まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

目からウロコがおちた話

2009-12-11 17:08:41 | グローバル・エシックス
世界って、私たちの考え方やものの見方をほんのちょっと変えるだけで、
ガラッと変わってしまうんじゃないかと思っています。
私はもう何年も大学で 「科学技術と環境の倫理学」 という講義を行っていますが、
そうやって環境倫理学を学生に語っている私が、
数年前にテレビを見ていて愕然としたことがあります。
それこそ目からウロコが落ちたとでも言うんでしょうか、
おお、そんな考え方があったんだぁ、と心が揺さぶられたのです。

内容はそんな大した話じゃありません。
ニュース番組か情報番組の中で、そこらへんの普通の人に、
「なにか環境にいいことやっていますか?」 と聞いていくコーナーでした。
その中で、スーパーで買い物をしている女性がインタビューを受けて、こう答えたのです。

「牛乳は、できるだけ古いのを買うようにしています。」
これには驚かされました

1リットルの牛乳パックって、ただでさえ飲みきれなかったりしがちですから、
できるだけ新しいやつ、賞味期限が先になってるやつを、
ショーケースの奥のほうから引っ張り出してきて買ったりしていたんです、私は。
その行動は、牛乳と私のお腹のためにベストな行動であって、
別の選択肢 (オルターナティブ) があるなんて微塵も思っていなかったんです、それまで。
しかし、たしかにみんながみんな私のような行動を取っていたら、
スーパーの売り場には古い牛乳が大量に残って廃棄されることになってしまいます。
その女性は、多くの人がそういう行動を取りがちなことを知っていて、
彼女のうちは大家族なので牛乳が消費しきれないという心配もないからでしょうが、
とにかくわざわざ古いのを選んで買っていたわけです。
彼女がそうすることによって廃棄牛乳が激減するということはないかもしれませんが、
世界中の人が彼女のような考え方をし、彼女のような行動を取るならば、
世界はガラッと変わっていくはずです。

カッコいい大人だなあと思いました。
それに比べて私は倫理学者のくせに、いつも牛乳売り場では、
這いつくばるようにして奥のほうの新しい牛乳を漁っていたなんて、
なんとカッコ悪いんでしょう
言われてみれば至極当然のように思えますが (ひょっとしてみんなもうやってました?)、
言われるまではそういう行動がありえるなんて思ってもみなかった、
そういう選択肢がこの世にはまだまだたくさんあるのではないでしょうか。
そういうオルターナティブを見つけて世界に広げていくだけで、
世界を変えることができる、そう私は信じています。