まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

競技ダンスにおける採点の偏りについて

2016-10-02 20:20:37 | ダンス・ダンス・ダンス
昨日はせっかくいただいた質問にまったく答えないまま、
全然別の問題に関して語ってしまいました。
今日こそはご質問にお答えすることにしましょう。
競技ダンスの採点に関するこういう質問でしたね。

「競技会の採点についてですが、ジュニアの場合、男子の数が少ない場合、
 女子同士ペアで出場することがあります。
 その場合、ある指導者の方から、女子同士ペアに比べてどうしても
 男女ペアの方が優先的に点数が入り易いと聞いたことがあります。
 女子同士でも立派にリーダーを務める女子もいるのに
 実力とは裏腹な採点があるのは本当でしょうか?
 あと、男女ペアについても、リーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているとも…
 そんなことがあるのでしょうか?」

質問は2つあります。
2番目のほうが答えやすそうなのでそちらから答えていくことにしましょう。
ただ昨日も述べたように、私はもう競技ダンスの世界から身を引いてしまっていますので、
この手の質問に対してきちんと答えられる立場にありません。
ずっと昔にジャッジを務めた経験を思い出したり、
その他、いろいろと想像をめぐらせながらお答えしてみますが、
これはあくまでも素人の私見ですので、
競技ダンス界の公式見解ではないということをご理解の上お読みください。

Q-1.競技ダンスの試合ではリーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているんですか?

A-1.競技ダンスの採点に際しては、基本的にリーダーとパートナーを同じ比重で、
    カップルのまとまりとしてそれぞれの組のダンスを評価しているはずで、
    リーダー7割、パートナー3割といった配分が決められていたりはしません。
    ただし、現在のシステムではゼッケンがリーダーの背中にのみ付けられていますので、
    ジャッジが未熟な場合、どうしてもリーダーの背中ばかり目で追ってしまう、
    ということが起こりえるかもしれません。

繰り返し申し上げているとおり、今のところ競技ダンスというのは、
同一フロア内で複数のカップルが同時に踊り、それを相対評価するという方法で採点しています。
多い場合には12カップルくらいがいっぺんに踊っているわけです。
ところが選手を特定するための番号が記されたゼッケンはリーダーの背中にしか付されていません。
競技中は選手たちは激しく動き回っていますので、常にそのゼッケンが見えるわけではありません。
すると勢い、ジャッジはゼッケンの付されたリーダーの背中を目で追うことになります。
ジャッジが未熟な場合、短時間で全カップルの相対評価をするために、
ゼッケンが見えている時にのみそのカップルの踊りの良し悪しを判断してしまうこともあるでしょう。

これはひょっとすると昨日論じた競技ダンスの黒歴史の一部なのかもしれません。
もともとはリーダーの踊りさえ評価できればいいと考えられていたのかもしれません。
(以前は、カップルを解消した場合にリーダーのみがA級やB級といった級を維持できましたが、
 これもこの問題と連なる根深い男女差別問題だと思います。)
この問題を解消するために私はパートナーにもゼッケンを付けるべきだと思っています。
パートナーはドレスを着用しますので、リーダーのような大きなゼッケンは付けられないし、
たしかにドレスにゼッケンを付けるとちょっと興ざめな感じもしてしまうかもしれませんが、
競技ダンスにおける男女平等を推進するためには、
パートナーの肩のあたりとかにちょっと小さめのゼッケンを付けるという工夫は必要な気がします。
このような改善を加えていけば、質問者が抱いたような疑問は少しずつ解消していくでしょう。
続いて今回のメインの質問です。

Q-2.女子同士カップルに比べて男女カップルの方が採点上優遇されていたりするのですか?

A-2.システムとして女子同士カップルの出場を認めた以上、男女か女女かに関わらず、
    純粋にダンスが上手いか下手かという観点だけで平等に評価されているはずです。
    ただし個々のジャッジの明白な信念や隠された価値観によっては、
    上手い下手の判断のなかに別の基準が紛れ込んでいる可能性があるかもしれません。

これもちょっと玉虫色なお答えで申しわけありません。
建前上は最初の文でお答えしたことがすべてのはずです。
しかしながら、そんなに簡単に割り切れるのであればこの世に差別なんて存在しませんよね。
質問者の方がどこからそういう話を仕入れてきたのかわかりませんが、
そんなこと絶対にあるはずないと言い切れるほど単純な話でないことはたしかでしょう。
実際にそういうことがあるかないかは私としては確かめようがありませんので、
事実としてそうなのかどうかという観点からではなく、
もしもそういうことがあるとするならばそれはどういう原因によるのか、
という観点から補足説明をしておきたいと思います。

ひとつには競技ダンスがどうあるべきかに関する明白な信念にもとづいて、
採点の偏りが意図的ないし無意識的に生じてしまうということがありうるでしょう。
つまり、昨日述べたような、競技ダンスとは男女で踊るべきだという理想像ですね。
それを堅固に信じているジャッジがいたとすると、
女性同士カップルなんて邪道だと思ってわざとチェックを入れないとか、
順位を低く付けるなんていうことがひょっとするとあるかもしれません。
まあ、さすがにそこまでやる酷い人はいないと信じたいですが、
そうだとしても、男女で組んで踊るダンスが基本でありそれが美しいと信じていると、
その人にとっては女性同士カップルのダンスが美しくも上手くも見えないので、
本人は客観的な判断だと信じて女性同士カップルを低く評価することがありうるでしょう。
以前にコメント欄で、自分のお弟子さんに甘い採点をするジャッジがいるのではないか、
という質問にお答えしたことがありますが、
あれも意図的に甘く付けるという可能性とは別に、
ジャッジにはそれぞれ自分の理想のダンス像があるはずで、
それを自分のお弟子さんに優先的に教え体得させているのだから、
彼にとってはお弟子さんの踊りが一番よく見えてしまうということがありうるはずです。
それと同じようなことが今回の場合にも起こりうると思うのです。

より複雑なケースとしては、それが明白な信念として本人に意識されておらず、
隠された価値観として植え込まれているということもありえるかもしれません。
女性同士カップルの導入に賛同していて、自分は偏らずに審査できると信じているのだけれど、
実は長いあいだに育まれてきた価値観に基づいて、
上記と同様、客観的に判断していると信じながら、
結果的に偏った評価を下していることがありうるかもしれません。
今回は女性同士カップルを特に取り上げたので、女性がリーダーである場合に関しては、
わりと客観的に判断できそうな気がするのですが、
これが例えばパートナーが男性であった場合にははたしてそううまくいくでしょうか?
その際、男性パートナーにドレスを着させるのか、
化粧をさせるのかといった運営上の問題もいろいろと絡んできますが、
男性パートナーの踊りをどこまで客観的に、
偏見を差し挟まず純粋にダンスとして評価できるのか、これはけっこう難しい気がします。
はるな愛などニューハーフの方がパートナーだったら、
そのまま男性とも気づかずにジャッジできるかもしれませんが、
まるっきり見た目男性という人がパートナーだったら、
もしも私がジャッジだったらついプッと吹き出してしまうかもしれません。
そんな状況で客観的な評価を下すのはけっこう難しいのではないでしょうか。
女性リーダーの場合はそこまであからさまには問題化しないかもしれませんが、
原理的には同じ問題が存在しているはずです。
私たちのなかに長いあいだかけて築かれた競技ダンスに対する価値観、
それを無意識のまま放置しておくと、
新しいシステムのなかで純粋に客観的にダンスを評価することはできないでしょう。
個人的には今後競技ダンスは、
性別とは無関係にリーダーでもパートナーでも務められるという万人に開かれたスポーツとなり、
大会や部門を分けたりすることもなく、
同一フロアで男女、女女、男男、女男、その他のカップルが一緒に競うという、
世界史上初のセクシャリティフリーなスポーツになってもらいたいと思っております。
そのためには踊る側にも見る側にも、これまでの歴史的伝統を覆す大きな意識変革が必要となるでしょう。
それを乗り越えて新しい時代の新しいスポーツとして生まれ変わり普及してくれることを期待します。

