ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

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2010年04月22日 | イノベーション
 イノベーションは起こそうとしないと起きません。このため、従来にはない新しい発想が重要になります。“戦略”を考えることが非常に重要になります。

 日産自動車は4月1日から電気自動車「リーフ」の予約注文の受け付けを始めました。納車は12月だそうです。注目された車両価格(基本仕様車)は376万円でした。行政の補助金が77万円(2010年度の予想補助金)と推定されるため、これを差し引くと299万円と、なんとか200万円台に乗せました。

 
 興味があったのは、この“車両”価格が電池を含んでいるかどうかでした。昨年8月に、日産が「リーフ」の仕様などを発表した時には、車両価格は発表されませんでした。1回の充電で約160km走ることができる「リーフ」の電池はコストが約100万円と推定されています。乗用車の主要構成部品が100万円もする高価な点が、従来のガソリン利用のレシプロエンジンを積んだ乗用車との大きな違いです。

 この時に噂された日産の秘策は、日産は電池抜きの電気自動車を販売し、購入者は電池をリースによって利用するという案でした。これならば、“車両価格”は一気に100万円安くなります。しかし、電池抜きの自動車は自動車としては不完全なため、車両保険の対象にならないと噂され、この秘策は消えたようです。非常に面白い案でした。従来の発想からはなかなか出てこない案でした。

 「リーフ」に搭載される電池はリチウムイオン2次電池です。携帯電話機やノート型パソコンなどに使われている充電可能な高性能電池です。電気自動車向けには現在、大別すると二つの課題があります。一つ目は、電気エネルギーをたくさん蓄えられるように電池のエネルギー密度を高めることです。このため、電池を構成する正極、負極、電解液などの開発、改良が進んでいます。二つ目は長寿命化です。自動車部品ですから、10年間は使える寿命が必要になります。携帯電話機のリチウムイオン2次電池では、“外れ”に当たると1~2年で充電できなくなることがあります。これに対して、電気自動車向けの電池は10年間以上使えるとすると、数年間で中古車にする場合に残存価値ができるため、電池の中古市場ができる可能性があります。これが今後、予想以上に重要になる可能性があります。

 日本での量産向け電気自動車の先駆けは、三菱自動車と富士重工業です。三菱自動車は2009年7月に「i-MiEV」を発売しました。

 車両価格は約460万円です。国の補助金は139万円(2009年度の補助金)といわれています。こんなに車両価格が高いのは、搭載したリチウムイオン2次電池が200万円以上するためと推定されています。三菱自動車の電気自動車が高いのは、2009年度の生産台数が1400台、2010年度が5000台と、台数が“非量産型”を前提としているためです。電気自動車の性能を真面目に開発、改良し、現実的な販売態勢をとった結果です。

 日産は最初から年産5万台規模の“量産”を目指しているそうです。2010年度には日本ではまず6000台を販売する計画です。2012年には日欧米の4拠点で「リーフ」を12万台、2013年には25万台生産する事業計画を立てているとみられています。この結果、搭載する電池も最初から量産化でき、その分だけ電池の低価格化は進みます。

 電気自動車を事業として成立させるために、日産はまず、仲間のフランスのルノーと組み、最近は日産・ルノー連合はドイツのダイムラーとの資本提携を含めた包括提携に踏み切ったと、新聞は伝えます。電気自動車の量産体制を実現するための一連の動きとみられています。

 日産のCEO(最高経営責任者) とルノー会長・CEOを兼務するカルロスゴーン氏を中心とする日産の経営陣は、電気自動車の事業を成立させる事業戦略を着々と進めているように思えます。これに対して、三菱自動車や富士重工は電気自動車をまず研究開発してから、事業戦略を本腰を入れて考えるように感じます。技術面では三菱自動車の方が先行するかもしれません。しかし、ユーザーが購入してみたいと思える魅力的な車両価格を実現しないと、事業が成立しないことも容易に考えられます。結果は数年後に出ると思います。

 さて、イノベーションの話です。
 電気自動車が普及すると、各住宅はある規模の電力貯蔵装置を持つことになります。最近は家庭用の太陽電池(ソーラーパネル)システムや燃料電池が普及し始め、各家庭は“ミニ発電所”を自宅に持ち始めています。

 現在は、既存の電力系統(東京電力などの)に加えて“売電”をしています。既存の電力系統の電圧を一定の幅内に収めることは予想以上に難しいそうです。この点で、自家発電所から生まれる電気エネルギーを、電気自動車の電池に充電すると、既存電力系統への負荷変動が小さくなります。各住宅がミニ発電所とミニ電力貯蔵装置を備え始めると、社会の基盤システムが変わり始めます。これがイノベーションを起こすと考えています。

 電気自動車とその電池の両方の量産化を図る事業計画が、各住宅がミニ発電所とミニ電力貯蔵装置を備えるきっかけをつくり、社会基盤面で“スマートグリッド・システム”の一部としてイノベーションを起こすと想像しています。この結果、どんなことが可能になるのでしょうか。まだ予想ができません。

(注)三菱自動車は、日産の「リーフ」の車両価格の発表直後に、「i-MiEV」の車両価格を約62万円引き下げ、398万円とすると発表しました。行政の補助金を差し引いた実質的な販売価格は284万円となるもようです。


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