2001年1月に創設されたイノベーション・エンジン(東京都港区)はベンチャーキャピタル(VC)です。ベンチャー企業などの未上場会社と上場会社の一部が手がける先端技術事業への投資事業を展開しています。「日本にとって重要な先端技術分野の新規事業を育成する投資事業を中心に展開していることが特徴であり、存在意義になっている」と、代表取締役の佐野睦典さんは主張します。
イノベーション・エンジンは2001年9月に「クリティカル・テクノロジー1号投資事業有限責任組合」を設立し、総額40.2億円を先端材料やエレクトロニクス、メカトロニクスなどの事業を展開するベンチャー企業に投資を始めています。その後、2005年8月には「先端技術産業創造投資事業有限責任組合」を設立し、総額22.5億円を投資するなど、投資事業を展開しています。
その佐野さんから「投資先のベンチャー企業が興味深い事業プランを考えたので、その社長に会わないか」とのご連絡をいただき、出かけました。
今回、お目にかかったのは、ロジック・リサーチ(福岡市)の代表取締役の土屋忠明さんです。
お目にかかってお話を伺うと、2009年に福岡市で一度お目にかかったことがあることが分かりました。
土屋さんの事業モデルは以下のようなものです。半導体は日進月歩のものすごい速さで進化しています。このため、例えばFA(ファクトリー・オートメーション)システムを構成する装置・機器向けの半導体部品は、だいぶ以前の半導体のデザインルールで設計し、生産したものを組み込んで現在も使い続けています。こうしたFAシステムを用いて、ある部品や製品を生産する事業を継続している製造業が、現在でも少なくからです。こうした装置・機器向けの半導体部品が故障した場合を想定し、少量ですが当該半導体部品のスペアが用意されています。
多少、時代遅れになったFAシステムの装置・機器向けに用意された半導体部品のスペアはあまり売れなくなると、追加品をつくっても儲からないので生産中止になります。ところが、多少時代遅れになったFAシステムの装置・機器向けを使い続ける製造業の企業もあります。生産中止品の半導体部品は究極の多品種少量品になります。
日本でも、今後はこうした半導体部品の生産中止品が増えるとみられています。日本でのルネサス エレクトロニクスの誕生や、米オン・セミコンダクター(ON Semiconductor)による三洋半導体の買収、ロームによる旧OKIセミコンダクタの買収などと、半導体の事業統合やM&A(合併や買収)が加速しているからです。半導体メーカーの生産ラインの統・廃合や半導体製品の絞り込みによって、生産中止品が増えると、その当該半導体部品を使い続ける企業が困ります。
こうした状況で、日本での生産中止品の再生産に乗り出す企業として名乗りを上げたのが、ロジック・リサーチです。これまで当該半導体を生産していた半導体メーカーから生産中止品の設計データ(IP、半導体回路データ)の提供を受けて、より微細なプロセス用のデザインルールに設計し直すことで、低コストで再生産する事業を提案しています。
例えば、デザインルールが1ミクロンルールで生産していた半導体チップを、0.25ミクロン用に設計し直せば、チップ面積を大幅に縮小できます。また、複数の品種を1枚のウエハー上に形成するMPW(Multi Purpose Wafer、マルチ・パーパス・ウエファー)方式を採用し「多品種少量品でも低コストに再生産できる」と、土屋さんは主張します。
このロジック・リサーチの生産中止品の再生産の取り組みは、まだ構想段階です。日本国内で、半導体部品の生産中止品への対応が次第に増えそうな事態に対して、注目されそうです。
事業収益性を高める構造改革を推し進めたい国内の半導体メーカーにとっても、生産中止品をサポートする企業の存在は貴重になります。こうしたサービスを利用することで、国内半導体メーカーが採算性の低い半導体部品を生産中止にできれば、収益性の高い製品に事業資源を集中できる可能性も高まるからです。日本の半導体メーカーの再編・再統合につながり、国際競争力向上になります。この結果、従業員の雇用も維持できます。
昨日、国内大手の半導体メーカーのエルピーダメモリがDRAMの生産を子会社の台湾企業中心の生産体制に切り替えるという新聞記事が出ました。日本で生産する半導体部品を増やす点でも、ロジック・リサーチの生産中止品の再生産の取り組みは重要になります。
