的容易に1分子観察ができるようになった。見ることと同時に大切なのは、直接触って操作することである。1分子操作には、光を使って直径1マイクロメートル程度の大きさのビーズを操作する光ピンセット法や、磁気ビーズを磁石で操作する磁気ピンセット法などがよく使われている。このセミナーでは、以上の1分子イメージングや1分子操作技術を使って行った実験について紹介する。

聴講目的
■ 磁気ピンセット法や光ピンセット法を導入する。
■ 一分子リアルタイムモニタリングの敗血症研究への導入
■ 細胞内分子接着のリアルタイムモニタリング

参加予定:松田直之,寺前洋生

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英文エッセイ Global Transformation of Emergency Medicine

2009年07月17日 04時55分34秒 |  ひまわり日記
Kyoto University Newsletter Raku-Yu 


Global Transformation of Emergency and Critical Care Medicine in Kyoto University

Naoyuki Matsuda MD, PhD
Associate Professor
Department of Primary Care & Emergency Medicine, Kyoto University


Profile Introduction
 Associate Prof. Matsuda, born the grandson of a surgeon and the son of a pediatrician, at first wanted to become a physician himself. However, after entering Hokkaido University, his interests were broadened and he chose to specialize in anesthesiology from which he could view a wide variety of specialties, and then leapfrogged into the world of emergency medicine and critical care medicine. When emergency medical treatment became a specialty on a nationwide scale he took an active part in its establishment as a member of the emergency department ward in Hokkaido University Hospital. He moved to Kyoto University in 2007, and he has been working tirelessly to cultivate emergency medical specialists and to ascertain an emergency health care system both for the University Hospital and the local communities. When he moved to Kyoto for his present post, those around him worried that Kyoto was behind the times as it was slower to establish emergency medical systems than other prefectures, but he now states brightly, “The academic research environment of Kyoto University is preeminent and the potential of doctors and individual students is also excellent. I’m very glad I came here because it was, above all, a pleasure to construct things from scratch.”As for the present conditions of emergency medicine, Associate Prof. Matsuda strongly feels the necessity for cultivating the ability to diagnose the condition of the individual patient first and foremost, even going so far as to consider his or her life background. “Nowadays, it seems that the specialization of diagnosis in each department has advanced to the point that patients are provided a diagnosis which equals the name of a disease, and a uniform medical treatment is prescribed. However, even with the same disease, symptoms are manifested differently depending on the individual.” After saying this, he continued with this interesting statement, “One of the merits of medical treatment in Japan is that it originally intended to seek‘medical care with hospitality (Motenashi-no-Iryo),’ which means that each patient should be carefully diagnosed and the best treatment should be found for patients respectively.”Associate Prof. Matsuda’s logical and intelligible words delivered with a smile as he continues to listen carefully toothers, resounds with a significant persuasive power.