競技ダンスにおるリーダー・パートナー問題

2016-10-01 13:58:30 | ダンス・ダンス・ダンス
ずいぶん前になりますが、「競技ダンスの採点方法」 という記事を書いたことがあります。
ダンス関係者には未だに時々読んでいただいているようで、
つい最近、その記事に対して以下のようなコメントをいただきました。

「初めまして!お尋ねします。
 競技会の採点についてですが、ジュニアの場合、男子の数が少ない場合、
 女子同士ペアで出場することがあります。
 その場合、ある指導者の方から、女子同士ペアに比べてどうしても
 男女ペアの方が優先的に点数が入り易いと聞いたことがあります。
 女子同士でも立派にリーダーを務める女子もいるのに
 実力とは裏腹な採点があるのは本当でしょうか?
 あと、男女ペアについても、リーダー7割、パートナー3割の配分で採点されているとも…
 そんなことがあるのでしょうか?」

この質問に対してお答えする前に、
(どっちみちこの質問に直接お答えすることはできないんですが…)
今回提起された問題は競技ダンスの根幹に関わる重要な問題ですので、
まずはその点に関して私の思うところをいくつか述べさせていただきたいと思います。

まず私が驚いたのは、このコメントのなかに何気なく書かれていたこの一文、
「ジュニアの場合、男子の数が少ない場合、女子同士ペアで出場することがあります。」
というところでした。
立場上、全東北学生競技ダンス連盟の試合を見に行くことはあっても、
自分自身は競技ダンスの世界からすっぱり身を引いてしまっておりますので、
昨今の競技ダンス事情から完全に隔絶されておりました。
今は女子同士のペアなんていうのが認められているんですね。
さっそくググってみたところ、たしかにもうそういうことになっているようです。

「社交ダンスって女性同士で踊れるの? 男性同士はいい?」

「社交ダンスで女性同士の競技会が新設」

これらの記事によると、高校生以下の部ではすでに以前から女性同士のカップルが認められており、
近年ではシニアの部でも女性同士のカップルの部門が設けられるようになっているようです。
いやあ時代が変われば変わるもんですねえ。
たしかに社交ダンス、競技ダンスの世界では女性の比率が圧倒的に多いため、
これまでもずーっと慢性的に男性不足でカップルが組めないということが起こっていました。
ダンス人口をこれ以上減らさないために、まずは若年層で女性同士のカップルが認められ、
それが次第にシニア世代にも及びつつあるということのようです。
私としては男女平等推進の立場から、この流れに全面的に賛同を示したいと思いますし、
実は以前から、学連の試合でいろいろな方に会ったときには、そうすべきだと主張していました。

しかしながら、それが簡単なことではないということは理解していたつもりです。
以前に、それぞれのスポーツには構成的ルールと運営上のルールがあり、
運営上のルールはその時々の必要に応じて変えていけばいいけれども、
構成的ルールに手を加えてしまうとそのスポーツの本質が変わってしまったり、
歪んでしまったりする可能性があるので気をつけなければいけない、と論じたことがあります。
その際、競技ダンス (=社交ダンス) にとっての構成的ルールは、
「舞踏室 (場)= ballroom」 でたくさんのカップルが同時に踊るなかで美しさを競うことであり、
そこを変えてしまうと競技ダンスの本質的部分が変質してしまうかもしれないと書きました。
競技ダンスは現在、オリンピック種目入りを目指してロビー活動中であり、
そのために、採点方法を現在の同一フロア内複数カップル相対評価システムから、
フィギュアスケートのような、個別演技ポイント制絶対評価システムへと変更しようとしています。
私は構成的ルールはそう簡単に変えるべきではないという観点からそれには批判的なわけです。

が、女性同士のカップルを認めるということは、採点方法の変更なんかよりもはるかに、
競技ダンス (=社交ダンス) の根幹部分を壊すことになるかもしれません。
社交ダンスというのは、社交の場における男女の嗜みとして発展を遂げてきました。
この世界では男性はリーダー、女性はパートナーと呼ばれています。
次にどのステップを選ぶか、どちらの方向に進んでいくかなどのリードをするのが男性なので、
ダンスの世界に身を置いている者にしてみたら、男性をリーダーと呼ぶことに不自然はないのですが、
現代の世間一般の常識からするならば、たった2人のチームにリーダーがいるということも、
それが男性と決まっていて、女性はあくまでもパートナーにすぎないということも、
いずれもきわめて封建的で時代錯誤のように見えるかもしれません。
しかしながら社交ダンスというのはまさに男女平等なんていう概念がなかった頃に、
家父長制的男尊女卑という風潮の下で歴史的に形成されてきました。
ですから、あくまでも男と女がカップルを組み、男がリーダーであるという形は、
社交ダンスの歴史から見ると変更不可能な構成的ルールであるのかもしれません。
テニスの混合ダブルスや、フィギュアスケートのペアというのがたんなる運営上のルールにすぎず、
たとえそういう種目がなくなったり、男同士や女同士のペアが認められたりしても (実際ありますが)、
テニスやフィギュアスケートの根幹が揺らぐわけではないのとはちょっと事情が異なるわけです。

この問題をどう考えるかというのはひじょうに難しいです。
歴史的伝統を重んじてこれまで通りを貫くのか、
近代合理主義的に変革すべきはどんどん変革していくのか?
私としては、スポーツに徹するのであれば近代合理主義を受け入れていくしかないと考えています。
相撲が伝統的神事であることを盾に女性を土俵に上げないという方針を貫く気持ちもわかりますが、
スポーツとしての広がりを重視するならば、その伝統的部分を捨てて、
女性や子どもでも楽しめる安全な格闘技として全世界に普及することを考えたほうがいいでしょう。
それと同様に社交ダンスも、社交の場における男女のコミュニケーション手段としてばかりでなく、
スポーツとしてオリンピック種目を目指そうというのであれば、
男性=リーダー/女性=パートナーというこれまでの家父長制的な黒歴史とはきっぱり縁を切り、
男女が平等に楽しみ競い合えるような新しいシステムを構築していくしかないと思います。
ほんの一昔前までは、サッカーやスキージャンプなどは男の競技と考えられていましたが、
今やなでしこジャパン高梨沙羅選手の活躍を前に、
サッカーやジャンプは女性にはムリなどと決めつける人はもういないことでしょう。
サッカーやジャンプができるのだとしたら、
競技ダンスのリーダーくらい女性にできないわけがありません。
これからは女性がリーダーというカップルも積極的に受け入れていく必要があるでしょう。

ただし、その場合も試合の運営の仕方をどうするかというのは考える必要があります。
現在のジュニアの部のように、男女カップルと女性同士カップルを一緒に競わせてよいのか、
それともシニアの部で試みられているように女性同士カップル部門というのを新しく設けて、
それぞれ別に競技をするべきか?
女子サッカーも女子ジャンプも、男子と同じ試合に出場しているわけではなく、
女子だけの試合というのが開催され、そこに女子選手は出ているわけです。
かつて大学野球部に女子選手が在籍し、男子選手とともに試合に出場していたことがありました。
それに対しては賛否両論がありました。
女性も野球をやろうというのであれば女子だけのチームどうしで戦うべきだとか、
それほどの女性野球人口がいない以上、
実力があるのであれば女子が男子のなかにいてもいいだろうとか。
男女平等という基本方針のなかで、では実際にどのように試合を運営するかとなると、
これもやはりけっこう頭を悩ませる難しい問題です。

以前、うちの大学にいたフェミニズム研究者の人は、
長い歴史のなかで性別役割分担が固定化してきたために男女の体格差も生まれてきたけれど、
今後、男女を平等に扱い続けていくならば、今の体力差は解消し、
スポーツにおける男女別競技も不要になっていくだろう、という予想を立てていました。
私はそこまでラディカルな男女平等主義者にはまだなれていなくて、
男女平等がどこまで進んでも男女の体格差、体力差は解消しないんじゃないかと思っています。
だとすると男女は別々に競い合うべきであり、競技ダンスに女性リーダーを導入したとしても、
男女カップルと女性同士カップルは同じフロアに立つことはなく、
別の大会、別の部門でそれぞれが争えばいいということになるでしょう。
ただし、先にも述べたように、ダンスのリーダー役というのはそれほど体格的、体力的に、
男性にしかできないというものでもないし、
だったら男女カップルと女性同士カップルが同じフロアで競っても問題ないとも言えそうです。
どちらを選ぶのか、それはダンスにおける男女人口比等を勘案しつつ、
その時々に競技ダンス連盟総本部が選んでいけばいいのだろうと思います。

