まさるの一口馬主日記

「一口馬主」の視点から競馬を楽しんでいます。競馬以外では男声合唱、野球観戦、旅行、食べ歩きで余暇を楽しんでいます。

シルクメビウスと田中博康騎手

2016年12月10日 12時30分37秒 | 今日の日記

2010/11/26 22:06

田中博康騎手

-:ジャパンカップダートに出走を予定しているシルクメビウスについて、田中博康騎手に伺います。よろしくお願いします。

田:よろしくお願いします。

-:まずは前走、船橋競馬場で行われたJBCクラシックを振り返っていただけますか?

田:馬の状態も雰囲気も凄く良くて、良いレースが出来るかなと思ったんですけど、いつものメビウスの位置取りをしてしまったという感じがあります。自分では「それで良いのかな」と思っていましたけど、結果的にはそれが良い位置でもないし、あの競馬場に合った乗り方でもなかったというところですよね。上手く乗ってあげられなかったな、という思いはあります。

-:違う位置取りでレースをすれば、結果も変わったかな、と。

田:そうですね。勝った馬は強かったですけど、4着から2着になることは十分にあったと思うので、ちょっと勿体なかったな、と思います。



-:レースが終わった直後の馬の状態はどうでしたか?

田:厩舎の方の話では、レースが終わって厩舎に帰ってきたときにはショボンとしていたらしいです。でも、先週末に電話したときには「すぐに回復して、凄く順調に来ている」という話でした。

-:そうですか。シルクメビウスは、去年のジャパンカップダートにも出走されて2着でしたけど、その時のお話を聞かせてください。状態はどんな感じだったんですか?

田:状態は良かったですよ。正直、僕はこの馬に乗って「状態がいまひとつかな」と思ったのは、武蔵野ステークスのときぐらいですね。領家厩舎のスタッフがしっかり仕上げてくれるので、いつも「良い状態だな」と感じながら乗せてもらっています。

-:なるほど。では、レース内容はいかがでしたか?

田:スタートして、若干挟まれる形になったんですね。位置取りはいつものメビウスの位置取りですけれども、G1で流れが速かった分、折り合いも付きました。ただ、ずっと外目を回ってしまったんですよね。それでもあれだけの脚を使ってくれるので、やっぱり凄い馬だと思いました。

-:素晴らしい伸びでしたね。

田:エスポワールシチーに結構セーフティーリードを取られていましたけど、直線まで我慢しました。やっぱり我慢して我慢して、というのがこの馬の良いところというか、弾けさせるポイントの一つだと思います。

-:溜めれば溜めるだけ応えてくれる、と。ちなみに阪神ダート1800という舞台はメビウスにとっていかがですか?

田:阪神コースは勝っていますし、当日輸送の京都、阪神のときの方が、パワフルで、力が漲っているような感覚があると思います。門別のときも札幌からの当日輸送でしたからね。僕はメビウスの輸送の過程を見ていないので、どのくらい体力を消耗してしまいそうなのかは分かりませんけど、話を聞く限りでは、当日輸送の方が良いらしいです。

-:なるほど。それでは、仕上げは領家厩舎の皆さんにお任せをして。

田:そうですね。一流の厩舎さんですからね。



-:改めて考えても…、凄い馬に乗っていますね。

田:そうですね。本当に「こんな馬と巡り合えるのか」っていう、スーパーホースですよ。「僕が乗っていいのかな?」っていう気持ちもあるんですけどね。馬に追いつきたいんですけど、馬もどんどん力を付けているので、なかなか追いつけない感じですね(笑)。

-:馬に引っ張ってもらって。

田:馬に引っ張ってもらっちゃっていますけど、意外とメビウスは我が強いので、完全に人間に制圧されるよりは、どちらかというと馬自身が主導権を取った方が走るタイプのような気がします。人間に上手くコントロールされてしまうと、そこで収まってしまうような感じがするんですよね。あまり上手く乗れていないときの方が、より能力以上のものを出しているという感じがあるんですよ。

-:それを強く感じたレースはありますか?

田:東海ステークスですね。

-:コントロールが出来ないというのは、メビウスが田中騎手の言うことを聞かないという感じなんですか?