Essay
 Kyoto was previously known as the most underdeveloped region regarding emergency medicine in Japan. The Department of Primary Care & Emergency Medicine was established at Kyoto University in April 2006. At present, specialists in emergency and intensive care medicine representing all of Japan have begun to gather in Kyoto, and to steadily improve the clinical outcome of emergency care. Our department is dedicated to providing sufficient acute disease treatment to university staff, our students, and neighboring patients, and is projected to improve the quality of emergency and intensive care medicine not only in Kyoto but throughout Japan.
 All faculty members and students of Kyoto University share the mentality to aspire to be “the best” and to lead the world in their specialties. Aside from being encouraged by words such as “Boys, be ambitious”*, each person has his/her unique academic goal and wishes to contribute to the world through their achievements. Despite such an environment, emergency and intensive care medicine has remained a lagging field of science, failing to show the world sufficient academic accomplishments. This situation derives from the lack of philosophy or a simplified hypothesis concerning the aims of emergency and intensive care medicine. Emergency medicine requires a medical system to appropriately assess the urgency of the condition and promptly initiate treatment on the one hand, and the ability to assiduously analyze acute disorder conditions on the other.
 Presently, I am conducting research on the pathophysiology and therapeutics of systemic inflammatory response syndrome. Vascular endothelial cell injury associated with this syndrome is the pathological condition to which emergency and critical care medicine attaches the greatest importance. In addition, a medical system that can completely cure conditions including multiple traumas, multiple organ failure, and post-resuscitation encephalopathy is necessary. For example, even pulmonary contusion after a traffic accident is not serious if it heals quickly, as in children. Influenza is also of low-level concern if it takes a mild course by immunological enhancement. The promotion of injury healing and enhancement of immunological competence are other aims of emergency medicine. I deem that the establishment of a discipline that enables physicians to avoid panicking or to restore composure is necessary.
 The breeze blows gently in Kyoto. The Kamo River flowing like a kimono emanates the sounds of running water and musical instruments. One reason for the sophisticated atmosphere here is that the Kyoto dialect has softer voiced consonants. I always emphasize four things to young doctors and young researchers: (1) Never say “No”, (2) Step lively, (3) Remember to smile, (4) Greet all in a loud, clear voice. The adoption of these measures creates a revitalized atmosphere in our university and laboratory. Their performance must not become introverted, inactive, and sullen-faced. Science begins by simplifying individual, habitual concepts, and then embracing a wide range of aspects. We wish to revere the quiet atmosphere of Kyoto, always seek a complexity-free emergency care system, and enrich the science of acute period pathophysiology through many academic accomplishments. I hope to disseminate this new discipline of emergency and intensive care medicine from Kyoto throughout the world.

* The famous phrase attributed to William Smith Clarke, the first vice president of Sapporo Agricultural College, which later became part of Hokkaido University in Japan.

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症例 急性中毒 アルカリ薬摂取について

2009年07月17日 04時34分51秒 |  ひまわり日記

症 例 

洗剤ドメストとジョイを飲んだという。胸やけが強く,口腔内がひりひりと痛むため,119番通報し,近医に入院となった。その24時間後に当院へ緊急転院となり,呼吸困難感が増強し,肺酸素化が低下しはじめた。

胸部単純CT像



肺野にびまん性の血管透過性亢進を認めた。

食道下部および食道胃移行部の腫脹


【基本情報】

ジョイおよびドメストの主成分は以下となる。

■ ジョイ(P&G)
アルキルアミンオキシド
アルキルエ-テル硫酸エステルナトリウム
ポリオキシエチレンアルキルエ-テル
これらはシャンプーなどにも含まれる界面活性剤である。界面活性剤の中毒作用は,細胞膜障害作用であり,口腔,咽頭,食道などの消化管粘膜障害を導く。誤嚥すれば,肺機能が障害される。

■ ドメスト(ユニリーバ社)
次亜塩素酸ナトリウム
水酸化ナトリウム
アルキルアミンオキシド
ドメストは,腐蝕性が極めて強い塩素系アルカリ洗剤である。

 ドメストは酸化型漂白剤であり,次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムが含まれている。このため,深達度が深い腐蝕性変化を食道や胃噴門部に生じさせる。食道に潰瘍や穿孔を導く可能性が極めて強く,胃噴門部に狭窄を生じる可能性もある。また,ジ亜塩素酸ナトリウムは,酸素ラジカルや過酸化水素の産生源であり,消化管系細胞にアポトーシスを誘導する可能性を持つ。結果として,上部消化管には腐蝕性変化がもたらされる可能性が強い。下部消化管出血が生じることもある。また,それらや産生された塩素のゲップや吸入により声門部腫脹や肺水腫が進行する可能性もあり,気道および呼吸の管理に注意が必要となる。

【治療手段】

■ アルカリ対策
 初病日にミルクを飲ませているかどうかが大切である。次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムには,活性炭投与による吸着や,マグコロールによる下痢による排泄は期待できない。アルサルミンやアルロイドGなどの粘膜保護剤は,一般に投与されます。