むしろきちんと考えておかなければならないのは、
いったん女性同士カップルを認めたとするならば、
今度は男性同士カップルも認めなくていいのかという問題が出てくるでしょう。
今のところは男性リーダーが圧倒的に少ないので、その補填のために女性同士カップルだけ認めて、
男性同士カップルは認めないという方向で話が進んでいるのだと思われます。
(女性が大量に余ってしまっているからこそ女性同士カップルを認めるのであって、
 男性同士カップルを認めてしまうと今よりもさらにいっそう男性不足が進んでしまう…)
しかしながら、女性にもリーダー向きの体格の人がいるのと同様に、
男性のなかにも身体が柔らかくてパートナー向きという人がいたとしたっておかしくありません。
男女平等をとことん考えていくならば、男女カップルのほかに、
女性同士カップル、男性同士カップルも認めなければいけないでしょうし、理論的には、
女性=リーダー/男性=パートナーという逆転カップルも認める必要が出てくるでしょう。

さらには男とか女という二者択一に当てはまらない、
インターセックスの人たちはどうするんだというよりいっそう厄介な問題も生じてきます。
スポーツが現状、男女別競技制を取っているなかで、
インターセックスの人たちはスポーツへの参画を大幅に阻害されているわけですが、
しかし、競技の公平性を考えた場合、男女に体格差や体力差があるとするならば、
場合によってはセックスチェックをして競技者集団を分けるということも必要なのかもしれません。
スポーツにおけるセクシャル・イクォリティ (男/女/その他) と競技の公平性はどう両立可能なのか?
これ自体とても難しい問題ですが、
男と女が組んで踊るということを構成的要素として成り立ってきた競技ダンスが、
この問題にどこまで積極的に取り組むことができるのか、私にはまったく先が見えません。

さて、いただいた質問にはまったく答えないまま、はてしなく遠いところまで来てしまいました。
今回の質問にお答えするためには、
その前にまずこういった原理的なことを考えておかなければならなかったわけです。
問題を投げっぱなし、広げっぱなしで答えは全然見出せていませんが、
以上の考察を踏まえた上で、いただいた質問に対して答えていくことにしたいと思いますが、
もう疲れちゃったので本論は次回以降に展開させていただきます。

初めての2次会=舞魂会総会

2015-11-04 16:21:47 | ダンス・ダンス・ダンス
昨日は初めての巨大披露宴についてご報告しましたが、

披露宴後の2次会は、福大競技ダンス部のOB・OG会 (舞魂会) の年次総会として催されました。

というのも、あまりにも披露宴の参列者が多すぎたため2次会は2会場に分けて開催され、

ダンス部関係者だけが1つにまとめてもらえたのでそんなことが可能になったのです。

例年、舞魂会総会は大学祭の時期に合わせて開催されていますが、

時期的にもちょうどいいくらいだし、大学祭のときに改めて開催するよりも、

2次会と同時開催にしたほうが参加人数が確保できるだろうという読みはみごとに的中していました。

会場は東口街なかの 「原価酒場 神の野望」 でした。

会費は東京での2次会の半額でしたが、

それでも、もうゼッタイにこれ以上食べられないような量の料理が並べられていました。



そんな料理を前に、アルコール片手に会計報告や質疑応答などが行われました。

ちなみにテーブルの上に見えるでっかいお煎餅の缶みたいなやつ、これは鍋でした。

中はこんなことになっています。



こんな缶を鍋代わりにしている店は初めて見ました。

さすが 「原価酒場」 と銘打つだけあって、

原価で料理を提供するためには調理器具にもお金をかけられないということなんでしょうか?

もうお腹いっぱいで食べられる気はしませんでしたが、せっかくなので火を付けてみました。



出来上がりがどうなったのか、食べてみたのかみなかったのか、

美味しかったのかどうなのかはもうまったく記憶がありません。

なお、2会場設けられたもうひとつの2次会会場は通りをはさんで向かいの店だったので、

(たしか 「CROWN」?)

新郎新婦は両店を行ったり来たりしていました。

そのせいかどうか、最後は新郎もヘロヘロになっていました。



あれだけの巨大披露宴を仕切り、あれだけのお酒を飲んだのですから、

そりゃあヘロヘロにもなるでしょう。

でも新婦 (もともとは後輩だったはず) のほうはケロッとして面倒みていましたので、

これからも婦唱夫随で末永く幸せな家庭を築いてください。

このたびは、いろいろと初めての経験をさせていただき、

ブログネタを2つも提供してくれてありがとうございました

東北学生競技ダンス初めての福島大会

2015-06-21 18:42:04 | ダンス・ダンス・ダンス
本日、福島大学で全東北学生競技ダンス連盟の夏大会が開催されました。

公式戦の開催は初めてのことです。

朝、福大の第一体育館に着いてみると、すっかり大会会場と化していて感慨深いものがありました。





今大会のパンフレットのために執筆した挨拶文をここに掲載しておきましょう。


               初めての福島大会にようこそ

                                   全東北学生競技ダンス連盟会長 
                                                 大会会長 
                                     小野原 雅夫 (福島大学教授)

 東北学連の皆さん、福島へようこそ。私は全東北学生競技ダンス連盟 (以下、東北学連と略記) の会長であると同時に、福島大学競技ダンス部の顧問でもありますので、本日は大会会長も兼務していることになります。その立場から御挨拶させていただくことにいたします。
 福島大学競技ダンス部 (発足時は社交ダンス部) は1998年に発足し今年で17年目を迎えます。2000年に東北学連に加盟し大会に参加させていただくようになってから15年が経ちました。その15年目の今日、初めて福島大学で東北学連の公式戦が開催されることになったのです。
 福大の顧問としては本日の大会をうまく運営できるのか心配で心配でたまらないというのが真情です。皆さんもご存知の通り、福島大学の競技ダンス部は他大と比べて圧倒的に部員数が少ないです。そもそも大学の規模が劣っておりますのでこれはどうにもいたしかたないところですが、それにしてもこのところはさらなる部員減に悩まされており、学年によっては部員が1名のみという事態もしばしば発生しています。福島大学では、東北学連史上初めてパートナーが部長や主将を務めるという事態も過去にすでに発生しており (ちゃんと調べていませんがひょっとするとこれは全日本学連史上初めてのことだったのかもしれません)、実は今年の3年生もパートナー1名だけですので、とうとう大会実行委員長を女性が務めるということになってしまいました。私の本業は倫理学者ですので男女平等推進派ですから、別に部員数に困っていない他大学でも、パートナーが部長や主将を務めるということがこれからはどんどん増えていって然るべきだと思っています。ただ男女を問わず執行部の3年生が1人だけとかほんの数名しかいないという事態は本当にかわいそうで、そんな状態で初めての公式戦を運営しなければならなくなったというのは、福島大学にとってはひじょうに不運なことであり、その原因を作った山形大学に対しては恨み言のひとつもこぼしたくなります。
 とはいえ愚痴ばかりを言っていてもしかたありません。公式戦開催は初めてですが、東北大学、山形大学とともに三大学だけで「南東北戦・天下一舞踏会」という非公式戦を毎年5月に開催してきていました。ジュニア戦と新人戦のみ、椅子もない中での試合でしたが、そうした疑似体験は積んできています。また今回、初の公式戦開催にあたって、東北学連や各大学からは様々な形で多くの御助力を賜ることができました。この場で感謝申し上げさせていただきます。本日はOB・OGも総出でこの大会の運営にあたってくれていることと思いますが、それにしても人手不足、経験不足は否めず、大会参加の選手の皆さんにはいろいろとご不便をおかけしてしまうことも多々発生してしまうことでしょう。上記のような事情ですのでそこは広い心で大目に見ていただいて、東北学連の良さである和気藹々としたフレンドリーな関係性を発揮して、福大部員が気づいていなかったり抜けていたりするところをそっと指摘したり率先して手を貸したりしてあげていただけたらと思います。初めての福島大会、はたしてどんなことになるかまったく予想もつきませんが、最後までゆっくりお楽しみください。



