ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

ニッコウキスゲが霧ヶ峰高原で咲き始めました

2010年07月12日 | 旅行
 2010年6月29日の本ブログでご紹介したヤブカンゾウ(藪萓草)の濃いオレンジ色の花は、緑一色の水田の畔に美しく映えています。
 妙義山山麓に広がる水田は田植えから梅雨の時期を経て、稲が順調に育ち、緑の絨毯のようです。妙義山南側の群馬県富岡市郊外を流れる川沿いに広がる水田は“瑞穂の国”を感じさせる緑一色です。すくすくと育っている稲の若々しい緑色は生命力を発散しています。その緑色に染まった田んぼの畔道に、ヤブカンゾウの濃いオレンジ色の花が所々に咲いています。緑色の中に、濃いオレンジが所々にアクセントとして見える色彩のコントラストは、田園風景としてなかなかの出来映えでした。ユリ科のいろいろな花が次々と咲く夏が迫っていることを伝えています。

 ユリ科のヤブカンゾウの仲間であるニッコウキスゲ(ゼンテイカ、禅庭花)も霧ヶ峰高原などの高原で咲き始めるころになりました。ニッコウキスゲが草原一面に咲き乱れる霧ヶ峰高原から車山高原にかけては、7月下旬のころは、この世の天国を感じさせる風景です。標高1600から1900メートルに広がる高原の草原に明るい黄色の花のニッコウキスゲが一面に咲くからです。

 今回は諏訪市側から踊場湿原(おどりばしっげん)経由で、霧ヶ峰高原に向かって登りました。中学生の時に、真夏の炎天下の草原を歩かされた記憶のある踊場湿原でした。霧ヶ峰高原の十字路(通称、霧ヶ峰インターチェンジ)近くの大駐車場の向かい付近に、ニッコウキスゲはポツポツと疎らに咲いていました。霧ヶ峰自然保護センターの向かい付近では、レンゲツツジ群の間に少し咲き始めていました。


 ニホンシカの食害を防ぐため、一番多く咲いている個所はネットで保護されていました。ニッコウキスゲの花は朝咲いて夕方にしぼみます。花の蕾が次々と大きくなって咲いては、後進に主役の座を譲るので、咲き続けているように見えます。

 霧ヶ峰草原の主役の花が、鮮やかな濃い朱色の花のレンゲツツジから黄色のニッコウキスゲに切り替わり始める幕間(まくあい)でした。草原の中で所々に咲き始めていたは、ウツボグサ(靫草)の紫色の花です。八島湿原では、キバナノヤマオダマキの淡い黄色の花が咲き始めていました。オダマキの中でも可憐な感じが強い花です。


 八島湿原では野鳥のホウアカなどの撮影を目指したバードウオッチャーに出会いました。カッコウが遠くで時々鳴いています。八島湿原の周囲の木から飛び上がった姿を1回だけ見ました。湿原の藪の中では、ウグイスがよく鳴いています。一羽が姿を現しました。


 “ウグイス色”ではない、薄い褐色の地味な色合いのためか、美しい鳴き声に気がとられる探訪者はいても、姿を見つめる人はいませんでした。すぐそばに留まって鳴いているのに、ウグイスとは思っていないようでした。このウグイスは鳴き声がすぐそばで聞こえても、姿を見ることはめったにできない身近な野鳥です。

 八ヶ岳の端の蓼科山(標高2530メートル)近くの白樺湖から車山高原、霧ヶ峰高原、八島湿原までを抜ける山岳道路のビーナスラインは、ニッコウキスゲが咲き誇る7月下旬の土曜日や日曜日は車が駐車場を求めて大渋滞します。霧ヶ峰と名付けられた理由は、諏訪湖の湿った空気が朝晩の上昇気流に乗って運ばれ、霧ヶ峰高原で霧になるからだそうです。一番好きな時間帯は、早朝か夕暮れ時の流れる霧の合間から見える一面のニッコウキスゲの花々です。

 夜明け近くは、車がほとんど走ってなく、霧の間から差す朝日の光の演出が見事です。早朝はゆっくりと車を走らせる必要があります。霧で見通しが良くないことも一因ですが、八島湿原近くの森から車道にシカの群れが出てくることが多いからです。シカも驚いて立ち止まり、そして走り出します。

 この霧ヶ峰高原や車山高原などの草原は、江戸時代に農民が馬や牛などの牧草地として草を刈ったり、枯れ草を肥料として集めた入会地として使われた結果だそうです。このため、木がほどんど生えていない草原として維持されてきたとのことです。麓から標高1600から1900メートルまで登って来て、草を刈って麓まで下ろす作業は大変だったと思います。草がよく生えるように、野焼きも実施していた時代があるとのことです(現在も継続中かどうかは未確認です)。この草刈り場としての利用は平安時代から既に始まっていたそうです。

 入会地としての人手作業と標高1500メートル以上と高いために夏でも低温を保つ高原の環境との相乗作用が現在の草原を育てたようです。実際には、低木が生えてきたら撤去したり、ヒメジョオンやセイヨウタンポポなどの外来植物の侵入を防ぐ作業も地道に続けているとのことです。美しい草原は、その環境を守る陰の作業に支えられているわけです。過去から現在までの作業の積み重ねのおかげでニッコウキスゲ一面に咲く美しい風景を楽しめるのです。