土屋さんが半導体業界の“坂本龍馬”になれるのか、今後も注目し続けたいと思います。逆に言えば、「既存企業の半導体メーカーの経営陣は頭がかたく、リスクを取らない」と陰口をささやかれ続けていることへの、対応がどうなるのかを、ウオッチし続けたいのです。
イノベーション・エンジンは2001年9月に「クリティカル・テクノロジー1号投資事業有限責任組合」を設立し、総額40.2億円を先端材料やエレクトロニクス、メカトロニクスなどの事業を展開するベンチャー企業に投資を始めています。その後、2005年8月には「先端技術産業創造投資事業有限責任組合」を設立し、総額22.5億円を投資するなど、投資事業を展開しています。
その佐野さんから「投資先のベンチャー企業が興味深い事業プランを考えたので、その社長に会わないか」とのご連絡をいただき、出かけました。
今回、お目にかかったのは、ロジック・リサーチ(福岡市)の代表取締役の土屋忠明さんです。
お目にかかってお話を伺うと、2009年に福岡市で一度お目にかかったことがあることが分かりました。
土屋さんの事業モデルは以下のようなものです。半導体は日進月歩のものすごい速さで進化しています。このため、例えばFA(ファクトリー・オートメーション)システムを構成する装置・機器向けの半導体部品は、だいぶ以前の半導体のデザインルールで設計し、生産したものを組み込んで現在も使い続けています。こうしたFAシステムを用いて、ある部品や製品を生産する事業を継続している製造業が、現在でも少なくからです。こうした装置・機器向けの半導体部品が故障した場合を想定し、少量ですが当該半導体部品のスペアが用意されています。
多少、時代遅れになったFAシステムの装置・機器向けに用意された半導体部品のスペアはあまり売れなくなると、追加品をつくっても儲からないので生産中止になります。ところが、多少時代遅れになったFAシステムの装置・機器向けを使い続ける製造業の企業もあります。生産中止品の半導体部品は究極の多品種少量品になります。
日本でも、今後はこうした半導体部品の生産中止品が増えるとみられています。日本でのルネサス エレクトロニクスの誕生や、米オン・セミコンダクター(ON Semiconductor)による三洋半導体の買収、ロームによる旧OKIセミコンダクタの買収などと、半導体の事業統合やM&A(合併や買収)が加速しているからです。半導体メーカーの生産ラインの統・廃合や半導体製品の絞り込みによって、生産中止品が増えると、その当該半導体部品を使い続ける企業が困ります。
こうした状況で、日本での生産中止品の再生産に乗り出す企業として名乗りを上げたのが、ロジック・リサーチです。これまで当該半導体を生産していた半導体メーカーから生産中止品の設計データ(IP、半導体回路データ)の提供を受けて、より微細なプロセス用のデザインルールに設計し直すことで、低コストで再生産する事業を提案しています。
例えば、デザインルールが1ミクロンルールで生産していた半導体チップを、0.25ミクロン用に設計し直せば、チップ面積を大幅に縮小できます。また、複数の品種を1枚のウエハー上に形成するMPW(Multi Purpose Wafer、マルチ・パーパス・ウエファー)方式を採用し「多品種少量品でも低コストに再生産できる」と、土屋さんは主張します。
このロジック・リサーチの生産中止品の再生産の取り組みは、まだ構想段階です。日本国内で、半導体部品の生産中止品への対応が次第に増えそうな事態に対して、注目されそうです。
事業収益性を高める構造改革を推し進めたい国内の半導体メーカーにとっても、生産中止品をサポートする企業の存在は貴重になります。こうしたサービスを利用することで、国内半導体メーカーが採算性の低い半導体部品を生産中止にできれば、収益性の高い製品に事業資源を集中できる可能性も高まるからです。日本の半導体メーカーの再編・再統合につながり、国際競争力向上になります。この結果、従業員の雇用も維持できます。
昨日、国内大手の半導体メーカーのエルピーダメモリがDRAMの生産を子会社の台湾企業中心の生産体制に切り替えるという新聞記事が出ました。日本で生産する半導体部品を増やす点でも、ロジック・リサーチの生産中止品の再生産の取り組みは重要になります。
土屋さんが半導体業界の“坂本龍馬”になれるのか、今後も注目し続けたいと思います。逆に言えば、「既存企業の半導体メーカーの経営陣は頭がかたく、リスクを取らない」と陰口をささやかれ続けていることへの、対応がどうなるのかを、ウオッチし続けたいのです。
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