というわけです。

こちらが、おそらく日本学生競技ダンス史上初と思われる女性大会実行委員長。



案の定、いろいろありましたが、何とか無事に (?) 大会は終了しました。

福島大学の体育館で色とりどりのドレスが舞うのを見られる日が来るとは思っていませんでした。

こちらはスタンダード4種目戦。



こちらはラテン4種目戦。



何とか大役を果たすことができてホッと一安心ですが、

今日までずっと胃の痛い日々が続きましたので (ちょっと誇張気味? 私自身は何もやってません)、

来年度以降は謹んで山形大学にこの大役を返納申し上げたいと思います。

1日も早い山形大学の活動再開をお祈り申し上げます。

全東北学生競技ダンス連盟2014秋大会の挨拶文

2015-03-31 12:42:47 | ダンス・ダンス・ダンス
早いもので今日で2014年度も終了、明日から新年度となります。
私が長らく部活の顧問と東北学連の連盟会長を務めている学生競技ダンス部も、
新しい年度を迎えることになります。
私としては大きな宿題を残してしまっていますので、あまりまだ前向きな気分になれないのですが、
5月に開催される春大会のための挨拶文をすでに依頼されており、
昨日やっと書き上げたところです。
もろもろ理由があって (たぶんそのうち論じます)、その挨拶文を書くために、
昨年の11月に行われた秋大会のために書いた挨拶文を読み返しておりました。
何を書いたかすっかり忘れていましたが、ここでもアナ雪を取り上げていました。
『愛する人に東横インをプレゼントしよう』 の解説でもアナ雪に言及していましたが、
どうも2014年度は私のなかでアナ雪の占める比重が高かったようです。
アナ雪のことをみんなが忘れてしまう前にここに再録しておくことにいたしましょう。
タイトルなんてもろそのまんまなんだもん。
ま、ご笑覧ください。


                   LET IT GO!

                                 全東北学生競技ダンス連盟会長
                                 小野原 雅夫(福島大学教授)

 まず最初に今年も本大会に欠席せざるをえないことをご容赦ください。今年ばかりでなくこのところ数年この秋大会は欠席させていただいております。私が所属しているメインの学会の大会が例年この時期に開催されているのですが、ここ数年は完全に日にちが重なってしまっており、私も研究者としての本分があるためどうしても外すことができないのです。大会会長である福山博之先生をはじめ開催校の東北大学の皆さん、そして学連の連盟委員の皆さん、連盟副会長の神宮周二様にはたいへんご迷惑をおかけすることをお詫び申し上げます。本大会が盛会のうちに成功を収めますことを遠く学会会場よりお祈り申し上げております。
 それにしても残念なのは、4年生の最後の晴れ姿をこの目で見届けることができないということです。4年生の皆さんはこれまで競技ダンスにかけてきたすべてを今日のこのフロアにぶつけようと意欲を燃やしているはずです。思えば4年間の競技ダンス生活は思いのままにならないことの連続だったのではないでしょうか。「肘を上げて落とさないように。でも肩が上がってはいけません」 なんて何言われてるかわからなかったでしょうし、「思いっきり大きく動いて。でも腰が引けてはいけません」 だなんてそんな不自然な動きムリと思ったことでしょう。ホールドやポイズを保ちながら豪快にスイングを決めること、自分なりのダンスを追求しながらその時々の相手に合わせてカップルとしての踊りを作り上げていくこと、音楽に乗って音楽を表現しながら他カップルとぶつからないよう冷静にフロア取りをすること、自分たちのダンスの向上をはかりながら部活や後輩たちの面倒をみること、競技ダンスに全力を注ぎながら学業やバイトや就職活動とも両立させること、等々。
 時には 「ああもう好きなようにやらせてくれ~」 とすべての束縛をなげうって自由に踊り出したくなったこともあったのではないでしょうか。しかしながら一人前のダンサーとして育つためにはどうしてもこの厳しい束縛に耐える必要があったのです。あの大ヒット映画 『アナと雪の女王』 のエルサが、手袋をはめて自分の中のパワーをぐっと抑え続けていたのと同じように。あなたを縛りつけていた軛はあなたを成長させるための糧でした。それがあったからこそ皆さんは今、最後のフロアに向かうことができるのです。そしてとうとう、皆さんがこれまで蓄えてきたパワーをすべて爆発させるときが来ました。もう何も恐くありません。4年生の最後を迎えた今なら皆さんがどれだけ自由に自分の踊りたいように踊っても、競技ダンスの基本を外すことなく誰の目にも美しいダンスを作り上げることができるはずです。あのエルサの氷のお城のような。4年生の皆さん、4年間本当にお疲れさまでした。今こそすべての力を解き放ってあなたにしか作ることのできないダンスの王宮を築き上げてください。

第55回福島大学創作ダンス発表会

2014-12-12 18:46:46 | ダンス・ダンス・ダンス
昨日のオケのコンサートに続き、もう一つイベント告知です。

オケのコンサートの前日に、福島大学創作ダンス発表会があります。

一昨年、「文化創造論」 のなかでこの会のことを教えてもらって見に行って、

とても面白かったので、去年も告知させていただきました。

福島大学ダンス研究室が主催で、福島大学ダンス受講生が出演するので、

比較的小さめのイベントを想像していましたが、

スポーツ・芸術創造専攻のスポ科の人たちが1年から4年までほとんど出演するので、

けっこうな規模のイベントです。

ふだんは真面目に陸上競技や球技などに取り組んでいる学生たちが、

総出でダンスに取り組んでいますので、その姿を見ているだけで笑えてきます。

ぎすぎすした年末、クリスマスシーズンをお過ごしの方にピッタリのイベントですので、

ぜひご覧になってみてください。

ちなみに、私は今年も残念ながら先約がすでに入っていて見に行くことができません。

どなたか私の代わりに彼らの勇姿を見届けてあげてください。


第55回福島大学創作ダンス発表会

日 時 : 12月21日 (日) 午後2時開演 (1時30分開場)

会 場 : 福島テルサ

出 演 : 福島大学ダンス受講生、他

主 催 : 福島大学ダンス研究室

入場料 : 無料

テーマ : The Innovative Movement ~今、変革の時~

あの人のその後

2013-07-09 18:47:55 | ダンス・ダンス・ダンス
今ちょっと会議に行って戻ってきてみたら、

2人の方のその後のニュースがネットで流れていて驚きました。

ひとりはこの方。

「<福島第1原発> 吉田元所長が死去 事故時に現場対応」

福島のみならず日本を救ったヒーローのひとりであることは間違いありません。

(もちろんまだ 「救った」 と過去形で語ってしまえる状況ではありませんが…)

2011年の12月時点で食道ガンであることはわかっており、

早々に 「3月11日以来の被曝線量は70ミリシーベルトだが、

専門医からは被曝が発症につながった可能性は低いとの評価を受け」
ていて、

今回、58歳という異例の若さで食道ガンで亡くなられたわけですが、

おそらく東電からは労災の扱いも受けられないことになるのではないでしょうか。

(せいぜい認定されても 「過労死」 くらい?)

日本ならびに原発という 「犠牲のシステム」 の被害者がまたひとり増えたことになります。

私と同じ 「まさおさま」 のご冥福をお祈り申し上げます。



もうひとつのニュースはこちら。

「窃盗容疑でお笑い芸人逮捕=事前にネット出品、落札後盗む―高級自転車被害・警視庁」

誰かと思ったら 「兼島ダンシング」 さんです。

今のところ本人は否認しているとのことですので、まだ確定情報ではありません。

兼島ダンシングといえば、4年ほど前に衝撃のデビューを果たし、

その後一切見かけることのなかった、プロダンサー兼芸人という異才です。

私のこのブログのなかの 「ダンス・ダンス・ダンス」 というカテゴリーの、

一番最初の記事が兼島ダンシングの話でしたから、

ダンスをテーマにしたカテゴリーを新たに立ち上げなければならないと思わせるほど、

私にとって兼島ダンシングのインパクトは強かったと言えるでしょう。

もしも本当に彼がこの犯罪に手を染めていたのだとしたら、

芸人の道も本業のダンスも相当苦しかったということなのでしょうか?