■ 界面活性剤対策
 誤嚥して肺内に移行していると,サーファクタントの分解が生じ,呼吸不全が進行する。人工呼吸管理で対症療法とせざるをえない。

■ ICU管理を念頭に置く
 全身性炎症反応症候群として,重症化する可能性は極めて高い病態である。初期より食道炎症および肺炎症を中心とした炎症性サイトカインの過剰産生により,炎症活性が極めて高まる。このような場合,サイトカインの希釈と排泄を目標とした十分な輸液が望まれるが,これにより本病態では気道浮腫や肺酸素化の低下が悪化するため,全身管理に難渋する可能性がある。これに対して,ステロイドは明確なエビデンスがなく,むしろ敗血症移行率を高める可能性がある。気道浮腫や声門狭窄症状が出現しはじめれば,上気道狭窄,そして気道閉塞へ移行しやすい病態であるため,迷わず気管挿管を行い,慎重な観察とすべきと考える。以上より,ICU管理を念頭に置く。

■ 食道離断術の可能性を念頭に置く
 アルカリは酸と比較し,組織深達度が深く,組織融解壊死を起こしやすいのが特徴である。このため,食道穿孔,縦隔炎などの可能性を念頭に置き,胸部・腹部CT像を隔日にチェックする必要がある。食道離断術を含めた外科対応が必要となる可能性がある。1週間後以降の治癒期に食道狭窄を残す可能性もあるため,長い経過でのフォローも必要となる。

■ 胃・十二指腸穿孔の可能性を念頭に置く
 胃酸との反応による中和熱により,胃や十二指腸が障害を受ける可能性もある。腹膜炎の発症には,十分に注意する必要がある。

■ 下部消化管出血の可能性
 下部消化管も界面活性剤やアルカリにより障害を受け,出血する可能性がある。


【治療結果】

 管理第2病日からではあったが,ミルクの強制摂取とアルサルミンが投与された。第14病日の上部消化管内視鏡像では,食道胃接合部(SCJ ) 直上に5mm以下のmucosal breakを認め,逆流性食道炎(GERD)様所見とパレット食道(SSBE)を認めたものの,結果的には狭窄・潰瘍・瘢痕形成を残していなかった。パレット食道は,食道側への円柱上皮のはい上がりが3 cm未満(SSBE)と3 cm以上(LSBE)の2つに分類している。呼吸管理は,気管挿管には至らず,非侵襲的人工呼吸管理BiPAPで対応できるレベルに留まった。喉頭蓋,声門部,肺野の病変は,第14病日には消退した。

【注 意】
 このようなアルカリや酸を飲むという行為は,外科対応が必要となる可能性がある病態である。若いのに食道をすべて取り除くことになる。こうしたものを飲むことは,死ぬというよりはむしろ苦悩を巻き込むこととなるので,しないようにして下さい。


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講義 急性中毒 ヤカツ中毒

2009年07月16日 04時05分08秒 |  ひまわり日記

中毒診療 ヤカツ中毒

京都大学大学院医学系研究科

初期診療・救急医学分野

松田直之

 

症 例

 ヤカツ(冶葛,G. elegans)は,胡蔓藤(コマントウ)とも呼ばれ,ベトナムなど東南アジアや中国南部で古くから猛毒として知られ,最強の猛毒植物と考えられています。吹矢にも用いられ,葉3枚とコップ1杯の水で死ぬという民間伝承があります。ヤカツの葉は対生し,筒状の花をつけることが知られてています。

 この葉3枚と数枚を煎じて飲み自殺を図ろうとしましたが,ご自身で死ぬかもしれないと心配されて救急搬入されています。救急車での搬入は,ヤカツを飲んだ約2時間後だったようです。このヤカツなどのGelsemium alkaloidの毒性は,gelsemineやgelsemicineにより惹起されると考えられていますが,いずれもN-メトキシオキシインドールであり,この構造が毒性発現に必須と言われてています。Gelsemicineの致死量は約0.05 mgと評価されており,これらはクラーレやストリキニーネと類似の神経毒です。非脱分極性筋弛緩作用を主体とするため, 呼吸筋力の低下状態が観察されれば気管挿管し,人工呼吸管理を行い,輸液や濾過透析などの対症療法で救命できると思います。しかし,本例では左側臥位での胃洗浄で,大量の胃内容物に加え,3枚の葉までも取り出すことができています。しかし,来院時より眼瞼下垂,瞳孔散大,複視,脱力症状や呼吸苦を伝えており,人工呼吸管理を念頭に置きましたが,時系列と筋弛緩症状は改善し,人工呼吸管理に至らずに対応できました。呼吸ができなくなり,苦しんで死亡することになりますので,ヤカツなどには注意していただきたいとも思います。