田:いえ、言うことは聞くんですけど、自分の手の内から外れそうな感覚です。もう一歩来ると勝手に行かれてしまう、というギリギリのラインになったときの方が、爆発力があります。かえって手の内に入っちゃうときは、スカッとなってしまいますね。

-:そういうパターンのレースもあるんですね。

田:武蔵野ステークスはそんな感じでしたね。前走のJBCクラシックも、どちらかというと手の内に入ってしまった感じです。普通、常識的に考えると、手の内に入らない方が走るっていうことは無いと思うんですけど、この馬は、我の強さを生かしながら走りたい気持ちを優先させるときの方が良いです。

-:そうなんですか。

田:でも多分、馬の気持ちを優先させ過ぎてもダメだと思います。僕は攻め馬ではメビウスに乗ったことはありませんけど、大変らしいですから。気持ちを優先させられる、ちょうど良いラインがあると思うんですけどね…。本当に勉強させられる馬ですよ。最初に乗ったときから衝撃的でしたからね。

-:小倉のくすのき賞ですね。このときはどういう印象を持ったんですか?

田:気持ちが凄くて、野獣のような感じでした。目も血走っていましたしね。でも、今はそういう刺々しいところは無くなってきて、内に秘めるようになってきた感じはします。あれから1年ちょっと経っていますしね。



-:その1年ちょっとの間に重賞勝ちを含め、大きな舞台に進みましたね。

田:本当に凄い経験をさせてもらっています。4歳でこれだけの修羅場を潜っていますから、やっぱり凄い馬ですよね。僕自身は、メビウスに乗るたびに「どうやったら上手く走らせられるか」と考えています。メビウスに合った乗り方や、こうした方がメビウスの力が発揮しやすいな、というのは徐々に分かって来ています。

-:メビウスと一緒に大舞台を経験しながら、田中騎手自身にも変化は起きるものですか?

田:凄く大きな舞台を経験させてもらっていますし、勝たせてもらっていますからね。以前は重賞に乗ると「うわー、重賞か」という気持ちもありましたし、まさか勝てるとは思っていませんでしたからね。本当にメビウスには敵わないです。このスーパーホースと成長していきたいんですけど…、まあ、僕がもっと頑張れっていう話なんですけどね。

-:そういう話になりますか。

田:いや、頑張っているつもりなんですけど、何かが足りないんですよね。

-:何かが足りない?

田:色が無いなって思います。色が無いというか「ああ、こんな乗り方をしてくるんだ」って思われるような乗り方をしていない、と思うんですよね。その馬にとって、ただの普通のレースをして来てしまうという感じで。

-:なるほど。

田:力がある馬に乗ればそれでも勝てると思うんですけど、力の足りない馬に乗ったときに、足りない馬の足りないレースをしてしまうという感じで。本当に足りない馬はそういうレースにしかなりませんけど、微妙な力がある馬で何か変わったレースをして来るとか、もっとそういう乗り方をしないと、っていうのは凄く思っているんですよね。

-:意外性のような。

田:そう、意外性ですよね。逃げ馬と思われていた馬で後ろから行く競馬をしてみて結果を出したり、行けなかった馬を何回か乗るうちに行けるようにさせたり、何か意外性を作っていかないといけないな、とは思っています。今は模索中ですね。まだ今は、数は乗せてもらっていますけど、そのうちに本当に乗せてもらえなくなってしまいますから。メビウスがいる間にもやっていかないといけないな、というのはありますね。

-:そういう意識があるんですね。でも、重賞を勝ったりしていると、周囲から「好調だね」って声を掛けられることもあるでしょう。

田:たまにありますけど、でも自分の手応えとは違いますよね。去年は初めてG1を勝たせてもらって、祝福の声を掛けてもらいましたけど、結局、25勝ですからね。今年はもっと勝ちが少ないですし「何勝しているの?」って聞かれて、答えるのが凄くイヤですもんね。そう聞かれても、自信を持って答えられるような成績を出したいですね。

-:なるほど。

田:何かもう、申し訳なくて…。メビウスや他にも良い馬に乗せてもらっているのに、こんな成績で。凄く不甲斐ないし、本当に、何で去年G1を勝った後に流れを変えられなかったのかなって、思います。今回チャンスがあるので、今度こそG1を勝ったら、もっと自分の流れを変えていきたい、と思っています。

-:自分の流れを変えたい、と。ちなみに海外遠征なども考えますか?田中騎手と仲の良い的場勇人騎手もアイルランド遠征をされていましたけれども、刺激になりますか?

田:それはなりますよね。変われるキッカケが欲しい、というのもあって、自分も海外に行きたいな、という気持ちもあるんですよ。でも今はシルクメビウスという、一生のうちに巡り会えるかどうかという馬に出会っているので、乗せていただいている間はこちらに集中したいというのはあります。あんまり欲を出し過ぎても良くないんですけど、本当に今回はチャンスが大きいと思っていますし、頑張りたいですね。

-:良い結果を楽しみにしています。今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

田:ありがとうございました。


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