元ダンサーとして、現全東北学生競技ダンス連盟会長として、

大変に身につまされるニュースでした。

ダンス部保護者の方からのクリスマス・カード

2012-12-25 13:58:41 | ダンス・ダンス・ダンス
メリー・クリスマス
いよいよ年も押しつまってまいりました。
イヴ3連休もずーっと飲みっぱなしで、年賀状もまだ完成しておりません。
他にも乗り気じゃない仕事とか、将来を左右する仕事とか目白押しですが、
まだまだ忘年会等の予定が立て込んでいて、
はたして年内にすべて終えられるか皆目見当がつかないといったところです。

さて、クリスマスの今日、大学に出勤してみたら、
見知らぬ方からクリスマス・カードが届いていました。
開けてみると、競技ダンス部の保護者の方からでした。
といっても福島大学の社交ダンス部ではなく、
東北学連のどこかの競技ダンス部の保護者の方のようで、
宛先は 「全東北学生競技ダンス連盟会長 小野原雅夫様」 となっておりました。
以下、全文引用させていただきます。


「小野原様

 11月に行われました全東北学生競技ダンス選手権大会での
 小野原様が書かれました 「~最後の試合に寄せて」 に感動いたしましたので、
 おハガキ送らせていただきます。(乱筆乱文で失礼いたします)
 子供の応援もかねて、大阪や北海道での大会も観に行きましたが、
 東北の学生達は、どこにいてもマナーが良く、いつも元気で、
 たくさんの感動やパワーをいただき、ありがとうございました。
 ダンスとは無縁でしたが、毎回楽しくて
 学生達みなさんの笑顔を見ることがとてもうれしくて
 本当にステキなスポーツでした
 子供の卒業とともに、大会へ行くことはなくなると思いますが、
 今後もみな様が楽しく踊って、見ている私達がしあわせな気持ちになる様な
 大会であり続けてほしいと思います。
 学生や先生のみな様、今までたくさんの感動をありがとうございました
 Merry X’mas」


保護者の方からこんなに熱いメッセージをいただいたのは初めてです。
私ですら見に行ったことのない大阪での全日本戦や、
北海道での対北戦にも観戦に来ていただいていたようで、本当に有り難いかぎりです。
学生たちの踊りがこうして感動やパワーを見る人に与えていたのだということを知れて、
全東北学生競技ダンス連盟会長としてたいへん誇らしく思います。
これからも全東北の学連が、日本中の学生競技ダンスが、そしてダンススポーツ全体が、
東北や日本全国に元気を与え続けてくれることを期待したいと思います。

ちなみにメッセージのなかで触れられていた私の挨拶文も、
ついでに引用しておこうと思います。
実を言うとこの文章、2006年の秋大会に寄せて書いた挨拶文で、
今回は原稿が間に合わず使い回させていただきました。
私はこんなに長く連盟会長をやるつもりはなかったので、
そろそろ挨拶文のネタも尽きてきてしまったというのが実情です。
6年前のものならたぶん誰も読んだこともないし、覚えてもいないだろうとの判断でしたが、
まさか保護者の方にこんなに真剣に読んでもらっているとは驚きです。
あんまり手を抜いてる場合じゃないなとちょっと反省しました。
でも、2006年といえば私が全東北学生競技ダンス連盟会長に就任した年で、
これが初めて秋大会のために書いた挨拶文ですので、
マンネリに陥る前のパッションが感じられる文章となっていたのかもしれません。


「          4年生の東北学連最後の試合に寄せて  
                                        全東北学生競技ダンス連盟会長 
                                         小野原 雅夫(福島大学教授)

 4年生の皆さん、4年間本当にお疲れさまでした。1年のときあれだけたくさんいた新入部員の中で、今日の日を迎えることができたのは果たして何人いるでしょうか。大学ごとに事情は様々だと思いますが、4年間ダンス部で戦い続けるのは並大抵の苦労ではなかったでしょう。学業との両立、お金の問題、部内の人間関係、技術的な壁、試合の成績、カップル間のいざこざ、就職活動との兼ね合い等々、途中でやめようと思えば、いくらでもやめる理由はあったろうと思います。そしてもちろん、やめるという選択肢はけっして間違った選択でも、弱さの表れでもなく、その人が真摯に自分の大学生活や人生のあり方を考えた上での、ひとつの正しい選択だったのだろうと思います。しかし、皆さんはやめるという道を選びませんでした。どれだけ苦しいことがあっても、踊り続けることを選択しました。まずはそのことに拍手を送りたいと思います。今日の試合結果はどうあれ、今朝の練習ヒートに立ったというそのことだけで、すでに皆さんは勝者です。この4年間踊り抜いたという経験は、そしてダンス部を4年間支え続けたという経験は、これからの皆さんの人生にとって途轍もなく大きな糧となることでしょう。ダンス部に注いできた汗と涙と笑いのすべてをフロアにぶつけるつもりで、今までで最高の踊りをライバルや後輩たちに披露してあげてください。

 1年生、2年生、3年生の皆さん、4年生を慰労するために少し苦しい面ばかりを強調しすぎてしまいました。ダンスは、そしてダンス部はそんなに苦しいことばかりではありません。いや、それどころか色々な苦労や苦悩をすべて吹っ飛ばしてくれるくらい、楽しくて面白くて深い感動を与えてくれるものでもあります。皆さんも4年生の先輩方が本当に楽しそうにダンスについて語り、一心不乱に踊り、熱心に指導してくれたのを覚えていることでしょう。今日は、先輩たちの踊りを目に焼き付けておくと同時に、先輩から教わったすべてを披露して、先輩たちの苦労に報いてあげてください。

 ご来場の皆さま、東北学連秋大会に足をお運びいただき誠にありがとうございました。とりわけ、選手の御家族の皆さま、これまで彼らの課外活動を応援くださり、本当にありがとうございました。彼らの晴れ舞台を最後までごゆっくりお楽しみください。」


2011年度東北学生競技ダンス最終戦終了

2011-11-20 12:31:38 | ダンス・ダンス・ダンス
昨日は東北大学で、「第81回 全東北学生競技ダンス選手権大会」 が開催されました。
2011年度の学連の最終戦となります。
言葉では尽くせないくらい色々あった2011年でしたが、
早いものでもう今年のシーズンが終了してしまうのです。
いつものようにパンフレットに寄せた挨拶文をここに再掲しておきます。


                   2011年度卒業生の皆さんへ

                                       全東北学生競技ダンス連盟会長
                                        小野原雅夫 (福島大学教授)

 東日本大震災によって大きく出遅れることになった東北学連の2011年度の公式戦も、今日で最終戦を迎えます。本当にいろいろなことのあった1年間でした。昨年の秋大会を終えたときにはまさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。そして昨年の4年生たちの多くは卒業式も追い出しコンパも開催されず、別れの言葉を交わすチャンスもないまま、それぞれ社会人として慌ただしく旅立っていかなくてはなりませんでした。
 そんな昨年の4年生たちと比べて、今年の4年生のダンス人生はどうだったのでしょうか?いよいよ最終学年に突入するという直前にあの震災に直面してしまいました。貴重な練習期間である春休みのほとんどを、リーダーやパートナーと顔を合わせることもできないまま、練習ができずに悶々としていたことと思います。4月に入ってもなかなか大学は再開されず、学連の公式戦も再開できるかどうかずっと危ぶまれていました。けっきょく春大会は非公式戦という形での開催となりました。ただでさえ数少ない東北学連の公式戦が1試合失われたのは大変な痛手でしたが、「がんばろう、東北!! 東北学生ダンススポーツ大会」 という形で開かれたチャリティマッチは、例年の公式戦とは異なる、見る者にも参加する者にも心に残るいい試合となったのではないでしょうか。夏大会では3人のトッププロの先生方にけっこう長い時間、公開レッスンをしていただくこともできました。あんなことがあったからこそ、いつもの年とは違う貴重な経験もたくさんすることができたのではないでしょうか。
 例年、卒業生の皆さんに言っていることですが、ダンス部での4年間の経験というのはこれからの人生にとっても大変意味のあるものです。この4年のなかで、もう辞めようかと悩んだことは一度や二度ではなかったでしょう。実際に一緒に入部した同期生のうち多くの仲間がそれぞれの事情で辞めていったことと思います。そのうえあんな震災に見舞われてしまったわけですが、それにもかかわらず皆さんはとうとう最後まで踊り続け、後輩たちを指導し続ける道を選択しました。その選択と努力と苦労に心から称賛を送りたいと思います。この困難な状況の中で最後まで頑張り抜いた経験は、きっと皆さんのこれからの人生のバックボーンになってくれることでしょう。これからもいろいろなことが起こると思いますが、どんな経験も力に変えて、東北の復興のために大いに貢献していただきたいと思います。

