ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

10年間で「光電子集積サーバー」という独自製品を事業化する話を伺いました

2012年11月30日 | イノベーション
 低迷する日本の電機メーカーに強力な援軍が登場しそうな話を拝聴しました。茨城県つくば市を中心に活動する技術研究組合の光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、経済産業省から「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトを受託し、技術開発を開始したと、2012年11月28日に発表しました。

 光エレクトロニクス実装システム技術開発プロジェクトは今年度から10年間にわたって、経産省から合計約300億円を開発資金の支援を受け、日本の電機メーカーが国際競争力を持つ独自の「光電子集積サーバー」という製品などを事業化することを目指します。



 同技術研究組合の理事長を務める沖電気工業代表取締役社長の川崎秀一さんは、この技術開発プロジェクトの成果を基に「3年後に事業を担当する新会社を“オールジャパン”体制で創業する」と説明します。既に、3年後に新会社を設立するための準備を始めているそうです。新会社が生産設備を所有するのか、海外のファウンダリーに生産を委託するかどうかは「新会社が事業化で成功することを目指し、最適な態勢を検討している」と、沖電気社長の川崎さんは説明します。

 光電子集積サーバーという製品の必然性については、「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」のプロジェクトリーダーを務める東京大学教授の荒川泰彦さんは以下のように説明します。「インターネットが社会インフラになった結果、情報通信量が指数関数的に増大し、2025年にはサーバーやルーターなどの通信インフラの電力消費量が2500億キロワットにも達し、総電力量の4分の1に達してしまうと予想されています。この大問題を解決するには、電子機器の電気配線部を光通信化する光配線技術と電子回路技術を融合する光エレクトニクス実装システムを実用化する必要がある」と説明します。

 今回開始する光エレ実装技術開発プロジェクトは、光電子融合基盤技術研究所に参加する企業9社の中から沖電気、東芝、NEC(日本電気)、NTT(日本電信電話)、富士通、古河電気工業、NTTエレクロニクスの7社と産業技術総合研究所、一般財団法人光産業技術振興協会の9機関が参加するそうです。参加する研究員は約120人に上るそうです。

 経産省が研究開発資金を提供する光エレ実装技術開発プロジェクトは、今年度から始まった府省連携による“未来開拓研究制度”の一つとして支援されます。その府省連携の相手となる内閣府側のプロジェクトは、東大教授の荒川さんが中心研究者を務める、最先端研究開発支援プログラム(FIRST)の一つとして推進されている「フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発」(PECST)が連携対象になっています。

 フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発プロジェクトが技術開発するフォトニクス集積回路の研究開発成果を、光エレ実装技術開発プロジェクトに基盤技術として提供する仕組みです。例えば、基盤技術として既に今年、LSIチップ間を光インターコネクトで接続するシリコン光配線集積回路を開発し、世界最高伝送密度を達成した成果を発表済みです。

 光エレ実装技術開発プロジェクトのプロジェクトリーダーの荒川教授は「現行の電気配線に対して、消費電力を1/10に、実装面積を1/100に、配線密度を10倍にし、現行のサーバーラックをボードサイズまで小型化し、消費電力を30%削減することが技術開発目標」と説明します。

 この技術進化は、パソコンが普及し始めた1980年代に稼働していたスーパーコンピューターの演算性能を、CPU(中央演算装置)の配線技術などの進化によって、現行のパソコンは達成していることに似ているそうです。現在は大型冷蔵庫ぐらいの大きさを持つサーバーラックを、A4版ぐらいのボードサイズに小型化する進化を、ここ10年で実現するそうです。それが「光電子集積サーバー」です。

 日本企業が、強い市場競争力を持つ「光電子集積サーバー」を製品化できることを祈念するばかりです。

最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
先端技術は国家の視点で (ニッポンイチバン)
2012-11-30 11:44:58
光ファイバーの研究を電電公社がやっていた時を思い出しました。おそらく、研究者の皆さんは、投資効果なんて考えずに新分野に興奮してやっていたと思います。原理の発見も、工業化もニッポンじゃないように思われがちですが、あの方達が光通信を人類にもたらす礎を作ったと思ってます。
直後に民営化が起こりました。動きが全く変わりました。
現在光ファイバーで利益を享受したり、労働力を吸収したりしているのはニホンじゃないように見えます。
この技術にも、同じような匂いがしませんか?

返信する

コメントを投稿