今年もクリスマス・シーズンがやってまいりました。
クリスマス大好きの私としてはいやが上にも盛り上がってしまいます。
11月に入るや、我が家ではクリスマス・ソングがエンドレスで流れ続けています。
もちろん、ディスプレイもクリスマス仕様に変更いたしました。
さて、このクリスマス・ディスプレイですが、震災前の去年までと較べて、
ちょっと変わってしまったところがあります。
上掲の写真 ↑ ではよくわからないでしょう。
もうちょっと問題の部分に近づいてみることにしましょう。
このクリスマス・キャンドルが変更点です。
どこがヘンだかおわかりになるでしょうか?
そうです。
よーく目を凝らしてみると、左右の長さがビミョーに違うのにお気づきいただけるでしょう。
左のロウソクがほんの少し短くなっています。
このクリスマス・キャンドルたち、もう長いことうちにいますが、
今まで一度も点火されたことはありませんでした。
ですから毎年毎年、同じものを繰り返し使い続けてこられたのです。
ところが、左のやつだけとうとう一度点火されてしまったのです。
3.11のあの日、雪の中を大学から歩いて我が家まで帰ってきたとき、
福島駅周辺は完全に停電していて、真っ暗な闇があたり一帯を包んでいました。
大学はまったく停電していなかったので、自宅が停電なんて想像もしていなかったのですが、
部屋ももちろん真っ暗闇です。
いちおうこういうときのために備えてラジオつきの懐中電灯を持っていましたので、
(たしかクレジットカードのポイントが貯まってもらったやつ)
所定の置き場所を手探りで探索したところ、ちゃんとあるべきところにありました。
これです。
自分の用意周到さに満足しながらスイッチを入れましたが、懐中電灯は点きません。
うわっ、しまった、電池を入れておかなかったんだろうか?
私としたことが…。
暗闇の中でなんとか電池ボックスを見つけ開けてみたところ、ちゃんと単4電池が3本入っています。
ずっと入れっぱなしだったから放電しちゃったのかな?
そこで、さらに手探りで買い置きの電池を見つけ、
プラスとマイナスはどっちだろうと注意しながら電池交換しましたが、
再度スイッチオンしても懐中電灯はまったく点く気配がありません。
なんだよ、不良品だったのかよぉ、とクレジット会社を罵りながら、
闇の中で途方に暮れてしまいました。
真っ暗というのは本当に人を不安にさせます。
うちはオール電化なので、電気が止まるとすべての機能がマヒしてしまうのですが、
しかし、水が出ない、火が使えない、暖が取れないという諸々の不便と較べても、
とにかく明かりが点かなくて何も見えないというのは致命的に恐ろしいことです。
地震の被害を調べることすらできません。
頼みの綱の懐中電灯が使い物にならず、一瞬パニックに陥りそうになりました。
しかし、そこで何とか自分を落ち着かせて、代わりになるものはなかったかどうか、
一所懸命、脳内データ検索を行ってみたのです。
そこで思いついたのが、あのクリスマス・キャンドルでした。
もちろん、当時はひな祭り仕様でしたので (3月3日は過ぎていたにもかかわらず)、
ロウソクが階段箪笥に飾ってあったわけではありませんが、
クリスマス仕様からひな祭り仕様に飾り変えたのがほんの
2週間くらい前のことでしたので、
クリスマス・キャンドルを階段箪笥の引き出しの中にしまったこともまだ鮮明に覚えていました。
すぐにロウソクは見つかり、キャンドル立てにセットし、
ちょっともったいないなあと思いながらも、非常事態なんだから四の五の言ってる場合じゃないと、
お香を焚くとき用のマッチを使って点火すると、部屋の中にやっと明かりが灯りました。
光が確保されてようやく少し落ち着くことができました。
そのロウソクをもってあちこちの部屋の被害状況を確認してみたところ、
階段箪笥のひな飾りが散乱していたり、書斎の本棚が大変なことになっていたりしましたが、
1番恐れていた食器棚が倒れたり、テレビがすっ飛んでいたりということはなかったので、
あの大地震の中、これくらいですんで本当にラッキーだったと思えました。
ようやく一息ついて、テーブルにロウソクを置き、
先ほどの懐中電灯を手に取って、せめてラジオはついてくれないかなあと考え始めたときでした。
またイヤな地響きがしたと思ったら、余震が襲ってきたのです。
あわててロウソクを消しました。
ロウソクが倒れて火事になってしまったりしたらたまりません。
地震による停電の時はロウソクも使えないのだなと思い知らされました。
左のクリスマス・キャンドルがほんの少ししか短くなっておらず、
したがって今年もまたクリスマス飾りに使ってしまえるのは、あの余震のせいだったのです。
再び、暗闇が戻ってきてしまいましたが、
先ほど一瞬、懐中電灯のチェックをしたときに、あることに気づきました。
この懐中電灯には手動の発電機が付いていたのです。
ふだんは格納されているハンドルを取り出して、これをグルグル回すと、
しばらくの間ライトが点き、ラジオを聴くこともできるのです。
その夜は一晩中この懐中電灯を握りしめ、グルグル回してはかすかな明かりを頼りにトイレに行ったり、
ラジオで必死に情報を収集したりしていました。
ずっと余震が続いていましたし、マンションは絶え間なくミシミシ音を立てていて、
いつか倒壊するんではないかと、産まれて一番恐ろしい一夜を過ごすことになりました。
翌朝、どこかで水の流れる音がして目が覚めました。
停電が復旧し、屋上のタンクに貯まっていた水のおかげで一時的に水道水も戻ったのです。
明るい日差しの下で、まったく役立たなかったわけではないけれど、
発電中は両手がふさがってしまうし、発電機の音がうるさくてラジオが聞き取れなくなってしまう、
とっても使い勝手の悪かった懐中電灯をじっくりと観察してみました。
すると一番端のところにこんな小さな切り替えスイッチが付いていました。
見えますでしょうか。
上のほうのスイッチには 「充電電池」 と 「乾電池」 と書いてあります。
発電機で使用する場合にはスイッチを 「充電電池」 のほうに、
乾電池で使用する場合には 「乾電池」 のほうに切り替えなければならないようなのです。
昨晩はスイッチは 「充電電池」 のほうに入ったままでした。
だから発電機では点灯したけれど、乾電池では使えなかったのです。
ちなみにスイッチを 「乾電池」 のほうに切り替えてみると、
発電機で点けていたときとは比べものにならないくらい明るい光が灯りました。
もともと入っていた乾電池でも確かめてみたところ、
もちろんちゃんと点灯しました。
まったく
。
懐中電灯が必要なくらい真っ暗なところでは、
そもそもこんな小さなスイッチがあることに気づきませんし、
気づいたとしても、そこに書いてあるこの小さな文字が読めるわけもありません。
懐中電灯の明かりでは、この底の部分を照らすことはゼッタイにできませんし。
それにしてもこんなに明るく点灯してくれるのだとすると、一晩中ハンドルをグリグリ回しながら、
かぼそい明かりで不安な一夜を過ごしたあの時間はいったい何だったのでしょうか?
というわけで、震災前と震災後で変わらなかったことは、
クリスマスにあいからわず同じクリスマス・キャンドルを使い続けているということで、
変わったことは、2本のうち1本のキャンドルが少し短くなってしまったということと、
懐中電灯の正しい使い方を覚えたということでした。
クリスマス・ディスプレイをしながら、あの日のことを思い出してしまったというお話でした。
今日は
第6回の 「てつがくカフェ@ふくしま」 です。
「安心」 とか 「不安」 ということについて皆さんと話し合ってきたいと思います。