2011年東北学生ダンス夏大会挨拶文

2011-07-21 08:21:33 | ダンス・ダンス・ダンス
ちょっと時機を逸してしまいましたが、
去る6月12日に行われた東北学生ダンス夏大会のパンフレットに書いた挨拶文を転載しておきます。
どんな大会になったのかは、すでにブログでご報告しておきました。
今さらそのときの挨拶文を転載するのは、
時事ネタにつき今このときを逃すともう2度と使えなくなってしまうのではないかと思うからです。
連盟会長に就任して6年目、毎試合毎試合、挨拶文を書き続けてきたために、
すでに相当文書ファイルがたまってきています。
それらをブログネタとして適宜使い回していこうという野望をもって、
この 「ダンス・ダンス・ダンス」 のカテゴリーを新設しました。
いつもの挨拶文は、開幕戦、新入生デビュー戦、4年生引退試合という季節ごとのテーマはあるものの、
時期さえ間違わなければ、何年後でも流用することが可能です。
しかし、今年の春大会や夏大会に限っては、やはりあの問題に触れざるをえず、
したがって今このときを逃してしまうと色褪せてしまう可能性があるのです。

まあ、今回ご紹介する文章は、災害による運・不運の不平等性という、
今流行りの 「正義論」 でも取り上げられそうな、正統派の倫理学的テーマを扱っていますので、
たんに時事ネタとして捨て去られてしまうようなものではないのかもしれませんが、
最後の太字の2行が自分としては気恥ずかしいので、
今このときくらいにしかお披露目できないという自戒の念をもって転載させていただきます。
個人的には今回の震災に際して 「がんばろう!」 という言葉はあまり使わないようにしているのですが、
今年の春大会のネーミングが 「がんばろう、東北 ! ! 東北学生ダンススポーツ大会」 だったので、
みんなを励まさなければいけない連盟会長としては、その閉会式であの2行を大声で叫び、
その流れで夏大会の挨拶文のシメの言葉もあの2行になってしまったわけです。
自分が 「ガンバレ」 なんて言われると、
「チッ、こんな状況で一体何をどうガンバレっていうんだよ」 とどうしても斜に構えてしまいますが、
こういう状況で人にかけてあげる言葉でパッと思いつくいい言葉って他に見当たらないんですよね。
まあ、いつまでも言い訳していないで、読んでいただくことにいたしましょう。



                     東北学連、再始動  

                                         全東北学生競技ダンス連盟会長
                                         小野原雅夫 (福島大学教授)

 3月11日に発生した東日本大震災によって、2011年度の東北学連の活動は大きく出遅れることになりました。開幕戦となる春大会は当初、開催できるかどうかも危ぶまれておりました。各大学や学生ごとの被災状況も異なるなか、この状況下で公式戦として成績を競い合うのは時宜に適っていないという共通認識はあったものの、なにもしないまま中止にしてしまうと再開するためのハードルが上がってしまうだろうという判断もあり、けっきょくチャリティマッチという形で 「がんばろう、東北 ! ! 東北学生ダンススポーツ大会」 として開催されることになりました。開会式での黙祷に始まり、全大学一体となったエールや震災募金への呼びかけ、競技会終了後の一般来場者の皆さまとのダンスタイムなど、初めての試みに満ちたとても素晴らしい大会となりました。短い時間のなかでこのような時期にふさわしい、大学生らしい大会を企画・実行することのできた東北学連の皆さんの底力を、学連会長としてたいへん誇らしく思います。
 その春大会からほんの1ヶ月後の今日、東北学連の公式戦が開幕します。おそらく客観的な状況はゴールデンウィークのあの頃とほとんど変わっていないものと思われます。日常生活も学業も、そしてダンス部の活動もけっして平常化したとは言えない状態だろうと思います。特に被災した3県では、大学が始まったのがあの春大会のあとのゴールデンウィーク明けで、やっと新入生の勧誘が始まったばかりというぐらいではないでしょうか。今日はもう1年生のためのジュニア戦が開催されますが、そこに選手を出場させることができるかどうかもままならず、ましてやきちんとステップを覚えさせ、カウントを取れるように教え育てるというところまではとうてい行き着かなかったことでしょう。また2年生以上のカップルも、2ヶ月近くのブランクを乗り越えて、対等に競い合えるところまで力を取り戻してきているとは言えないのではないだろうかと思います。にもかかわらず、無情にも公式戦が再開されてしまうのです。
 しかし、どうせいずれの日か東北学連も再始動しなければなりません。今回の震災によって生じた不平等はいつまで待っても解消することはありえないのです。だとしたら、身に受けた不運や不幸や不平等をいつまでも嘆いているばかりでなく、それをバネにして前に進んでいくしかないと思います。今日この日を期して、東北学連の新たなスタートとしようではありませんか。人生も社会もけっして公平ではありません。今回のこの経験は必ずや君たちの将来にとって価値あるものとなるはずです。与えられた状況のなかでどこまで自分を伸ばし、真価を発揮することができるのか。皆さんの底力をしっかり見届けていきたいと思います。

震災なんかに負けてたまるかっ!

がんばろう、東北 ! !

東北学連ダンス大会 ・ 2011年度初公式戦

2011-06-12 21:44:54 | ダンス・ダンス・ダンス
今日は山形で社交ダンスの夏大会でした。
ゴールデンウィークに盛岡で行われた試合は非公式戦として開催されましたので、
公式戦としては今日が今年度初です。
そして、今日の試合は今年度初というばかりでなく、
いろいろな意味で初めて尽くしの試合となりました。

夏大会は新入生のデビュー戦であると同時に、
上級生にとってはスタンダード (昔のモダン) 、ラテン、それぞれの総合力を競う4種目戦です。
そして、例年この試合をジャッジしてくださるのはプロの先生なのです。
しかも今年はとても贅沢なキャスティングでした。
審査委員長は、アマチュア時代48歳にしてスタンダードの全日本チャンピオンとなり、
その後プロに転向し、引退後も世界の最先端のダンス理論を日本に紹介している伊藤明先生
さらには、高校生のときにアマチュア全日本チャンピオンに輝き、国内では不敗のままプロとなり、
10ダンス (スタンダード+ラテン10種目競技) チャンピオンともなっている、
現役バリバリのトッププロ、瀬古薫希 (まさき)、瀬古知愛 (ちあき) カップル
今回は久しぶりにプロのデモンストレーションも見ることができる、
盛りだくさんの大会となりました。

試合ではなんといっても山形大学が初の団体優勝を飾ったのが印象的でした。
このところ山形大学は部員数が増えていて、大学全体としても力をつけてきていたのですが、
どちらかというとラテンダンサーが多く、スタンダードの選手層が薄いため、
なかなか団体優勝には手が届かずにいました。
今年もその傾向は変わっておらず、ラテンでは上位決勝に山大の選手がズラリと並ぶにもかかわらず、
スタンダードでは4年生の選手がおらず、上位決勝に残ったのは3年生の1カップルのみ。
今回もまた総合優勝は逃すのかと思われましたが、
この3年生カップルが他大の4年生カップルを押しのけてスタンダード4種目戦で優勝、
さらにラテンでは1位から3位までを山大カップルが独占する快挙で、
(しかも1位は先日このブログにコメントを寄せてくれたトーカイリンさんでした)
みごとに初の団体総合優勝を遂げることができたのです。
山形開催の試合で初優勝を飾ることができたというのは本当にめでたいことです。
私も大学時代、自分の引退試合で自身初めて優勝することができたのですが、
その試合で東京外国語大学も初めて団体優勝を果たすことができ、
自分の優勝よりも団体優勝のほうに感激して涙をこぼした覚えがあります。
ダンスというのは基本的には個人競技なのですが (個人といってもカップルだけど)、
学生競技ダンスだけは団体成績も争うので、
ともに学び切磋琢磨してきた同期の仲間たちや、
自分たちが育ててきた後輩たち、自分たちを育ててくれた先輩たちとともに勝利を祝えるというのは、
学生競技ダンスならではの醍醐味と言えるでしょう。
山形大学の皆さん、本当に初優勝おめでとうございました。

