ベルギーのIMECという半導体系に強い研究開発機関は、世界各国の約550社にのぼる電機メーカーや半導体メーカーなどと共同研究しています。その研究開発機関としての人気が高い“秘密”を考える話の続編です。IMEC日本事務所代表の石谷明彦さんを特別講師としてお招きして伺った話の続きです。
IMECは約550社と共同研究する対価として、各社に共同研究費を支払っていただいています。IMECの2007年の総収入額は2億8500万ユーロ(約313.5億円、1ユーロ=110円で換算)です。この総収入の77%が海外企業らの共同研究費、15%がフランダース地方の企業との共同研究費だそうです。その後、「海外企業からの収入比率は80%を超したとみている」と石谷さんは説明します。この海外企業から得る共同研究費が多いことが、IMECが海外企業から強く支持されていることの証拠です。
IMECは、フランダース政府から独立した機関ですが、現在でもフランダース政府から4470万ユーロ(49億円)、オランダ政府から800万ユーロ(8億8000万円)の運営資金が支給されています。地域振興や地域住民の教育などの対価のようです。実は、IMECに雇用されている研究開発者から所得税や消費税(名称は異なります)を徴収すると、税金の方が多いと試算されているそうです。
フランダース政府がIMEC設立を支援した当時の狙いは、ベルギー版“シリコンバレー”構想だったそうです。米国カリフォルニア州のシリコンバレーのように、ベンチャー企業を多数輩出し、そのIPO(新株上場)やM&A(合併と買収)による収入によって、フランダース地方の産業振興を図るというシナリオを描いたのだそうです。実際にIMECの研究開発成果を基に、ベンチャー企業が多数設立されました。こうしたベンチャー企業は実際に、大手企業にM&Aされる成果を上げています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/58/da7f2db931125e1a41c1f0ca16f632bc.jpg)
こうしたベンチャー企業による地域振興の効果以上に、IMECは企業との共同研究相手としての地位を高め、海外企業から得る共同研究費が順調に伸びていきました。
昨日2月15日に説明した内容を再び以下に書くと、
石谷さんのお話を独断と偏見で勝手にまとめると、IMECの強さの源泉は
(1)IMECの経営は、地元ベルギーのフランダース人(オランダ語を話すカソリック系)が握り、結果的に経営方針や研究開発戦略などが継続され、一貫性がある
(2)共同研究クライアントに支持される、優れた知的財産ポリシーを持っている。これはIMECの共同研究のビジネスモデルそのもののことです。
(3)世界中から優秀な研究者人材が集まる仕組みになっている
(4)半導体を研究開発する、試作する最先端の設備を持っている
――の4点と、理解しました(言葉の表現はかなり意訳しています)。
昨日(2011年2月15日)は、(1)と(2)について考えました。
残りの(3)について考えました。IMECの研究開発者は2010年時に1850人です。IMECが雇用しているのは1200人強です。この1200人強の優秀な研究開発者の多くは、企業との共同研究に従事します。石谷さんは「IMECの共同研究者は学術成果をまとめた論文を学術誌に投稿したい気持ちを抑えて、企業との共同研究に精力をつぎ込んでいる点が高く評価されている」と説明します。共同研究を依頼した企業からすると、自社から派遣した研究開発者と一緒になって研究開発を担うので、共同研究内容に適した研究開発者を社内から探して、IMECの派遣する人数が少人数で済みます。その分、人件費負担が減ります。
IMECが雇用している研究開発者は、世界中で優秀な研究開発者の採用試験が実施され、採用試験に合格すると、IMECに参加します。このため、IMECの公用語は英語だそうです。しかも、「もし共同研究で成果を上げないと、解雇されるケースがある」と、以前に九州大学大学院の教員の方から伺いました。なかなか厳しい人事制度です。
IMECの研究開発者全体の1850人から、雇用している1200人強を引いた残りの約600人は、企業との共同研究を支援する博士課程の学生です。IMECのWebサイトに博士課程の学生を公募する知らせを出します。研究開発内容やその期間、待遇などを公表し、条件が合う優秀な学生を世界中から集めています。以下は、推定ですが、この博士課程の学生が手がける研究内容は、営業秘密性が少ないものだと想像しています。しかし、この約600人はIMECの共同研究を支える貴重な人材です。当該の共同研究費を原資に、雇用されるそうです。
(4)の最先端設備の保有は、IMECは世界に数台しかない最先端装置をどんどん導入しています。例えは、極端紫外(EUV: Extreme Ultra-Violet)光によるリソグラフィーができる装置は世界にまだ数台しかないそうです。また、最先端のクリーンルームを持つ半導体の試作ラインは、米国のインテルや韓国のサムソン電子も持っていないと聞いているそうです。こうした最先端装置を使った共同研究を、インテルやサムソン電子、台湾のTSMCと、IMEC は実施しています。こうしたクライアント企業は、IMECとの1対1の共同研究契約を結び、研究開発成果はそのクライアント企業のものになります。この特許が昨日2月15日の図の「R2」の部分です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/59/f06f6b6a9b13760bf11c4d1a355bfe05.jpg)
このIMECの最先端装置を利用する他社を入れない、IMECとの1対1の共同研究には、それに見合う、巨額の共同研究費を支払うことになります。
以上が、IMECの研究開発機関としての強さの秘密だと推定できるものです。
これに加えて、IMEC日本事務所代表の石谷さんのような優秀な営業マンを雇用していることも、IMECの強さの秘密です。クライアント企業が満足するような共同研究計画を汗をかきながら提案し、相手企業の意向をくみ取って修正し、共同研究契約を締結することになるのだと思います。しかも、クライアント企業がIMECと共同研究して得た研究開発成果に満足し、結果的に効果的な共同研究だったと、クライアント企業が満足することを目指しています。この点でも、日本の老舗店舗(老舗企業)の“長く付き合う中で、収入を長期間、得続ける”経営の仕方に通じると思います。
