ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその164-麦子さんと

2015年09月02日 | 邦画
母親の青春。

時の流れは速い。
私自身、あっと言う間に年をとった、光陰矢のごとしである。
青春時代は、今やすっかり記憶の彼方だ。
昔の歌謡曲で「森田公一とトップギャラン」が歌った「青春時代」と言う歌がある、その歌詞の中で「青春時代が夢なんて、あとからほのぼの思うもの」と言う一節があるが、まさにそのとおりである。
青春時代に青春を感じている人は多いのだろうか、過ぎ去ってはじめての「青春」と言う「時代」をかんじるのではなかろうか。
今回紹介する作品は「麦子さんと」
自分を捨てた母親と、子供の物語である。
ストーリーを紹介しておこう。

麦子はアニメ声優を目指し、コミックショップでバイトをするフリーター、無責任を絵に描いたような兄と二人暮らしである。
正確には最近父親が他界し、二人暮らしになった。
そんな二人の前に彩子と名乗る女性が現れる。
彼女は自分は母親だと二人に告げる、二人にとっては自分達を捨てた母親だ。
彩子はその日から二人と暮らし始める。
そんな彼女を二人は絶対に母親と認めず、無碍な態度をとる。
そんな或る日、彩子は突然亡くなる、末期のガンであった。
麦子は兄と二人で葬儀を終えた後、母親の故郷に納骨をするためむかったのだが..........

ある手違いがあり、麦子は二日ほど母親の故郷に留まることとなる。
知り合いの民宿で、麦子は若かりし日の母親の写真を見る。
驚いたことに、その顔は今の麦子そっくりだった。
母親の故郷の男性達は口々に、母親の事を「地元のアイドルだった」「あこがれの的だった」と麦子に話す。
母の故郷では、彩子そっくりの娘、麦子を大歓迎する。
そして麦子は、母親が歌手を目指し、町のお祭りなどでステージに立ち、歌を歌っていたことを知る。
自分の母親の青春時代を、垣間見るのだ。
やかて、麦子は、母親への恨みが徐々に消えてゆくことを感じる。
母親の故郷で世話になった、母親と同級の女性ミチルから、母が歌を諦め、結婚し、麦子を妊娠した時の事を聞く。
ミチルは「彩子ちゃんはその時、今まで見たことの無いような、優しく幸せな笑顔だった」と麦子に話す。
その瞬間、麦子は母親に対する恨みが一気にはじけとぶ。

私達は生まれて、ものごごろがついたころ、当然のように両親は存在する。
しかし、私達は、両親を両親としてしか見ず、男性、女性と認識したことがあるだろうか。
私達がそうであったように、両親にも若い時代があり、青春の時を過ごしていたのだ。
まぶしく、輝くようなその時代を、両親がどのようにすごしていたのか、知る人は少ないだろう。
しかし、少しでも両親のそんな時代を想像すると、胸が熱くなるではないか。
人は生まれ、成長し、やがて結婚して、子供をもうけ、家庭を作る。
その過程において、若き日に自分の夢や希望を持つ。
そして時は過ぎ、自分の子供を持つときには、若き日々はある種「心の禁猟区」になってしまう。
私達は、同じ「時間」と言う環境の中で過ごした、両親の日々があったと言うことを、心に留めておかねばならない。

私事ごとで恐縮だが、今月は私の誕生月である。
今は天に居る両親に、感謝とこの言葉を送りたい「命をありがとう」

2013年日本製作、カラー95分、2013年12月日本公開、監督:吉田恵輔

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