ヤカツ

Gelsemium elegans Benth (Loganiaceae/マチン科)

 

ヤカツは,黄色い花を咲かせる毒性の高い毒草です。中国では,「冶葛」「胡蔓藤(こまんとう)」「胡満蔃(こまんきょう)」「鈎吻(こうふん)」などと呼ばれ,唐の法律書「唐律疏議」 (653年)にも記載されている毒草です。


ヤカツの主症状

■ 神経筋接合部遮断
眩暈,舌のもつれ,筋弛緩,無力化,嚥下困難,呼吸麻痺,運動失調,昏迷・失神。眼部症状として,複視,視力減退,眼瞼下垂,瞳孔散大。

■ 消化器症状
口腔や咽喉の灼熱, 悪心・嘔吐,下痢,便秘など。

※ 漢方では,ヤカツの根を外用薬として使っていたことがあり,正倉院鳳凰堂の中にも冶葛壷の中に少量が現存するとのことです。


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医学部講義 インフルエンザウイルス Flu

2009年05月21日 04時08分36秒 |  ひまわり日記
 インフルエンザウイルス(Flu)は,オルトミクソウイルス科に属するマイナス鎖RNAウイルス(negative-starand RNA virus)で,リポ蛋白のエンベロープに包まれた球系構造体です。RNAは,カプシド内で8本に分節して存在しているのが特徴です。さらに,インフルエンザウイルス細胞質内には,マトリックス蛋白(M蛋白)やヌクレオカプシド蛋白(NP蛋白)があり,主にこれらの抗原性の違いから,A,B,Cの3つの型に分類されています。このうち,ヒトに流行しているのはA型とB型です。特に,A型インフルエンザウイルスは抗原性を変化させ,ヒトへの流行性が高いです。A型インフルエンザウイルスは,B型インフルエンザウイルスと異なり,動物内でも繁殖し,新たな変異を獲得しやすい特徴があります。
 A型インフルエンザウイルス粒子表面には,赤血球凝集素(HA: hemagglutinin)やノイラミニダーゼ(NA: neuramidase)が,細胞膜エンベロープより突出するようにスパイク様に存在しています。現在,HAには16のサブタイブが,NAには9つのサブタイプが確認されています。このHAとNAの種類の組み合わせにより,基本的には A型インフルエンザウイルスのタイプがH1N1にように表示されます。しかし,A型インフルエンザはHAやNAの同一のサブタイプであっても,HAやNAの少数のアミノ酸配列を変化させることで,抗原性を変化させるため,我々の免疫能力から逃れて,流行し続ける傾向があります。これを,連続抗原変異(antigenic drift)とか「小変異」と呼んでいます。さらに,A型インフルエンザは,数年から数10年をかけて,突然に別のタイプに代わることがこれまでに確認されています。これが,「大変異」です。
 これまで,インフルエンザのような病態は1890年にも世界で大流行したことが知られています。1918年には,スペイン型インフルエンザ(H1N1)が世界各国で流行し,罹患者数は6億人,死亡者数は2,000-4,000 万人と推定されています。日本にはスペイン型インフルエンザが1918-1919年の冬に流行し,罹患者数は2,300 万人,死者数は38万人と評価されています。結果として,スペイン型インフルエンザは,その後36年間の流行が続きました。1957年には,アジア型A型インフルエンザ(H2N2)が発生し,その後11年間,流行が続きました。1968年には,香港型A型インフルエンザ(H3N2)が現われ,1977年にはソ連型A型インフルエンザがH1N1として再出現し,現在も「小変異」を続けています。近年は,A型であるH3N2とH1N1,およびB型の3種が,インフルエンザウイルスとして検出されるようになっています。
 このようなA型インフルエンザウイルスが突然にHAやNAサブタイプを変える抗原変異を,不連続抗原変異(antigenic shift)とか,「大変異」と呼んでいます。ウイルスの抗原性が大きく変化した状態では,皆が免疫を獲得していないために,感染が拡大し,パンデミック(大流行)となります。1997年に香港では,H5N1亜型の鳥インフルエンザがヒトに感染し,死亡6例を含む18例のヒト感染が確認されました。H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスは,既に南北アメリカを除く世界各地に定着しており,持続的に野鳥や鶏の間で流行を起こし,我々に感染することでパンデミックとなる可能性があります。また,今回,2009年5月に出現した豚インフルエンザのように,同種のHAやNAのサブタイプにおいてもアミノ酸変異の亜系が生じることにより,抗原性が高まり,強い感染力が生じる可能性があります。インフルエンザウイルスに対する免疫反応は,主に細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell)が担当しています。
 現在のインフルエンザウイルス治療薬としては,2001年2月にリン酸オセルタミビル(タミフル®)とザナミビル(リレンザ®)がインフルエンザウイルス治療薬として保険適応となっています。これらの薬剤は,インフルエンザウイルスのNAを阻害することで,新しく合成されたインフルエンザウイルスが細胞外への放出されることを抑制します。NAはA型インフルエンザウイルスにもB型インフルエンザウイルスにも共通に存在していますので,リン酸オセルタミビル(タミフル®)とザナミビル(リレンザ®)はインフルエンザウイルスの両方に効果があります。
 さて,インフルエンザウイルス感染症が,真にパンデミックとなった際には,一時的に人工呼吸管理を必要とする患者さんが増加すると思います。こうした呼吸管理技術がなかったり,人工呼吸器の備蓄がなかったり,人工呼吸管理のスペースがないようでは,死亡率が高くなると考えられます。大病院であれば,このような対策を早急に採る必要があります。また,多臓器不全を同時に管理できる重症患者管理を得意とする専門医が増えることも必須です。15年も前の変な人工呼吸管理を,未だにしているようではいけません。そして,インフルエンザウイルスは飛沫感染です。確実な手洗いの実践を周囲に伝授し続けることも重要でしょう。標準予防策,飛沫感染予防策,必ずまとめておきましょう。これらに加えて,免疫力を高める学術が必要とされています。学生の皆さんは,インフルエンザウイルスの概要として参考とされてください。


