まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

スーツと私

2009-12-01 20:36:11 | 人間文化論
今朝、通勤途中に看護教員養成講座の方々とすれちがいました。
そのときに 「先生、今日は珍しく決まってますね」 と言われました。
今朝はたまたま、スーツにキャメルのコートといういでたちだったのです。
たしかにこんなカッコウをするのは珍しいのですが、
看護教員養成講座でたった5回しか会っていない皆さんに、
そんなふうに言われてしまうというのはどうなんでしょう。
よっぽど、みすぼらしいカッコウでいるのが定着してしまっているんでしょうか。

たしかに大学や非常勤先でも、あまりスーツは着ないようにしています。
それにはもろもろの理由があって、
大学生時代に、銀座や歌舞伎町や塾でバイトしていて、
すでにさんざんスーツを着まくったので飽きたというのもありますし、
スーツ姿でいるのがちょうどいい季節って、初春や秋などごく限られた期間しかなく、
特に日本の夏にスーツは不向きであるというのもありますし、
なんといってもスーツは高いので、毎日着る分を揃えようとすると、
いくら給料があっても足りない、などいろいろです。
しかし、一番の理由は、スーツというのは権威を示す服装なので、
スーツを着た大学教員がなにかを喋ると、
話した内容は正しいことだと思われてしまいそうだからで、
それを避けるためにわざとスーツは着ないようにしているのです。

私が授業や講演でねらっているのは、
私の話を黙って聞いて鵜呑みにして納得してもらうことではなく、
私の話をきっかけに自分でいろいろと考えてもらうことです。
ですので、こいつの言ってることはなんか怪しいな、
と思ってもらえるくらいがちょうどいいのです。
きちんと、クリティカル・シンキングのできる学生さんなら、
私がスーツを着ていようが軍服を着ていようが、
怪しいことは怪しいと楯突いてくれるでしょうが、
最近の学生さんは (特に福大の学生さんは) とても素直なので、
スーツ姿の私の講義を聞いたら、「さすがはまさおさま、素晴らしいっ!」と、
目をキラキラ輝かせて頷いてくれそうなのでコワイのです。
というわけで、大学ではできるかぎり、
教授らしくないカッコウをするようにしているわけです。

ひと昔前は夏場など、短パンにTシャツにビーチサンダルで授業したこともありました。
最近はさすがにそこまでラフにはしません (体型的にできません) が、
ふと気づくと、下着も含めて靴を除くすべてがユニクロなんていうことはザラです。
ただし私はスーツが嫌いというわけではありません。
10月11月くらいは、ちょうどスーツを着るのにいい季節ですし、
やはりスーツを着てネクタイを締めると、ピリッと身が引き締まりますし、
またこの歳になってくると、ちょうど私のような体型をうまくカバーしてくれる
ようにも思います (他人様がどう見ているかは知りませんが)。
それに、スーツ・フェチの学生さんもいらっしゃいますので、
たまにはファン・サービスも必要でしょう。
(そういうふうに言ったら、「先生にファンなんているんですか?」 と、
 身も蓋もないツッコミを受けたことがありますが…)
ですから、気候さえ合えばもっとスーツ姿をご披露してもいいのですが、
最近は授業数が増えてしまって、ほぼ毎日授業がありますので、
やはり、そうそう権威主義的なカッコウはできないわけです。
するとけっきょく、外回りの仕事で先方に敬意を表しないといけない場合など、
スーツを着る機会はどうしても限られてきてしまうのです。

しかし、私のこのプリンシプルは思いの外、学内で浸透しているようで、
たまに私が大学にスーツを着ていくと、必ずこんなふうに声をかけられるようになりました。
「先生、今日仕事ですか?」
おいおい、オレは毎日、授業をやって会議もやってちゃんと仕事してるじゃないか。
「仕事ですか?」 はないだろう。
ポロシャツやセーター姿で授業をやってるけど、
それは別に遊んでいるわけではないんだよ。
と言いたいところですが、まあ相手の言いたいこともわかります。
今日はちゃんとしたカッコをしなきゃいけないような特別な仕事なんですか?
という意味の質問なのでしょう。
しかし、実際にはそうではなくて、たいていそういうときは、
たまにスーツを着てみたくて着てきました、とか、
大量にクリーニングに出したら洋服のローテーションが回らなくてこれにしました、
みたいなことが多いです。
それにしても若干ヘコむので、「先生、今日仕事ですか?」 はやめましょう。
冒頭の看護教員養成講座の方のことばから 「珍しく」 を取って、
「先生、今日は決まってますね」 くらいなら気分よく仕事ができそうです。