インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

甘酒を飲みながら

2014-10-28 20:16:56 | 身の回り
  甘酒を煮込んでいる間、雅太はブログでも書くことにした。卵や豆腐などの入ったイカの煮付け、玄米、柿やイチジクを食べた後、甘酒で締めるのである。昼間の肉体を酷使する仕事が、雅太に飢餓感を覚えさせたのだろうか。柚ぽんの旨味が食欲をそそらせたとことも大きい。

 ただ、これほど腹が満杯になれば、日課である「夢見」に影響するかも知れぬ、と雅太は腹を叩きながら後悔する。

 朝方になれば、雅太はいつもリアルな夢を体験するのだが、どれも象徴的でミステリーで、一体なんであんな夢を見たのか分からない。

 たまに全身が震え、体外離脱とおぼしき夢を見ることもあった。雅太は「どこかにいるのか?」とか深いことは思わず、熟した柿があればもいで食べてみたりする。実際にフルーテリーな味がすることを確認し、女を見つければ、追い回してみたりするのであった。夢の中の女性からすれば、雅太は吸血鬼以外の何者でもないであろう。そんな自由奔放な夢見の雅太も、そのエネルギーがつきかける頃、本当にやらねばならぬのは、一番愛すべき自分を、寝ている自分を目撃すべきことだと、気がついたりする。

 甘酒を啜りながら雅太は別のことを考える。こうやってリアルに生きている自分でさえ、実のところ、夢を見させられているのではなかろうか。社会のルールに従って生きている故に、明日の朝、またルーチンワークに行かねばならぬのだが、本当にやらねばならぬことは、他にあり、最後になって気がつく、しかし時遅し、ということになるのか。

 全ては幻であり、借り物なのかも知れぬ。

 雅太は今、強固な先入観に囚われている。だから現実世界でも、夢の世界でも、自由に動けないのかもしれぬ。これが現実だと考えている自分は一体何なのだろう。これまであちこちから叩き込まれた意識。煮込まれたスープなのであろう。

 スープを味わっている、このドロドロした甘酒、人生の中で見たり感じたことの素材が、くまなく混ざり合っている。それを雅太は味わっている。過去を振り返る、徹底的に反復することは、この甘酒を飲み干すことなのではなかろうか。

 それがタブル、幽体を目覚めさせるための秘薬なのだろう。

 今年最大の収穫本『呪術師の飛翔』にて、クララの台詞を思い出す。

 呪術師とは、鍛錬と不屈の努力によって、通常の知覚を破る人をいうのよ。