今読むと良いインフルエンザ関連論文

1. Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus Investigation Team. Emergence of a Novel Swine-Origin Influenza A (H1N1) Virus in Humans.
N Engl J Med. 2009 May 7. PMID: 19423869

2. Shinde V, Bridges CB, Uyeki TM, Shu B, Balish A, Xu X, Lindstrom S, Gubareva LV, Deyde V, Garten RJ, Harris M, Gerber S, Vagoski S, Smith F, Pascoe N, Martin K, Dufficy D, Ritger K, Conover C, Quinlisk P, Klimov A, Bresee JS, Finelli L. Triple-Reassortant Swine Influenza A (H1) in Humans in the United States, 2005-2009. N Engl J Med. 2009 May 7. PMID: 19423871

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第28回日本麻酔科学会山村記念賞受賞講演のお知らせ

2009年04月24日 04時25分26秒 |  ひまわり日記
この度,日本麻酔科学会第28回山村記念賞に内定しております。
学会パンフレットが配られ,数名の先生よりお問い合わせも頂き,
どうもありがとうございました。
この受賞講演は,第54回学術集会において行わせていただきます。
麻酔科医をしているならば山村記念賞を頂きたいと思っていましたので,
とてもうれしく感じております。
この名をより高めるべく,臨床に密接に関与する深い研究をより一層に志向し,
精進しなければならないと思っています。
http://www.anesth.or.jp/activity/prize_yamamura.html

皆さまの支援に深く感謝しております。
受賞講演は以下を予定しております。


2009年5月22日(金)12:40-13:00
神戸ポートピアホテル 第14会場
講演 敗血症病態における転写因子NF-kBの機能解析
The Role of Nuclear Factor κB in Pathogenesis of Severe Sepsis and Septic Shock: Possible Mechanisms of the Gene Therapy for Inflammatory Alert Cells

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