競技会終了後、瀬古カップルのデモンストレーションがありました。
当初は、スタンダード1曲、ラテン2曲ほどを披露していただくために、
計15分ほどの時間を取ってあっただけだったのですが、
思いのほか試合が順調に進み、30分ほど時間の余裕ができたので、
たっぷり時間を取って東北学連史上初めての試みが行われました。
まずは瀬古カップルによるワルツのデモンストレーションです。



1年生にこんなもの見せたら目の毒ではないかというくらい素晴らしい踊りでした。
このあとすぐにラテンのデモンストレーションに移るのではなく、
ここで伊藤明先生から今日の試合への講評とともに、ワンポイントレッスンをいただきました。
いや、ワンポイントどころではなくファイブポイントかシックスポイントくらいあったでしょうか。
しかも、瀬古カップルに模範演技をさせたり、自ら知愛さんと組んで実演してみせてくれたり、
最新のダンス理論を織り交ぜてとてもわかりやすく、かつ刺激的なレッスンでした。
この写真 ↓ は瀬古カップルに実演してもらって、男女の組み方を教えてくださっているところ。



こっち ↓ は何のことかわからないかもしれませんが、
伊藤先生が知愛先生と組んでクイックステップについて教えてくださっているところ。



スタンダードだけで優に30分以上時間をかけてデモ+レッスンをしていただきました。
その後、瀬古カップルがラテンの衣裳に着替えて再登場しました。
10ダンスプレイヤーとはいえ、自身はラテンのほうが得意という瀬古先生が、
ラテンに関して講評をくださり、東北ダンサーの共通の欠点について指摘した上で、
ではどうしたらいいかという模範演技のデモンストレーションを見せてくださいました。
課題が多いというパソドブレとルンバを踊ってくださいました。



ラテンでもやはり30分近く講義と踊りを頂戴することができました。
プロによるデモンストレーション自体が久しぶりだったのですが、
それがただのデモではなく、公開レッスンという形になったことによって、
東北学連の諸君にはものすごく深い学びになったことと思います。
一般来場の方々もやはり瀬古プロのデモがあるということで大勢つめかけていましたが、
最後まで残って食い入るように話を聞き踊りを見つめていらっしゃいました。

東日本大震災という悲劇を被った東北のダンス界ですが、
前回のダンススポーツ大会といい、今回の夏大会といい、
今までになかったような新たな試みに取り組み、
復興に向けて力強い歩みを進めることができているように思います。
入部したばかりの1年生の試合のジャッジから始まり、
最後の素晴らしいデモとレッスンまで丸1日東北学連に力を貸してくださった、
伊藤明先生、瀬古薫希先生、知愛先生、本当にありがとうございました。

さらば赤パーカー

2011-06-05 23:09:36 | ダンス・ダンス・ダンス
いつかご報告しなければと思いながら、悲しくてなかなか記事にできなかったネタです。
東日本大震災が発生し、福島第一原発が制御不能になった3月のあの頃、
私は毎日こんなカッコをしていました。



マスクは当然のこととして、できるだけ肌を露出しないように、
いつも使っていない大きめのメガネをし、フード付きのパーカーを着込んでフードをかぶり、
その上からスタジアムジャンパーを着るという重装備です。
問題はこの赤いパーカーなんですが、
50にもなろうという歳になってふつうフードつきの服なんてもっていないでしょう。
これは福島大学社交ダンス部で作ったお揃いの赤パーカーです。
フードをかぶっていないと隠れてしまいがちなんですが、
背中にはダンサーの姿と 「福島大学社交ダンス部」 のロゴが入っています。



さらに左上腕部にはひとりひとりのニックネームが入れられていて、
見にくいかもしれませんが私の場合は 「まさおさま」 と刻まれています。



ダンス部でおそろで作ったので、私もこういうものを持っていたわけです。
今回の原発事故対応ではこれが大活躍してくれました。
ベントや水素爆発直後の福島市の高濃度放射線から私を守ってくれたのです。
心から感謝したいと思います。

さて、しかしながら、20マイクロシーベルトパーアワーという放射線を浴び続けていた防護服です。
そのまま着続け、クローゼットの中に他の洋服と一緒にしまうというわけにもいきません。
断腸の思いでしたが、スタジャンやマスクとともに、
このダンス部の赤パーカーも処分せざるをえませんでした。
さらば赤パーカー、まさかこんな使われ方をするとは思っていなかったろうけれど、
これまで本当にありがとう。

というわけで、ダンス部の公式行事用の制服がなくなってしまいました。
今年の新入生たちが作るときに一緒にまた作ってもらおうと思います。
ホントは明日の 「キャリア形成論」 の授業 (1年生全員必修) のときに、
赤パーを着ていって無言の新勧を行いたかったんですが、それはもうできません。
なのでこの場をお借りして宣伝させていただきます。
福島大学社交ダンス部、新入部員募集中です!
もれなく愉快な顧問がついてきます。
しかも今年の新入生にかぎって、顧問のまさおさまとおそろの赤パーカーを着られます。
この機会をお見逃しなくっ
君も社交ダンス部に入部しようっ

東北学生ダンススポーツ大会 ・ 速報

2011-05-04 16:29:03 | ダンス・ダンス・ダンス
今年の春大会は新しいことづくめでした。

まず開会式の冒頭で、今回の震災の犠牲になられた方々のために黙祷が捧げられました。

そして、開会式の直後に毎試合行われている、各大学ごとのエールですが、

今年は大学別にやるのではなく、東北学連の全員で輪を作って一体となってエールを上げました。



試合は非公式戦として行われ、団体成績は出さないという形になりました。

大学ごとの被災状況により団体成績を競えるような公平な条件が整っていなかったからです。

そして、競技終了後には来場された一般の方々とのダンスタイムが設けられました。

老若男女みなダンスシューズ持参でいらしていて、

普段着のおじいさんとドレス姿の女子学生のカップルや、

Gパン姿の女性と燕尾服の男子学生のカップルなどがフロアいっぱいに踊っています。

(痛恨なことに私はちゃんと用意しておいたにもかかわらずダンスシューズを忘れてきてしまったため、
 
 踊ることができず、今こうして皆さんのダンスを見ながらブログを書いてアップしています。)



地域の方々と触れあう時間を設けられたのはとてもよかったと思います。

この試みはこれからも続けていった方がいいのではないでしょうか。

大震災という痛ましい経験を被ってしまいましたが、

今まで当たり前にやってきたことを今一度見直す機会になったのではないでしょうか。

震災なんかに負けてたまるかっ!

がんばろう、東北!!

