ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

結晶化しにくい高分子などの物質を見かけ上、結晶化したようにする話を伺いました

2013年09月21日 | 汗をかく実務者
 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻教授の藤田誠さんの研究グループは、結晶化しにくい高分子などの物質を見かけ上、結晶化した状態にする“結晶スポンジ法”という手法を実用化するメドをつけたそうです。この研究開発成果は、高分子を利用する新薬や食品の開発を大幅に加速します。

 一般の方には、少し難解な話ですが、今回の研究開発成果は人類は工夫すれば、これまで不可能だったことを解決できるという典型的なケースの一つになりそうです。



 X線結晶構造解析などの分析手法は、一般の方にはあまり馴染みのない技術ですが、今回の研究開発成果は新薬や農薬、食品などの天然由来の高分子の工業化に役に立つ可能性が高いです。

 未知の高分子の探索で有名な話は、2008年にノーベル化学賞を受賞したボストン大学名誉教授の下村脩さんが見いだした緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein=GFP)の発見です。下村さんは緑色蛍光タンパク質の結晶をつくるために、米国シアトル市郊外の海で、家族でオワンクラゲを採取し、多数のオワンクラゲをすりつぶして抽出しました。それを結晶化させて、GFPの分子構造を解析した成果がノーベル化学賞受賞につながりました。

 後日、別の科学者グループが遺伝子操作によってGFP遺伝子を導入し,いろいろな生物の体内でタンパク質を光らせることに成功しました。この結果、生物体内の細胞内でのタンパク質の動きを視覚的に追うことが可能になり、いろいろな研究成果が得られました。

 このように、高分子の研究では、その対象高分子の抽出とその結晶化という前処理にかなりの時間を割いています。今回の研究成果を上げた藤田さんも、以前は研究室で「対象高分子の抽出とその結晶化をする際には、毎回、うまく行くように祈っている感じだった」と本音を漏らします。

 藤田さんは千葉大学で大学教員になり、名古屋大学を経て、東京大学に異動しています。藤田さんは金属錯体の自己組織化という現象によってひとりでに3次元構造化などつくる研究成果を1995年などから学術論文に発表してきました。

 今回の結晶スポンジ法の実用化の成果については、2013年3月に、国際的に権威ある学術誌の「Nature」3月28日号に「結晶化を必要としないX線結晶解析」の内容を書いた論文(表題=X-ray analysis on the nanogram to microgram scale using porous complexes)を発表したそうです。この発表によって「欧米の“メガファーマ”と呼ばれる大手製薬企業などからの問い合わせが殺到した」と、藤田さんは説明します。国内・国外の企業など10社程度から問い合わせがあったそうです。「国外企業の方が熱心に問い合わせてきた」とのことです。

 長くなったので、結晶スポンジ法の中身は明日にします。