IMECは約550社と共同研究する対価として、各社に共同研究費を支払っていただいています。IMECの2007年の総収入額は2億8500万ユーロ(約313.5億円、1ユーロ=110円で換算)です。この総収入の77%が海外企業らの共同研究費、15%がフランダース地方の企業との共同研究費だそうです。その後、「海外企業からの収入比率は80%を超したとみている」と石谷さんは説明します。この海外企業から得る共同研究費が多いことが、IMECが海外企業から強く支持されていることの証拠です。
IMECは、フランダース政府から独立した機関ですが、現在でもフランダース政府から4470万ユーロ(49億円)、オランダ政府から800万ユーロ(8億8000万円)の運営資金が支給されています。地域振興や地域住民の教育などの対価のようです。実は、IMECに雇用されている研究開発者から所得税や消費税(名称は異なります)を徴収すると、税金の方が多いと試算されているそうです。
フランダース政府がIMEC設立を支援した当時の狙いは、ベルギー版“シリコンバレー”構想だったそうです。米国カリフォルニア州のシリコンバレーのように、ベンチャー企業を多数輩出し、そのIPO(新株上場)やM&A(合併と買収)による収入によって、フランダース地方の産業振興を図るというシナリオを描いたのだそうです。実際にIMECの研究開発成果を基に、ベンチャー企業が多数設立されました。こうしたベンチャー企業は実際に、大手企業にM&Aされる成果を上げています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/58/da7f2db931125e1a41c1f0ca16f632bc.jpg)
こうしたベンチャー企業による地域振興の効果以上に、IMECは企業との共同研究相手としての地位を高め、海外企業から得る共同研究費が順調に伸びていきました。
昨日2月15日に説明した内容を再び以下に書くと、
石谷さんのお話を独断と偏見で勝手にまとめると、IMECの強さの源泉は
(1)IMECの経営は、地元ベルギーのフランダース人(オランダ語を話すカソリック系)が握り、結果的に経営方針や研究開発戦略などが継続され、一貫性がある
(2)共同研究クライアントに支持される、優れた知的財産ポリシーを持っている。これはIMECの共同研究のビジネスモデルそのもののことです。
(3)世界中から優秀な研究者人材が集まる仕組みになっている
(4)半導体を研究開発する、試作する最先端の設備を持っている
――の4点と、理解しました(言葉の表現はかなり意訳しています)。
昨日(2011年2月15日)は、(1)と(2)について考えました。
残りの(3)について考えました。IMECの研究開発者は2010年時に1850人です。IMECが雇用しているのは1200人強です。この1200人強の優秀な研究開発者の多くは、企業との共同研究に従事します。石谷さんは「IMECの共同研究者は学術成果をまとめた論文を学術誌に投稿したい気持ちを抑えて、企業との共同研究に精力をつぎ込んでいる点が高く評価されている」と説明します。共同研究を依頼した企業からすると、自社から派遣した研究開発者と一緒になって研究開発を担うので、共同研究内容に適した研究開発者を社内から探して、IMECの派遣する人数が少人数で済みます。その分、人件費負担が減ります。
IMECが雇用している研究開発者は、世界中で優秀な研究開発者の採用試験が実施され、採用試験に合格すると、IMECに参加します。このため、IMECの公用語は英語だそうです。しかも、「もし共同研究で成果を上げないと、解雇されるケースがある」と、以前に九州大学大学院の教員の方から伺いました。なかなか厳しい人事制度です。
IMECの研究開発者全体の1850人から、雇用している1200人強を引いた残りの約600人は、企業との共同研究を支援する博士課程の学生です。IMECのWebサイトに博士課程の学生を公募する知らせを出します。研究開発内容やその期間、待遇などを公表し、条件が合う優秀な学生を世界中から集めています。以下は、推定ですが、この博士課程の学生が手がける研究内容は、営業秘密性が少ないものだと想像しています。しかし、この約600人はIMECの共同研究を支える貴重な人材です。当該の共同研究費を原資に、雇用されるそうです。
(4)の最先端設備の保有は、IMECは世界に数台しかない最先端装置をどんどん導入しています。例えは、極端紫外(EUV: Extreme Ultra-Violet)光によるリソグラフィーができる装置は世界にまだ数台しかないそうです。また、最先端のクリーンルームを持つ半導体の試作ラインは、米国のインテルや韓国のサムソン電子も持っていないと聞いているそうです。こうした最先端装置を使った共同研究を、インテルやサムソン電子、台湾のTSMCと、IMEC は実施しています。こうしたクライアント企業は、IMECとの1対1の共同研究契約を結び、研究開発成果はそのクライアント企業のものになります。この特許が昨日2月15日の図の「R2」の部分です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/59/f06f6b6a9b13760bf11c4d1a355bfe05.jpg)
このIMECの最先端装置を利用する他社を入れない、IMECとの1対1の共同研究には、それに見合う、巨額の共同研究費を支払うことになります。
以上が、IMECの研究開発機関としての強さの秘密だと推定できるものです。
これに加えて、IMEC日本事務所代表の石谷さんのような優秀な営業マンを雇用していることも、IMECの強さの秘密です。クライアント企業が満足するような共同研究計画を汗をかきながら提案し、相手企業の意向をくみ取って修正し、共同研究契約を締結することになるのだと思います。しかも、クライアント企業がIMECと共同研究して得た研究開発成果に満足し、結果的に効果的な共同研究だったと、クライアント企業が満足することを目指しています。この点でも、日本の老舗店舗(老舗企業)の“長く付き合う中で、収入を長期間、得続ける”経営の仕方に通じると思います。
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