がんばろう、東北! 東北学生ダンススポーツ大会

2011-05-04 07:41:11 | ダンス・ダンス・ダンス
今日は盛岡に来ています。
昨年のゴールデンウィークも盛岡に来ましたが、
例年、全東北学生競技ダンス連盟の春大会がこの地で開催されているのです。
しかしながら、今回は開催可能かどうか、開催すべきかどうか、たいへん危ぶまれました。
あんな震災があったばかりですから、はたしてダンスの大会を開けるのか、
開いていていいのか、いろいろと疑問の声があったのです。
連盟委員をはじめとして学生のみんなは相当苦慮したようです。
連盟会長である私も意見を求められましたが、
私としては、みんなでとことん話し合ってどちらにするか納得のいく結論を出してほしい、
やるにせよやらないにせよ苦渋の判断になるだろうけれども、
みんなが出した結論を支持したい、とだけ伝えておきました。
結果的に彼らが出した結論は、被災した学生とそうでない学生とでハンディがあるので、
公式戦として開催するのはムリだけれども、
復興に向かっていくためにもなんとか試合は開催したい、
そのためいつもの春大会としてではなくチャリティマッチとして開催し、
出場する学生のみならず、来場してくださった皆さまから震災復興義援金を募り、
被災地の子どもたちに届けるようにしよう、というものでした。
とても素晴らしい判断をしてくれたなあと、たいへん感激しました。
というわけで、今日はこれから競技ダンス観戦です。
以下は、急遽差し替えでパンフレットに寄稿した、連盟会長の挨拶文です。



           今、東北のダンサーにできること 
  
                                全東北学生競技ダンス連盟会長
                                小野原雅夫(福島大学教授)

 2011年3月11日、私たちは日本人がかつて経験したことのないような大きな災害に見舞われました。東日本大震災。東北から関東にかけて約500㎞もの広範囲を揺るがした莫大なエネルギーの巨大地震と、その直後に襲いかかってきた大津波。これだけでも、それによってもたらされた被害は甚大なもので、失ったものの多さには言葉を失ってしまいます。しかし、災難はこれだけではすまず、福島第一原発が地震と津波の被害を受けて大きく損傷して放射性物質を大量に漏出し、この天災による人災は現在も終熄する気配を見せていません。この原稿を書いている4月12日には、国際原子力事象評価尺度(INES)でレベル7相当と暫定評価値が引き上げられました。
 さて、本日お集まりの東北学連所属の各大学の皆さん、今日ここにみんなで再会できたことを心から喜びあいたいと思います。それとともに、歴代の先輩の皆さん、ダンス教室の先生方や関係者の方々、大学関係者、また皆さんのご家族ご親戚、知人・友人等を含めて、今回の震災で被災したすべての皆さまに心からお見舞いを申し上げます。どんなにたたきのめされようとも、私たちがこうしてここに居るかぎり、東北は必ず立ち直ります。その日まで、ともに携え力を合わせて一歩ずつ進んでいきたいと思います。
 今、日本全国では、このような惨事を受けてなんでもかんでも自粛というムードが立ちこめています。本日のこの大会も開催するか否か、いや、開催するべき否かについて、みんな相当苦悩したことと思います。たしかに、スポーツをはじめとする文化というのは、余剰という側面があります。日常の生活や生活基盤が確保されていてはじめて、文化活動に勤しむことができます。幸いにも東北学連所属の学生諸君本人が直接負傷するということはなくてすんだようです。しかし、ご家族が被災されたり、実家が損害を被ったりした人がいるという話はうかがっておりますし、また、私たちとは直接関係のない多くの方々が、今この時に帰る家もなく避難生活を続けていらっしゃいます。そんな中で、たまたま助かった私たちがこうしてダンスに興じていていいのか。それは、とても難しい倫理学的問題だろうと思います。
 しかし、私は倫理学者として、こういう時だけれども、あるいは、こういう時だからこそ、チャリティマッチとして競技ダンスの大会を開催しようと決めた皆さんの決断を支持したいと思います。復旧、復興への道のりはとても長く遠いものです。そのゴールの見えない長い戦いの中で、いつまでも縮こまって何もかも我慢しながら生活していくことはできません。人間は文化を必要としてしまう動物なのです。日々の生活から離れた楽しみ、余剰が不可欠なのです。だとしたら、私たちは胸を張ってダンスを踊ろうではありませんか。みんなのダンスを楽しみに見に来てくださった方々がこんなにいらっしゃいます。痛手を受けた東北の地に、私たちの踊りがほんのわずかでも元気と活力を与えることができることを願っています。

競技ダンス新採点方式

2010-11-20 23:37:28 | ダンス・ダンス・ダンス
本日は、全東北学生競技ダンス連盟の秋大会でした。
4年生の引退試合になりますが、4年生の皆さん、4年間本当にお疲れさまでした。
今日の閉会式では突然のご指名だったので噛み噛みでしたが、
言いたかったことはここに書いたようなことです。

さて、JDSF (日本ダンススポーツ連盟) の役員も務めておられる、
全東北学生競技ダンス連盟副会長の神宮周二さんから、
競技ダンスの最新情報を仕入れることができました。
中国広州で行われたアジア大会では競技ダンスに新採点方式が取り入れられたそうです。
前回書いたように、競技ダンスの採点は基本的に複数のカップルが同時に踊っているのを、
相対評価する形で採点が行われています。
私はこの採点方式は競技ダンスの構成的ルールに関わる重要な要素と考えていますが、
ここには大きな問題も存しています。
というのは、競技ダンスはオリンピック種目への採用を目論んでいるのですが、
現在の採点方式は客観性に欠けるとして、
より客観的な採点方法の確立がIOC (国際オリンピック委員会) から求められているのです。
そして、日本のJDSFはその求めに応じて、新採点方式を開発し、
10月に行われた全日本選手権でこれを導入し、
広州アジア大会でもその新採点方式を使ってジャッジが行われたそうなのです。

新採点方式は 「PCS (プログラム・コンポーネント・スコア)」 と、
「TES (テクニカル・エレメント・スコア)」 の2つで採点するそうです。
これは決勝戦で、これまでの順位法スケーティングシステムの代わりに用いられます。
PCSは、2人の動きのバランスや音楽性、振り付けなど全体的な印象を、
TESは、ステップの正確さなどの技術面を点数化し、
0.5点刻みで10点満点で各審査員が採点し、その総合点で争うのだそうです。
しかもそのために決勝戦はソロダンスで、各カップルがいっぺんにではなく、
1カップルずつ順番に踊っていくのだそうなのです。
まさにフィギュアスケートと同じ方式です。

せっかくこの新方式を開発した皆さんには申しわけありませんが、
私はこれは競技ダンスに対する冒涜だと今の時点では思っています。
競技ダンスの根幹を脅かしているからです。
オリンピック種目に入れてもらいたいからといって、
譲歩していい線と譲ってはならない線があるはずです。
私たちは柔道が国際的な格闘競技として発展し、オリンピック種目にまでなった反面、
本来、柔道がもっていた柔道らしさを失ってしまい、
柔道とは異質のJUDOに変質を遂げてしまった姿を見てきているはずです。
剣道はその様子を見ていて、国際的スポーツとして世界中に広まって、
オリンピック種目として認めてもらおうなんていう道は断念したという話を聞いたことがあります。
それはものすごい見識だし、ものすごくリッパな判断だったと思います。
たしかにオリンピックの種目になれば、世界中から注目を浴びますし、
競技人口が爆発的に増えることは間違いないでしょう。
しかし、それによって失うものもあるのだとするならば、
利益と損失を天秤にかけて、冷静に判断することが必要となるでしょう。
例えば、広州アジア大会では、新しい決勝方式が悪用されて (?)、
金メダルが確実視されていた日本の選手がことごとく2位以下に敗退したそうです。
(全種目で中国勢が金メダル)
このように新採点方式になればそれで客観性が保障されるとも言い難く、
それよりも競技ダンスが社交ダンスであった本来の姿が失われてしまうのだとするならば、
国際化、オリンピック化の流れに抵抗するという選択肢もあるはずなのです。

今日の秋大会でもサンバとタンゴでソロダンスが行われました。
(ただし、ソロダンスが一通り終わったあとはみんなで一緒に踊りますが)
ひとつのカップルの踊りをじっくり見られるというのはたしかにいいことではありますが、
順番に1カップルずつ見ていって前に踊ったカップルと頭の中で比較するというのは、
それはそれでけっこう難しい業です。
もちろん新採点方式は前に踊ったカップルと相対評価することが目的ではなく、
カップルのひとつひとつの技術やアーティスティック・インプレッションを、
直接数値化しようとするものです。
しかし、はたして総合芸術であるダンスをそんなふうにして要素に分解し、
そのたんなる合計点で評価することが可能なのでしょうか?
それははなはだ疑問だと言わざるをえません。
とまあ、こういう保守的な意見を私ごときが展開しても、
オリンピック種目に入れてもらいたい、そのためならどんな犠牲も払いますという流れを、
食い止めることは難しいだろうと思います。
この件、今後も検討を続け、注意深くウォッチしていきたいと思います。